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欲望を満たすためだけに 60~

轟竜狩り

前準備

一同は何時ぞややって来た雪山に居た。
今回のターゲット、ティガレックスを狩るために。
雪山の天気は以前来たときとはちがい、厚い雲が空を覆い吹雪が吹き荒れている。まるで人の侵入を拒む様に。
そんな中、キャンプ場では各々が準備を整えていた。
「青年と嬢ちゃん、ちょっと来てくれるかな?」
ゲドが呼びかける。
集まった二人に何かを渡すゲド、
「はい、モドリ玉ね。」
軽く言うゲド。
ルディは何時ものことなので簡単に受け取る。
しかしクロゥはそうは行かなかった。
「ちょっと待て、俺はもう逃げないって言ってるだろう?だからこんな物はいらないんだ!」
モドリ玉を付き返そうとするクロゥだがゲドが押し返す。
「青年は復讐に来たんだろう?なら持っておきなよ。復讐なんて言ってる奴は直ぐに死ぬからね。」
ゲドがサラリと言う。
ゲドの言葉は正しいのであろう。
復讐、つまり激しい憎悪を持っている人間は仇を前にした時、恐怖に鈍感になる。
だからこそ己の体の震えを吹き消し、敵に向かって行くことが出来る。
だが恐怖に鈍いと言うことは、自分に迫る死にも気づかない。仇を倒す事に夢中になり、近寄る死に気付いた時にはもう手遅れになっているだろう。
そんな事を避ける為、一時的にでも頭を冷やせる様に、ゲドはモドリ玉を渡したのだろう。
しかしあまりにも直接的に言い過ぎたため、気まずい空気が流れる。
「・・・そ、そういえばクロゥさんの武器って何ですか?ハンマーみたいですけど、何か違うような・・・?」
気まずい空気を打破すべくルディが話しかける。
「・・・あぁ、俺の武器は狩猟笛だ。」
クロゥが言う

出発

狩猟笛;ハンマーに似た形をした武器。攻撃方法も叩きつける等な打撃攻撃でハンマーに近い。
しかし、決定的に違う特徴がある。それは名の通り、笛の様に演奏ができる事である。
狩猟笛はその種類によって独特な音色を奏で、聞いた者に様々な効果をもたらす。
サポートをすることも可能な近接武器である。
「・・・と言う訳だ。」
クロゥが説明を終える。
彼、クロゥの装備は全身民族衣装の様な装備だった、ブランゴ装備だろう。
そして、背中にはハンマーの様な形状をしたものが包帯に包まれていた。
「これが狩猟笛ですか・・・、見ても良いですか?」
「・・・見てもいいが、あまり勧めないぞ。」
ルディの問いにクロゥが答える。
クロゥの言葉など気にせずルディは包帯をあけにかかる。
笛と名が付くのだから、美しい造形をしているに違いない、そう思いルディは包帯を解いた。
だがその中身はルディの希望をアッサリと打ち砕いた。
中からはパックリと開いた真っ赤な口が、不気味にこちらを向いている。
「ヒィッ!?」
小さく悲鳴を上げしりもちをつくルディ。
「・・・これが俺の相棒フルフルホルン改だ。そんなにビビラ無くても良いだろ!?」
自分の相棒を見たルディの反応に少々ガッカリしたようにクロゥが言う。
だが、フルフルを模したその笛はあまりにもグロテスクだった。
「・・・青年、その笛でどんなことが出来るんだい?」
ルディを起こしながらゲドが言う。
「・・なら見せてやるよ!もう準備はいいんだろ?」
不信げに聞くゲドに苛立ったのかクロゥが声を張り上げる。
面々の準備が終わったのを確認するとクロゥが笛を吹き始める。
醜悪な見た目通りフルフルホルンは、不気味な呻き声や悲鳴のような音を吹き出し音色を奏でる。
しかし曲が終わると、その不気味な音色に反して一同の体が羽の様に軽くなる。
「これが狩猟笛の効果だ、解ったか?」
自慢げに言うクロゥ。
「その笛の凄さは解ったよ、まぁ青年が凄いという訳じゃないけどね。」
意地悪そうにゲドが言う。
「・・・だからお前を連れてきたんだよ、チャンと奴を殺してくれよ、外道の。さぁ効果が消える前に出発しようぜ。」
一瞬苦い顔をしてクロゥが言う。
「言われなくともだよ、青年。じゃぁ行こうか、ディナーが逃げる前にね。」
二ィヤと笑うゲド。
一同はキャンプ場を後にした。

山頂

一気に吹雪の雪山を山頂まで駆け上がって来た一同。
不思議な事に息切れどころか、疲れてすらいない、これが演奏の効果なのだろう。
「さて、笛の凄さは解ったから、次は青年の強さを見せてもらおうかな?」
楽しげに言うゲドが指差す先には、三頭のブランゴが居た。
「ココで戦うにしてもアレは邪魔だからね、腕試しも兼ねてよろしく。」
「あんなの腕試しにもならねぇよ、見とけよ。」
ゲドの言葉に喧嘩腰で答えるクロゥだった。
一番近くのブランゴへ駆けて行くクロゥ、ブランゴがこちらに振り向く前にフルフルホルン改を振り下ろす。
「ッラアァアァァァ!!」
頭を叩き潰すと同時に、青白い稲妻がブランゴを襲った。たった一撃でブランゴはピクリとも動かなくなった。
激しい音に気付いたのか、残りの二頭がクロゥに突進を仕掛けて来る。
「ンリャァ!!」
頭上で円を描く様に狩猟笛を振り回すクロゥ。一頭のブランゴはそれをくらい遠くに吹き飛んだが、もう一頭はそれをかわして尚接近してくる。
しかし、クロゥはブランゴの牙が届く前に柄で目を突き刺した。
短い悲鳴を上げてのた打ち回るブランゴ、そこへ先ほど吹っ飛んで行った奴が再び突進を仕掛けてくる。その時クロゥは勝ち誇った顔でニヤリと笑った。
「ッダリャアァァァアアァァ!!!」渾身の力を籠め狩猟笛を振り下ろす。
激しい雷が悲鳴ごと二頭のブランゴを叩き潰した。 
「フゥー・・まぁこんなもんだ。」
背中に狩猟笛を収めつつクロゥが言う。
「まぁこれぐらいできないと困るんだけどね。さぁ、そろそろムサシの準備が終わるはずだからもう少し端に寄ろうか。」
ゲドに言われるがままに移動する面々、しばらくすると横のエリアから爆発音が聞こえてきた。
「!?何かあったんですか?」
「まぁ見てなよ、嬢ちゃん。」
不安がるルディをよそに楽しげな笑みを浮かべるゲド。
直ぐに横のエリアからムサシがやって来たが、それだけでは無かった。
地面が揺れている、地震?いや違う、それは何かがこちらへ向かってくる地響きだった。
「皆武器を準備して置けよ?さぁ飯の時間だ、こっちに来いよ。」
ゲドが言うと共に、大量のポポがこのエリアに駆け込んできた。
唖然とするルディとクロゥ。
(さっきの爆音はこのためか・・・でも何の為に?)
二人の疑問は直ぐに解決された。ポポの群れを追うように、大きな影が現れたからだ。
「さぁ、ディナータイムだ♪」
ゲドは狂喜の笑みを浮かべていた。

飛来

大きな影が現れたと思った次の瞬間、吹雪を引き裂く様に黄色い塊が現れた。
着地と言うにはあまりに荒々しく落下に近い、そして地面に降りると同時に近くに居たポポに襲いかかった。
大きく、強く発達した前足、やすやすと肉を引きちぎる強靭な顎、そして見るものに恐怖を与える鋭い眼光。これが轟竜、
「…ティガレックス!」
思わず息をのむルディ、今からこの化け物と戦うのかと思うとゾッとする。
「孃ちゃんは射程のギリギリから攻撃したらいいよ、俺が気を引くからね。」
優しくルディに言うゲド、そしてクロゥに話し掛けようとした時だった。
「ぅおぉぁぁぁ!!!!」
クロゥが雄叫びを上げる何時の間に接近したのか、ティガレックス目掛けて狩猟笛を振り下ろした。
それを後方に跳躍しかわすティガレックス、そして威嚇の雄叫びを上げる。
それと共に狩猟笛からも旋律が流れ始める。
仇を見つけた主人に共鳴するかの様に、先程より数段不気味で禍々しい音を吐き出す。
「あの馬鹿、なんでこのタイミングで!?孃ちゃんは無理しないでね。行くよ、ムサシ!」
そう言うとゲドとムサシは走り出した。
笛の演奏と雄叫び、どちらが早く終わるかなんて比べるまでもない。
クロゥに標的を定め突進をしてくるティガレックス、無論クロゥの演奏は終わっていない。
前足だけで力任せに突進をする轟竜、全身が黄色と青の斑点なのに対して、こちらに向けて大きく開かれた口の赤だけが酷く不気味だった。
轟竜の顎が届く刹那、クロゥは狩猟笛を叩きつけ体を反転させ牙から逃れた。
突進の勢いを殺しきれずに雪の上に滑り込むティガレックス。
その直ぐ後に演奏を終えたクロゥ。瞬間、彼のフルフルホルン改が青白い雷を纏った。
体制を立て直し振り向こうとするティガレックスに、クロゥが渾身の一撃を叩き込む。
「ッゼェラァァァァア!!!!!」
先程の比ではない雷がティガレックスを襲った。

弱点

雷を纏った一撃を受けたティガレックスが、激しくのけぞった。この瞬間をゲドは見逃さかった。
追撃を叩き込もうとするクロゥに、ゲドがタックルをカまし吹き飛ばした。
「っ!?何すんだよ、外道…」
クロゥが全てを言い終わる前に先程いた場所がティガレックスの一撃で抉り取られた。
「の!!!?」
「落ち着け青年、もう少し慎重になれよ。」
ゲドが言いながら回復薬を差し出す。
「何でこんなもの、ぃっ!!?」
気付けばクロゥの腕からは血が流れ出ていた。
さっきの演奏中に受けたのだろうか?全く気付いていなかった。
ティガレックスは再び突進を始めた。無論標的はゲドとクロゥだ。
「嬢ちゃんと青年は少し離れていると良いよ。俺とムサシは奴の弱点を確かめてくるからね。」
ニヤリと笑いながらゲドが言う。
確かに今クロゥは冷静に戦えないだろう。
突進をかわすゲドとクロゥ。
ムサシがティガレックスの後ろに回り込み、角笛を吹き鳴らした。
ティガレックスは突進の勢いを殺すこと無く180度反転し、ムサシに向かって走り出した。
赤い口がムサシに届く前に、吹雪の空から蒼い槍が降りそそいだ。
先程と同じようにティガレックスは、激しくのけぞった。
「ビンゴニャ!」
「やはり奴の弱点は雷だね。」
ムサシとゲドはニヤリとと笑い、前と後ろから斬りつけた。

落雷

いきなり雷が落ちたのか?
確かに雪山の天気は荒れている。しかし、都合良く轟竜だけに当たるものか?
無論それらには訳がある。彼らは爆雷針を使ったのだ。
爆雷針:天候が荒れている時に使用可能。
素材には雷光虫が使用されており、激しい落雷を呼び寄せる。
複数携帯可能。
ゲド達はこれを使ったのだ。
ティガレックスが体制を立て直す前に離れるゲドとムサシ。
ティガレックスの反撃は虚しく空を切った。
再び角笛をふくムサシ。無論、爆雷針が仕掛けてある。
まるでビデオで同じコマを見るかの様に、ティガレックスに雷が降り注ぐ。
再び仰け反るティガレックス。
「今だニャ!」
ムサシが大声で発する。
その声に続きゲドが尾を切断し 、クロゥの狩猟笛が轟竜の額を醜く変形させた。
一瞬の内にティガレックスは見る影もなくなって行った。この時ゲドは思った。
この竜は本当に自分でないと狩れなかったのか?と。
しかし、これほど優位に立ってもクロゥの顔からは、緊張と憎しみは消えなかった。
ティガレックスが姿勢を建て直した刹那、瞳は血によって真っ赤に血走り、前足は血の様に真紅に染まった。
まるで、轟竜の怒りを体現するかの様に。
轟竜は砲口のためか、大きく前足を開き息を吸い込んだ。
耳栓のついたゲドは構わず突っ込んで行った。
ティガレックスが砲口を発する前に、一同は恐怖心や危機、違和感の様なものを感じた。しかし、それらは感じるにはあまりに遅かった。

ティガレックスがホウコウの構えを取った時、一人、たった一人クロゥの表情だけが恐怖に歪む。
あの日、彼の仲間が死んだあの時の光景が鮮明に蘇る。接近していた仲間は轟竜のこの行動で窮地に陥り死んでいったのだから。
今からでは確実に間に合いはしない。だが叫ばずにはいられなかった。
「離れろぉぉお!!!!!!」
叫ぶと共に彼の体は恐怖から逃れる様に、轟竜から逃げ出していた。
彼の叫びに反応するも、ゲドとムサシは近づきすぎている。
離れるよりも早く、ティガレックスのホウコウが発せられた。
その叫びは地を揺るがし、天を貫くほどの爆音、いや轟音だった。
ムサシは千年包丁の盾で辛うじてそれを防いだ。
しかし、双剣のゲドに防ぐ術などない。クロゥが叫んだ後もゲドは、攻撃を仕掛けるべく接近していた。
ティガレックスが叫ぼうとも耳栓のある彼の耳には届かず、なんの影響もない…ハズだった。
ゲドの剣が届く前に彼は弾き飛ばされた。
まるで高速で壁にぶち当たったかの様に。
耳栓で音の聞こえないゲドの目には、勝ち誇る様に、叫ぶ格好をしたティガレックスの姿だけが映っていた。

味見

地面を転げるゲド、遠巻きに見ていたルディは何が起こっているのか全く理解できなかった。
運良くティガレックスはゲドを見失った様だ。そして見つける前にムサシが角笛を吹きあげる。無論、爆雷針を仕掛て。
怒りに震えるティガレックスがムサシに突撃を始める。
次の瞬間ムサシは度肝を抜かれた。
轟竜のスピードが先ほどの比ではないのだ、雷鳴が轟き地に落ちるよりも早くツッコンで来た。
辛うじてそれを避けるムサシだが、ティガレックスは既に体を反転させ背後に迫っていた。
グッと防御の姿勢をとるムサシ、しかし彼女の小さな体では耐え切れるはずが無い。
轟竜が口を大きく開き牙を剥く、ムサシの視界が赤と白で覆われる。
「ぎゃあぁぁぁ!!」
悲鳴が雪山に響く、しかしそれはムサシではなく轟竜の悲鳴だった。
見れば瞳に深々と矢が刺さっている。
「ムサシさん、貸し一つですよ。」
かるい言葉とは裏腹ルディの顔には一切余裕がなかった。それどころか目からは涙が流れている。
「帰ったら料理を作ってやるニャ。後、まだ死んでないから泣くんじゃないニャ、嬢ちゃん。」
笑いながら返すムサシ、何処にそんな余裕があるのだろうか?
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!」
轟竜が再び怒りの咆哮を上げる。
ムサシは遠くに吹き飛ばされ、ルディもその轟音に耳を塞ぐ。
怒れる轟竜の瞳は確実にルディを捕えている。
轟竜が地面を蹴り、駆け出そうとしたその時、矢が刺さった瞳に再び激痛が走った。
「俺のことを忘れてないかな、トカゲくん?」
ゲドが潰れた目の死角から乱舞を叩き込む。
顔半分から血を噴出しながら仰け反るティガレックス。
「さて、味見をしようかな♪」
返り血を浴びつつナイフに付いたちを舐めるゲド。
しかしその表情は何時もの狂喜の顔ではなく、怒り・憤怒に満ち満ちていた。
「ペッ、マズィ。人の味がしやがる。食べる価値も無い糞の味がするぞ、トカゲ野郎!!!」
憤怒の表情のまま吐き捨てる様にいい放つと、ゲドは鬼人化の構えを取った。

憤怒

皆下がってろ、このトカゲは俺がバラす。」
そう言うと立て続けに乱舞を叩き込むゲド。
轟竜の顔半分が瞬く間にミンチの様に刻まれていく。
必死に死角から視界の中へ、ゲドを入れようと体を反転させ身を捩るティガレックス。
だが、ティガレックスが身を翻すよりも早く、ゲドは死角に回り込み顔を刻み続けた。
痺れを切らしたかの様に崖際に飛び退き、咆哮の構えをとる轟竜。
「馬鹿の一つ覚えか、トカゲ野郎?」
轟竜の叫びが轟く前に遠くへ退くゲド、そして咆哮が終わると共に駆け出した。
その時、轟竜がニヤリと笑った様に見えた。なぜなら、今轟竜の潰れていない方の瞳は、確実にゲドを捕えていたからだ。
それに気付いていてもゲドは足を止めなかった。今まで轟竜の動きを見ていて、それをカワス自信があったからだ。
何より今の彼の装備で、一撃でやられることなど有り得ないし、それより先に息の根を止められると思ったからだ。
だが、この考えが彼を窮地に追い込む。
ゲドが急接近して来るにも関わらず、ティガレックスは尾を高く上げてその場から動こうとしなかった。
ゲドの剣が再び轟竜を捕えた・・・はずだった。
そこにあるはずの轟竜の顔は無く、代わりに切断され断面が見えている尾が迫っていた。

落下

「なっ!!?」
言葉を上げるよりも早くゲドの体が宙に舞う。
どうやら轟竜はその場で体を360度回転させ尻尾をゲドに叩き込んだ様だ。
しかし、千切れた尾だったので大したダメージではない。それに今の一撃で轟竜からは遠く弾き跳ばされたので追撃を喰らうことは無い。
だが、ゲドの視界に移る轟竜の顔は確かに笑っていた。
なぜ?ゲドは轟竜が攻撃するよりも早く体勢が立て直せる距離に居るのに?
そう、轟竜からはるか遠くへ。
その時ゲドはあることに気が付く。
今、俺は何処を飛んでいるんだ?
その考えに至ったとき彼の周りのスピードが妙にゆっくりになった。
辺りを見回せば、ムサシたちが何かを叫んでいる。ルディに至っては泣きながら此方へ駆け出している。
宙でゆっくりと回転するゲドの体が下を向く。
「あぁ、やっぱりか。」
ボソリと言うゲド、彼の視線の先には直ぐ近くにある筈の地面が遥か下に見えていた。
ゲドは崖から落ちようとしている最中のようだ。
再びゲドの目に轟竜の勝ち誇った顔が映る。
「こういうことか、トカゲ野郎。まぁいい、必ず殺してやる。」
ゲドが言い終わると同時にゆっくりだった時間が元に戻る。
「ゲドさぁぁぁぁぁん!!!!」
少女が叫ぶより早く、男の体は崖下へと、吹雪の中へ飲み込まれて行った。

離脱

その場に泣き崩れるルディ。
そんな彼女目掛けてティガレックスは、地面を抉り雪の塊を飛ばしてきた。
少女の体の倍以上ある塊が猛スピードで迫ってくる。しかしルディは動かなかった。
グシャリと雪球が地面に激突する、しかしそこにルディの姿は無い。
「あのくらいじゃ奴は死なんニャ。だからしっかりするニャ、嬢ちゃん!」
「・・・。」
ムサシがルディを抱きかかえながら言うも返事は無く、ただ泣いているだけだった。
「コンなんじゃただの足手まといニャ、頭を冷やしてこいニャ。」
蔑む様に言うとムサシはモドリ玉をルディに投げつけた。
緑色の煙幕が晴れた時には既にルディの姿は無かった。
自分の目を潰した相手を見失った轟竜は、しきりに臭いを嗅いでいる。ルディを探しているようだ。
「このままじゃ逃がした意味が無いニャ、青年!手伝えニャ!!」
ムサシが叫ぶもクロゥからの返事は無い。
見ればしきりに何かを考えている様だった。
「チッ、ゲド以外はどいつも使えないニャ。」
舌打ちをするとムサシは駆け出した。
轟竜は未だにルディの臭いを探っている様だ。
「にゃっっっほおぉぉぉぉぉぉお!!!」
雄叫びを上げながらムサシが横一線にティガレックスの鼻を切り裂いた。
呻きながらムサシに怒りの矛先を向けるティガレックス。
「これで時間が稼げるかニャ?さぁこいニャ、トカゲくん。」
先程と同じ様に雪球を飛ばしてくるティガレックスだが、小柄なムサシには一切当たらない。
間合いを一気に詰めると顎に斬撃を叩き込んだ。
怒る轟竜は力任せに突進を繰り出すもアッサリとかわされ地面に滑り込む。
ムサシが接近してくるのを感じ取ってか再び高く尾を上げる。
「同じ手は二度もくらわんニャ。」
鼻で笑い動きを止めるムサシ、すぐに轟竜はその場で360度ターンした。
激しく雪が舞い吹雪と相まって殆どティガレックスの姿は見えない。それでもムサシは音で判断し千年包丁を振りかぶった。
その時、宙に舞う雪を吹き飛ばし轟竜の咆哮が天を貫いた。
「っんニャ!?」
衝撃波の様な咆哮に弾き飛ばされるムサシ。そしてこの距離はマズイ、この距離だと確実に追撃を喰らう。
ムサシの視界に映る轟竜はやはり笑っていた、勝ち誇るように。
「ウオォォァァォ!!」
その時男の怒号と、ドス黒い旋律が雪山に轟いた。

恐怖と憎悪

ゲドが崖下に消えた時からクロゥの復讐心は、それを上回る恐怖によって掻き消された。
轟竜に対する恐怖で彼の体は一切動かず硬直したままだった。
しかし、ゲドがその前に言った言葉で彼の頭は一杯だった。
(「ペッ、マズィ。人の味がしやがる。食べる価値も無い糞の味がするぞ、トカゲ野郎!!!」)
これは一体どういう意味か?
その疑問だけが彼の頭を冷静にさせる。
彼は自分の仲間がやられる場面を見たが、食べられる場面を見た訳ではではない。
それに元からそういう味だったのかもしれない。
雪山に着いた時も彼の仲間の亡骸はなかったが、メラルー達が持ち去ったと思っていた。
そう、だから彼の仲間の亡骸は轟竜に喰われたのではなく雪山に眠っているのだ。
そう思いたかった。
だが、ゲドの一言がクロゥを駆り立てる。
もし、人の味がする理由が彼の仲間を食したためだった場合、その責任はクロゥにある。
まだ息があったかもしれない仲間を置いて逃げ出した。そのせいで仲間は無残に食べられたのだとしたら?
そこまで考えた時に、ムサシが轟竜の咆哮により宙をまった。
このままでは確実にムサシは致命傷を負うであろう。
恐怖に打ちひしがれた彼なら即座に逃げ出したかもしれない。
しかし先程の疑問が再び彼の憎悪に火を着ける。
不甲斐ない自分のせいで、仲間は奴に喰われたのだ、と。
恐怖に縛られた体を憎しみの炎が再び動かす。
仲間を殺した轟竜が憎い、仲間を殺した自分が憎い。
今逃げることなど有り得ない。
気付けば憎悪は、禍々しい旋律となって雪山に木霊していた。
その旋律を煩わしく思ってか轟竜が此方へ振り向く。
その顔はどこか蔑むような、馬鹿にするような顔だった。
旋律を終え、クロゥは激しい雷を纏った狩猟笛を構える。

轟竜に対しての憎しみが、自分に対しての怒りが、彼を恐怖から解き放ち力を与える。
「来い、轟竜!!貴様と、俺自身にケリを着けてやる!!!」
叫ぶと共にクロゥは駆け出した。

憎悪<恐怖<…

叩け!潰せ!!殺せぇ!!!
心の中でクロゥが叫ぶ。真紅の口を開き、不自然なほど白い牙を剥き轟竜が迫ってくる。
恐怖はない、あるのは憎悪だけだった。
「潰れろぉぉぉお!!!」
叫ぶと共に轟竜の頭目掛けて振り下ろした。
その一撃はティガレックスごと地面に陥没を造った。
多々良を踏むティガレックスの頭を何度も、何度も叩き潰すように殴り続けた。
それでも轟竜の顔は笑っていた。
再び全身を怒りの赤に染め、雄叫びをあげる。
それよりも一瞬早く遠くへ離れたクロゥ、これが誤りだったのかもしれない。
突進を仕掛けてくるティガレックス、それ目掛けて狩猟笛を振りかぶるクロゥ。
体制を整えたムサシが何かを叫ぶ、しかし怒りに身を任せるクロゥの耳には届かない。
狩猟笛を振り下ろし再び地面にクレーターを造るクロゥ。しかし、そこに轟竜の姿は無かった。
「…し・ぅし・・・後ろニャ!!」
ムサシの叫びがクロゥの耳に届き後ろを振り返ろうとするクロゥ、だが何故かバランスを崩した。
見れば彼の左腕が肩の根本から無くなっていた。
「ぅっがぁぁぁあ!??!!」
今更痛みに気付き呻き声をあげるクロゥ。
彼が狩猟笛を振り下ろすよりも何倍も早く、ティガレックスは彼の腕を喰いちぎっていたのだ。
彼を再び恐怖が襲う。
痛烈な痛みが彼に、自身の死を鮮明にイメージさせる。
振り返れば死が間近まで迫っていた。
轟竜の口には彼の腕が見える。
このまま自分も仲間の様に奴に喰われるのか?
そんな考えが彼を襲う。
再び轟竜の口を見れば中に彼の仲間の顔が見えた気がした。
だが、今更逃げる事は叶わない、もとより逃げる気など一切ない。
片腕だろうと何だろうとかまいはしない。
怒りだろうが、憎しみだろうが力をくれるなら何でもいい。
奴を殺すまで死ぬことなど出来はしない。
折れかけた心に再び火を着ける。左腕の痛みを消しとばし、片腕にも関わらず狩猟笛が軽々と持ち上げた。
「ハァ…ハァ‥貴様が死ぬまで俺は死ねない!」
小さく、しかし力強く言うと彼は狩猟笛を振り下ろした。

グシャッ

グシャリと何かが潰れる音がする。
右手には確かな手応えがある。
が、すぐにその手応えはなくなった。
朦朧とする中、クロゥがティガレックスに目を向けると、彼のフルフルホルン改は柄が真っ二つに折れており、笛の部分は今まさに轟竜に噛み砕かれようとしていた。
轟竜がニヤリと笑いゆっくりと狩猟笛を噛み砕こうとする。
「・・・フッ、バーカ。」
クロゥが小さく言うと空から吹雪を引き裂いて雷が落ちてきた。
轟竜の咥えるフルフルホルン改がそれに反応するように、爆発のように電撃を噴出した。
それに巻き込まれクロゥ自身も吹き飛ばされる。
「動きが・・鈍いんだよ・・・・トカゲが・・・。」
それだけ言うとクロゥは意識を失った。
ティガレックスが体勢を立て直す前にムサシがクロゥを担いで逃げていく、その間中も彼の腕からは出血が止まらなかった。
回復薬をぶちまけても傷のレベルが違いすぎる。
多少の傷はともかく、致命傷に回復薬を使っても無駄である。
兎に角クロゥの持ち物からモドリ玉を取り出し、キャンプ場へと帰ることにした。
今更何をしても彼は助からないであろうが・・・。

標的を見失った轟竜。
いくら辺りを見回しても、もう誰も居なかった。
轟竜の無くなった瞳がズキズキ痛む、この目を刻んだ男は殺した。
笛の男と猫には逃げられたがそんなことはどうでもいい。
今は目が痛む、この目を潰した女を殺さないと気がすまない。
辺りの臭いを嗅ぐと僅かだが、旨そうな女の匂いがする。
それに気付いたティガレックスがにやりと笑う。
力任せの跳躍で、ティガレックスは空へ舞い上がった。

数分前にキャンプ場に送り返されたルディは、少しの間は泣き続けていた。
しばらくして少しだけ落ち着きを取り戻すと、ゲドを探すために雪山に入る事を決め、いまキャンプ場横の場所にいる。
洞窟に入ろうとした時に彼女の頭上を影が通り過ぎた。
ルディが振りかえるよりも早く何かが落下する音がする。
振り返れば、そこには轟竜ティガレックスがいた。
たじろぐルディを見つけ、轟竜は威嚇の咆哮をあげる
雪山に轟く咆哮、一人きりの少女は恐怖に震えるしかなかった。
その時何かが地面に落ちた。
白い残骸の様な物に紛れて、赤い棒状の物が見える。
あれは何?
見ないほうがいい、見てはいけない、見るんじゃない。
そう解っていても少女はそれを見てしまった。
少し潰れて、おかしな形をしているが紛れもなくそれは人の腕だった。
ゲドが落下したときから不安定だったルディの思考回路は此処で完全に壊れてしまう。
うで?ウデ?!腕!!!
何故、奴の口から腕!?
誰?ダレ!??だれの腕!!!?
冷静では無い少女の頭脳は彼女にとって最悪の答えを弾き出す。
「・・・ゲドさん・・・の腕!?」
そんなことは無い、と否定するも確かにそこに腕が転がっている。
その答えには多くの矛盾があるが、そんな事に少女は全く気付かない。
「やあぁぁぁぁぁぁぁぁ???!」
少女の悲鳴が木霊する。
もう何が何だか解らない、理解できない。
半狂乱のまま叫び続ける。
(ゲドが死んだなら貴女はどうする?)
不意に頭の中で声がする。
(彼を殺した奴から逃げ出すの?それとも狂ったまま殺される?)
声が質問を続ける。
「・・・逃げるなんて有り得ない、殺されたりもしない。」
ルディが小さく言う。
(ならどうするの?)
そんなことは決まっている。
「奴を、・・・殺すんだよぉ!!!」
頭の中から聞こえてくる声を掻き消す様に大声で少女は叫んだ。

弓を構えろ!歯を食いしばれ!限界まで力を込めろ!殺意を込めてその一撃を放て!
「ヤァァァァァ!」
5つに分かれた矢が轟竜に突き刺さった。
しかしティガレックスは微動だにしない、むしろ笑ってさえいるようだった。
それを見てルディは歯軋りをする。奴を殺すには力が足り無すぎる。
足りない力を補う様に、さらに殺意を込める。
次々に放たれる矢は確実に轟竜を捕えるが、ダメージらしいダメージにはなっていない様だ。
突進を始めるティガレックス、だがルディは避けるそぶりも見せずに矢を撃ち続ける。
ひ弱な彼女の攻撃では轟竜を止める事などできはしなかった。
当たる寸でで微かに体をずらし避けようとするも、跳ね飛ばされた。
地面に激突するルディ、額からはドボドボと血が流れる。
それでも矢を放ち続けた。
それを嘲笑うかのように突進を仕掛けてくる轟竜。
それに対して尚も矢を放ち続けるルディ。
轟竜の顎がルディに届く僅か前に、ピタリと動きが止まりもがき始めた。
ルディは麻痺ビンを外し、強撃ビンに付け替えていた。
「死ぃっっねぇぇぇぇ!!!」
雄叫びと共に、ルディは轟竜の残った目に深々と矢を突き刺した。

死・・・?

目に突き刺さり激しく炎を噴出す矢、激痛に悶えるティガレックス。確実に失明したであろう。
それでも少女は手を休める事無く矢を放ち続ける。
矢が炎を噴出し爆発する度に、轟竜の血と肉片が少女に跳ね返ってくる。
自身の血と轟竜の血で全身を真っ赤に染めながらも少女は、顔色を一切変えずに矢を放ち続ける。
麻痺が解け、怒りを露わにするティガレックスだが、その瞳はもう何も捕えることはできない。
しかし、轟竜はそれでも出鱈目に地面を駈けずり回った。
目を潰せば勝てると踏んでいたルディだが、よりいっそ予想の出来ない動きに的をしぼることができない。
気付けば彼女の矢は無くなっていた。
唖然とするルディ。
何故こんなことに気付かなかったのか?
まだ奴に止めを刺していないのにこのままではどうしようもない。
その時出鱈目に走り回るティガレックスが偶然此方に突っ込んできた。
すぐにかわそうとするが、何故か膝を突くルディ、血を流しすぎた様だ。
このままでは避けきれずに確実に致命傷を負うだろう。
何故奴を倒せなかったのか?
武器が弱かったのか?力が足りなかったのか?自分が非力だからか?
弱音ばかりが頭に浮かぶ。
      • それとも一人だから?
(そうね、所詮一人じゃ貴女は何もできやしないのかもね)
自分の頭に響く声に反論することすら出来ない。
迫る牙、己が無力に打ちひしがれる少女、死がすぐそこまで迫っている。
硬く目を瞑り、死を覚悟する。
「・・・ゲドさん。」
弱く、小さく少女が呟いた。
その時、少女の体を何者かが優しく抱き上げる。
「可愛い顔が台無しだよ、嬢ちゃん。」
目を開ければ一番会いたい人がそこで微笑んでいた。
「ゲド・・・さん?」
死に際に見た幻でも構わない。そこに貴方さえいればそれでいい。
「ゲドさぁぁぁん!!」
泣きながら少女は男に抱きついた

ルディは抱きついた後にゲドの腕を確認する。
ゲドは何をやってるのか理解できない様だ。
「ちょっと御免ね、嬢ちゃん。」
そう言ってニヤリと笑うとゲドはルディを高台の上へと放り投げた。
「ちょ、えぇぇぇ??!」
反応しきれずに頭から落下するルディ、再び出血が始まる。
「そこで大人しくしててね、嬢ちゃん。」
そう言うと共に回復薬を投げてよこすゲド。
壁を背にして角笛を吹くゲド、視力を失ったティガレックスは即座に音に気付き、突進を仕掛けてきた。その時ゲドがニヤリと笑う。
大きく口を開いたまま轟竜が迫ってくる。ゲドは一歩だけ横に避けると、轟竜は壁に激突した。その反動で牙は深々と壁に突き刺さった。
身動きのとれないティガレックスの脳天に、ゲドがひフォークを突き刺した。
「お疲れトカゲ君、もう死んでいいよ。」
そう言うとさらに深くフォークを突き刺す。
断末魔の様な叫びを轟竜があげる。
「五月蠅いんだよ、トカゲが。」
かなり不愉快そうに言った後、ゲドは轟竜の首をナイフで斬り落とした。
それっきり、断末魔は聞こえなくなった。
残ったのは、壁に突き刺さったまま残った轟竜の頭と、血を垂れ流す体だけだった。
ゲドはそれを、まるで汚物を見る様な目で見た後、興味が失せたように見るのを止めた。
「ゲドさん・・・生きてるんですか?」
回復薬で少し回復したルディが問う。
「生きてるって、・・・何で俺が死ぬんだい!?」
質問の意味が解らないと言う様な顔をする。
「だって崖下に落ちたじゃないですか!・・それに腕がティガレックスの口から出てくるし・・・。」
ルディのその台詞を聞いた後、ゲドは気まずそうな顔をする。
「今俺が此処にいる訳は、モドリ玉を使ったからだよ。来るのが遅れたのは、少しの間気絶していたからだよ。・・・・後嬢ちゃんが見た腕は、俺のじゃなくて青年のだ。」
暗い沈黙が二人を包む。
「・・・じゃあクロゥさんは?」
沈黙を破るべくルディが言う。
「死んじゃあいないよ。・・・ただ、もう助かりもしないだろうけどね。」
それを聞き俯くルディ。
「青年は喰いちぎられた腕からの出血が激しくてね。ムサシが手当てをしてるけど・・・もう駄目みたいだね。」
そこまで言うとゲドはルディに手を伸ばす。
その手に掴まり、俯いたままキャンプ場へ戻ろうとしたときだった。
「外道の・・・奴は、轟竜はどうなった?」
キャンプの入り口には、片腕の青年が一人立っていた。
「もうケリを着けたよ、青年。」
何時もの口調でゲドが言う。
「・・・そうか。」
クロゥが言う。
その顔には血の気が無く千切れた腕からは未だに出血が止まらない。
「復讐なんか考えずに、大人しく逃げてれば死なずにすんだのにね。」
ゲドが笑う。
「・・・一生逃げ続けるなんて、俺にしては死んでるのと変わらないんだよ。だからこれでよかったんだ。最後に一つ聞いてくれ。」
そう言うと、クロゥはゲドの耳元で何かを囁く。
「いいよ、最後の頼みくらい聞いてあげるよ。」
軽々しくゲドが答える。
「嬢ちゃんはキャンプに戻っていてくれるかな?」
ゲドに言われるままにルディはキャンプに帰っていった。
「・・・さてと。」
ゲドはクロゥを轟竜の屍の近くまで担いで行く。
そしてティガレックスの腹を切り裂き始めた。
死体からの出血は殆ど無く、簡単に切り開かれていく。
「・・・あった。これかい、青年?」
ゲドが轟竜の腹から鉄屑のような物を取り出していう。
「・・・あぁ、それだ。」
そう言うと残った片腕でそれを受け取るクロゥ。
「・・・本当に、・・・・・すまなかった。」
泣きながら鉄屑に謝るクロゥ。
彼の仲間の装備だった様だ。
「外道の、これで俺に遣り残した事は無くなった。だからもう帰ってくれ。」
思いつめた様にクロゥが言う。
「青年は、・・・どうするんだい?」
ゲドは答えの解っている質問をする。
「俺はもう駄目だ。だから仲間と一緒に此処にいるよ。」
自分の腕の出血を見ながらクロゥが言う。
「・・・そうかい、止めはしないよ。じゃあ元気でね。」
そう言うとゲドはキャンプを去って行った。
「・・・・ありがとう、ゲド。」
ゲドが居なくなってからクロゥがポツリと言う。
「おやすみ、クロゥ・ディール。」
聞こえる筈も無い言葉をゲドが言った。
そして青年は仲間の横で目を瞑った。
青年はもう復讐をする必要はない。
恐怖に震え、逃げ続ける必要もない。
ただ仲間の傍らで眠り続けるだろう。

今日、雪山で起こったこと全てを覆い隠すように、吹雪は激しさを増して行った。

暗い帰り道

暗い帰り道、一同を乗せ荷車はゴトゴト進む。
行きの道よりも一人少ない車の中、誰もそのことには触れずただ重苦しい空気が充満している。
各自が武器の整備やら後処理をしている中、ルディは自分の顔面に包帯を巻いていた。
(傷が残るといけないニャ。)
と言って、珍しくムサシがルディに役立つ物をあげた訳だが、明らかに量が多い。
大人しく切って使えばいいのだが、包帯を巻きながらルディの頭は別のことを考えていた。
(人って簡単に死ぬんだ・・・。)
ゲド達と組んでいたルディは感覚がずれていたのだろう。
ハンターは自分の実力に負えない相手と戦えば敗北するのは必至である。引き所を誤れば簡単に死ぬことになる。
そんな事は解っていたはずなのに、今回の出来事で改めて思い知らされた。
いつか自分もクロゥの様に死ぬのだろうか?
ムサシやカイン、ゲドでさえも。
そう考えると気分が深く落ち込む。
「・・・大丈夫、嬢ちゃん?」
それを察してかゲドが話し掛けてくる。
「大丈夫ですよ・・・。」
明らかに大丈夫そうではない返事をする。
「ん~、じゃ嬢ちゃんは何でハンターになったのかな?」
「へ、私ですか?」
「そう、嬢ちゃんの。俺がハンターな理由は判ってるだろうからさ。」
ゲドが言う。間を取り持つためだろうか?
「それは私が村長の娘だからですよ。」
「え!?村長って婆さんだよね?え、娘!?」
ルディの答えにゲドは混乱している。
「あ、違いますよ!娘と言っても私は拾われた子ですよ、村長未婚ですし。」
「へ、へぇ~。」
ゲドは動揺しっぱなしだった。
「他にも2,30人いますよ、村長に拾われた人。私はその中でも一番年下ですけどね。・・・と言いますかゲドさん、私が村長の娘って知らなかったんですか?」
「え、何で俺がそんなこと判るんだい?」
ゲドは話を理解できていない。
「何故って・・・、あの村の名前『ロッタ』ですよ?まさか村どころか村長の名前まで知らなかったんですか!?」
ゲドはこのとき初めて村長と、自分が滞在する村の名前を知った。

雑談

「で、何でハンターになったんだい?」
話題を戻すゲド。
「村長の子供達は大抵がハンターになったからです。村長自体もともとハンターですから。」
答えるルディ。
「・・・じゃあ別に嬢ちゃんはハンターになりたくなかったと言う事かな?」
「なりたくなかった訳ではないですけど、なりたかった訳でもないですね。」
「じゃハンターを止めた方がいいんじゃないかな?」
「え!?何でですか?」
ゲドの言葉に驚くルディ。
「ハンターは大抵が他に仕事が無い奴とか、名声が欲しい野心家とかなんだよね。まぁ誰でもこんな死に安い仕事なんて嫌だろうからね。」
淡々と語るゲド。
「でも嬢ちゃんは村長に頼めばもっと安全な生活ができるんじゃないかな?なんなら俺やカインが違う仕事を紹介してもいいんだよ。なんの目的も無くハンターなんてしてたら辛いだけなんじゃな・・・」
「嫌です、誰になんと言われようと私はハンターを辞めません!!」
ゲドの言葉を遮りルディが言う。
「確かに始めは何の目標も無く狩りをしていました。でも今は違います、ちゃんとした理由があります。」
「そう・・・で、理由ってなんだい?」
ゲドの言葉の後、ルディはジーっとゲドの顔を見つめる。
「・・・顔に何か付いてるかな?」
「な、何でもないです!後理由も教えません!!」
その言葉を言った後にルディの顔が真っ赤になった。
「まぁ何にせよ、嬢ちゃんがハンターである限り俺に付き合ってもらうからね?」
そう言ってゲドがニッコリ微笑む。
「は、はい!!」
顔が真っ赤なままルディが答える。
そのまま各々の寝床に着こうとした時だった。
「つまんないニャ。嬢ちゃん、いつかみたいに大胆に行けニャ。」
離れて会話を聞いていたムサシがつまらなさそうに言う。
「チョ、何言ってるんですかムサシさん!!?」
「いつかみたいに、って何かあったのかい?」
「それはだニャ~。」
「な、何でも無いんです!本当です!!」
嬉しそうに言うムサシを顔が真っ赤なまま追い掛け回すルディだった。
いつの間にか辺りは明るくなりかけていた。また新しい一日が始まろうとしていた。

武器変更

村で何時もどおりの朝を迎えるルディ、彼女は前々からの欠点を克服するべく工房に向かっていた。
彼女の欠点、それは明らかに低い攻撃力だ。
工房に着き店主から新しい弓『ティガアロー』を受け取る。受け渡しの際に店主に会心率がどうのと言われたがよく判らなかった。
受け取ったティガアローから発せられる嫌な気配に少女は気付かなかった。
そして集会所の扉を開けるルディ、中ではゲドとマキルがクエストの結果について話をしていた。話している間中マキルは残念そうな顔をしていた。
話を終えたゲドがルディの正面の席に着く。
「おはようニャ、嬢ちゃん。」
そこへキッチンからムサシが食事を持ってきた。
「おはよう、嬢ちゃん。さて朝ごはんにしようか?」
ゲドも挨拶をするが、目線はすでに蓋をしてある料理に釘付けだった。
「おはようございます、ゲドさん、ムサシさん。」
挨拶を返すルディ。
「では、イタダキマス♪」
言うと同時に蓋を開くゲド、ルディも恐る恐る自分の料理の蓋を開いた。
        • 中にはグリーンの液体がビンの中で揺れていた。
「・・・回復薬、ですか?」
「正確には回復薬グレートニャ。」
ルディの問いに笑いながらムサシが答える。

合間

回復薬グレート:回復薬とハチミツを調合したもの。回復効果を格段に上昇させてある。
「で、何で回復薬グレートなんですか?」
ビンを突付きながらルディが問う。
「嬢ちゃんの怪我が早く治るようにニャ、そうしないと苛められないからニャ。」
ムサシがニヤッとした顔で言う。
確かにルディの額にはまだ傷が残っていて包帯を巻いたままだった。そのために回復薬グレートを持ってきてくれたのだろう、しかし本音を聞いた後では素直に喜べないルディだった。
「・・・ち、ちなみにゲドさんは何を食べてるんですか?」
今回も好奇心に負けゲドの料理を見るルディ、何やら飛竜の卵を食べている様だ。
「美味いよ♪嬢ちゃんも食べる?」
飛竜の卵は大変美味なんだそうだ、それに加えゲドの一言でルディは誘惑に負けてしまう。
「じゃ、じゃあ一口ください。」
ゲドの横へ行き卵の中を覗きこむルディ、湯気のせいで中身が良く見えないので一気に中身を取り出す。その瞬間ルディは何かと目が合った。
「ヒィッ!!!?目、めめめめ目眼??!」
思わず中身を取り落とすルディ。
「それの中身は孵化する何週間か前のイャンクックニャ。骨まで美味しく食べれるニャよ?」
ニヤァっと笑うムサシ、固まったままだったルディは説明を聞いた後、額から出血しながら倒れた。
傷口が開くほどグロテスクだったのだろう。
「嬢ちゃん!?大丈夫かい?」
ルディの頬をぺしぺし叩くゲド。
その直後にルディは顔を真っ赤にして気絶した。
その赤は血のせいなのか、ゲドのせいなのかは判らなかった。
「どうする、ムサシ。」
「回復薬グレートかければ治るニャ。」
心底楽しげな顔をするムサシ。
その後ルディは頭から回復薬グレートを被る羽目になった

双剣

しばらくすると集会所の扉が勢いよく開いた。
そこには見覚えのある男が立っていた。
「久しぶり、元気だった…」
「め、メ、目、眼、骨まで柔らかグッチャグチャ~♪」
「…何故嬢ちゃんは緑の液体にまみれて、壁際でブツブツ言ってるんだ?」
久方ぶりに帰ってきたカインは目の前の光景に、首を傾げた。
「新しいトラウマが増えたのニャ。」
ムサシが楽しげに言う。
「また何かしたのか、性悪猫よ?」
カインの問いに対してムサシはニヤニヤするだけだった。
「まあいい、ゲド渡すものがあるからコッチに来い。」
「なんだい、カイン?」
ゲドはカインに呼ばれ、奥の方のテーブルに座る。
「お前から預かっていた塊の加工が終わったんだよ、ホレ。」
そう言ってカインはテーブルに包みを取り出した。包みの隙間からは暗い翠色の刀身が怪しげに光を放っている。
「結果から言うと大当たりだ。それは太古の秘剣、封龍剣【超絶一門】だ。」
カインは言いながら包みから中身を取り出した。
封龍剣、それは太古の文明が作り出した対龍用の武器。現在の技術では再現不可能なそれは龍に対して絶大な威力を誇る。
その封龍剣が今、ゲドの目の前にあるのだ。
「コレが、封龍剣…!」
流石のゲドも食い入る様にそれを手に取り眺めていた。
独特の形をした古びた刀身に、血管の様に翠色の何かが張り巡らされている。
それは魔力じみた魅力を放っていた。そしてゲドは何故かそれに懐かしさを感じていた。
「いいねぇカイン、これは凄くいいよ。」
ゲドが食べる事以外にこんなにも関心を持ったのは初めてだろう。
「でも結果から言うとって、他にも何かあるのかい、カイン?」
突如我に返った様に、疑問を投げかるゲド。
それを聞くと、カインはゆっくりと口を開いた。
「その封龍剣は最近まで使われていた様だ。」
カインの言葉の意味がイマイチ理解できずに、首を傾げるゲド。
太古の武器が最近まで使われていた?
あんなに風化していたのに?
「その封龍剣は10年くらい前まで使用されていたんだとよ。余りにも風化のレベルが低かったそうだ、柄に彫ってある文字が何よりの証拠だ。」
そう言われ、封龍剣をくまなく調べるゲド。
良く見ると片方の柄には【アイアンメイデン】と彫られてある。
そしてもう片方には【愛しいギランとサイ】と彫られている。
それを見た時ゲドはギョッとした。そこに彫られているのは紛れも無く自分と父の名だった。
「カイン・・・これは一体どう言うことだい?何故俺と父親の名が?アイアンメイデンって誰だい?」
思い浮かぶ疑問を吐き出すゲド。これは何の冗談なのか?と言いたげである。
「お前は知らんかもしれんが、アイアンメイデンはお前の母親の字だ。ギルドの記録にもその呼び名しかないから本名は不明だがな。」
疑問にあっさりと答えるカイン。
その母親の武器が偶然にもゲドの手にある。
「そうだったのか・・・でもさカイン、そのアイアンメイデンの武器が古龍の抜け殻から出てきたって事は、もう俺に家族は居ないって事かな?」
「・・・・・・・・・。」
ゲドの言葉にカインは答えない。
「まぁいいさ、始めから生きているとは思ってなかったからね。会った記憶もないわけだし。…それに今のパーティが家族みたいなものだからね。」
笑いながら言うゲドだが、どこか寂しげだった。
「そうだな。」
そんなゲドを見て、なるべく笑顔で返事をするカイン。
「しかし、男同士が微笑みあってると不気味だニャ、と言うか気持ち悪いニャ。」
「そうね~、ムサシちゃん。」
何時から居たのか、ムサシとマキルが横で笑っていた。
「お久しぶりですね、マキルさん。奥で一緒に話でもしませんか?」
「私ですか?えぇ、いいですよ。」
そう言ってカインとマキルは奥の部屋に消えていった。
「あの二人は何時も何してるのかな?」
「きっと大人の話なのニャ。」
「付き合ってるんですかね?」
何時復活したのかルディが話に入ってくる。
「それは無いと思うニャ。せいぜいオッサンの片思いニャ。」
ムサシが冷静に言う。
そんなに否定しなくてもいいのでは?っと思うルディだった。

大人の会話

奥の個室まで来たカインとマキル、入ると共にカインがドアをガチャリと閉めた。
「さて前回の轟竜の依頼で死人が出たそうだな?」
何故か険しい顔で話し出すカイン。
「えぇ、残念です。」
何時もの様に話すマキル。
「残念ねぇ、それはゲドが死ななかったからか?」
「・・・・何を言ってらっしゃるんですか?」
カインの言葉に一瞬マキルの顔が崩れた気がした。
「いや、わしが居ない時だけランクが高い依頼が此処に入ってきている気がしてな。中堅レベルのハンターじゃ太刀打ち出来ない様なものばかりが。」
「それがどうかしたんですか?」
マキルは何時もの顔に戻っていた。
「ここのハンターは元から少ないし、余り栄えてない村だからな、わしがギルドから直接持ってくる他には殆ど高ランクの依頼は来ない筈なんだよ。依頼を達成できるハンターが居ないからな。」
喋り続けるカイン、それに対しマキルは何も喋らない。
「ギルドで調べたんだが、アンタがそんな依頼を進んで斡旋しているらしいな、どういうつもりだ?」
「依頼を請け負うのが私の仕事ですから。」
事務的な返答をするマキル。
「そうかい、後、ゲドに血縁がある貴族の子飼いのハンターが集会所を管理してるらしいんだよ、これはアンタか?」
「・・違うと思いますが。」
「そいつの名前が”マキル”でもか?」
「・・・そんな偶然もあるんですね。」
怪しく微笑みながら答えるマキル。
「…まぁいい、言っておくがワシの家族に何かしたらギルドの総力を挙げてお前らを叩き潰すからな。せいぜい尻尾を出さんようにしとくんだな。」
「何のことか判りませんが気を付けておきましょう。」
しばらく睨み合ったあとカインは部屋を出て行った。
「フフ・・・尻尾を掴んだ時はもう手遅れでしょうけどね。」
小さな笑い声が部屋に響き続けた。

武器変更(ガンランス)

何事も無かったかの様に部屋から出てくるカイン。
「何を話してたんですか?」
「大人の話だ。」
ルディが聞くも笑いながら誤魔化すカインだった。
「オッサン、そう言えば装備が変わってるニャ?」
今更ながらにムサシが気付く。
「今更だな、前のガンランスは今強化中だ。だから代わりにコイツを持って来たんだ。」
そう言ってカインはテーブルの上にガンランスを置く。
そのガンランスは全体的に少し歪で、赤と白の配色だった。
その見た目は・・・
「・・・蟹みたいですね。」
ルディが言う。
「シザーキャノンだ。まぁ素材が素材だからな。」
「これでオッサンはメデタク全身蟹男になった訳だニャ。」
楽しげにムサシが笑う。
その時突然カインがマタタビを取り出す。無論ムサシがそれを夢中で追いかける。ポイッとマタタビが宙に投げられた。
跳び付くムサシ。
「ニャッホ~ぃ、マタタビゲtt、グボャ!!?」
マタタビに手が届く前に砲撃によって吹き飛ばされた。
「ム、ムサシさん!!?大丈夫なんですか?カインさん??!」
突然の事に驚くルディ、ゲドはそんなことも知らず居眠りをしていた。
「獣人族はあの程度じゃ死なん。と言うかアレで黙るんなら苦労しないんだがな。」
どうやら蟹男と言われてカチンと来たらしい。
「猫はほって置くとして。ゲド、起きろ。ワシが此処に来た理由は解ってるんだろうが!!?」
そういいつつゲドの頭にも銃口を向けるカイン。
「ん?!お、オーケー。解ってるよ、カイン。」
殺気に気付いてか、ゲドが眼を覚ます。
「ムサシ~、食事4人分頼むよ~。・・さてカイン、今回は前回みたいなガセじゃないんだろうね。」
「今回は間違いない、確実な情報だ。」
ムサシを放置して会話を始める二人。ルディは、あんな状態でムサシが料理できるのかどうか少し心配だった。

情報

「クシャルダオラが密林に出たそうだ。」
カインが話し話はじめる。
「じゃあ今回は密林に行くのかい?」
「いや、雪山だ。」
ゲドの問いにカインが答える。
「密林で目撃されたクシャルダオラは既にハンターと戦闘を行い、雪山の方角へ退避して行ったそうだ。」
カインが淡々と言う。
「ふ~ん、じゃあそのクシャルダオラはあまり強くないのかな?」
ゲドが言う。
「残念ながらそうじゃない。討伐に向かったハンターは4人。どいつもソコソコの使い手だったらしい。が、結果は内2名が死亡、1名はハンターを続けて行けないほどの重症、残りの1人も重体だそうだ。それにクシャルダオラも、逃げると言うよりも、気紛れで帰ったらしい。」
カインがサラリと言う。
「・・・・私達がそれに挑むんですよね?」
若干青い顔をしながらルディが言う。
「大丈夫だよ。ソコソコじゃない使い手が3人居るからね。それに、例え俺一人でも行くけどね。」
久々の馳走の話を聞いて、かなり嬉しそうな顔をするゲド。
彼にこの依頼を放棄するという選択肢は無いようだ。
「それに嬢ちゃんは、無理して来なくてもいいんだよ?」
笑いながらゲドが言う。
先程のゲドの「ソコソコじゃない使い手」に、無論ルディはカウントされていない。
当然のことを言われたわけだが、ルディは少しカチンと来た。
「絶対に行きます!!少なくともソコソコの使い手くらいの働きはして見せます!!!」
勢い良くルディが言う。
「チャンと守ってやれよ?」
カインがゲドに小さく言う。
「当然だよ。女性を守るのは男の務めだからね~。」
軽くゲドが答える。
その一言でカインは、ゲドとルディの関係に進展が無かったのだと判り、少々ガッカリした。
「お待ちどうさんニャ~。」
そこへキッチンからムサシが食事を持ってきた。
ムサシは先程の砲撃を受けたせいか若干焦げていた。
テーブルに並べられる食事は赤いトマトのスープだった。
たまには普通の物を作るんだな、と思っていたルディだったが明らかにカインのスープだけ過激に赤い。いや、紅い。
「では、イタダキマ~ス♪」
そんなこと気にも留めず食事を始める一同だった。
無論、すぐ後にカインは口とガンランスから火を噴くことになった。
食事の結果
パーティの攻撃力
スタミナが上昇
カインのみ
スキル・寒さ半減が発動した

移動中

何時ものように荷車に乗り、雪山へ向かう一同。何時もと違うのは、ルディが気絶しておらずムサシがロープで縛られていることだろう。
「じゃ、今からクシャルダオラに付いての説明をするぞ。」
カインが説明を始める。
「クシャルダオラは別名、風翔龍と言われ風や天候を操るらしい。だから爆弾とかは使えないんだ。」
「そいつは残念ニャ。」
ロープに吊られたままムサシが言う。
「さらに、奴自体風を纏っているから攻撃はおろか近付く事さえ出来ない。」
「じゃあ如何するんですか?」
ルディが言う。
「それはな、奴ら古龍の能力ってのは毒に侵されるか、角を圧し折ると無くなるらしい。だから嬢ちゃんにはこれを渡しておく。」
そう言ってカインは毒ビンを取り出した。
「奴が纏う風も、何時もあるわけじゃないそうだ。だからタイミングよくこれを撃ち込んでくれ。その間はワシらが囮になる。」
「え!?私がやるんですか?」
「その通り。」
笑いながら言うカイン。
サラリと大役を任せられたルディは既にガチガチだった。
「カイン、俺は少し試し斬りをしてから合流していいかな?」
ゲドが封龍剣を取り出しながら言う。
「なにか変な所でもあるのか?」
「ただ何となくだよ。」
軽くゲドが言う。
これから挑む敵のことを理解しているのだろうか?
「・・・まぁいい、好きにしろ。」
簡単に返すカインだった。
いまいち緊張感に欠ける3人とガチガチな一名を乗せ、荷車は雪山へと向かう。
待ち構える雪山は雲1つない天気で、不気味なほどに静かだった。

御馳走

雪山

各々準備を整え雪山へと繰り出す。雪山は異様に静かでモンスターの影すらない。
「何も居ないね・・・じゃあ、山頂で合流するってことでいいかな?」
「そうだな、なるべく早くしろよ。」
ゲドの言葉にカインが返す。
それを聞くとゲドは1人で移動を始める。残りの3人もホットドリンクを飲み雪山へと入って行った。
洞窟の中にも何も居ない。何か大きな力を感じ逃げ出したとでも言うのだろうか?
「・・・何も居ませんね。」
「その方が楽でいいニャ、・・・流石に不自然だけどニャ。」
そんなことを言い合うルディとムサシ。
「おい、もうすぐ出口だから準備をしておけよ?」
カインの言葉で気を引き締める面々だった。
そして洞窟を抜けたその時だった。
先程までの青空は消え去り、視界を遮るほどの吹雪が吹き荒れている。
「な、吹雪!?」
状況を理解する前に、目の前の白に微かに鋼が混じる。
不可解な状況の訳を理解すると同時に、鋼が立ち上がり咆哮を上げる。
「これが・・・クシャルダオラ!!?」
目の前の鋼が放つ威圧感が、自然すら操る人智を超えた力が、響き渡る咆哮が、その瞳から滲み出る殺意が、少女に恐怖を与え鮮明な死をイメージさせる。
「行くぞ、ムサシ、嬢ちゃん。・・・オイ、嬢ちゃん!?」
カインの声で我に帰った時既に、眼前まで鋼が迫って来ていた。
「ヌゥ!・・・嬢ちゃん村に帰るか?」
目の前の鋼を盾で防ぎながらカインが言う。
防具の隙間から微かに見える瞳が、語っている。役に立たないのなら帰れと。
確かにルディは居ても役に立たないかもしれない。少女は一気に弱気になる。
その時、クシャルダオラから暴風が巻き上がった。突然のことに体勢を崩すカインとルディ。
グッと体を反り上げ何かを放とうとするクシャルダオラ、暴風が集まっていく。
「ニャッッッッホァタァァァァ!!!!」
暴風が放たれるより一瞬早く、ムサシが二人にドロップキックを繰り出した!
転げる3人、先程まで居た場所を暴風が抉りとっていく。
「ニャふぅ~、オッサン達に貸し1つニャ。」
ムサシが笑いながら言う。
「嬢ちゃん、与えられた仕事くらいしっかりするニャ。その弓は飾りかニャ?」
意地悪に笑いながらムサシが言う。が、そんな言葉を言われても言い返すことが出来ない。
恐怖を拭い切れない。
(逃げる?ねぇ逃げる?)
その時、頭の奥から大層嬉しそうな声が響いてきた。

怨念

「帰りません、やります。」
頭から聞こえる声を振り切る様に少女は言う。
そして各々が素早く散り、持ち場に着いた。
ムサシはクシャルダオラの気を引くべく、目の前を走り回る。
カインは一息で踏み込める位置で機会を伺っている。
そしてルディは遠巻きに弓を構え、毒ビンをセットした。
構えたティガアローからは呻き声が聞こえた気がしたが、構わず弦を力一杯引き絞る。
(どうせ貴方には無理だって、足を引っ張って終わりだよ。)
またクスクスと笑い共に声が聞こえてきた。
「うるさい。」
小さくいい矢を放つ、しかし少女は恐怖故忘れていた。あの鋼の周りには吹雪を掻き消すほどの暴風が吹き荒れていることを。
少女が放った弓は恐怖とそれ以外の何かに邪魔され力無く飛んでいく。
「っ痛!!?」
弱々しく放たれた矢は暴風にアッサリと跳ね返され、ルディの頬を掠めた。ティガアローからは、轟竜の笑い声すら聞こえる気がした。
「なんで!?」
何故こんなにも力が入らない?少女はそう思っていた。
(武器にまで馬鹿にされてるのね。死ぬ前にさっさと逃げた方がいいんじゃない?)
頭に響く罵倒の声。
店主が行っていた会心率とはこの事なのか?まるで轟竜の怨念に邪魔されているようだ。
それでも少女は再び弓を構える。弦を引き絞っている時でさえ、頭の中と弓から馬鹿にする様な笑い声が聞こえる。
「五月蠅い。」
少女が呟いても笑い声は止まない。
「黙れダマレだまれ・・・敗者が私の邪魔をするんじゃない!!!」
雑音を掻き消す様にさらに弦を引く、その腕にあらん限りの怒りを込めて。
すると、ふと何も聞こえなくなった。
ゆっくりと動く鋼が見える。また口から暴風を吐こうとしていたその時、鋼の周りの暴風が消えていた。
この気を逃すな、狙いをつけろ、暴風をブチ破れ!!
手から離れた矢は、先程の比ではないスピードで吹雪を引き裂いていく。
そして鋼の頭を捉えた。
突如として音を取り戻した少女の耳には、鋼の悲鳴が響き渡った。

古龍

クシャルダオラの頭を捉えた矢であったが、一撃では毒の効果は現れない。
しかし、ルディは今の一撃で何時暴風が止むのかに気付いていた。鋼が暴風を吐き出すその時に、暴風は止むのだ。
再び弓を構えるルディ、標的である鋼は予想以上に素早い動きを見せる。だが暴風を吐き出す、その時だけは動きも止まり風も止む。
機を逃すな、1発づつ確実に叩き込め。小さく呟きながら矢を放っていくルディ、鋼には少しずつ毒が蓄積されていく。
再び鋼が暴風を放とうと構えをとる、それに合わせ少女も弓を構える。
しかし、暴風の矛先は少女に向けられている。構えを解き、横へ飛び退くルディ、僅か後ろの地面を抉っていく。
「ぃっけぇ!!」
鋼の周りを暴風が取り巻くよりも早く少女は矢を放つ。
矢は突き刺さり毒を吹き出した。そして鋼の周りの暴風がみるみる弱くなり、遂には消えてしまった。
「良くやった、嬢ちゃん。」
そう言うとカイン達は、一気に間を積めていく。近付く人間を凪払う様に前足を振るうクシャルダオラ。カインは盾でそれを防ぎ、頭目掛けて砲撃を放つ。その隙にムサシが鋼の尾に切りかかった。
確かな手応えを感じた2人、だが鋼の頭には傷一つなく、斬り落としたはずの尻尾はくっ付いたままだった。
「なっ!?」
目の前の出来事に動揺する2人、そこへ鋼が暴風を吐き出した。
綺麗な放物線を描き宙を舞う2人、そのまま雪原に叩き付けられた。
「大丈夫ですか?!」
クシャルダオラの気を引きながらルディが叫ぶ。カインは体を起こすと舌打ち混じりに愚痴を零す。
「化け物が。」
まだ闘いは始まったばかりである。

古い剣

        • 数分前・・・・
パーティをから離れ1人的を探すゲド。
封龍剣には龍を倒す力が宿っていると言う話だが、実際見た訳ではないのでゲドには確信が無かった。
集会所で調べた所、攻撃力はシエロツールと同程度、切れ味は悪くわないがシエロツールほどではない。
龍の力については一切不明、こんな状況で古龍に挑むのだから試し斬りの1つもしたくなる。
しかし、雪山には手頃な相手どころかアイルー一匹居やしない。
仕方なく封龍剣で空を切って見る。腕の動きと共に空気を切り裂く音がする。振るわれた剣は、見つけた時と同じく不思議な魅力を放っている。
突如封龍剣がキーンと高い澄んだ音を放つ。周りを見回すゲド、ふと山頂を見や上げると一部だけが厚い雲に覆われ見ることが出来ない。しかし、確実にそこには何かが居る。それだけは理解できる。
まるで生きているかの様に音を発し続ける封龍剣。
「あそこに居るのかな?」
獲物の位置を掴みニヤリと笑うゲド、封龍剣もまた喜ぶ様に音を発する。
試し斬りは止めだ、もう我慢する事など出来ない。正直、最近新鮮な料理を食べていなかったのでそれなりにストレスも溜まっている。これ以上宴の始まりを遅らせることなど出来ない。
そこに居ると判った以上この空腹を、欲望を止めることなど叶わない。
「今行くよ、メインディッシュ♪」
彼の本能が、背負う剣が告げる。今日の馳走は極上であると。
久方ぶりに口が裂けんほどの狂喜の笑いを噛み殺す。まだ味見すらしていない、喜ぶにはまだ早い。
さぁ、今日こそあの日から続く飢えを消し去り、渇きを潤す満足の行く食事であってくれ。
強大な力を持つ古龍との戦いを前にしても青年の口は笑っている。死に対する恐怖も、仲間を失う絶望も青年には見えていない。今はただ馳走との出会いが待ちどうしくて仕方ない。
洞窟を抜けると目に痛烈な光が差し込んでくる。光と吹雪でぼやける視界、そんな状態でも青年の瞳は今宵の馳走を捉えて離さない。
狂喜を抑えることはもう出来ない、狂った笑いが雪山に響く。
その場に居た全員、クシャルダオラでさえも不意のことに驚き惑う。 
笑っているのは青年とその剣のみ、けたたましく音を掻き鳴らし続ける封龍剣を構え青年は狂喜の顔で言う。
「イタダキマス♪」
青年の目の前には始めての御馳走、死んでいようが生きていようが関係ない。どうせ胃袋に入れば一緒である。
青年にとって初めての宴が始まる。

封龍剣

ゲドに対して暴風を吐き出す構えをとるクシャルダオラ。しかし攻撃を繰り出すより早く封龍剣が鋼の鱗を切り裂く。
何の変哲も無い一太刀、確かに鱗を切り裂いてはいるが普通の一撃と変わらない。龍を討破る力とは只の噂だったのか?だが龍の血を浴びたその時、封龍剣が生き物の様に脈打ち始める。
キーンという音はやみ、翠の網目だけが龍の血を飲み干す様に動いている。
再び斬り付けるゲド、封龍剣は切先から血の様に紅い何かを噴出した。
「これが・・・龍の力か?」
ゲドが言った後にやりと笑う。
そして即座に鬼人化の構えをとった。
封龍剣を一振りする度に血と共に吹き出る、怪しくも美しい紅が鋼の命を削っていく。
毒により風を失った鋼は反撃することすら出来ない。そして逃げる様に空へと舞い上がった。
不意に閃光が迸る。強烈な光に視力を失い、無様に落下するクシャルダオラ。
カインが閃光玉を使いそのまま距離を詰めてきた。
「ナイス、オッサン♪」
ゲドはそう言うと、情け容赦なく鋼の頭に乱舞を叩き込んだ。
剣で斬られ、龍の力で削られ、醜く形を変えていく鋼の頭部。
腹は包丁で斬られ、背は砲撃で焼かれ、体には無数の矢が突き刺さっていく。
あまりにも無様、力の象徴である角すら失ってしまった。
纏わり付く人間共を振り払う様に体を捩るも、すぐに集まってくる人間達、鬱陶しい。
怒りの咆哮を上げる鋼、総じて動きを止める人間共、殺してやる。鋼の口元に暴風が集まっていく。
しかし、1人だけが何も無かったかのように鋼の前に立っている。
「何がしたいんだ?」
目の前の男がニヤリと笑う。
吐き出される暴風、しかし男には近すぎて当たらない。ただ蹂躙される様に体を削られて行く鋼。
剣を振るう男は狂った様に笑っている。血を浴びたその姿は最早人ではない、鬼だ。鋼の本能が告げる。目の前のそれに、その剣に、その男に勝つことは出来ないと。
背を向け逃げ出そうとするクシャルダオラ、逃すものかと剣を振り下ろすゲド。
「?!」
ブツリと音を立てて斬り落とされる尻尾、だがあまりにも手応えが無い。まるで勝手に斬れたかのようだ。
案の定その隙に空高く逃げていクシャルダオラ、その姿は人に恐怖と死を撒き散らす化け物ではなく、どんな事をしても死から逃れようとする哀れな敗者の姿だった。
そしてゲドは呆然とそれを見つめる。
「・・・喰い損なった。」
そう言うとゲドは雪原に倒れこんだ。

空腹な帰り道

今回の依頼の結果
相当な深手を負わせて古龍・クシャルダオラを撃退
被害は特になし
ハンターの結果としては完璧に近いのだが、至高の食事に逃げられたゲドは帰りの荷車の中で倒れ込んでいた。
「…腹ヘッタ。」
寝たきりでボヤくゲド。
「倒れた時は本当に心配したのに、お腹が空いてただけだったんですね。」
呆れた様にルディが言う。
「ムサシ…コッチ来い。」
「なんニャ?食料はもう残ってないニャ。」
ゲドの言葉にムサシが返す。
今回、クシャルダオラの尻尾を切断した訳だが研究材料としてギルド(カイン)に回収されてしまった。
手持ちの食料もすでにゲドが完食済みである。
「あれだけ食ってまだ足りないのかニャ?」
近寄ってきたムサシをゲドが鷲掴みにした。
「ちょ、ニャにする気ニャ!!?や、止めるニ、ギニャー!!!!」
叫ぶムサシにガッツリと食らいつくゲド。
「何してるんですかゲドさん!?」
「シャブるだけにしとけよ。」
焦るルディに対して、カインが冷ややかに言う。まだ蟹のことを根に持っているようだ。
「オッサン覚えてろニョッ??!辞めるニャア・そんなとこニャメルんニャウニャア!??!」
ゲドに食いつかれているせいか、何を喋っているか解らないほどモガくムサシだった。
(普段人をからかってばかりのあの猫が一方的に、攻撃を受けている!?)
「…なんだか、凄く…愉快ですね。」
「だよな。」
愉しげに笑いながら二人が言う。
「お前らニャ、絶対報復してやるニ、ニャメ噛ンニャラメェ~!!!ちょたす、助け・ゥニャー??!!!」
必死にもがき叫ぶムサシ。
そしてそれを助ける事なく、微笑みながら眺めるだけの二人だった。
ゲドは案外美味だとか思っていた。

集会所

ご立腹な赤猫

狩りを終えた次の日の集会所、キッチンからは行つも通り料理をする音が聞こえてくるが、どこか禍々しい。
テーブルでは3人が料理を待っているが、内2名は冷や汗ダラダラである。
「絶対怒ってますね、ムサシさん。」
「だろうな、結局助けなかったからな。」
ルディとカインは互いに苦笑いをする。
後に悔やむと書いて後悔…その通りな状態の2人だった。
そんな2人をよそに未だに空腹なゲドは待ちきれない様子である。
「お待たせニャ~。」
キッチンから満面の笑みでムサシが出て来たが、その瞳だけは邪悪な光を放っている。
「残さず食べるニャよ?」
2人を睨みながらムサシが言う。
釘を刺された2人、最早逃げる事は叶わない。
「では、イタダキマ~ス♪」
脳天気なゲドにツられ蓋を開く2人。
中身はキノコがご飯の上に盛り付けてあるだけだった。
「…肉が無いよ、ムサシ。」
料理に文句を言うゲド。
「在庫切れだからそれでガマンするニャ。」
在庫切れ、その言葉を聞いた時2人は心底ホッとした。
食材がないためデンジャラスな料理にはならなかったのだと。
料理を口に運ぶ3人。
「…ん?んぅ~!!?」
ルディが奇声をあげた。
彼女の口の中で何かが蠢いている。
「言ってニャかったけど、今日の米虫は生ニャ。」
ムサシがニヤアっと笑う。
米虫とは米に代わる虫のことで噛めば噛むほど甘味がでる美味しい虫である。たが、無論生で食べる物ではない。
半ベソのルディは御手洗いへと走り去っていった。
「嬢ちゃん…可哀想に、まぁワシは平気だがな。」
平気な顔をして食べるカインだが、その手がピタリと止まった。
「ムサシ…このキノコはなんだ?」
「マヒダケとか激烈毒テングダケとかドキドキノコとかニャ。
心配しニャくても致死量は入ってないニャ。」
微笑みながら言うムサシ、それに対して突っ込みを入れようとするカインだったが既に体が動かない。
「ムサシ、オカワリ~。」
そんな2人をよそに食事を続けるゲドだった。

在庫切れ

現在の状態
ルディ・カイン共に、ムサシの逆鱗に触れ行動不能
ゲドのみ食事を続行
「ムサシ、御代わりは?」
毒物に近い料理を平らげゲドが言う。
「さっきも言ったけど在庫切れニャ、だから今ので最後ニャ。」
復讐を済ませ満足げな顔のムサシ。
「今ので終わり!?・・・最近ロクにご飯を食べてないなぁ。
古龍には逃げられるし、新種は不味くて食べれないし・・・。
マキルさん、何かいい依頼無いのかな?」
ゲドが不満げな顔で言う。
「依頼ね~・・・ゲドくん、何でもいいの?」
「この空腹から逃れられるなら何でもいいです。」
食事の直後だと言うのに腹の虫が大変な事になっているゲドだった。
「じゃあこの依頼に行ってきてくれるかしら?この前済ました筈なのにまた同じ依頼が来てるのよ。」
不思議そうな顔でマキルが言う。
そして、依頼の紙を受け取るムサシ。
「獲物はなんだい?」
だらしなく椅子に寝そべったままゲドが言う。
「ちょっと待つニャ・・・依頼主は漁師で・・・大名ザザミが獲物ニャ。」
依頼を読み上げるムサシ。
「蟹かぁ・・・まぁ何でも良いや、マキルさんこの依頼請けます。」
あっさりとゲドが言う。
「有難うゲド君。でも何か普通の依頼と違うみたいだから気を付けてね。」
そう言って、ニッコリと笑うマキルだった。
「さて・・・ムサシは嬢ちゃんを連れて来てくれるかな?俺はカインを運ぶからさ。」
言いながら気絶(全身麻痺)のカインを担ぐゲド。
「わかったニャ、先に出口で待ってろニャ。」
そう言ってお手洗いに駆けて行くムサシ。
恐らくお手洗い周辺にはカインと同じ状態でルディが倒れているのだろう。
今回の食事(ドキドキノコ+etc)の結果
ゲドのみ体力が上昇しました。
カインは状態が麻痺になりました。
ルディは状態が毒になりました。
さらに米虫がトラウマになりました。

密林へ

赤猫式起床法

ガタガタ揺れる荷車の中、男と少女は一向に目を覚まさない。
ぺチン、ぺチンと頬を打つ感触がそんな少女を覚醒させる。
(ん・・・頬っぺたが冷たい?)
薄っすらと目を明けるとムサシがルディの頬を叩いている。
(ムサシさんか・・・でもぺチンって何?)
頬を叩く何かを視認するルディ、どこかで見覚えのある白い何か・・・白くて冷たい、赤い口・・・!
「!!!キャー??!!」
それが何かを確認した瞬間少女は飛び起きた。
「なんで、何でそんな物持ってるんですか!?」
ルディが白いそれ、つまりフルフルベビーを指差して言う。
「いやニャ、もう一度倉庫を漁ったら見つけたんでついニャ。」
言ってニコっと笑うムサシ、かなり邪悪な笑顔だった。
「おはよう、嬢ちゃん。さてムサシ、カインも起こしてくれるかな?」
気楽に挨拶をするゲド、居るんならムサシの奇行を止めて欲しいと思うルディだった。
「ワシは・・起きてるぞ。」
横になったままカインが言う。
どうやらまだ麻痺が抜けていないようだ。
それを見て再び微笑むムサシ。
「ムサシ、何で笑って・・・て、テメェこっちにくんな!!この猫ぉ!後で覚えてろ・よぁー!!!?」
動けないカインの顔にフルフルベビーを噛み付かせるムサシ。
「誰がニャんと言おうとこの衝動は止まらんのニャ。」
笑いながら言うと更にフルフルベビーを噛み付かせるムサシ、何処に持っていたのか?
ちなみにフルフルベビーに噛み付かれても死にはしないが地味にダメージを受け続ける。
笑うムサシに逃げようにも動くことすら出来ないカイン。
そんな二人をよそに会話を再開するゲド。
「早速だけど、今回の依頼の説明をするよ?」
「どうぞ。」
ルディも自分に被害が無いので無視することにしたようだ。
「今回は密林で蟹、大名ザザミを狩るよ。」
会話をする二人の後ろではムサシが、三匹目のフルフルベビーを取り出そうとしていた。

確認

突如砲撃の音が車内に響く、黒焦げになって転がるフルフルベビー達、どうやらカインの麻痺が解けたようだ。
そしてまたマタタビでムサシを捕まえた後砲撃を2・3発放ち、ロープで吊るし上げていた。
流石にやりすぎでは?と思うルディだったが、ムサシなので別にいいか、とスルーすることにした。
「ムサシさん、今回はまた武器が違うんですね?」
「これは・・・黒鍋・・ニ・・・・ャ。」
そこまで言うとムサシは意識を失った。
「蟹はハンマーの方が利くからな。」
カインが言う。
今回の標的:大名ザザミ
甲殻種に分類される巨大なヤドカリのようなモンスター。
特徴は分厚く大きな鋏と、宿にしている一角竜の頭蓋である。
攻撃を弾き返す程の鋏を持っているため盾蟹とも呼ばれる。
「硬い甲殻には斬撃より打撃の方が良いんだよ。」
説明を終えたカインに続けてゲドが言う。
「所で今回の依頼はマキルさんから請けたのか?」
「?当たり前じゃないか?」
カインの突然の質問に首を傾げるゲド。
「何か変な事言ってなかったか?」
嫌に真剣な顔で聞いてくるカイン。
「ん~、確か同じ依頼を、同じ依頼主がすぐに出したとか言ってたような・・・。それがどうかしたのかい?」
首を傾げっぱなしのゲド。
「いや、別に何でもないんだが・・・何となく、な。」
適当な返事を返すカイン。
「まぁ別にいいや。ムサシ、ご飯は?」
「今出来るニャ。」
ゲドの呼びかけに吊るされている筈のムサシが答える。
ルディがバッと振り返るとロープにはムサシの代わりに、豚の人形が吊るされていた。
「何時の間に!?」
「気にするニャ、それより御飯ニャ。」
ムサシを探すルディの背後から、ムサシが現れた。
「では、召し上がれニャ~。」
「イタダキマ~ス♪」
ガパッと蓋を開くと、何処かで見た白い姿があった。
「これは・・・。」
「フルフルベビーニャw」
ルディが最後まで言い切る前にムサシが言う。
「・・・・まぁ死んでるんなら構わないですけどね。」
そう言って殆ど丸焼きのフルフルベビーを食べるルディ。
「オイシィ~♪」
ルディとゲドの声が同時に発せられる。
「・・・環境が人を変えるんだな。」
「・・・流石に慣れられたかニャ。」
唖然とするカインと少しガッカリするムサシだった。
食事の結果
全員のスタミナ
    防御力が少量上昇した

蟹祭り

食べ放題

鬱葱と木々が生い茂る密林。
一向の傍らには、既に捌かれた大名ザザミの無残な姿があった。
「・・・歯ごたえがねぇ。」
カインが1人ボヤク。
大名ザザミはイャンクック等と同じく、新人の腕試しにされたりするなどあまり強くは無い。
上位ハンターであるこのパーティ(1名は除く)には歯応えが無さ過ぎるのだろう。
「もうすぐ出来るニャ~。」
黒鍋で元・大名ザザミを料理するムサシ、周りには既に大勢のアイルー達が集まって来ていた。
突如地面が揺れる。
「ん?何ニ、ヤァァァァ!!!」
ムサシ、鍋に入っていた料理、そして周りにいたアイルー達が地面から突如出てきた一角竜の角に吹っ飛ばされた。
「んな!?」
次々に落下していくアイルー達。
空中で素早く体勢を立て直し鍋を持つムサシ、料理は一切零れていない。
「料理の邪魔をする奴はブッ殺すニ、ヤァァァァ!!??」
再び宙に舞うムサシ+アイルーs、着地に失敗するが料理は死守する。
「同じ依頼が来たってのはこういう訳か・・・暇潰しにはなるな。」
カインが1人納得し、武器を構える。
「食べ放題だね。では、イタダキマス♪」
心底嬉しそうな顔をするゲド、先程から腹の虫が鳴りっぱなしである。
「・・・・これ、まだ増えたりするんですか?」
恐る恐る聞いてみるルディ。
「そうじゃない?」
そう言って笑う三名。
どうやら今日密林は屍の山になる様だ。
1人溜息を付くルディだった。

休憩

どれほど時間が経っただろうか…。
海岸には砕け散った蟹の甲殻が散らばり、独特な色をした蟹の血が嫌な水溜まりを造り上げていた。
そしてそれは今もなお、カイン達の手によって拡大している。
そんな彼等をよそにキャンプへと帰還していくルディとゲド。
ルディが疲労+先程の光景で気分が悪くなってきたので、ゲドがそれに付き添ってキャンプへ帰還中なのである。
「大丈夫かい、嬢ちゃん?」
若干顔色が悪いルディにゲドが話し掛ける。
「…大丈夫です。でも、何体狩るつもりですか?」
ウンザリ、と言った感じでルディが言うが、それを笑って誤魔化すゲド、まだ帰る気は無いらしい。
そして2人はキャンプへと戻って来た。
ベットに倒れ込むルディ。
ゲドはキャンプに置きっぱなしにしていた封龍剣を手に取る。
「…何で、今日は、封龍剣を、使わなかったんです…か?」
疲労のせいか途切れ途切れにルディが言う。
「蟹は龍じゃないからね。」
ゲドが答えるがルディはイマイチ理解出来ていない様だ。
封龍剣は名の通り龍を封じる武器だ。龍に対しては絶大な力を発揮するが、最強と言う訳ではない。龍以外には大してダメージがないのだ。
無論、大名ザザミは龍ではないので効果は期待できない。
「と、言うわけだよ。」
ゲドの説明でようやく理解できたルディだった。不意に疾風が上空を吹き抜ける。それに応える様に封龍剣がキーンと鳴き出した。
それを聞くとゲドが千里眼の薬を飲み干し目を閉じた。
既に動かなくなった影、カイン達と戦っている影、そして其処とは全く違う場所を飛び回る影が見える。
ゲドはその影に見覚えがあった。
「へぇ…わざわざ自分から食べられに来てくれるなんて、気前がいいねぇ。」
ゲドの顔が狂喜に歪む。
その影は紛れもなく、クシャルダオラの物だったからだ。

デザート

バッと目を開くと封龍剣を担ぎ、崖を登り出すゲド。
「どうしたんですかゲドさん!?」
突然のゲドの行動にルディが驚く。
「ちょっとデザートを食べてくるんだよ。嬢ちゃんはカイン達を呼んできてくれるかな?なるべく急いで。」
「わ、分かりました。」
ルディが応えた時には、ゲドは崖の上に消えていた。
そしてルディも海岸へ駆け出した。

崖の上、鳴き続ける封龍剣。そしてそれに共鳴する様に自身の鼓動が高鳴るのを感じる。
一度口にしたあの日から、奴を求めて止まない欲望。
蟹を食べた程度では満たされないこの空腹。
今回こそは、この飢えから、欲望から逃がしはしない。
崖の上の洞窟からはクシャルダオラと思われる鼾が聞こえる。
封龍剣の鳴き声と自身の高揚した感情をグッと抑え、ゆっくりと近付いていく。
中では、予想通りクシャルダオラが眠っていた。
その躯には前回の傷痕がうっすらと残ってた。
斬り落とした筈の尾も歪ながら再生しかけている。
あれほどまでに切り刻んだ頭部も、その事が判らない程になっていた。
恐るべき回復能力、今も見て取れる程の再生が行われている。
しかし、それら全ては無駄なのだ。
既に鋼は射程圏に捉えている。
もうこの殺意を、狂喜を、欲望を抑える必要はない。
両手に構えた封龍剣を振り下ろせば、簡単にケリが着く。
鬼人化の構えを取ると同時に、封龍剣が鳴き叫びその声が洞窟の中に反響する。
異変に気付き瞳を開くクシャルダオラ。しかし全ては遅すぎた。
鋼の目の前では鬼が歪んだ笑いを浮かべていた。
「イタダキマス♪」
高く掲げられた封龍剣が、刹那の内に振り下ろされた。

かにカニ蟹

海岸ではいまだにカイン達が大名ザザミと戦っていた。
海岸は既に蟹の死体で埋め尽くされている。
「これで何体目ニャ?」
「知らん。」
ムサシの問いにカインが適当に答える。いい加減面倒になって来たのだろう。
残り一匹になった蟹は、既にボロボロで黒ずんだ泡を吹いている。
蟹はグッと足を縮め、次の瞬間空に舞い上がった。
そして、重力に任せて落下してくる。が、その体を矢が貫いた。
ダメージを受けすぎた巨体が、落下の衝撃に耐え切れずバラバラに砕け散った。
「何ニャ!?」
振り返るとティガアローを構えたルディが居た。
「ハァ、ハァ、フゥー・・・ゲドさんが、デザートがって・・・。」
イキナリ現れて訳の判らない事を言うルディ。
「ゲドに何かあったn、ニャあぁぁぁぁあ!!?」
またしても地面から大名ザザミが現れた。言葉の途中で三度宙を舞うムサシ、三度目の落下で遂に鍋の中身を溢してしまった。
「ゲドに何かあったんだな?どれ・・・」
ムサシの代わりにカインが言う。そして千里眼の薬を飲み干した。
「クシャルダオラ・・か?ゲドの所へ行くぞ、嬢ちゃん、ムサシ。」
「ニャあはコイツを叩き潰してから行くニャ。」
鍋の中身をブチマケタことが余程頭にきたのか、ムサシの全身の毛が逆立っている。
「じゃ行くか嬢ちゃん。ムサシ、後処理は頼むぞ。」
そう言ってカインとルディは洞窟の中へ駆けて行った。
ムサシが鍋を構えた時蟹は二匹に増えていた。
「・・・何匹来ようが全員今日の晩飯にしてやるニャァァァ!!!」
ムサシはそう叫びながら大きく黒鍋を振りかぶった。
それを振り下ろすと共に甲殻が砕け中身が飛び散る。一撃で頭部の半分を失い動かなくなる大名ザザミ。
残りの一匹が一角竜のヤドを此方に向け突っ込んでくる。
ムサシは避けもせず叩き潰した。ヤドを砕かれジタバタとモガク蟹に更に追撃を叩き込み、原型が無くなるまで叩きまくった。
結果、グチャグチャになった何かが残った。
「・・・やりすぎたかnニャアアアァァァァア!!?」
自分の鬼畜っぷりに反省の言葉を述べようとしたムサシだったが、新たに現れた蟹に吹き飛ばされた。
「や、やっぱり全部打っ殺すニャァァ!!」
落下しながら叫ぶムサシ、大名ザザミの駆逐にはマダマダ掛りそうだった。

後の祭り

洞窟の中に駆け込んできたカイン達の目に、対峙するゲドとクシャルダオラが映る。
ゲドが双剣の構えを解くと、クシャルダオラは小さく呻き声をあげた後その場に崩れ落ちた。
何を思ったかゲドは、既に息絶えたクシャルダオラに封龍剣を突き刺した。
突き刺した封龍剣は、生き物の様に脈を打っている。まるで龍の血を、否、魂その物を吸っている様だった。
その異様な光景を見てルディは太古の力の秘密とは何なのかを、少し理解した様な気がした。
「ゲドさん?」
恐る恐る声を掛けるルディ。
不意に声を掛けられ、バッと振り返るゲド。
ルディと眼が合った男は何時もの『ゲド』の顔では無かった。
ヘルムから僅かに見える瞳は、狂喜に満ちていた。命を刈り取る事を心から楽しむ様な瞳…。
「…ゃん、嬢ちゃん?」
呼び掛けでハッと我に返るルディ、気付けばゲドの顔がすぐ目の前にあった。
「は、ハヒッ!?」
ルディの声がひっくり返る、ゲドの顔は既に元通りだった。
「どうかしたのかな?ボーッとしてたけど?」
ゲドに言われて顔が赤くなるルディ。
「い、い、いえ、何でもないです。」
慌てるルディ。
先程の事は、異様な光景が見せた幻覚だったのだろう。ルディはそう思う事にした。
その表情は少女には、余りにも恐ろしかったから…。
「…しかし、なんであんな事を?」
カインが刺さったままの封龍剣を指差して言う。
「ん~…、なんか血を浴びた方が喜ぶんだよね。」
「…封龍剣がか?」
「そう。」
ゲドの言葉に首を傾げたまま固まる2人。剣が喜ぶなんて事があるのだろうか?
「そんな事よりムサシは?早く料理して欲しいんだけどな。」
ゲドの言葉で忘れていた事を思い出す2人、ムサシをほったらかしだった。
「…とりあえず迎えにいくか。」
「そうですね。」
また蟹と戦うのかと思い、ウンザリするルディとカインだった。

夜祭り

ムサシを手伝いに行った一同、結局蟹を倒しきるのに数十分を要した。
そして洞窟の中、無数の猫達の中に人影が3つ、大鍋を振るう猫の影が1つ、洞窟の中は正にお祭り騒ぎだった。
次々に急拵えの食卓に蟹料理が運ばれてくる。
洞窟には相当なアイルー、メラルーが集結している訳だがその数を遥かに上回る程の蟹が居るのだ。
いくら食べてもなくなりはしない。
「…もうお腹一杯です。後何体残ってるんですか?」
「知らん。」
お腹一杯で動けないルディの問いにカインが適当に答える。
「…しかし、あのガキはよく食べるな。」
カインはそれを見てるだけで食欲がなくなる、といった顔をしている。
その視線の先には食事をするゲドと猫sが居るのだが、ゲドと猫達の食べている量が同じなのだ。
「ムサシ~、お代わりはまだかい?」
まだ全然食い足りない、そんな感じでゲドが言う。
「何時まで食べるんですかね?」
「知らん。」
ルディの問いに又してもカインが適当に答える。
数十分後…
流石の猫sも限界らしく、皆倒れ込んでいる。蟹は三分の一位に減っていた。
「ムサシ~、お代わりは?」
…この人間の胃袋は強力な酸でも入っているのでは?
そう思う、ルディだった。
「ここでメインディッシュニャ。」
そう言ってムサシが皿に半分程度の料理を運んで来た。
「クシャルダオラだね?でも少なくないかい?」
量に納得のいかないゲド。
「オッサンが余り食べるニャと言ってたニャ。第一、人体に害があるかもしれんしニャ。」
さらりと怖い事を言うムサシ。
「じゃ、イタダキマス♪」
ムサシの話を無視して、料理を口に運ぶゲド。
皿の料理を残さず平らげたゲド、その表情が何時もの狂喜の色ではなく恍惚に染まる。
「御馳走様でした。」
何時もの様に食事を終えるゲド。しかしその顔はとても満足そうだった。
密林の宴、卓上に運ばれた料理は正に最高の一品だった。
だが男の欲望全てが満たされた訳では無いだろう。
食欲とは即ち、生きる上で決して尽きることの無い欲望。
男が生きている限り、食を求める事を止めないだろう。
「さて、次は何を食べようか?」
欲望は決してなくなりはしない。

見なくてもいいお知らせ

皆様コンニチワ~(?)
へたれ作者です(汗)
流れ的に次の話から第二部となります
と言いましても大きな変化がある訳ではありません
スレは新スレに移動します
ただ文才のなさ故、話がグダグダなので此処で一区切りと言うことでお知らせした次第です
見てくれている皆様、もう少し上手く書ける様に努力しますので今後も読んで頂けると大変嬉しいです。
以上お知らせでした(謝)

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最終更新:2013年02月21日 23:27
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