……
「おぉ…寝てるな…」
ここはジャンボ村周辺の密林地帯、ハンターが狩りを行う場所だ…
グォ~ググゥ……
「なんだか躊躇ってしまう…けど、殺るしかない……」
一人の大剣を背負った青年が何かを見つめていた
それは怪鳥イャンクックと言われるモンスターで主に密林に生息している
「さっきの攻撃で随分苦しんだだろう?…安らかに天国に行ってくれ…」
グォォォ…
青年は大剣に力を溜め始めた…
ズドォォォン!!!
地面に大きな衝撃が走り、砂埃が舞い上がる…
「さようなら…」
砂埃の中に立っていたのは青年だけだった
地面に横たわるイャンクックの顔は原型を留めてはおらず、見れるものではない
青年はイャンクックから使える素材を剥ぎ取り、その場を後にした…
ベースキャンプに戻る道を歩きながら青年は何かを考える…
(ハンターになって一ヶ月と少し…今は鳥竜種も討伐出来るようになって村のみんなからも頼りにされ始めて来た…これからが本番だな…)
これからの事を考えているうちにベースキャンプに到着した青年は後片付けをし、村へと帰って行った…
「すっかり、夜遅くなってしまったな~…みんな寝てるかな?」
青年は狩りから戻り、村の入口のすぐそこに来ていた
相当疲れているのだろう…疲れで足元がもたついて今にも倒れそうになっている…
「くぅ…まさかこんなに疲れるなんて…」
青年は連日狩りに繰り出していた為、疲れが溜まるのは当然だ…
「後、少し……少……し…」
意識を失ったのだろう…青年は地面に崩れ落ちそうになった
その時だ
「よっと!!」
背中に大きな鞄らしき物をぶら下げた男が青年をそっと抱き抱える…
「ご苦労様…」
抱いている青年の顔を見ながら男は話し掛ける
「こんなになるまで頑張ってくれるなんて…今日はゆっくり休むんだよ…」
まるで、自分の子供を諭すような口調で語り掛けた後、男は青年を村の中に運んで行った…
「ようこそヴェイル村へ!」
明るく陽気な声が耳に届く…
「君がここに滞在してくれる新しいハンターだね!俺はここの村長をしている者だよ!早速だけど君の名前を教えてくれないかい?」
自分をここの村長と名乗る男の質問に新米ハンターらしき青年は少し緊張しながら口を開く…
「俺は……」
……
「夢…か……」
どうやら青年は夢を見ていたらしい…その夢はここに来た時の事なのだろうか?
目覚めてすぐに青年はベット横の窓から景色を眺めた
「あの時は緊張したよな…初めて竜人族の人を見て、大丈夫かな…と思っていた…でも、よそ者の俺を大事な家族のように迎えてくれた事が……何よりも嬉しかった…」
窓を眺める青年はどこか嬉しい顔をしている…
(俺には四歳から家族がいない…家族の暖かさを忘れていた…でも、それをここに来て思い出す事が出来た…だから俺は恩を返さないと行けない…)
心の中でそう呟くと青年はベットから起き、狩りの仕度を始めた…
まず、始めに部屋の隅に立て掛けてある大剣アイアンソードを手に取る…だが、その剣の能力は極めて低くとてもじゃないが、鳥竜種や
飛竜種相手の狩りには使えそうではない…いや、使える訳がない…
そんな剣を見ながら青年は呟いた
「俺が初めて買った武器…それがお前…今はもう使えないけど…」
隅に立て掛けてあるアイアンソードを見る青年の姿からは悲しさが見受けられる…
そんな時にどこからか声が聞こえた
「そんな事はないよ」
声に驚いた青年はその声が聞こえたほうを凝視する
「工房のお爺さん…」
青年は俯きながら声の主の話しを聞く…
「マカライト鉱石があれば切れ味と攻撃力を強化でき、ドラグライトがあればさらに強化出来る…さらに紅蓮石と火炎袋があれば火属性、電気袋があれば雷属性、と様々な能力を付加出来る…もちろん、形状を変えずに…」
アイアンソードを強化できると話すその老人はただ者ではない…普通、武器を強化すると言う事はその武器をベースに改造して新たな武器に変える…そしてその元の武器は形を変える…が、武器の形状を変えないで強化すると武器に負担が掛かり、ベースの武器が破損してしまう事があるからだ…だから、ハンター達は愛着がある下級武器をそのままにする事もあるくらいだ…
「そんな事出来るんですか?」
半信半疑な態度を表わにして青年は質問する…
「ワシは伝説とまで言われた職人…そのワシが言うことに嘘はない…」
青年はこの言葉に希望を覚えた…
「もし、俺がアイアンソードに追加出来る素材を集めて来たら…」
青年がそう言うとお爺さんはニコッと笑った
「フフ…もちろん、形状を変えずに強化して上げるよ…強化費用は掛かるけどね」
「ありがとうございます」
青年はお爺さんに向かって頭を下げた
それは当然な事…普通では不可能な事をやってくれるのだから…
「な~に、礼など要らぬよ…家族の為じゃからの~本当は無料でやりたいのだが、経費を賄うだけの金がない……すまない…」
それは村の経済が潤っていない証拠だ…早く立て直さないと村は維持出来なくなる…
「いえ…私の力不足です…私がもっと沢山のモンスターを討伐出来れば…」
青年は自分に実力の無さを感じているようだ…
「君はハンターを始めてまだ日も浅いのにもう鳥竜種を狩っている…かなりのハンターとしてのセンスを持った人間だよ…だから、大丈夫…でも、焦っては駄目…焦りは身を滅ぼす…私はそんな人間達を沢山見て来た…だから、君にはそうなって欲しくない…」
「お爺さん……」
自分を心から心配してくれる…その気持ちに青年は感謝しても仕切れないだろう…それが彼の強さであり、弱さでもある…
誰かの為に戦う…それは何かを守る為…この思いは強靭な信念を作り出し、強大な敵にも立ち向かう力になる…
だが、そこに焦りが生まれ、心を乱すと…それは弱さに変わる…それにより命を落とす者もいる…
この力を強さに変えるか弱さに変えるかは青年次第だ……
「だから、無理だけはしない…約束してくれ…」
お爺さんは青年に問う
「わかりました」
少し、浮かない顔で答える青年にお爺さんは
「まだ、疲れたが溜まっているみたいだね…今日は狩りに行くのはやめてゆっくりしなさい…無理し過ぎると命を落とすだけだよ…」
自分の事を気遣うお爺さんに心配を掛けられないと思った青年は…
「今日は休みます」
そう告げるとお爺さんは安心したのだろう…笑みを浮かべながら青年の部屋を後にした…
「今日は武器の手入れだな~と」
心配してくれる人がいる…それが嬉しかったのだろう…青年の顔は知らないうちに笑顔になっていた
「…そういえば俺、村の手前で気を失ったんだよな?じゃあ、なんで自分の部屋にいるんだ?」
青年が疑問に思うと窓からいきなり声が聞こえて来た…
「それは俺が君を運んだからだよ!」
突然の大きな声に青年は腰を抜かした
「ちょ、脅かさないで下さいよ村長~!!」
若々しい容姿に陽気な態度…本当に村長かと思うような男が窓を開け、顔を出している…
「ハハハ!いや~悪かったね~脅かすつもりはなかったんだよ~」
飄々としている態度に青年は
「はぁ…あなたって言う人は…」
疲れ果てたような感じで青年は立ち上がる…
そんな青年に村長はこう言い出した
「無茶だけはするなよ…君の代わりなんてどこにもいないんだから…」
心配そうな顔で青年を見る村長の顔付きはまるで本当の親のようだ…