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Sailingday

プロローグ

ーー燃え盛る村々、逃げ纏う人々…これは決して消えない地獄の風景。決して消えない罪悪の過去…そうこれは消せない罪ーー
 深淵の闇、この何もない暗闇の世界を一人の男が歩いていた。男がしばらく歩いていると暗闇の世界の奥に一人の少女が立っていた。17歳くらいであろうか…少し茶色がかかった黒髪を三つ編みに結っているかわいらしい少女であった。男はこの少女に見覚えがあった。あの燃え盛る村で死なせてしまった大切な人…、その背中にとてもそっくりだった。「ルナ…?」男は少女の名前を呼ぶ。名前を呼ばれた少女はゆっくりと男の方を振り向いたがそこにあった姿は「ルナ」という少女ではなく一人の覆面の男、そして覆面の男の横に倒れる少女「ルナ」の姿だった。目の前に広がっていた世界も虚無の暗闇ではなく燃え盛る村々、まさしく「あの日」に見た地獄のような世界だった。覆面の男は男に向き直ると冷たい声で男にこう言った。「ラグレス…哀れなギルドナイトよ…お前が任務を果たせば村は無事だったものを…。お前が少女を殺した、お前が村を燃やした。お前はギルドナイトだ。お前の使命は与えられた任務をこなすのみ…。それがお前の生きる道…お前は村人へはなれない。」
 ラグレスと呼ばれた男は横たわる少女を見て黙って聞いていた。覆面の男に反論などできなかった…。
ーー決して許されないのはわかっている。だがもしも願いが叶うならもう一度君とーー
プロローグ

1章[ロストマン]

ーー食物連鎖それは自然の摂理…。強者が弱者を食らう世界。今日も風にゆられて木々は歌う…それは弱者に捧げる鎮魂歌(レクイエム)ーー
第一章[ロストマン]
「……かげん…きろ!…ロス!…。」燃え盛る村…横たわる大切な人…、眼前に広がる地獄のような世界よりもっと遠い遠い世界からやかましい男の声が聞こえた。
「…つまで…てるつもりだ!?」
 だんだんと声が近くなる。
「…かたない、…々勿体ないが……、こいつでどうだ!?。」
 シューッという空気の漏れる音、それは時間と共にバァーンという轟音を立てる。
「ウワッ!!」
「おっ、起きたかラグレス?」
「起きたかじゃねえよビート!!一体何しやがったんだ!?」
 ビート、と呼ばれた男はラグレスを見ると 「いや~、あんまり起きないんでな!試しに小タル爆弾を起爆してみた。」 淡々と言うビートに対してラグレスはため息まじりの声で 「冷静に言うなよ!全く…無茶苦茶しやがる。」と言った。その表情はさながら呆れているようにも見えた。
 この森と丘はまわりの環境がいいこともあり、多くの動植物が存在している。
 主に 温厚な草食モンスター「アプトノス」、群れをなして対象を仕留めるトサカが印象的な肉食モンスター「ランポス」そしてそのランポスを統べる「ドスランポス」、 さらに駆け出しのハンターが一番最初に戦うことになる飛竜種である「怪鳥イャンクック」などの存在も確認されている。
 だからそれだけ食物連鎖も激しい。
 草食竜のアプトノスの死体が転がっていることなどしょっちゅうの事である。
「食うか食われるか…」
 この穏やかな自然の世界の裏に存在している暗黙のルールである。
 そしてその森と丘の食物連鎖の王に君臨しているのがそこらのハンターの間で有名な飛竜「リオレウス」。今回ラグレスとビート、二人のハンターが討伐しに来た相手でもある。
ラグレスは寝起きの体をほぐすため大きく背伸びをするとビートに向き直る。その表情は冷たく、先ほどビートに対して呆れた青年の顔を微塵にも感じさせない顔だった。
「見回りごくろうだったなビート!、せっかく起こしてもらって悪いんだがすぐに報告頼めるか?」
 そういった彼の声はいつもどおり明るいものだったがやはりその表情は冷たく暗い雰囲気を出しており、ビートを見据える目も鋭かった。微弱ながら殺気も感じられる気がする。
 しかし狩りの前にする作戦の相談の時や狩りの最中ラグレスはいつもこんな雰囲気だった。
だが、それはハンターズギルドの「影」の存在とも言えるギルドナイトに所属していた彼にとってそれが任務(クエスト)、そして実戦に臨む空気なのかもしれない。
そんなラグレスを気にもせずビートは話を始めた。
なぜなら彼はラグレスと組んで4年になるし、何よりほんの少しではあるがギルドナイト時代のラグレスを知っているからでもある。
「お前が寝てる間に《エリア3》まで見て来たがそこには食い散らかされたアプトノスの死体があった。それも腹部をガバッと一気に抉り取られていたからまずリオレウスの仕業とみて間違いないだろう。」
それを聞いたラグレスは考え込む仕草をしていたが内心はわずかだが苛立ちと焦りが募っていた。
先ほどビートが言っていた 《エリア3》とは《エリア4》と呼ばれる飛竜の巣へつながる道と《エリア10、9》といった森の中へつながる道へと別れている。《エリア3》で食い散らかされたアプトノスが見つかりそれがリオレウスの仕業だとすれば今言ったエリアへと移動したのはまず必然である。
丘である《エリア4》ならば戦いやすく好条件なのだが問題は森の方だった。
なぜならば森の中は草木が生い茂っており視界が悪いなかランポスなどの肉食動物が群れで襲って来る。そこでの飛竜討伐はかなり難しい。
そして一番の問題はまっすぐな小道が続く《エリア9》だった。
《エリア9》は小さいが円状の広場のような場所もある。だが不幸な事に小道の方の幅は狭く、だいたいリオレウスと同じくらいの幅である。
つまり《エリア9》でとる戦法は先ほど言った広場へおびきだしそこで戦うという限られた方法しかない。
「…やはりこれしかないかな…。」
ラグレスは独り言のようにつぶやくと脇にいるビートへと向き直った。
「…確認しておくが先ほどのお前の口振りだと多分リオレウスはもうどこかに移動したよな?」
ラグレスの言葉にビートは頷く。
「あぁ!死体の肉の状態を見ても腐ってはいなかった。何よりまだ新しかったから移動したばかりだろうぜ。」
「…わかった。それだけ確認できれば充分だ!」
「それしかないか…。」、
「それだけ確認できれば充分だ!。」
ビートは先ほどのラグレスの言葉に何か案がうかんだのだろうと考えた。
そして例えそれが妙案であろうとなかろうと 何かしらは期待できる!。ビートはそう思った。
そうこう考えているうちにラグレスが口を開いた。
「いいか…。もしも奴が狭い森の方…つまり《エリア9》にいたらペイント(マーキング)をして俺たちは一旦丘に移動して奴が来るのを待とう。」
その言葉にビートの表情が曇った。
「それはつまり《エリア9》にいた場合戦わず逃げるということなのか?」
苛立ちを交じえた声でビートは再度確認をする。
「そのとおり、《エリア9》では戦わない。あそこはリオレウスと戦うには危険すぎる場所だからな。」
苛立った表情のビートをよそに何食わぬ顔でラグレスは言った。
先ほどの説明どおり《エリア9》は狭い…。そんな場所でも確かに円状の広場におびき寄せるという戦法はとれるのかもしれない。
しかし相手がリオレウスともなるとおびき寄せるのにもかなりリスクは大きくなる。
例えば小道でリオレウスが突進してきたとしよう。
そうなれば追われたハンターは必死に広場へ走る。 この方法は確かにうまく行きそうではあるが広場への距離が長い場合は圧倒的に歩幅の長いリオレウスが有利になる。
そして本当に怖いのはリオレウスご自慢の火球である。
その理由はこの狭い小道では「火球を避ける術がない」。つまりおびき寄せようと近付いたときにいきなり火球を吐かれたらその瞬間黒コゲになるかウルトラ上手に焼けてこんがりハンターGになってしまう。
ラグレスの考えはそれを見越してのことだった。
ーーいかに不利とはいえ相手を前にして逃げ出すのかよ…。ふざけやがってーー。
ラグレスの考えを聞いたビートの感想はこうだった。
彼、ビートはラグレスと組む以前からハンターをやっておりラグレスよりハンター歴は長い。
そんなビートがハンターズギルドへ登録したのはラグレスと一緒、つまり最近のことである。
それ以前の彼はある村でハンターをしていた。
その村は人の目が届かぬ森の奥にひっそりと存在し、地図には載っていない特別な村だった。
村の名は「リオール」かつて少女ルナが住んでいた村であり、ラグレスの血塗られた記憶に出て来た「あの村」…。ビートはその村で唯一のハンターだった。
だが、ビートがラグレスに怒りを表しこんな風に不満を漏らしているのは何もラグレスへの恨みからではない。
そもそも仮にラグレスを憎んでいるのであればもっと高圧的で皮肉な態度をとるであろうし最初から彼の相棒にもならないだろう。
ビートが怒る理由ーーそれはラグレスの慎重過ぎる態度にあった。
先ほども言ったとおり、ビートは昔、リオール村で唯一のハンターだ。
だからそれ相応の経験も実力も兼ね備えているしラグレスもそんなビートをよく知っている。
それに彼はその昔に村の近くを荒らしていたリオレウスの雌に当たる陸の女王リオレイアを大剣を用いて1人で討伐した猛者でもある。
今でこそ大剣のラグレスを支援するため剣士からガンナーへと転向したが、ラグレスと組んでからは昔に村で剣士をしていた時より遥かに狩りの効率はよくなった。
ーー俺達が組めばどんな難関も超えられる!。ーー
口には出さないがラグレスと狩りを重ねていくうちにビートは次第にそう思うようになって来た。
だからこそ不満だった。ついにはその不満を抑え切れずビートはラグレスへ反論する。
「悪いが反対だ!俺達なら多少の不利なんて平気だろ!?。なのにどうしてむざむざと逃げる必要があるんだよ!?。」
苛立たせたその目は「俺達の腕を信じられないのか?」といいたげな目だ。
「…違うな。」
ラグレスはビートと視線を合わせる。
今宵の空に輝いているのは蒼色の大きな月。
その月の光をバックにラグレスは静かに口を開く。
「退く事は逃げる事じゃない…。」
「ましてや負ける事でもない…。」
夜空に輝く蒼い月光を浴びながらラグレスは続けた。
その言葉にビートは反論出来なかった。…いや、「出来る術をもたなかった」というのが正しい。
冷静に判断すればラグレスの言葉は的を射ているのだから。
「はいはい…。わかったよ。ったく…。」
ビートはそう言いながらも機嫌の悪い顔を崩さなかった。だがそれは彼なりの納得の仕方なのかもしれない。せっせと立ち上がると自らのポーチと武器のチェックを入念に始めた。
ラグレスもビートと同じく武器とポーチを確かめる。
二人ともぬかりないように街でしっかりと準備してきたが万一ということがある。
戦いの最中に飛竜の目の前で「何か忘れました」では話にならないのだ。
「俺の方は大丈夫だ…。お前は?」
ラグレスの問いにビートは「大丈夫だ!」と答える。
どうやら二人とも問題はないようである。
ラグレスは立ち上がり背中に武器を背負うとビートを見る。
「じゃあ行くか!」
「だな!。ちゃっちゃか終わらすぞ!?」
ラグレスにそう返すとビートも立ち上がる。
その後簡単に先ほどの場所の件について確認し二人はキャンプの出口へ歩き出した。
ーークエスト開始。ーー
夜にもかかわらず森と丘はおだやか雰囲気をしていた。
先ほどベースキャンプを照らしていた月明りはもちろん空一面に広がる星の海が地面を照らし幻想的な風景が辺りを支配している。
しかしそんな風景に見とれることなくラグレスとビートは辺りを警戒しながら進んでいる。
多くの生物が巣で眠りにつく夜といっても決して安心は出来ない。中でもズル賢い小型の肉食獣「ランポス」は明るい時間帯の朝昼にも頻繁に確認できるが、夜の闇にまぎれて草陰から群れで襲いかかるというケースがないわけではない。
下手をすれば夜の狩りは明るい時間帯より集中力、そして警戒心がもとめられるのだ。
だが二人はあえてリスクの大きいこの〔夜の狩り〕を選んだ。 それは何も力試しの類などではなく相手同様こちらも身を隠しやすいという理由からだ。 それにもしも仮に狩りの対象が眠っていれば寝込みを襲うことも可能になる。 奇襲をかけられやすいが同時に奇襲にはもってこい…。〔リスク〕の中にこそ〔チャンス〕はある。 夜に行う狩りはその言葉が体言するにぴったりなものであった。 二人はそのまま警戒しつつ進む。
ここを抜ければ森と丘の中継点ともいえる〈エリア3〉まではもうすぐである。
〈エリア3〉はリオレウスのテリトリーでもあるがそれを抜けば昼夜とも比較的安全な場所なのでクエスト行うハンター達にとっては別の意味でも中継点といえるだろう。
二人は順調に進みエリア2の出口に差し掛かった。
しかし次の瞬間何故かラグレスが横へと転がった。
地面を転がったラグレスは体勢を立て直し立ち上がる。
そしてすぐさま先ほどまで自分が立っていた場所を見渡すと そこにいたのはラグレスに奇襲をかけてきた「何者か」の正体であろう小型の肉食獣「ランポス」の姿があった。
ランポスに気づいた彼はすぐさま距離をとるべく後ろに下がる。
先ほどの転がった行動は回避行動によるもののようでランポスの奇襲は失敗し、ラグレス自身に目立つ傷はない、というより全くの無傷だった。
「ちっ…!平気かラグレス!?」
ランポスの攻撃をかわしたラグレスを見たビートはそう叫びながら背中に背負ったライトボウガン《ショットボウガン紅》で迎撃するべくボウガンに手を掛け同時にポーチからボウガン用の汎用弾である《通常弾》をとりだす。
この《通常弾》は飛竜戦では目立つ活躍こそしないがそれ以外の戦闘、つまりこのように肉食獣などに襲われる状況などでは強力な《拡散弾》など他の弾を温存できるので汎用性が高くクエスト中はとても重宝する弾である。
弾が込められたマガジンをボウガンにはめ、装填する。
ランポスは未だにラグレスの方に気をとられビートには目もくれない様子だった。
マガジンに込められる《通常弾》の数は゛6発゛。
先ほども言ったとおりこの《通常弾》は汎用弾だけありとても威力が低い。
たとえ1発2発当てたところでランポスの命には届きはしないし気を引く程度にしかならないだろう。
もしも本気で1匹のランポスを狩るとなれば必要となる《通常弾》の数はだいたい「6発」。
わかりやすく説明すればビートのボウガンに込めた弾を全弾撃ち込むことで初めてランポスの命に届くことになる。
彼はボウガンの引金(トリガー)に指を掛けるとランポスに対し慎重に狙いを定めた。
「…ありったけくれてやる!」
そんな悪態をつきながら…。
ビートが攻撃をしてくると感じたのかランポスは鳥竜種の特徴でもある高い俊敏性を活かし、ところせましとピョコピョコ跳ね回っていた。
ビートはその軌道を慎重に読み、ボウガンを構えると引金に掛ける指に力を込めた。
ーーそこだ!
彼は不敵な顔で愛銃の引金を引く。
放たれた〈通常弾〉は火薬の炸裂で勢いよく 飛び出すとランポスの背中に当たった。痛みに体をのけ反らすランポス…。
しかし放たれた〈通常弾〉はランポスの体の鱗により体内への侵入を阻まれその傷は浅い。 のけ反った隙をつき、すかさず2発めを放つが不幸なことに外してしまう。
ーー残り4発
体勢を立て直したランポスは自らに攻撃を加えた張本人であるビートを睨みつけながら怒り狂った声で彼を威嚇した。
ーービシッ、ビシッビシッ!!ーー
突如辺りに響きわたる音…。
ビートがランポスの威嚇に対し弾丸をもって「返礼」したのだ。
「…ったく!。調子乗んなよ!トカゲ野郎が!!」
彼は悪態をつく。ビートが 先ほど放った【返礼の弾丸】はランポスの眼を潰し、皮を貫きランポスはその激痛に身をよじらせていた。
無論彼がその隙を逃すはずがない。
彼は弾の切れた〈通常弾〉の弾倉を外し、新たな〈通常弾〉の弾倉をボウガンに込めると狙いをつけ、引金(トリガー)を引いた。
【1発、2発、3発、4発、5発、6発】
弾倉に入れてある弾を全て撃ち込んでやった。
ボウガンの弾切れとランポスの絶命のどちらが早かったのかは定かではない。

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最終更新:2013年02月19日 02:19
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