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 八重洲。赤レンガ造りの外観で有名な東京駅のある、東京都でも有数のオフィス街である。  陽の落ち切った街は高層ビル群の窓から漏れる部屋の灯や整然と並び立つ街灯によって煌々と照らされている。  そんなビル街の中でも一際高いビルの屋上に立つ影が一つ。  赤と青で彩色され、蜘蛛の巣の衣装がほどこされた全身スーツに身を包んだ青年。  聖杯戦争に参加する事となったマスターの一人だ。 「うん、今日も異常なしか。本当に戦争が起きてるのか疑わしいくらいだね」  マスターである青年、ピーター・パーカーは眼下に広がる街を見下ろしながらホッと一息をついた。聖杯戦争のマスターとして気付けばこの地にいた彼は聖杯戦争のルールを聞いてすぐに行動を起こした。普段の彼となんら変わらない行動、つまり街で悪さをしている参加者<ヴィラン>がいないか探して回る自警活動だ。  夜な夜なスーツを着込んではエリアを決めて夜の街や怪しそうな場所に異常がないか見回りをし、もし異常を見つければ真っ先にこれを対処する。それは平時であれば褒められた行為であるだろう。だが、聖杯戦争においては敵対者に彼らの存在を認知されやすいというリスクの高い行為だ。特にキャスタークラスの工房にでも迂闊に迷い込んでしまえば目も当てられないだろう。  聖杯戦争というものを理解しているサーヴァントであれば難色を示すかあるいは制止する者もいるだろう。だが幸か不幸か、彼の元に召喚されたサーヴァントはそういった類の者ではなく、寧ろ勧んで彼の方針に賛成の意思を見せた、言ってしまえば善性かつお人好しと呼んで過言ではない人種であった。 「レイ、君の方でも反応はない?」 「うん、こっちでもサーヴァントの気配は感じないよ。マスター」  ピーターの呼びかけを受け、彼の背後から制服に似た衣装の衣服に身を包んだ少女・レイが姿を現す。  見た目からすれば十代半ばのあどけない少女である。が、その年頃の少女にしては不釣り合いな刀剣を手にしていた。得物から判断をするのであればセイバーのサーヴァントだろうか。 「今日はこの変で切り上げようか。平和なようで何よりだけどちょっと拍子抜けって感じかな」  一仕事を終えビルの縁に腰をかけたピーターの横にちょこんとレイが座り込む。  その瞳は遥か眼下で行われている人の営みを興味深そうに眺めている。 「人の暮らしを見るのって楽しい?」 「うん!私達はこうやってたくさんの人が生活している光景っていうのはアーカイブで見る事しか出来なかったから」  興奮の混じった笑顔で答えるレイに対し、ピーターはどう反応すべきか戸惑いを見せる。  レイが彼の知る世界とは異なる世界の存在であることは本人の口から知らされていた。曰く、人の戦争が激化し、行きついた果てに人は全て滅び、残された機械と人工知能が人から受けた指令を実行し続け数百年に及ぶ戦争を繰り広げ続けていた世界。その中で生を受けた人間がレイだったという。だからこそ、この聖杯戦争の至る所で行われている人の営みが彼女にとっては何もかも新鮮であった。例えそれが模倣であったとしてもここまで大規模かつリアルなものを彼女は目の当たりにすることは無かったのだ。  異なる世界、俄かには信じられない話ではあるがピーターは身を持って経験した人間であった。だからこそすんなりと信じることが出来た。  夜風が二人の頬を撫ぜる。 「ねえ、マスター」 「何?」 「本当にマスターは、叶えたい願いはないの?」  その質問にピーターの動きが僅かに停止する。  ピーターは彼女に対し、自身に聖杯にかける願いはなく、自分と同じように聖杯戦争に巻き込まれた人を助け、また悪用しようとしている参加者を止めたいと伝えていた。レイも同様に聖杯にかける程の願いはなかった為、その方針を了承したという背景がある。  その上で、レイは本当に聖杯にかける願いはないのかとピーターに問う。だがそこに猜疑や糾弾、詰問といった意図は感じられない。「本当にいいのか」と言いたげ視線をレイはピーターに向けている。  ピーターは俯くように眼下の街を、ビルの谷間の暗闇を凝視するように硬直し、そしてレイへと向き直った。 「あー、どうしてそう思ったのか聞いても?」 「その、私の気のせいだったらいいんだけど、たまにマスターが難しい顔をしている時があったから」 「そう?多分、見間違いじゃないかな?」  おどけて誤魔化す様に明るいトーンでピーターは答える。だが、レイを誤魔化すことは出来なかった。心配そうな表情で自身を覗き込む視線に対して、ピーターは気まずそうに視線を逸らす。  しばしの沈黙の後に、観念した様に大きく息を吐き肩を落とした。 「……僕は何度も失敗をした、取返しのつかない失敗だ。やり直したいことなんていくらでもある」 「じゃあ……」 「でも出来ない。それをしたら僕はあの人達を裏切ることになる。だから僕はそれだけは出来ない。あの時、大切な人の仇をそれでも助けた。そう決断した僕が今更この聖杯戦争に勝ち残るなんて方法で願いを叶える訳にはいかない」  悲痛の混じった告白が吐き出される。ギュッとスーツの軋む音を響かせながらピーターは手を握り込む。苦しみと決意を湛えていた表情はマスクに隠れて誰にも伺い知ることは出来ないだろう。  レイはそんなマスターの決意に対し、何も言う事は出来ない。レイはピーターの背景を何も知らない。だが彼の、レイと数年しか年の違わない青年がその道行の中でどれだけ過酷な運命を背負って来たのかだけは断片的に理解することが出来た。 「だから、いいんだ。本当に。僕はこの聖杯戦争で叶えていい願いは持っていない。僕がここですべきことはそんなことじゃない。分かってくれるかい?」 「……うん」 「なら良かった」  レイの返答を聞いたピーターはビルの縁から立ち上がる。ここでの会話はもう終わり、ということにしたいのだろう。先ほどまでの辛気臭い空気を振り払う様に大きく伸びをする。わざとらしい声が漏れた。 「さあ、明日のこともあるしそろそろ帰ろうか。ニューヨークとまではいかなくてもこっちも夜は冷えるみたいだしね。早めにベッドに潜ってぐっすり眠りたいよ」 「……マスター!」  一人帰ろうと背を向けたピーターに声がかけられる。振り向いたピーターに何か軽い物がぶつかる衝撃、そしてその身体を抱きしめられる暖かな感触。  ピーターに駆け寄ったレイが、そのまま彼を優しく抱きしめていた。  突然の少女からのハグにピーターの思考が一瞬停止する。 「へ?ホワッツ!?なに?どうしたの!?」 「こういう時はね、『ギュッ』ってするって私は知ってるよ」 「こ、こういう時って……」 「ありがとう。本当の気持ちを話してくれて」 「……」  目じりに微かに涙を浮かべ、礼を言う少女に対して、ピーターは言葉を返せなくなる。 「マスターの想い、それでもマスターのしたい事、しなきゃいけない事。想いと一緒にちゃんと伝わったから。それが、マスターの絆なんだね?」 「絆、か」  レイの言葉に、ピーターの脳裏にこれまで出会って来た様々な人が脳裏を過る。  英雄が、戦友が、家族が、友人が、恋人が、異なる世界で同様にヒーローとして在った親愛なる隣人が、その全ての出会いと別れが今の彼の在り方を形作っている。  これまでの自分がしてきた事、選んだ選択肢には後悔も未練もある。それでも、今自分がした選択には後悔も未練もない。 「うん、これが僕の絆だよ」  誇らしげに、独りのヒーローは呟いた。 ◇  元の世界の僕があんな状況に陥ってしまったのは、全て僕自身のせいだ。  無知な僕が軽率に彼に頼って、魔術を行使している彼に何度も無茶な注文をつけて失敗させて、そうして世界に一つの混乱が起きた。  その結果、何が起きたかったって?  叔母さんが死んだ。とても素晴らしい人であり、何よりも大事な家族だった。僕がやらかさなければ叔母さんを殺した奴は僕達の世界に来なかった。あんな事件に巻き込まれて死んでいい人じゃなかったのに。  僕を知る人達全ての記憶の中から、僕に関する記憶が消滅した。僕の正体を知って人殺しと罵っていた人達も、共に宇宙からやってきた悪党と戦った仲間も、僕をサポートしてくれた頼れる友人も、僕の親友も、僕が愛した人も、もう、誰一人として僕のことを覚えていない。  寂しくないのかって? そりゃ勿論寂しいさ。もし叶うのなら彼らに僕のことを思い出して欲しい。おっと、でも僕を人殺しって誹謗中傷する人の記憶は戻って欲しくないかな。本当に大変だったんだ。何よりも僕と親しい人まで色々と言われるのがキツい。凄く肩身が狭くなるんだ、二度と体験したくないねアレは。  それじゃあこの聖杯戦争でその願いを叶えるのかって?勿論、それはNoさ。  僕の尊敬する、もういないあの人ならいくら願いが叶うからって殺し合いに参加する事はないだろう。あの人だけじゃない、あの人の仲間だってきっとそうだ。それよりもこの聖杯戦争とやらで犠牲者が出ない様に尽力する筈だ。  それに、僕にはメイ叔母さんからもらったこの言葉がある。『大いなる力には大いなる責任が伴う』、僕の力は誰かを助けるためにあると、そう僕は決めている。  だから聖杯戦争に巻き込まれたからって僕のやることは変わらない。ニューヨークがトーキョーに変わっただけ。あ、でも、こっちにはJJJがいないからバッシングが激しくないのは嬉しいかも。  それじゃあ今日もこうやってスーツを纏ってバディの彼女と共に夜の街に跳んでいこうか。  僕が誰かって?  貴方の親愛なる隣人、スパイダーマンさ。 【CLASS】  セイバー 【真名】  レイ@遊☆戯☆王 OCG STORIES 閃刀姫編 【性別】  女性 【属性】  秩序・善 【ステータス】  筋力B+ 耐久B+ 敏捷B+ 魔力D 幸運A 宝具A 【クラス別スキル】 対魔力:D  魔術に対する抵抗力。詠唱が一工程(シングルアクション)の魔術を無効化。魔力除けのアミュレット程度の耐性。 騎乗:B  乗り物を乗りこなす能力。Bランクでは、大抵の乗り物は乗りこなせるが、幻想種は乗りこなせないレベルである。 【固有スキル】 仕切り直し:C  戦闘から離脱する能力。  また、不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。 閃刀姫:A  閃刀システムと呼ばれる軍事技術を身に纏い、戦闘能力を飛躍的に上昇させるスキル。  人の精神に感応して作動する兵器システムであり、空中移動可能な高機動ユニットであるイーグルブースター、遠距離砲撃も行える射撃兵装であるシャークキャノン、遠隔自律兵器のホーネットビット、捕縛および機械のコントロールを奪うウィドウアンカーを瞬時に転送・装着して戦闘することが可能となっている。 術式兵器:A  閃刀姫のために開発された装着型決戦兵器を身に纏い、更に戦闘能力を上昇させるスキル。  拠点防衛型の『X-002 シズク』極地特攻殲滅型の『X-003 カガリ』侵攻迎撃型の『X-004 ハヤテ』近距離格闘型の『X-005 カイナ』のいずれかを装着可能。また各兵器ごとに閃刀術式と呼ばれる機能が備わっており、絶大な威力を発揮するがその代償として装着していた術式兵器は強制的に解除されてしまう。 対機械・対AI:A  自律稼働する機械、またそれに類する存在に対して有利に戦闘を行えるスキル。  閃刀姫として覚醒してからの2年間、ほぼ単身でAIに率いられた機械の軍勢と戦い続け絶望的な戦況を覆した逸話を持つ。対AI戦闘のプロフェッショナル。 【宝具】 『想い重ねし絆の刃(合体術式 エンゲージ・ゼロ)』 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:5人  心を通わせた二人の閃刀姫によって生み出された奇跡の合体術式。  閃刀姫ロゼの疑似霊基を作り出し、二つの閃刀力をサポート兵装であるアディルセイバーを介して巨大な剣として出力し対象を両断する。サーヴァント1騎分に等しい魔力を確保しなければならない関係上、通常使用する場合は令呪の消費、あるいはレイの霊基を全て消費して放たねばならい。 【weapon】  ブレード:戦闘用の片刃の剣 【人物背景】  人が死滅し、残された機械が不毛な戦争を続ける世界において生まれた人間の少女。  カーマと呼ばれる勢力のAIによって人間として育てられていた彼女はもう一つの勢力、スペクトラムの侵攻に晒され、かつて人が戦争の為に使用していた戦闘システム『閃刀』を使用し、自分を育ててくれた家族を守るために閃刀姫へと覚醒し、さまざまな巡り合わせの末に戦争を終結させた。  性格は純真で素直。AI達によって人の善性を育まれながら成長し、また自身のクローンであるロゼとの戦闘を経て、意思疎通が可能な対象とはまず分かり合う事を第一とする気質。 【サーヴァントとしての願い】  特になし。巻き込まれた人を助けたい。犠牲は極力少なくしたい。 【マスターへの態度】  スタンスも一致しており非常に友好的。 【マスター】  ピーター・パーカー@スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム 【マスターとしての願い】  聖杯にかける願いはない。被害を極力減らしたい。 【能力・技能】  スパイダーセンスによる危機感地能力、蜘蛛由来の天井や壁への貼りつき、蜘蛛の糸を射出することによる拘束や糸を任意の場所に貼りつけてのスウィング移動や引き寄せ。 【人物背景】  親愛なる隣人、スパイダーマン。  その正体を知る者はもういない。安らぎも友をも捨て、一人悪を探し空を駆ける孤独のヒーロー。彼の帰るべき家はもう存在しない。 【方針】  人命救助を最優先。聖杯戦争に乗っていない主従がいるのであればそのマスターを無事に元の場所に帰す方法を探したい。また悪人に聖杯の願いを叶えさせる訳にもいかないので聖杯の悪用は阻止する。 【サーヴァントへの態度】  信頼している。純粋でお人よし過ぎるのでそこが少々心配。
 八重洲。赤レンガ造りの外観で有名な東京駅のある、東京都でも有数のオフィス街である。  陽の落ち切った街は高層ビル群の窓から漏れる部屋の灯や整然と並び立つ街灯によって煌々と照らされている。  そんなビル街の中でも一際高いビルの屋上に立つ影が一つ。  赤と青で彩色され、蜘蛛の巣の衣装がほどこされた全身スーツに身を包んだ青年。  聖杯戦争に参加する事となったマスターの一人だ。 「うん、今日も異常なしか。本当に戦争が起きてるのか疑わしいくらいだね」  マスターである青年、[[ピーター・パーカー]]は眼下に広がる街を見下ろしながらホッと一息をついた。聖杯戦争のマスターとして気付けばこの地にいた彼は聖杯戦争の[[ルール]]を聞いてすぐに行動を起こした。普段の彼となんら変わらない行動、つまり街で悪さをしている参加者<ヴィラン>がいないか探して回る自警活動だ。  夜な夜なスーツを着込んではエリアを決めて夜の街や怪しそうな場所に異常がないか見回りをし、もし異常を見つければ真っ先にこれを対処する。それは平時であれば褒められた行為であるだろう。だが、聖杯戦争においては敵対者に彼らの存在を認知されやすいというリスクの高い行為だ。特にキャスタークラスの工房にでも迂闊に迷い込んでしまえば目も当てられないだろう。  聖杯戦争というものを理解しているサーヴァントであれば難色を示すかあるいは制止する者もいるだろう。だが幸か不幸か、彼の元に召喚されたサーヴァントはそういった類の者ではなく、寧ろ勧んで彼の方針に賛成の意思を見せた、言ってしまえば善性かつお人好しと呼んで過言ではない人種であった。 「レイ、君の方でも反応はない?」 「うん、こっちでもサーヴァントの気配は感じないよ。マスター」  ピーターの呼びかけを受け、彼の背後から制服に似た衣装の衣服に身を包んだ少女・レイが姿を現す。  見た目からすれば十代半ばのあどけない少女である。が、その年頃の少女にしては不釣り合いな刀剣を手にしていた。得物から判断をするのであればセイバーのサーヴァントだろうか。 「今日はこの変で切り上げようか。平和なようで何よりだけどちょっと拍子抜けって感じかな」  一仕事を終えビルの縁に腰をかけたピーターの横にちょこんとレイが座り込む。  その瞳は遥か眼下で行われている人の営みを興味深そうに眺めている。 「人の暮らしを見るのって楽しい?」 「うん!私達はこうやってたくさんの人が生活している光景っていうのはアーカイブで見る事しか出来なかったから」  興奮の混じった笑顔で答えるレイに対し、ピーターはどう反応すべきか戸惑いを見せる。  レイが彼の知る世界とは異なる世界の存在であることは本人の口から知らされていた。曰く、人の戦争が激化し、行きついた果てに人は全て滅び、残された機械と人工知能が人から受けた指令を実行し続け数百年に及ぶ戦争を繰り広げ続けていた世界。その中で生を受けた人間がレイだったという。だからこそ、この聖杯戦争の至る所で行われている人の営みが彼女にとっては何もかも新鮮であった。例えそれが模倣であったとしてもここまで大規模かつリアルなものを彼女は目の当たりにすることは無かったのだ。  異なる世界、俄かには信じられない話ではあるがピーターは身を持って経験した人間であった。だからこそすんなりと信じることが出来た。  夜風が二人の頬を撫ぜる。 「ねえ、マスター」 「何?」 「本当にマスターは、叶えたい願いはないの?」  その質問にピーターの動きが僅かに停止する。  ピーターは彼女に対し、自身に聖杯にかける願いはなく、自分と同じように聖杯戦争に巻き込まれた人を助け、また悪用しようとしている参加者を止めたいと伝えていた。レイも同様に聖杯にかける程の願いはなかった為、その方針を了承したという背景がある。  その上で、レイは本当に聖杯にかける願いはないのかとピーターに問う。だがそこに猜疑や糾弾、詰問といった意図は感じられない。「本当にいいのか」と言いたげ視線をレイはピーターに向けている。  ピーターは俯くように眼下の街を、ビルの谷間の暗闇を凝視するように硬直し、そしてレイへと向き直った。 「あー、どうしてそう思ったのか聞いても?」 「その、私の気のせいだったらいいんだけど、たまにマスターが難しい顔をしている時があったから」 「そう?多分、見間違いじゃないかな?」  おどけて誤魔化す様に明るいトーンでピーターは答える。だが、レイを誤魔化すことは出来なかった。心配そうな表情で自身を覗き込む視線に対して、ピーターは気まずそうに視線を逸らす。  しばしの沈黙の後に、観念した様に大きく息を吐き肩を落とした。 「……僕は何度も失敗をした、取返しのつかない失敗だ。やり直したいことなんていくらでもある」 「じゃあ……」 「でも出来ない。それをしたら僕はあの人達を裏切ることになる。だから僕はそれだけは出来ない。あの時、大切な人の仇をそれでも助けた。そう決断した僕が今更この聖杯戦争に勝ち残るなんて方法で願いを叶える訳にはいかない」  悲痛の混じった告白が吐き出される。ギュッとスーツの軋む音を響かせながらピーターは手を握り込む。苦しみと決意を湛えていた表情はマスクに隠れて誰にも伺い知ることは出来ないだろう。  レイはそんなマスターの決意に対し、何も言う事は出来ない。レイはピーターの背景を何も知らない。だが彼の、レイと数年しか年の違わない青年がその道行の中でどれだけ過酷な運命を背負って来たのかだけは断片的に理解することが出来た。 「だから、いいんだ。本当に。僕はこの聖杯戦争で叶えていい願いは持っていない。僕がここですべきことはそんなことじゃない。分かってくれるかい?」 「……うん」 「なら良かった」  レイの返答を聞いたピーターはビルの縁から立ち上がる。ここでの会話はもう終わり、ということにしたいのだろう。先ほどまでの辛気臭い空気を振り払う様に大きく伸びをする。わざとらしい声が漏れた。 「さあ、明日のこともあるしそろそろ帰ろうか。ニューヨークとまではいかなくてもこっちも夜は冷えるみたいだしね。早めにベッドに潜ってぐっすり眠りたいよ」 「……マスター!」  一人帰ろうと背を向けたピーターに声がかけられる。振り向いたピーターに何か軽い物がぶつかる衝撃、そしてその身体を抱きしめられる暖かな感触。  ピーターに駆け寄ったレイが、そのまま彼を優しく抱きしめていた。  突然の少女からのハグにピーターの思考が一瞬停止する。 「へ?ホワッツ!?なに?どうしたの!?」 「こういう時はね、『ギュッ』ってするって私は知ってるよ」 「こ、こういう時って……」 「ありがとう。本当の気持ちを話してくれて」 「……」  目じりに微かに涙を浮かべ、礼を言う少女に対して、ピーターは言葉を返せなくなる。 「マスターの想い、それでもマスターのしたい事、しなきゃいけない事。想いと一緒にちゃんと伝わったから。それが、マスターの絆なんだね?」 「絆、か」  レイの言葉に、ピーターの脳裏にこれまで出会って来た様々な人が脳裏を過る。  英雄が、戦友が、家族が、友人が、恋人が、異なる世界で同様にヒーローとして在った親愛なる隣人が、その全ての出会いと別れが今の彼の在り方を形作っている。  これまでの自分がしてきた事、選んだ選択肢には後悔も未練もある。それでも、今自分がした選択には後悔も未練もない。 「うん、これが僕の絆だよ」  誇らしげに、独りのヒーローは呟いた。 ◇  元の世界の僕があんな状況に陥ってしまったのは、全て僕自身のせいだ。  無知な僕が軽率に彼に頼って、魔術を行使している彼に何度も無茶な注文をつけて失敗させて、そうして世界に一つの混乱が起きた。  その結果、何が起きたかったって?  叔母さんが死んだ。とても素晴らしい人であり、何よりも大事な家族だった。僕がやらかさなければ叔母さんを殺した奴は僕達の世界に来なかった。あんな事件に巻き込まれて死んでいい人じゃなかったのに。  僕を知る人達全ての記憶の中から、僕に関する記憶が消滅した。僕の正体を知って人殺しと罵っていた人達も、共に宇宙からやってきた悪党と戦った仲間も、僕をサポートしてくれた頼れる友人も、僕の親友も、僕が愛した人も、もう、誰一人として僕のことを覚えていない。  寂しくないのかって? そりゃ勿論寂しいさ。もし叶うのなら彼らに僕のことを思い出して欲しい。おっと、でも僕を人殺しって誹謗中傷する人の記憶は戻って欲しくないかな。本当に大変だったんだ。何よりも僕と親しい人まで色々と言われるのがキツい。凄く肩身が狭くなるんだ、二度と体験したくないねアレは。  それじゃあこの聖杯戦争でその願いを叶えるのかって?勿論、それはNoさ。  僕の尊敬する、もういないあの人ならいくら願いが叶うからって殺し合いに参加する事はないだろう。あの人だけじゃない、あの人の仲間だってきっとそうだ。それよりもこの聖杯戦争とやらで犠牲者が出ない様に尽力する筈だ。  それに、僕にはメイ叔母さんからもらったこの言葉がある。『大いなる力には大いなる責任が伴う』、僕の力は誰かを助けるためにあると、そう僕は決めている。  だから聖杯戦争に巻き込まれたからって僕のやることは変わらない。ニューヨークがトーキョーに変わっただけ。あ、でも、こっちにはJJJがいないからバッシングが激しくないのは嬉しいかも。  それじゃあ今日もこうやってスーツを纏ってバディの彼女と共に夜の街に跳んでいこうか。  僕が誰かって?  貴方の親愛なる隣人、スパイダーマンさ。 【CLASS】  セイバー 【真名】  レイ@遊☆戯☆王 OCG STORIES 閃刀姫編 【性別】  女性 【属性】  秩序・善 【ステータス】  筋力B+ 耐久B+ 敏捷B+ 魔力D 幸運A 宝具A 【クラス別スキル】 対魔力:D  魔術に対する抵抗力。詠唱が一工程(シングルアクション)の魔術を無効化。魔力除けのアミュレット程度の耐性。 騎乗:B  乗り物を乗りこなす能力。Bランクでは、大抵の乗り物は乗りこなせるが、幻想種は乗りこなせないレベルである。 【固有スキル】 仕切り直し:C  戦闘から離脱する能力。  また、不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。 閃刀姫:A  閃刀システムと呼ばれる軍事技術を身に纏い、戦闘能力を飛躍的に上昇させるスキル。  人の精神に感応して作動する兵器システムであり、空中移動可能な高機動ユニットであるイーグルブースター、遠距離砲撃も行える射撃兵装であるシャークキャノン、遠隔自律兵器のホーネットビット、捕縛および機械のコントロールを奪うウィドウアンカーを瞬時に転送・装着して戦闘することが可能となっている。 術式兵器:A  閃刀姫のために開発された装着型決戦兵器を身に纏い、更に戦闘能力を上昇させるスキル。  拠点防衛型の『X-002 シズク』極地特攻殲滅型の『X-003 カガリ』侵攻迎撃型の『X-004 ハヤテ』近距離格闘型の『X-005 カイナ』のいずれかを装着可能。また各兵器ごとに閃刀術式と呼ばれる機能が備わっており、絶大な威力を発揮するがその代償として装着していた術式兵器は強制的に解除されてしまう。 対機械・対AI:A  自律稼働する機械、またそれに類する存在に対して有利に戦闘を行えるスキル。  閃刀姫として覚醒してからの2年間、ほぼ単身でAIに率いられた機械の軍勢と戦い続け絶望的な戦況を覆した逸話を持つ。対AI戦闘のプロフェッショナル。 【宝具】 『想い重ねし絆の刃(合体術式 エンゲージ・ゼロ)』 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:5人  心を通わせた二人の閃刀姫によって生み出された奇跡の合体術式。  閃刀姫ロゼの疑似霊基を作り出し、二つの閃刀力をサポート兵装であるアディルセイバーを介して巨大な剣として出力し対象を両断する。サーヴァント1騎分に等しい魔力を確保しなければならない関係上、通常使用する場合は令呪の消費、あるいはレイの霊基を全て消費して放たねばならい。 【weapon】  ブレード:戦闘用の片刃の剣 【人物背景】  人が死滅し、残された機械が不毛な戦争を続ける世界において生まれた人間の少女。  カーマと呼ばれる勢力のAIによって人間として育てられていた彼女はもう一つの勢力、スペクトラムの侵攻に晒され、かつて人が戦争の為に使用していた戦闘システム『閃刀』を使用し、自分を育ててくれた家族を守るために閃刀姫へと覚醒し、さまざまな巡り合わせの末に戦争を終結させた。  性格は純真で素直。AI達によって人の善性を育まれながら成長し、また自身のクローンであるロゼとの戦闘を経て、意思疎通が可能な対象とはまず分かり合う事を第一とする気質。 【サーヴァントとしての願い】  特になし。巻き込まれた人を助けたい。犠牲は極力少なくしたい。 【マスターへの態度】  スタンスも一致しており非常に友好的。 【マスター】  [[ピーター・パーカー]]@スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム 【マスターとしての願い】  聖杯にかける願いはない。被害を極力減らしたい。 【能力・技能】  スパイダーセンスによる危機感地能力、蜘蛛由来の天井や壁への貼りつき、蜘蛛の糸を射出することによる拘束や糸を任意の場所に貼りつけてのスウィング移動や引き寄せ。 【人物背景】  親愛なる隣人、スパイダーマン。  その正体を知る者はもういない。安らぎも友をも捨て、一人悪を探し空を駆ける孤独のヒーロー。彼の帰るべき家はもう存在しない。 【方針】  人命救助を最優先。聖杯戦争に乗っていない主従がいるのであればそのマスターを無事に元の場所に帰す方法を探したい。また悪人に聖杯の願いを叶えさせる訳にもいかないので聖杯の悪用は阻止する。 【サーヴァントへの態度】  信頼している。純粋でお人よし過ぎるのでそこが少々心配。

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