「交錯する運命の歯車(休)」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

交錯する運命の歯車(休) - (2024/12/12 (木) 14:04:28) の1つ前との変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

PREVIOUS[[→>https://w.atwiki.jp/for_orpheus/pages/282.html]]       ◆ 「――――――!」  在り得ないものを見たと、男の目が見開かれる。  小鳥遊ホシノを仕留めるために使用した銃弾は二種。  破壊時にこそ最大の威力を発揮する剣と、空間を捩じ切る剣。それらの宝具を弾頭へと加工したモノだ。  宝具の銃弾への加工は、矢への加工よりもその神秘を劣化させるが、銃器の特性から連射性に優れる。  最初の一発で仕留められれば最上。そうでなくとも、残りの三発で確実に。  都合、四発。それによって小鳥遊ホシノは、間違いなく仕留められるはずだった。  最後の一発に、割り込む者さえ存在しなければ。 「――――――」  それは良い。  想定外ではあるが、意外なことではない。  無関係なマスターが、危機に陥ったマスターを助けに入る、という事もあるだろう。  この都市にはヒーローを自称する数奇なマスターが二人もいるのだし。  だから、在り得ないのは別の事。 「………………」  射線の先で、花弁の盾が解けて消える。  その向こうにいた乱入者の姿が露わになる。  白色の髪、褐色の肌、赤い外套。それらの要素を身に纏った、少女。  そして――自分の弾丸を防いだ楯は、間違いなく己と同じ能力によって作り出されたものだ。 「っ!」  赤い外套の少女と、合うはずのない視線が合う。  その唇が、わかりやすく言葉を紡ぐ。  ―――見えてるわよ、お兄ちゃん。 「引くぞ、セイバー」  即座に狙撃体制を解き、妨害が入らぬよう周囲を警戒していたセイバーへと声を掛ける。  予備銃弾の用意は当然ある。  が、あの少女が本当に自分と同じ能力を持つのなら、そんなものは役に立たない。  むしろ、ここがすでに“相手の射程圏内”だという事の方が問題だ。  相手のサーヴァントの姿が見えない以上、遠距離での撃ち合いなどと言う愚は冒せない。 「………………」  相手の再確認などせず、速やかに屋上から立ち去る。  それでもその脳裏には、赤い外套の少女の姿がチラついていた。       ◆  狙撃手の急襲は終わり、静寂が訪れる。  ホシノはそのダメージから即座には動き出せず、彼女を助けた少女もまた周囲を警戒し動かない。  セイバーの極光を防ぎ切ったアサシンもまた、その少女の存在故に次の行動を選択できない。  そんななかで、セイバーだけが即座に行動を開始した。 「その顔、覚えておくぞ。覚悟しておけ」  彼女は未だに頭痛に苦しむオルフェを抱えると、素早くこの場から去っていく。 「追うか?」 「必要ないわ。それよりもまず、この状況をどうにかしましょう」  相手サーヴァントの所在が分からないことからくる警戒を防ぐためだろう。  実体化した自らのサーヴァントにそう言いながら、少女はこの場に残された二人へと目を向ける。  彼らはどちらも、乱入者である少女たちに警戒と戸惑いを見せている。 (まったく。〈ヒーロー〉を捜していたのに、とんでもない状況に出くわしたわね)  黒いセイバーに謎の狙撃手。  欲しい情報は何一つ得られていないのに、気になることばかりが増えていく。  つい危なかった方を助けてしまったが、これが正しい選択だったのかもわからない。  それでも、このまま黙ったままでいても状況が解決しないことは確かだ。 「初めまして。私はクロエ・フォン・アインツベルン。クロエでいいわ。  言いたいこと、聞きたいこと、いろいろあるでしょうけど、まずはここから離れましょう」  少しでも二人の警戒を解くため、少女――クロエはホシノから離れると、二人へと向き直ってそう自己紹介をした。     §  §  § 「で? あんたらは一体どこのどちら様で?」 「クロエよ、さっきそう名乗ったでしょう。  あ、こっちはアーチャー。真名の方はまだ勘弁してちょうだいね」  あれから場所を移動し、周囲に人気のない路地裏。  ホシノの怪我の応急手当ても終え、全員が一息吐いたところで、アサシンが詰問する。  それに対し、クロエは自身のサーヴァントの紹介も添えて名乗り直す。  しかし彼が未だに警戒を解いていないことは、その傍らに&ruby(ヴェンデッタ){半透明の少女}が現界したままであることからも明らかだ。  一方のホシノは、先程よりは気の抜けた表情を浮かべながら、クロエへと感謝を述べる。 「ありがとうねクロエちゃん、助けてくれて。さすがにもう駄目かと思ったよ~。  私は小鳥遊ホシノ。そっちの黒い方がアサシンで、白い子は……」 「私の名前はヴェンデッタ。ヴェティと呼んでくれてもいいのよ。  ごめんなさいねマスター。私がこうしているだけでも辛いでしょうに、彼ったらすっかり怯えちゃって」 「ううん、大丈夫だよヴェティちゃん、私はまだまだ平気だから」 「おい。誰が怯えてるだ誰が。  そんで、あんたらはなんで俺たちを助けてくれたんだ?」  それは当然の質問だろうと思いながらも、どう答えたものかとクロエは頭を捻る。  が、難しく考えた所で答えが変わるわけではないので、そのまま答えることにした。 「理由は二つ。一つは、その子が危ない目にあっていたから、思わず体が動いたってだけよ」 「思わず体が動いた、ねぇ」 「まあまあアサシン、理由は何でもいいじゃん。結果として助かったんだからさ。  にしても失敗したなぁ、まさか狙撃手がいたなんて。……腕が鈍っちゃったかな」  疑念を向けるアサシンを宥めながら、ホシノはそう独り言ちる。  戦場に街中を避けて公園を選んだ時点では、狙撃手の存在は警戒していたはずだった。  だがいつの間にか狙撃手に対する警戒が抜け落ち、その結果があれだ。  これなら周囲への被害なんて気にせず、市街地で戦った方がまだマシだったかもしれない。 「そんなに気にすることはないわ。だってあの男、あなたの精神に干渉してたもの」 「精神に、干渉?」 「ほらあなた、狙撃されている最中に急に上の空になったでしょう? あれがそう。きっと狙撃手の事も、意識から外されていたのよ。  これはあなたのミスね、ゼファー」 「うっせぇ。分かってるよそんなことは」  ヴェンデッタの非難に言葉悪く返しながらも、アサシンはそれを否定しない。  彼自身、あの戦いで失敗したと考えていたからだ。  あの戦いにおいてゼファーは、ある意味において手加減をした。  相手を殺すことを厭う&ruby(マスター){ホシノ}に配慮し、どのような形であれ、相手を殺さずに済む選択肢を残そうとしたのだ。  だがこちらからの誘いはにべもなく断られ、始まった戦いの最中に、逆に相手からマスターが誘われ、まあそれもアリかと最初は考えた。  しかしセイバーのマスターの思想はアサシンには到底受け入れられるものではなく、結果として決別。  それならば、と絶望的な相性差を見せつけ、撤退する余地を与えようとしてしまったのだ。 (まったく。相性的に有利なはずの相手に反撃されて、その上逃げられるとか。  サーヴァントになっても、俺は変わらず弱いまんまだ。勝利の栄光とは程遠い)  生前のように卑屈になることこそないが、アサシンはそう自虐する。  撤退する余地とは、言い換えれば反撃をする余地でもある。  相手が伏せていた隠し札に気付けず、マスターへの奇襲を許してしまったことを、アサシンは強く悔いていたのだ。  こうなるならば、相性差が判明した時点で殺しておくべきだった、と。  クロエたちへと見せる強い警戒は、ある意味でその表れだった。 「私からも付け加えさせてもらうなら、たとえ街中で戦っても狙撃は防げなかったでしょうね。  いえ、街中で戦っていた方がもっと危険だったかも」  狙撃手について、続くようにクロエが発言する。 「普通なら街中の方が狙撃を防げると思うかもしれないけれど、相手が私の知ってる人ならむしろ逆。  きっとその考えの裏を突くように、初手で狙撃をしてくるでしょうね。  実際に撃たれたホシノなら解ると思うけど、あの三、四発目の弾丸。あれなら壁の二枚や三枚、簡単に貫通できるもの」  通常、街中で狙撃を警戒するのなら、射線の徹る開けた場所に意識を向ける。  だがその裏をかかれ、壁の向こうなどの意識外から狙撃を受ければ、即死はしなくとも重症は免れないだろう。  あとはセイバーか狙撃手、どちらか一方が相手のサーヴァントを少しでも抑えれば、もう一方がマスターに止めを刺し、それで終わりだ。 「ちょっと待て。あの狙撃手が、あんたの知ってる奴だって?」 「ええ。たぶん、ではあるけどね。ちなみに、それが二つ目の理由よ。  もし本当にあの人なら、平和のために女の子を殺すなんてマネ、させる訳にはいかないもの」 「……一応聞くけど、どんな奴なんだ、そいつは?」 「正義の味方よ。誰かを助けるためなら、平気で自分を犠牲にしてしまう……悪にだってなれてしまう、ね」 「なるほど、最悪の相性だな」  オルフェの使命であるディスティニープランは、世界平和を最終目標としている。  それを完全に否定することなど、正義の味方には不可能だろう。精神に干渉するというオルフェの能力が加われば猶更だ。 「……あんたは、そいつの願いが世界平和でも、そいつを止めるのか?」 「当然でしょ。女の子の命は、世界より重いのよ」 「――――――」 「いいことを言うわね。私、あなたのこと好きになりそうよ」  即答で返されたクロエの言葉に、アサシンは目を見開き、ヴェンデッタは笑みを浮かべる。  なるほど。それは是非ともあの男に聞かせてやりたい言葉だ。  まあ言われたところで、あのトンチキ野郎は何も変わらないだろうが。  内心でアサシンはそう思いながら、クロエに対する警戒を一段下げた。 「仲良くなれそうなのは結構だが、この後はどうするつもりなんだ」  それを見抜いたのだろう。今まで沈黙を通していたアーチャーが、そう口を挟んできた。 「私はとりあえず、ホシノに付いて回るつもりよ。  ヒーローも見つからないことだしね」 「ヒーロー? あんたら、あいつらを捜してたのか?」 「一先ずの目的として、ではあるけどね」  〈ヒーロー〉は、ある意味で〈双亡亭〉と並んで有名な存在だ。  クロエたちはそんなヒーローを、今まで捜索していたのだという。  しかし、そのために都市北西部を捜索してみたが、残念ながら当てが外れ、接触できなかった。  仕方がないからと、前に事件のあった都心部へ向かってみたら、ホシノたちの戦闘に出くわしたのだ。 「なるほどな。けどそれがどうして俺のマスターに付いて回ることに繋がるんだ?」 「簡単よ。セイバーたちはあなた達にコテンパンにやられた。なら間違いなくやり返しに来るはず。  そうなると当然、彼らの協力者であるあの狙撃手も付いて来るはずでしょ?  私はね、狙撃手があの人かどうか、どうしても確かめたいの。会ってどうするかは、その時に決めるつもり」  そう口にするクロエの目には、強い意志が宿っている。  この様子では断っても勝手に付いてくるだろうな、と思いつつアサシンは己がマスターへと話を振る。 「らしいけど、どうするマスター」 「うへ? ああ、うん。いいんじゃない?  ……私も、セイバーのマスターにはちょっと用があるし」 「――――――」 「ああ、安心して。あの人の誘いに乗るとかじゃないから。  ……うん、それだけはない」 「………………」  ホシノの返答に、アサシンは僅かに眉を顰める。  今のホシノは、どこか様子がおかしい。いつものだらけた様子が、僅かに影を薄めている。 『ヴェンデッタ』 『あの男の能力は掛かっていないわ。それは確か』  声にすることなく、アサシンは己が半身と言葉を交わす。  ヴェンデッタの能力は、&ruby(アストラル){星辰体}そのものへと感応し、他者の星光へさえ直接干渉を行えるというもの。  この冥界においては魔力もその対象となってはいるが、魔力に寄らないオルフェの能力には直接干渉は行えない。  だが他者と&ruby(リンク){同調}するという共通した性質を応用しその能力に同調、その共振を利用した反動によってダメージを与える事が出来た。  オルフェを襲った頭痛の正体がそれだ。  そして更なる応用として、&ruby(ホシノ){他者}に掛けられた能力も、その逆波長をぶつける事で相殺することを可能とした。  つまり、今のホシノはオルフェの能力の影響下にはない。しかし―――。 『何を見せられたかのか私には分からないけど、あんな状況で呆けてしまうようなものを見せられたのは確かよ』 『あ~、なるほどな。そりゃあ、様子もおかしくなるか』  浮かび上がる心当たりに、ゼファーはさらに深く眉を顰める。  見せつけられたのは、おそらくはトラウマ。十中八九、梔子ユメに関する事だろう。  それは言うなれば、ヴェンデッタと出会う前の自分に、マイナの事を無理矢理思い出させたようなもの。  そんなもの、到底許せるはずがない。  ホシノの様子がおかしいのは、それが原因だろうとアサシンは当たりをつける。  あの男は、ホシノの逆鱗に触れてしまったのだ。 (……許さない)  そしてアサシンの予想に正しく、今のホシノの胸中にあるのは、梔子ユメとの思い出と、それに触れたオルフェへの怒りだった。 (あいつは言ってた。全人類を、能力に見合った地位と職に就けるって。  ならユメ先輩は? そんな世界で、あの人はどうなるの?)  いつもドジを踏んで、失敗したり、騙されてばっかりで、頼りなかった先輩。  どこまでも無鉄砲で、校内随一のバカで、それでも、誰よりも一生懸命だった先輩。  あの男の語る世界で、彼女はいったいどうなるというのか。 (あいつの言う“能力”って、何? どんなに頑張っても、結果がでなきゃ意味がないの?  ううん、ちがう。その世界じゃきっと、頑張ることすら許されない)  あの男は、必要なら自分に従っていた人たちも利用して殺したらしい。  そんな奴の考えた世界で、彼女が無事に過ごせるなんて、到底思えない。  またいつもみたいに騙されて、いいように利用されるに決まってる。 (あいつは、そんな世界を作ることに、私を協力させようとした。  私の心に……ユメ先輩との思い出に、勝手に触れて―――!)  そんなこと、絶対に許せるはずがない。  だから。 (待っていてください、ユメ先輩。  先輩との思い出を汚すやつは、すぐに片付けちゃいますから)  怒りを滲ませるホシノの横顔を見て、アサシンは大きくため息を吐く。 (まったく、あの野郎……マジであの時殺しておくんだったぜ。  まあ仕方ねえ。俺のミスもあるし、セイバーのマスターとの決着が付くまでは、きっちり付き合うとしますかね)  だがサーヴァントはマスターに従うもの。  仏の顔も三度まで、という言葉があるが、必殺の機会はすでに三度以上見逃した。  だからもう、次はない。とアサシンもまた、オルフェに対し絶殺の意志を固めるのだった。 「ってわけだ、ヴェンデッタ。  せっかく起きたところ悪いが、その時が来るまでまた眠っていてくれや」 「仕方ないわね。マスターに無理させる訳にはいかないもの。  けどそれなら、私を起こす間もなくやられる、なんて無様な真似だけはしないでね」 「わかってるよ」  そう言葉を交わし合って、半透明だったヴェンデッタの姿が完全に消える。  同時にホシノが、重い荷物をようやく下したかのように一息を吐いた。  今までかかっていた魔力消費の負荷から、ようやく解放されたのだ。  それを見て、ようやく警戒が解かれたのだと判断し、アーチャーもその緊張を解く。 「協力関係、とまではいかなくても、同行の許可が出たのはありがたい。  けど、今すぐセイバーたちを追うのは少し待って欲しい。  小鳥遊の怪我の事もあるし、まずはどこかで休憩を取るべきだと僕は思うんだが」 「そうだね~。この感じだと、あと半日は全力で走れないかなぁ~」 「半日……」  アーチャーの提案にホシノが賛成する。  彼女が今すぐ追うと言わないのは意外だが、逆を言えば、全力で仕留めるという事でもある。  思っていたよりは冷静であるらしいその様子に、アサシンは一先ずの安堵を溢した。 「んで、どこで休憩するんだ?」 「そうねぇ。私たちの拠点は遠いし……そもそもバレちゃってるし……  できればそっちで用意してくれると助かるんだけど。  あ、そうだ。助けたお礼をくれるって言うんなら、魔力きょ―――」  スコン、と何かを言いかけたクロエを遮るように、何かが彼女の頭へと投げつけられた。  床に落ちて転がった筒状のそれは、アーチャーが投げつけた銀筒だ。 「マスター、条件」 「いいじゃないちょっとくらい。ほんのちょっと、&ruby(キス){味見}するだけだから」 「駄目だ」 「おねがい、ホシノからはなんか美味しそうな感じがするのよ」 「うへ?」  クロエの嘆願を、アーチャーは断固として却下する。  急に名前を呼ばれたホシノは、意味が分からず首を傾げるしかない。  そんな光景を見て、アサシンは遠いものを見るように目を細める。  サーヴァントの戦いはこちらが圧倒した。  マスターの戦いはあちらが上回った。  総合的には、狙撃手という伏せ札を読み切れなかったこちらの負けか。  まあ、当然だろうとアサシンは思う。  俺たちが綴るのは逆襲劇。  しかし逆襲するためには、&ruby(・・・・・・・・・・・・){まず負けなければならない}。  なぜなら逆襲とは、敗者が勝者から勝利の栄光を奪う事なのだから。  ……けれど、それでも、と同時に思う。  逆襲劇を止める気はない。  けどその先で、彼女が自分だけの”勝利”を得られるように、と。 「さあ、&ruby(ヴェンデッタ){逆襲}を始めようか。  ──“勝利”からは、逃げられないんだからさ」 【渋谷区・路地裏/1日目・午後】 【[[小鳥遊ホシノ]]@ブルーアーカイブ】 [運命力]減少(小) [状態]全身に裂傷、片足に裂挫創(いずれも応急手当済み) [令呪]残り3画 [装備]「Eye of Horus」(バッグに偽装)、盾(バッグに偽装) [道具] [所持金]学生相応 [思考・状況] 基本行動方針:生還優先。物騒なのはほどほどに。 0.……許さない。 1.ある程度回復したら、セイバーのマスター(オルフェ)を追跡する。 2.ユメ先輩……。 3.同盟は……もう少し待ってほしい。 4.殺し合わず生還する方法を探す。 [備考] ※夜宵と連絡先を交換しました。 【アサシン([[ゼファー・コールレイン]])@シルヴァリオヴェンデッタ】 [状態]通常 [装備]ナイフ [道具]投擲用ナイフ×? [所持金]諜報活動に支障ない程度(放蕩で散財気味) [思考・状況] 基本行動方針:ホシノの方針に従う。 0.――さあ、逆襲(ヴェンデッタ)を始めよう 1.セイバーのマスター(オルフェ)は必ず殺す。 2.こいつら(クロエとアーチャー)大丈夫か? 3.なにあのロリっ子怖い。あの英雄ほどイカれてないようなのは安心。 [備考] ※情報屋の葬者(脱落済み)と情報のやり取りをしていました。夜宵が交流してたのと同じ相手です。 ※ヴェンデッタの半実体化にはマスターの魔力を必要とし、その能力の使用にはさらなる魔力の消費が必要です。  またゼファーの本来の宝具の使用にはヴェンデッタとの完全同調が必要であり、より膨大な魔力を消費します。 【狂い哭け、罪深き銀の人狼よ・滅奏之型(Howling Silverio Cry)】 本来の宝具に変わり、単独で反粒子を使用するために調律した反星辰光(アンチアステリズム)。つまりはスキル、魔力放出(反粒子):A+。 その詠唱は冥狼(ケルベロス)に寄せたアレンジが施されている。 基本的な性能は通常の『狂い哭け、罪深き銀の人狼よ』と比べ、干渉性がAAとなった程度。しかし同時に、反粒子による魔力特効攻撃へと変貌しているため、サーヴァントに対する実際の殺傷能力はそれ以上。 更にはヴェンデッタの星辰光による強化が掛かることで、冥狼(ケルベロス)並みの出力を発揮することが可能。 【投擲用ナイフ】 戦闘の補助にと購入した投げナイフ。 特別な効果は何もない。 【[[クロエ・フォン・アインツベルン]]@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 3rei!!】 [運命力]通常 [状態]健康 [令呪]残り三画 [装備]なし [道具]不明 [所持金]雨竜に預けているので、あんまり持ってない [思考・状況] 基本行動方針:生きたい、もう一度。 0.ちょっとだけだからぁ! 1.ホシノたちに同行し、狙撃手の正体を確かめる。 2.〈消滅〉のことは頭が痛い。まあ、放ってはおけないわよね……。 3.〈ヒーロー〉は今どこにいるのかしら。 [備考] ※天堂が持つ〈ヒーロー〉の情報を聞きました。詳細は後の話に準拠します。 ※狙撃手を、自分の知る人物なのでは? と考えています。 【アーチャー([[石田雨竜]])@BLEACH】 [状態]健康 [装備]弧雀 [道具]なし [所持金]数万円程度 [思考・状況] 基本行動方針:クロエを現世に送り届ける。 0.駄目ったら駄目だ。 1.〈消滅〉を討つという点で天堂と合意。ただし、完全に信用はしていない。 2.〈ヒーロー〉ともコンタクトを取りたい。 [備考] ※天堂が持つ〈ヒーロー〉の情報を聞きました。詳細は後の話に準拠します。       ◆ 「くそっ……!」  ダン、と。  握りしめた右手が、新宿における拠点の壁に叩き付けられる。  叩き付けられた右手は確かな痛みを訴えるが、今なお頭を苛む苦痛には及ばない。  あれから幾分か時間が経ち、ある程度マシになってまだこれだ。  この頭痛が生じた直後の痛みなど、筆舌に尽くしがたかいという言葉の意味を正しく理解したほどだ。  ―――だが。  頭痛など、所詮は物理的な痛みに過ぎない。  真にオルフェを苛むものは、それとはまったく別にあった。 「随分と荒れているな。  だがそれを攻めはすまい。悪態を吐ける程度には回復した証拠だ」  そう言いながら部屋に入ってきたのは、一抱えほどもある紙袋にハンバーガーを始めとしたジャンクフードを詰め込んだセイバーだ。  彼女は備え付けのテーブルにドサッと紙袋を置くと、同じく備え付けの椅子にドカッと座り込んだ。  そして徐にジャンクフードを手に取ると、一心不乱に食べ始めた。 「セイ、バー……」  そんなセイバーへと向けて、オルフェは苛立ちも露わにその名を呼ぶ。  彼女は有ろうことか、頭痛に苦しむオルフェを置き去りにジャンクフートを買い漁りに行っていたのだ。  だがそれさえも、オルフェの苛立ちの理由ではない。  そもそも彼女が大量に食事を取っているのは、アサシンに削られた魔力を少しでも回復させるためだ。苛立ちの理由にはなり得ない。  ……そう、アサシンだ。 「あいつは、あの男は一体何なのだ……っ!」  オルフェの苛立ちの正体。  それは小鳥遊ホシノのサーヴァントであるアサシンに対するものだ。  順調だったこれまでの戦果とはまったく異なる、二度に渡ってサーヴァントを仕留め損ねたという事実。  しかも二度目は、あまりにも痛すぎる痛手を受けてのもの。  その事実からくる苛立ちが、オルフェから平常心を失わせていた。  ―――否。  そうやって苛立ちに身を委ねていなければ己を見失ってしまいそうなほどに、オルフェはアサシンを恐れていた。  だが、彼のサーヴァントはそんな逃避を許さない。 「奴が何者かなど、奴自身が語っていただろう。  あれは誰かの使命によって磨り潰された無垢な犠牲者の代表。つまりはただの負け犬だ」 「ただの負け犬が私やおまえを脅かすものか!」 「脅かすとも。言ったはずだ、奴は犠牲者の代表だと。  奴は勝者の栄光を奪う逆襲の牙。“英雄”と呼ばれる者に対して、奴は無類の特効を発揮する。特に、他者の犠牲を強いた英雄にな。  かつての私が、必要に駆られてそうしたように、貴様も何かしらの犠牲を良しとしたのだろう?  その犠牲を当然のものだと思っているから、貴様は奴に足元を掬われたのだ」 「ッ………………!」  オルフェの脳裏に浮かぶのは、彼の自国ファウンデーションの市民達。  彼は“愛”を手に入れディスティニープランを成し遂げるため、敵国の仕業だと偽って自国に核を撃ち込んだ。  ――――当然、彼らの遺伝子に、そんな役割など刻まれていない。  その彼らの中に生き残りがいたと仮定して、真実を知り糾弾してきたとしたら、その時に何と答える?  ディスティニープランが正しいものだと信じている。  その実現のために自らの伴侶たる“愛”を求めたことも、そのために自国を犠牲にしたことも、決して間違いだとは思っていない。  けれど―――。   “―――それで一体“誰”を導くつもりなんだ、あんたは?“  その言葉が、苦痛に喘ぐ脳裏から離れない。  ディスティニープランを管理し、人々を導く者として生み出された。  その使命を果たす事こそ自分の願いであり、そのための犠牲などいくらでも払う覚悟があった。  …………だが。  “愛”を手に入れるために自国の民を犠牲にして、そうまでして求めた“愛”には拒絶され、残されたのはディスティニープランを成し遂げるという使命のみ。  ――では、自分が導くべき人々とは“誰”だ。いったい“誰”を犠牲にすれば、自分は使命を成し遂げられる?   “―――そんなに人類が救いたきゃ、どっか他所でやってくれ” 「………………だまれ」   “―――&ruby(俺たち){他人}を巻き込むなよ、迷惑なんだよおまえらは!” 「黙れ黙れ黙れ………ッ!」  脳裏に響くその声を、浮かび上がる迷いを振り払うために、声を荒げる。  それにより頭痛が酷くなるが、それでいい。痛みに“&ruby(ノイズ){声}”が紛れてくれる。  しかし、セイバーはそれを許さない。 「目を逸らすな。あれはバーサーカーとは違う、&ruby(おまえ){王}が越えねばならない宿命だ」 「ッ! そもそも貴様があの男を殺せていれば、それで済んだ話ではないか!」 「ああ、そうだ。その誹りは甘んじて受けよう。  だが目を逸らしてどうする。逸らせばまたも足を掬われて、今度はその首を喰い千切られるぞ。  なにしろ私に、&ruby(・・・・・・・・・・・){奴に対する勝ち目はない}からな」 「な……!?」 「事実だ、受け入れろ。奴は私にとって、決して敵わぬ天敵だ」  自分で放てないと、あまりにも堂々と宣言するセイバーに、オルフェは堪らず絶句する。  プライドはないのか、という反論が、その金の瞳の圧だけで圧殺される。  プライドがないのではない。目の前の事実を否定し、目を背ける事こそ醜いのだと、そう咎めるように。 「繰り返すが、奴は貴様が、王として乗り越えるべき宿命だ。  私では奴には勝てん。だが、私も奴もサーヴァント。故にマスターである貴様次第で、その勝敗は裏返る」 「ッ……!」 「忘れるな。これは貴様の王聖が問われる戦いだ。  奴とどう相対し、乗り越えるかによって、貴様の王としての資質が決まるだろう」  セイバーは語る。  目を逸らすな。あの男に勝てるかは貴様次第だと。  だが。  ―――無理だ。  そんなこと、出来るはずがない。  ……否。そんなことは、&ruby(・・・・・・・){してはならない}のだ。  脳裏に過ぎるのは、小鳥遊ホシノのアサシン――ではない。  奴に能力を使った時に垣間見た、奴を生み出してしまった光の英雄。  あらゆる困難や強敵を、その意志力だけで踏破した、正真正銘の&ruby(バケモノ){規格外}。  その姿に対して感じるのは―――絶対的な拒絶の感情だ。  だってそうだろう。  ディスティニープランは遺伝子、つまりは才能によって全てを決定することで世界平和を成し遂げる。  だがその英雄は、凡人でありながら“まだだ”の言葉だけで才能という限界を越えた理不尽の権化だ。  セイバーは断言した。自分ではアサシンに勝てないと。  そのセイバーを勝たせるという事は、英雄のように不可能を可能とさせるという事。  だから、そんなことは出来てはならない。  なぜならそれは、生まれによって全てを決めるディスティニープランを、否定するという事に他ならないからだ。 「私は……っ」  どうすればいい。  どうすれば私は、使命を果たせる。  星の光さえも飲み込む闇を前に、私はいったい、どうすれば―――。 「ふむ。今戻ったが、邪魔だったか?」  その言葉とともに、新たな人物が入ってくる。  焦げ付いたような肌に色素の抜け落ちた白髪。この街の住人と同じ日本人だとは信じ難いその風貌。  聖杯戦争のマスターの一人にして、アサシンとの戦いにおいて小鳥遊ホシノを狙撃した狙撃手。  そして、この聖杯戦争における自分の協力者。  名を、衛宮士郎。  “理想”のために全てを……自身にとってかけがえのない者さえ犠牲にした、“&ruby(パブリックヒーロー){公共の正義}”だ。  彼を味方に引き入れることは、アコードの能力を用いれば、そう難しいことではなかった。  なぜなら、ディスティニープランを成し遂げれば、争いの消えた“世界平和”が訪れるからだ。  より多くを救うという理想を持つこの男に、私の使命を否定することは出来ない。  故に、その使命を果たすための命令も、彼には逆らうことなどできない。  否、逆らう事すら思いつかない。 「……いや。大丈夫だ、問題ない。  それよりも、君にはまず礼を言うべきだろう。ありがとう、君のおかげで助かった」 「礼など不要だ。オレはオレの仕事を果たしただけに過ぎないからな。  もっとも、敵マスターを殺し損ねた時点で、仕事としては落第だがね。  どうする? 役に立たない道具を切り捨てるのなら、今の内だと思うが」  ……ああ、そうだ。  何もあのアサシンと直接対峙する必要はない。  セイバーも言っていただろう。奴も所詮はサーヴァントだ、と。  すなわち。 「いや、そのつもりはない。君にはこれからも、私の力になって欲しいと思っているんだ」  衛宮士郎を利用して、小鳥遊ホシノを殺せばいい。  どんな強力なサーヴァントも、マスターを殺せばそれで終わりだ。  そう。越えられない壁を、無理に越える必要はない。  越えられない壁など、迂回してしまえばいいのだから。     §  §  §  それからオルフェは、体調を回復させると言って別室に籠った。  ならば自分がここに留まる理由もない。 「セイバー、仕事があれば連絡するように、あの男が起きたら伝えておいてくれ」  ジャンクフードを食べ続けるセイバーへと言伝を頼みながら、衛宮士郎はオルフェの拠点を後にする。  やるべき事は溜まっている。無駄にできる時間はない。  調査すべき事、排除すべきマスターは、まだまだ生き残っているのだから。 『葬者、このままあの男に協力するつもりか?』  この後の段取りを考えていると、自身のセイバーがそう問いかけてくる。  彼は衛宮士郎の目的――聖杯の破壊及び、聖杯を求めるマスターの抹殺――を知っている。  その彼が、聖杯戦争に勝とうとしているオルフェに協力するのが不思議なのだろう。 「ああ、そのつもりだ。  竜との戦いや双亡亭を破壊するのに、あのセイバーの力は有用だからな」  その問いに、衛宮士郎は肯定を返す。  自分たちの能力では倒すのが困難な敵サーヴァント。それを倒すために、彼らを利用するのだと。  その判断は、ある意味では正しい。  彼らは未だ知らぬことだが、〈双亡亭〉に潜む脅威、その正体は宇宙からの侵略者。紛れもない〈人類の脅威〉である。  対するセイバーの聖剣、その本質は、星を滅ぼす外敵を想定して星そのものが造り出した神造兵装。  つまり、セイバーが小鳥遊ホシノのアサシンに勝てないように、セイバーの聖剣は〈双亡亭〉に対し、特効性能を発揮するのだ。  故に〈双亡亭〉を壊すための方法として、セイバーとそのマスターに協力することは、決して間違いではない。 『こちらが苦手な相手は、得意な奴に任せればいいという事か。  なるほど、納得した。なら、こちらが言うことはない』  衛宮士郎の答えに納得したセイバーは、これ以上その思考を遮らぬようにと沈黙する。  ―――だが。  それが本当にオルフェたちと協力する理由なのか。  それともセイバーの問いを誤魔化すために繕った、ただの言い訳だったのか。  瞳に赤い燐光を秘めた衛宮士郎には、判断することが出来なかった。  ただ、一つ確かなことは、“目的”を達成するためならば、“この”衛宮士郎は、たとえ“何”であっても犠牲に出来るという事だ。  ………たとえそれが、“自身の理想” であったとしても。  そして、そんなマスターたちの姿を薄金色の瞳だけが、静かに見つめていた。 【新宿区/一日目・午後】 【[[オルフェ・ラム・タオ]]@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】 [運命力]通常 [状態]軽度の頭痛、釈迦及び彼の中に見たイメージに対する激しい不快感(小康状態)、ゼファー及び彼のイメージする“英雄”に対する恐れと拒絶 [令呪]残り三画 [装備] [道具] [所持金]潤沢 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を入手し本懐を遂げる 0.私は、使命を…… 1.まずは調子を回復させる。 2.衛宮士郎を利用し、小鳥遊ホシノを殺す。アサシンとの戦闘は避ける。 3.バーサーカー(釈迦)とその葬者は次に会えば必ず殺す。………………紛い物が。 4.プロスペラを追跡する。 5.異なる宇宙世紀と、ガンダム───か。 [備考] ※プロスペラから『聖杯戦争の参加者に関するデータ』を渡され、それを全て記憶しました。  虚偽の情報が混ざってる可能性は低いですが、意図的に省いてある可能性はあります。 ※プロスペラの出自が『モビルスーツを扱う時代』であると知りました。  また『ガンダム』の名を認識しました。 【セイバー([[アルトリア・ペンドラゴン〔オルタ〕]])@Fate/Grand Order】 [状態]疲労(小)、胸元に斬傷、魔力消耗(中) [装備]『約束された勝利の剣』 [道具]大量のジャンクフード [所持金] [思考・状況] 基本行動方針:蹂躙と勝利を。 0.………………。 1.食事をとり、少しでも魔力を回復させる。 2.次にアサシンと戦うことがあれば、必ず殺す。……マスター次第、ではあるが。 3.バーサーカー(釈迦)は面倒な相手だった。次は逃さん [備考] 【[[衛宮士郎]]@Fate/Grand Order ‐Epic of Remnant‐ 亜種特異点EX 深海電脳楽土 SE.RA.PH】 [運命力]通常 [状態]健康、オルフェの能力の影響(微) [令呪]残り三画 [装備]干将・莫耶 [道具]無し [所持金]食うには困らない程度 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯は破壊する。聖杯戦争に勝ち抜く気の主従に関しては容赦しない。 1.セイバー(アルトリア)の力を利用するため、オルフェたちに協力する。 2.自分達では対処困難な敵を倒すため、セイバー(アルトリア)を利用する。 3.令呪狩り、黒い魔獣と氷炎怪人、3/31の東京上空でぶつかっていた陣営の調査。優先的に排除したい 4.ヒーローに会ったらダ・ヴィンチの連絡先を教える 5.あの赤い外套の少女は…… [備考] ※グラン・カヴァッロの陣営と非戦協定を結びました。連絡先は交換済です。 ※黒い魔獣と炎氷怪人陣営(紅蓮&フレイザード)の見た目の情報を得ています。 ※3/31に東京上空で戦闘をしていた3陣営(冬のルクノカ、プルートゥ、メリュジーヌ)の戦闘を目撃しています。メリュジーヌは遠方からの観測のため姿形までは認識していません。 ※郊外の2つの市を消滅させた陣営を警戒しています。 【[[おぞましきトロア]]@異修羅】 [状態]健康 [装備]魔剣をたくさん [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:斬るべきものを斬る。 1.葬者に従う [備考] なし       ▲
PREVIOUS[[→>https://w.atwiki.jp/for_orpheus/pages/282.html]]       ◆ 「――――――!」  在り得ないものを見たと、男の目が見開かれる。  小鳥遊ホシノを仕留めるために使用した銃弾は二種。  破壊時にこそ最大の威力を発揮する剣と、空間を捩じ切る剣。それらの宝具を弾頭へと加工したモノだ。  宝具の銃弾への加工は、矢への加工よりもその神秘を劣化させるが、銃器の特性から連射性に優れる。  最初の一発で仕留められれば最上。そうでなくとも、残りの三発で確実に。  都合、四発。それによって小鳥遊ホシノは、間違いなく仕留められるはずだった。  最後の一発に、割り込む者さえ存在しなければ。 「――――――」  それは良い。  想定外ではあるが、意外なことではない。  無関係なマスターが、危機に陥ったマスターを助けに入る、という事もあるだろう。  この都市にはヒーローを自称する数奇なマスターが二人もいるのだし。  だから、在り得ないのは別の事。 「………………」  射線の先で、花弁の盾が解けて消える。  その向こうにいた乱入者の姿が露わになる。  白色の髪、褐色の肌、赤い外套。それらの要素を身に纏った、少女。  そして――自分の弾丸を防いだ楯は、間違いなく己と同じ能力によって作り出されたものだ。 「っ!」  赤い外套の少女と、合うはずのない視線が合う。  その唇が、わかりやすく言葉を紡ぐ。  ―――見えてるわよ、お兄ちゃん。 「引くぞ、セイバー」  即座に狙撃体制を解き、妨害が入らぬよう周囲を警戒していたセイバーへと声を掛ける。  予備銃弾の用意は当然ある。  が、あの少女が本当に自分と同じ能力を持つのなら、そんなものは役に立たない。  むしろ、ここがすでに“相手の射程圏内”だという事の方が問題だ。  相手のサーヴァントの姿が見えない以上、遠距離での撃ち合いなどと言う愚は冒せない。 「………………」  相手の再確認などせず、速やかに屋上から立ち去る。  それでもその脳裏には、赤い外套の少女の姿がチラついていた。       ◆  狙撃手の急襲は終わり、静寂が訪れる。  ホシノはそのダメージから即座には動き出せず、彼女を助けた少女もまた周囲を警戒し動かない。  セイバーの極光を防ぎ切ったアサシンもまた、その少女の存在故に次の行動を選択できない。  そんななかで、セイバーだけが即座に行動を開始した。 「その顔、覚えておくぞ。覚悟しておけ」  彼女は未だに頭痛に苦しむオルフェを抱えると、素早くこの場から去っていく。 「追うか?」 「必要ないわ。それよりもまず、この状況をどうにかしましょう」  相手サーヴァントの所在が分からないことからくる警戒を防ぐためだろう。  実体化した自らのサーヴァントにそう言いながら、少女はこの場に残された二人へと目を向ける。  彼らはどちらも、乱入者である少女たちに警戒と戸惑いを見せている。 (まったく。〈ヒーロー〉を捜していたのに、とんでもない状況に出くわしたわね)  黒いセイバーに謎の狙撃手。  欲しい情報は何一つ得られていないのに、気になることばかりが増えていく。  つい危なかった方を助けてしまったが、これが正しい選択だったのかもわからない。  それでも、このまま黙ったままでいても状況が解決しないことは確かだ。 「初めまして。私はクロエ・フォン・アインツベルン。クロエでいいわ。  言いたいこと、聞きたいこと、いろいろあるでしょうけど、まずはここから離れましょう」  少しでも二人の警戒を解くため、少女――クロエはホシノから離れると、二人へと向き直ってそう自己紹介をした。     §  §  § 「で? あんたらは一体どこのどちら様で?」 「クロエよ、さっきそう名乗ったでしょう。  あ、こっちはアーチャー。真名の方はまだ勘弁してちょうだいね」  あれから場所を移動し、周囲に人気のない路地裏。  ホシノの怪我の応急手当ても終え、全員が一息吐いたところで、アサシンが詰問する。  それに対し、クロエは自身のサーヴァントの紹介も添えて名乗り直す。  しかし彼が未だに警戒を解いていないことは、その傍らに&ruby(ヴェンデッタ){半透明の少女}が現界したままであることからも明らかだ。  一方のホシノは、先程よりは気の抜けた表情を浮かべながら、クロエへと感謝を述べる。 「ありがとうねクロエちゃん、助けてくれて。さすがにもう駄目かと思ったよ~。  私は小鳥遊ホシノ。そっちの黒い方がアサシンで、白い子は……」 「私の名前はヴェンデッタ。ヴェティと呼んでくれてもいいのよ。  ごめんなさいねマスター。私がこうしているだけでも辛いでしょうに、彼ったらすっかり怯えちゃって」 「ううん、大丈夫だよヴェティちゃん、私はまだまだ平気だから」 「おい。誰が怯えてるだ誰が。  そんで、あんたらはなんで俺たちを助けてくれたんだ?」  それは当然の質問だろうと思いながらも、どう答えたものかとクロエは頭を捻る。  が、難しく考えた所で答えが変わるわけではないので、そのまま答えることにした。 「理由は二つ。一つは、その子が危ない目にあっていたから、思わず体が動いたってだけよ」 「思わず体が動いた、ねぇ」 「まあまあアサシン、理由は何でもいいじゃん。結果として助かったんだからさ。  にしても失敗したなぁ、まさか狙撃手がいたなんて。……腕が鈍っちゃったかな」  疑念を向けるアサシンを宥めながら、ホシノはそう独り言ちる。  戦場に街中を避けて公園を選んだ時点では、狙撃手の存在は警戒していたはずだった。  だがいつの間にか狙撃手に対する警戒が抜け落ち、その結果があれだ。  これなら周囲への被害なんて気にせず、市街地で戦った方がまだマシだったかもしれない。 「そんなに気にすることはないわ。だってあの男、あなたの精神に干渉してたもの」 「精神に、干渉?」 「ほらあなた、狙撃されている最中に急に上の空になったでしょう? あれがそう。きっと狙撃手の事も、意識から外されていたのよ。  これはあなたのミスね、ゼファー」 「うっせぇ。分かってるよそんなことは」  ヴェンデッタの非難に言葉悪く返しながらも、アサシンはそれを否定しない。  彼自身、あの戦いで失敗したと考えていたからだ。  あの戦いにおいてゼファーは、ある意味において手加減をした。  相手を殺すことを厭う&ruby(マスター){ホシノ}に配慮し、どのような形であれ、相手を殺さずに済む選択肢を残そうとしたのだ。  だがこちらからの誘いはにべもなく断られ、始まった戦いの最中に、逆に相手からマスターが誘われ、まあそれもアリかと最初は考えた。  しかしセイバーのマスターの思想はアサシンには到底受け入れられるものではなく、結果として決別。  それならば、と絶望的な相性差を見せつけ、撤退する余地を与えようとしてしまったのだ。 (まったく。相性的に有利なはずの相手に反撃されて、その上逃げられるとか。  サーヴァントになっても、俺は変わらず弱いまんまだ。勝利の栄光とは程遠い)  生前のように卑屈になることこそないが、アサシンはそう自虐する。  撤退する余地とは、言い換えれば反撃をする余地でもある。  相手が伏せていた隠し札に気付けず、マスターへの奇襲を許してしまったことを、アサシンは強く悔いていたのだ。  こうなるならば、相性差が判明した時点で殺しておくべきだった、と。  クロエたちへと見せる強い警戒は、ある意味でその表れだった。 「私からも付け加えさせてもらうなら、たとえ街中で戦っても狙撃は防げなかったでしょうね。  いえ、街中で戦っていた方がもっと危険だったかも」  狙撃手について、続くようにクロエが発言する。 「普通なら街中の方が狙撃を防げると思うかもしれないけれど、相手が私の知ってる人ならむしろ逆。  きっとその考えの裏を突くように、初手で狙撃をしてくるでしょうね。  実際に撃たれたホシノなら解ると思うけど、あの三、四発目の弾丸。あれなら壁の二枚や三枚、簡単に貫通できるもの」  通常、街中で狙撃を警戒するのなら、射線の徹る開けた場所に意識を向ける。  だがその裏をかかれ、壁の向こうなどの意識外から狙撃を受ければ、即死はしなくとも重症は免れないだろう。  あとはセイバーか狙撃手、どちらか一方が相手のサーヴァントを少しでも抑えれば、もう一方がマスターに止めを刺し、それで終わりだ。 「ちょっと待て。あの狙撃手が、あんたの知ってる奴だって?」 「ええ。たぶん、ではあるけどね。ちなみに、それが二つ目の理由よ。  もし本当にあの人なら、平和のために女の子を殺すなんてマネ、させる訳にはいかないもの」 「……一応聞くけど、どんな奴なんだ、そいつは?」 「正義の味方よ。誰かを助けるためなら、平気で自分を犠牲にしてしまう……悪にだってなれてしまう、ね」 「なるほど、最悪の相性だな」  オルフェの使命であるディスティニープランは、世界平和を最終目標としている。  それを完全に否定することなど、正義の味方には不可能だろう。精神に干渉するというオルフェの能力が加われば猶更だ。 「……あんたは、そいつの願いが世界平和でも、そいつを止めるのか?」 「当然でしょ。女の子の命は、世界より重いのよ」 「――――――」 「いいことを言うわね。私、あなたのこと好きになりそうよ」  即答で返されたクロエの言葉に、アサシンは目を見開き、ヴェンデッタは笑みを浮かべる。  なるほど。それは是非ともあの男に聞かせてやりたい言葉だ。  まあ言われたところで、あのトンチキ野郎は何も変わらないだろうが。  内心でアサシンはそう思いながら、クロエに対する警戒を一段下げた。 「仲良くなれそうなのは結構だが、この後はどうするつもりなんだ」  それを見抜いたのだろう。今まで沈黙を通していたアーチャーが、そう口を挟んできた。 「私はとりあえず、ホシノに付いて回るつもりよ。  ヒーローも見つからないことだしね」 「ヒーロー? あんたら、あいつらを捜してたのか?」 「一先ずの目的として、ではあるけどね」  〈ヒーロー〉は、ある意味で〈双亡亭〉と並んで有名な存在だ。  クロエたちはそんなヒーローを、今まで捜索していたのだという。  しかし、そのために都市北西部を捜索してみたが、残念ながら当てが外れ、接触できなかった。  仕方がないからと、前に事件のあった都心部へ向かってみたら、ホシノたちの戦闘に出くわしたのだ。 「なるほどな。けどそれがどうして俺のマスターに付いて回ることに繋がるんだ?」 「簡単よ。セイバーたちはあなた達にコテンパンにやられた。なら間違いなくやり返しに来るはず。  そうなると当然、彼らの協力者であるあの狙撃手も付いて来るはずでしょ?  私はね、狙撃手があの人かどうか、どうしても確かめたいの。会ってどうするかは、その時に決めるつもり」  そう口にするクロエの目には、強い意志が宿っている。  この様子では断っても勝手に付いてくるだろうな、と思いつつアサシンは己がマスターへと話を振る。 「らしいけど、どうするマスター」 「うへ? ああ、うん。いいんじゃない?  ……私も、セイバーのマスターにはちょっと用があるし」 「――――――」 「ああ、安心して。あの人の誘いに乗るとかじゃないから。  ……うん、それだけはない」 「………………」  ホシノの返答に、アサシンは僅かに眉を顰める。  今のホシノは、どこか様子がおかしい。いつものだらけた様子が、僅かに影を薄めている。 『ヴェンデッタ』 『あの男の能力は掛かっていないわ。それは確か』  声にすることなく、アサシンは己が半身と言葉を交わす。  ヴェンデッタの能力は、&ruby(アストラル){星辰体}そのものへと感応し、他者の星光へさえ直接干渉を行えるというもの。  この冥界においては魔力もその対象となってはいるが、魔力に寄らないオルフェの能力には直接干渉は行えない。  だが他者と&ruby(リンク){同調}するという共通した性質を応用しその能力に同調、その共振を利用した反動によってダメージを与える事が出来た。  オルフェを襲った頭痛の正体がそれだ。  そして更なる応用として、&ruby(ホシノ){他者}に掛けられた能力も、その逆波長をぶつける事で相殺することを可能とした。  つまり、今のホシノはオルフェの能力の影響下にはない。しかし―――。 『何を見せられたかのか私には分からないけど、あんな状況で呆けてしまうようなものを見せられたのは確かよ』 『あ~、なるほどな。そりゃあ、様子もおかしくなるか』  浮かび上がる心当たりに、ゼファーはさらに深く眉を顰める。  見せつけられたのは、おそらくはトラウマ。十中八九、梔子ユメに関する事だろう。  それは言うなれば、ヴェンデッタと出会う前の自分に、マイナの事を無理矢理思い出させたようなもの。  そんなもの、到底許せるはずがない。  ホシノの様子がおかしいのは、それが原因だろうとアサシンは当たりをつける。  あの男は、ホシノの逆鱗に触れてしまったのだ。 (……許さない)  そしてアサシンの予想に正しく、今のホシノの胸中にあるのは、梔子ユメとの思い出と、それに触れたオルフェへの怒りだった。 (あいつは言ってた。全人類を、能力に見合った地位と職に就けるって。  ならユメ先輩は? そんな世界で、あの人はどうなるの?)  いつもドジを踏んで、失敗したり、騙されてばっかりで、頼りなかった先輩。  どこまでも無鉄砲で、校内随一のバカで、それでも、誰よりも一生懸命だった先輩。  あの男の語る世界で、彼女はいったいどうなるというのか。 (あいつの言う“能力”って、何? どんなに頑張っても、結果がでなきゃ意味がないの?  ううん、ちがう。その世界じゃきっと、頑張ることすら許されない)  あの男は、必要なら自分に従っていた人たちも利用して殺したらしい。  そんな奴の考えた世界で、彼女が無事に過ごせるなんて、到底思えない。  またいつもみたいに騙されて、いいように利用されるに決まってる。 (あいつは、そんな世界を作ることに、私を協力させようとした。  私の心に……ユメ先輩との思い出に、勝手に触れて―――!)  そんなこと、絶対に許せるはずがない。  だから。 (待っていてください、ユメ先輩。  先輩との思い出を汚すやつは、すぐに片付けちゃいますから)  怒りを滲ませるホシノの横顔を見て、アサシンは大きくため息を吐く。 (まったく、あの野郎……マジであの時殺しておくんだったぜ。  まあ仕方ねえ。俺のミスもあるし、セイバーのマスターとの決着が付くまでは、きっちり付き合うとしますかね)  だがサーヴァントはマスターに従うもの。  仏の顔も三度まで、という言葉があるが、必殺の機会はすでに三度以上見逃した。  だからもう、次はない。とアサシンもまた、オルフェに対し絶殺の意志を固めるのだった。 「ってわけだ、ヴェンデッタ。  せっかく起きたところ悪いが、その時が来るまでまた眠っていてくれや」 「仕方ないわね。マスターに無理させる訳にはいかないもの。  けどそれなら、私を起こす間もなくやられる、なんて無様な真似だけはしないでね」 「わかってるよ」  そう言葉を交わし合って、半透明だったヴェンデッタの姿が完全に消える。  同時にホシノが、重い荷物をようやく下したかのように一息を吐いた。  今までかかっていた魔力消費の負荷から、ようやく解放されたのだ。  それを見て、ようやく警戒が解かれたのだと判断し、アーチャーもその緊張を解く。 「協力関係、とまではいかなくても、同行の許可が出たのはありがたい。  けど、今すぐセイバーたちを追うのは少し待って欲しい。  小鳥遊の怪我の事もあるし、まずはどこかで休憩を取るべきだと僕は思うんだが」 「そうだね~。この感じだと、あと半日は全力で走れないかなぁ~」 「半日……」  アーチャーの提案にホシノが賛成する。  彼女が今すぐ追うと言わないのは意外だが、逆を言えば、全力で仕留めるという事でもある。  思っていたよりは冷静であるらしいその様子に、アサシンは一先ずの安堵を溢した。 「んで、どこで休憩するんだ?」 「そうねぇ。私たちの拠点は遠いし……そもそもバレちゃってるし……  できればそっちで用意してくれると助かるんだけど。  あ、そうだ。助けたお礼をくれるって言うんなら、魔力きょ―――」  スコン、と何かを言いかけたクロエを遮るように、何かが彼女の頭へと投げつけられた。  床に落ちて転がった筒状のそれは、アーチャーが投げつけた銀筒だ。 「マスター、条件」 「いいじゃないちょっとくらい。ほんのちょっと、&ruby(キス){味見}するだけだから」 「駄目だ」 「おねがい、ホシノからはなんか美味しそうな感じがするのよ」 「うへ?」  クロエの嘆願を、アーチャーは断固として却下する。  急に名前を呼ばれたホシノは、意味が分からず首を傾げるしかない。  そんな光景を見て、アサシンは遠いものを見るように目を細める。  サーヴァントの戦いはこちらが圧倒した。  マスターの戦いはあちらが上回った。  総合的には、狙撃手という伏せ札を読み切れなかったこちらの負けか。  まあ、当然だろうとアサシンは思う。  俺たちが綴るのは逆襲劇。  しかし逆襲するためには、&ruby(・・・・・・・・・・・・){まず負けなければならない}。  なぜなら逆襲とは、敗者が勝者から勝利の栄光を奪う事なのだから。  ……けれど、それでも、と同時に思う。  逆襲劇を止める気はない。  けどその先で、彼女が自分だけの”勝利”を得られるように、と。 「さあ、&ruby(ヴェンデッタ){逆襲}を始めようか。  ──“勝利”からは、逃げられないんだからさ」 【渋谷区・路地裏/1日目・午後】 【[[小鳥遊ホシノ]]@ブルーアーカイブ】 [運命力]減少(小) [状態]全身に裂傷、片足に裂挫創(いずれも応急手当済み) [令呪]残り3画 [装備]「Eye of Horus」(バッグに偽装)、盾(バッグに偽装) [道具] [所持金]学生相応 [思考・状況] 基本行動方針:生還優先。物騒なのはほどほどに。 0.……許さない。 1.ある程度回復したら、セイバーのマスター(オルフェ)を追跡する。 2.ユメ先輩……。 3.同盟は……もう少し待ってほしい。 4.殺し合わず生還する方法を探す。 [備考] ※夜宵と連絡先を交換しました。 【アサシン([[ゼファー・コールレイン]])@シルヴァリオヴェンデッタ】 [状態]通常 [装備]ナイフ [道具]投擲用ナイフ×? [所持金]諜報活動に支障ない程度(放蕩で散財気味) [思考・状況] 基本行動方針:ホシノの方針に従う。 0.――さあ、逆襲(ヴェンデッタ)を始めよう 1.セイバーのマスター(オルフェ)は必ず殺す。 2.こいつら(クロエとアーチャー)大丈夫か? 3.なにあのロリっ子怖い。あの英雄ほどイカれてないようなのは安心。 [備考] ※情報屋の葬者(脱落済み)と情報のやり取りをしていました。夜宵が交流してたのと同じ相手です。 ※ヴェンデッタの半実体化にはマスターの魔力を必要とし、その能力の使用にはさらなる魔力の消費が必要です。  またゼファーの本来の宝具の使用にはヴェンデッタとの完全同調が必要であり、より膨大な魔力を消費します。 【狂い哭け、罪深き銀の人狼よ・滅奏之型(Silverio Cry Kerberos)】 本来の宝具に変わり、単独で反粒子を使用するために調律した反星辰光(アンチアステリズム)。つまりはスキル、魔力放出(反粒子):A+。 その起動詠唱は冥狼(ケルベロス)に寄せたアレンジが施されている。 基本的な性能は通常の『狂い哭け、罪深き銀の人狼よ』と比べ、干渉性がAAとなった程度。 しかし同時に、反粒子による魔力特効が付属しているため、サーヴァントに対する実際の殺傷性能はそれ以上。 更にはヴェンデッタの星辰光による強化が掛かることで、冥狼(ケルベロス)並みの出力を発揮することが可能となる。 【投擲用ナイフ】 戦闘の補助にと購入した投げナイフ。 特別な効果は何もない。 【[[クロエ・フォン・アインツベルン]]@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 3rei!!】 [運命力]通常 [状態]健康 [令呪]残り三画 [装備]なし [道具]不明 [所持金]雨竜に預けているので、あんまり持ってない [思考・状況] 基本行動方針:生きたい、もう一度。 0.ちょっとだけだからぁ! 1.ホシノたちに同行し、狙撃手の正体を確かめる。 2.〈消滅〉のことは頭が痛い。まあ、放ってはおけないわよね……。 3.〈ヒーロー〉は今どこにいるのかしら。 [備考] ※天堂が持つ〈ヒーロー〉の情報を聞きました。詳細は後の話に準拠します。 ※狙撃手を、自分の知る人物なのでは? と考えています。 【アーチャー([[石田雨竜]])@BLEACH】 [状態]健康 [装備]弧雀 [道具]なし [所持金]数万円程度 [思考・状況] 基本行動方針:クロエを現世に送り届ける。 0.駄目ったら駄目だ。 1.〈消滅〉を討つという点で天堂と合意。ただし、完全に信用はしていない。 2.〈ヒーロー〉ともコンタクトを取りたい。 [備考] ※天堂が持つ〈ヒーロー〉の情報を聞きました。詳細は後の話に準拠します。       ◆ 「くそっ……!」  ダン、と。  握りしめた右手が、新宿における拠点の壁に叩き付けられる。  叩き付けられた右手は確かな痛みを訴えるが、今なお頭を苛む苦痛には及ばない。  あれから幾分か時間が経ち、ある程度マシになってまだこれだ。  この頭痛が生じた直後の痛みなど、筆舌に尽くしがたかいという言葉の意味を正しく理解したほどだ。  ―――だが。  頭痛など、所詮は物理的な痛みに過ぎない。  真にオルフェを苛むものは、それとはまったく別にあった。 「随分と荒れているな。  だがそれを攻めはすまい。悪態を吐ける程度には回復した証拠だ」  そう言いながら部屋に入ってきたのは、一抱えほどもある紙袋にハンバーガーを始めとしたジャンクフードを詰め込んだセイバーだ。  彼女は備え付けのテーブルにドサッと紙袋を置くと、同じく備え付けの椅子にドカッと座り込んだ。  そして徐にジャンクフードを手に取ると、一心不乱に食べ始めた。 「セイ、バー……」  そんなセイバーへと向けて、オルフェは苛立ちも露わにその名を呼ぶ。  彼女は有ろうことか、頭痛に苦しむオルフェを置き去りにジャンクフートを買い漁りに行っていたのだ。  だがそれさえも、オルフェの苛立ちの理由ではない。  そもそも彼女が大量に食事を取っているのは、アサシンに削られた魔力を少しでも回復させるためだ。苛立ちの理由にはなり得ない。  ……そう、アサシンだ。 「あいつは、あの男は一体何なのだ……っ!」  オルフェの苛立ちの正体。  それは小鳥遊ホシノのサーヴァントであるアサシンに対するものだ。  順調だったこれまでの戦果とはまったく異なる、二度に渡ってサーヴァントを仕留め損ねたという事実。  しかも二度目は、あまりにも痛すぎる痛手を受けてのもの。  その事実からくる苛立ちが、オルフェから平常心を失わせていた。  ―――否。  そうやって苛立ちに身を委ねていなければ己を見失ってしまいそうなほどに、オルフェはアサシンを恐れていた。  だが、彼のサーヴァントはそんな逃避を許さない。 「奴が何者かなど、奴自身が語っていただろう。  あれは誰かの使命によって磨り潰された無垢な犠牲者の代表。つまりはただの負け犬だ」 「ただの負け犬が私やおまえを脅かすものか!」 「脅かすとも。言ったはずだ、奴は犠牲者の代表だと。  奴は勝者の栄光を奪う逆襲の牙。“英雄”と呼ばれる者に対して、奴は無類の特効を発揮する。特に、他者の犠牲を強いた英雄にな。  かつての私が、必要に駆られてそうしたように、貴様も何かしらの犠牲を良しとしたのだろう?  その犠牲を当然のものだと思っているから、貴様は奴に足元を掬われたのだ」 「ッ………………!」  オルフェの脳裏に浮かぶのは、彼の自国ファウンデーションの市民達。  彼は“愛”を手に入れディスティニープランを成し遂げるため、敵国の仕業だと偽って自国に核を撃ち込んだ。  ――――当然、彼らの遺伝子に、そんな役割など刻まれていない。  その彼らの中に生き残りがいたと仮定して、真実を知り糾弾してきたとしたら、その時に何と答える?  ディスティニープランが正しいものだと信じている。  その実現のために自らの伴侶たる“愛”を求めたことも、そのために自国を犠牲にしたことも、決して間違いだとは思っていない。  けれど―――。   “―――それで一体“誰”を導くつもりなんだ、あんたは?“  その言葉が、苦痛に喘ぐ脳裏から離れない。  ディスティニープランを管理し、人々を導く者として生み出された。  その使命を果たす事こそ自分の願いであり、そのための犠牲などいくらでも払う覚悟があった。  …………だが。  “愛”を手に入れるために自国の民を犠牲にして、そうまでして求めた“愛”には拒絶され、残されたのはディスティニープランを成し遂げるという使命のみ。  ――では、自分が導くべき人々とは“誰”だ。いったい“誰”を犠牲にすれば、自分は使命を成し遂げられる?   “―――そんなに人類が救いたきゃ、どっか他所でやってくれ” 「………………だまれ」   “―――&ruby(俺たち){他人}を巻き込むなよ、迷惑なんだよおまえらは!” 「黙れ黙れ黙れ………ッ!」  脳裏に響くその声を、浮かび上がる迷いを振り払うために、声を荒げる。  それにより頭痛が酷くなるが、それでいい。痛みに“&ruby(ノイズ){声}”が紛れてくれる。  しかし、セイバーはそれを許さない。 「目を逸らすな。あれはバーサーカーとは違う、&ruby(おまえ){王}が越えねばならない宿命だ」 「ッ! そもそも貴様があの男を殺せていれば、それで済んだ話ではないか!」 「ああ、そうだ。その誹りは甘んじて受けよう。  だが目を逸らしてどうする。逸らせばまたも足を掬われて、今度はその首を喰い千切られるぞ。  なにしろ私に、&ruby(・・・・・・・・・・・){奴に対する勝ち目はない}からな」 「な……!?」 「事実だ、受け入れろ。奴は私にとって、決して敵わぬ天敵だ」  自分で放てないと、あまりにも堂々と宣言するセイバーに、オルフェは堪らず絶句する。  プライドはないのか、という反論が、その金の瞳の圧だけで圧殺される。  プライドがないのではない。目の前の事実を否定し、目を背ける事こそ醜いのだと、そう咎めるように。 「繰り返すが、奴は貴様が、王として乗り越えるべき宿命だ。  私では奴には勝てん。だが、私も奴もサーヴァント。故にマスターである貴様次第で、その勝敗は裏返る」 「ッ……!」 「忘れるな。これは貴様の王聖が問われる戦いだ。  奴とどう相対し、乗り越えるかによって、貴様の王としての資質が決まるだろう」  セイバーは語る。  目を逸らすな。あの男に勝てるかは貴様次第だと。  だが。  ―――無理だ。  そんなこと、出来るはずがない。  ……否。そんなことは、&ruby(・・・・・・・){してはならない}のだ。  脳裏に過ぎるのは、小鳥遊ホシノのアサシン――ではない。  奴に能力を使った時に垣間見た、奴を生み出してしまった光の英雄。  あらゆる困難や強敵を、その意志力だけで踏破した、正真正銘の&ruby(バケモノ){規格外}。  その姿に対して感じるのは―――絶対的な拒絶の感情だ。  だってそうだろう。  ディスティニープランは遺伝子、つまりは才能によって全てを決定することで世界平和を成し遂げる。  だがその英雄は、凡人でありながら“まだだ”の言葉だけで才能という限界を越えた理不尽の権化だ。  セイバーは断言した。自分ではアサシンに勝てないと。  そのセイバーを勝たせるという事は、英雄のように不可能を可能とさせるという事。  だから、そんなことは出来てはならない。  なぜならそれは、生まれによって全てを決めるディスティニープランを、否定するという事に他ならないからだ。 「私は……っ」  どうすればいい。  どうすれば私は、使命を果たせる。  星の光さえも飲み込む闇を前に、私はいったい、どうすれば―――。 「ふむ。今戻ったが、邪魔だったか?」  その言葉とともに、新たな人物が入ってくる。  焦げ付いたような肌に色素の抜け落ちた白髪。この街の住人と同じ日本人だとは信じ難いその風貌。  聖杯戦争のマスターの一人にして、アサシンとの戦いにおいて小鳥遊ホシノを狙撃した狙撃手。  そして、この聖杯戦争における自分の協力者。  名を、衛宮士郎。  “理想”のために全てを……自身にとってかけがえのない者さえ犠牲にした、“&ruby(パブリックヒーロー){公共の正義}”だ。  彼を味方に引き入れることは、アコードの能力を用いれば、そう難しいことではなかった。  なぜなら、ディスティニープランを成し遂げれば、争いの消えた“世界平和”が訪れるからだ。  より多くを救うという理想を持つこの男に、私の使命を否定することは出来ない。  故に、その使命を果たすための命令も、彼には逆らうことなどできない。  否、逆らう事すら思いつかない。 「……いや。大丈夫だ、問題ない。  それよりも、君にはまず礼を言うべきだろう。ありがとう、君のおかげで助かった」 「礼など不要だ。オレはオレの仕事を果たしただけに過ぎないからな。  もっとも、敵マスターを殺し損ねた時点で、仕事としては落第だがね。  どうする? 役に立たない道具を切り捨てるのなら、今の内だと思うが」  ……ああ、そうだ。  何もあのアサシンと直接対峙する必要はない。  セイバーも言っていただろう。奴も所詮はサーヴァントだ、と。  すなわち。 「いや、そのつもりはない。君にはこれからも、私の力になって欲しいと思っているんだ」  衛宮士郎を利用して、小鳥遊ホシノを殺せばいい。  どんな強力なサーヴァントも、マスターを殺せばそれで終わりだ。  そう。越えられない壁を、無理に越える必要はない。  越えられない壁など、迂回してしまえばいいのだから。     §  §  §  それからオルフェは、体調を回復させると言って別室に籠った。  ならば自分がここに留まる理由もない。 「セイバー、仕事があれば連絡するように、あの男が起きたら伝えておいてくれ」  ジャンクフードを食べ続けるセイバーへと言伝を頼みながら、衛宮士郎はオルフェの拠点を後にする。  やるべき事は溜まっている。無駄にできる時間はない。  調査すべき事、排除すべきマスターは、まだまだ生き残っているのだから。 『葬者、このままあの男に協力するつもりか?』  この後の段取りを考えていると、自身のセイバーがそう問いかけてくる。  彼は衛宮士郎の目的――聖杯の破壊及び、聖杯を求めるマスターの抹殺――を知っている。  その彼が、聖杯戦争に勝とうとしているオルフェに協力するのが不思議なのだろう。 「ああ、そのつもりだ。  竜との戦いや双亡亭を破壊するのに、あのセイバーの力は有用だからな」  その問いに、衛宮士郎は肯定を返す。  自分たちの能力では倒すのが困難な敵サーヴァント。それを倒すために、彼らを利用するのだと。  その判断は、ある意味では正しい。  彼らは未だ知らぬことだが、〈双亡亭〉に潜む脅威、その正体は宇宙からの侵略者。紛れもない〈人類の脅威〉である。  対するセイバーの聖剣、その本質は、星を滅ぼす外敵を想定して星そのものが造り出した神造兵装。  つまり、セイバーが小鳥遊ホシノのアサシンに勝てないように、セイバーの聖剣は〈双亡亭〉に対し、特効性能を発揮するのだ。  故に〈双亡亭〉を壊すための方法として、セイバーとそのマスターに協力することは、決して間違いではない。 『こちらが苦手な相手は、得意な奴に任せればいいという事か。  なるほど、納得した。なら、こちらが言うことはない』  衛宮士郎の答えに納得したセイバーは、これ以上その思考を遮らぬようにと沈黙する。  ―――だが。  それが本当にオルフェたちと協力する理由なのか。  それともセイバーの問いを誤魔化すために繕った、ただの言い訳だったのか。  瞳に赤い燐光を秘めた衛宮士郎には、判断することが出来なかった。  ただ、一つ確かなことは、“目的”を達成するためならば、“この”衛宮士郎は、たとえ“何”であっても犠牲に出来るという事だ。  ………たとえそれが、“自身の理想” であったとしても。  そして、そんなマスターたちの姿を薄金色の瞳だけが、静かに見つめていた。 【新宿区/一日目・午後】 【[[オルフェ・ラム・タオ]]@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】 [運命力]通常 [状態]軽度の頭痛、釈迦及び彼の中に見たイメージに対する激しい不快感(小康状態)、ゼファー及び彼のイメージする“英雄”に対する恐れと拒絶 [令呪]残り三画 [装備] [道具] [所持金]潤沢 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を入手し本懐を遂げる 0.私は、使命を…… 1.まずは調子を回復させる。 2.衛宮士郎を利用し、小鳥遊ホシノを殺す。アサシンとの戦闘は避ける。 3.バーサーカー(釈迦)とその葬者は次に会えば必ず殺す。………………紛い物が。 4.プロスペラを追跡する。 5.異なる宇宙世紀と、ガンダム───か。 [備考] ※プロスペラから『聖杯戦争の参加者に関するデータ』を渡され、それを全て記憶しました。  虚偽の情報が混ざってる可能性は低いですが、意図的に省いてある可能性はあります。 ※プロスペラの出自が『モビルスーツを扱う時代』であると知りました。  また『ガンダム』の名を認識しました。 【セイバー([[アルトリア・ペンドラゴン〔オルタ〕]])@Fate/Grand Order】 [状態]疲労(小)、胸元に斬傷、魔力消耗(中) [装備]『約束された勝利の剣』 [道具]大量のジャンクフード [所持金] [思考・状況] 基本行動方針:蹂躙と勝利を。 0.………………。 1.食事をとり、少しでも魔力を回復させる。 2.次にアサシンと戦うことがあれば、必ず殺す。……マスター次第、ではあるが。 3.バーサーカー(釈迦)は面倒な相手だった。次は逃さん [備考] 【[[衛宮士郎]]@Fate/Grand Order ‐Epic of Remnant‐ 亜種特異点EX 深海電脳楽土 SE.RA.PH】 [運命力]通常 [状態]健康、オルフェの能力の影響(微) [令呪]残り三画 [装備]干将・莫耶 [道具]無し [所持金]食うには困らない程度 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯は破壊する。聖杯戦争に勝ち抜く気の主従に関しては容赦しない。 1.セイバー(アルトリア)の力を利用するため、オルフェたちに協力する。 2.自分達では対処困難な敵を倒すため、セイバー(アルトリア)を利用する。 3.令呪狩り、黒い魔獣と氷炎怪人、3/31の東京上空でぶつかっていた陣営の調査。優先的に排除したい 4.ヒーローに会ったらダ・ヴィンチの連絡先を教える 5.あの赤い外套の少女は…… [備考] ※グラン・カヴァッロの陣営と非戦協定を結びました。連絡先は交換済です。 ※黒い魔獣と炎氷怪人陣営(紅蓮&フレイザード)の見た目の情報を得ています。 ※3/31に東京上空で戦闘をしていた3陣営(冬のルクノカ、プルートゥ、メリュジーヌ)の戦闘を目撃しています。メリュジーヌは遠方からの観測のため姿形までは認識していません。 ※郊外の2つの市を消滅させた陣営を警戒しています。 【[[おぞましきトロア]]@異修羅】 [状態]健康 [装備]魔剣をたくさん [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:斬るべきものを斬る。 1.葬者に従う [備考] なし       ▲

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: