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聖杯戦争で飯を食う - (2024/04/22 (月) 02:57:32) の1つ前との変更点

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(1/4)    暗闇の中で幽鬼(ユウキ)は目を覚ました。   (2/4)   「……ん?」  瞼を開けてもいっこうに明るくならない視界に、幽鬼は仰向けのまま首を傾げた。 「……んー?」    なにかがおかしいと、逆方向に首を傾げる。  ただ暗いというのであれば、こうはならない。幽鬼は夜型人間で、暗闇でのゲームの経験もあるのだから、それ用に夜目が利くよう訓練してある。  視力の著しく落ちた右目も、既にものの判別ができないほど濁っているが、明暗ぐらいの区別はつけられる。  しかしこれはおかしい。電柱や深夜営業のコンビニの電灯も、月明かりですら感じられない、深い森の中に入ったも同然の完全な暗闇だ。  少なくとも目を覚ます前の記憶ではまだ左目は健常だった筈だ。両目の機能不全の原因に、まったく心当たりがない。  よもやとうとう右目の機能が停止し、それに引きずられて無事な方の視力も無くなってしまったのか……。  薬の効果がまだ残って寝ぼけたままの愚鈍な思考が良からぬ想像をし出した辺りで、顔にある違和感にやっと気付いた。 「あ、目隠しか」    それも目の部位だけを隠すアイパッチなどではなく、どうやら布を巻きつけて固定して視界の一切を遮断する本格的なタイプだ。  一度気づけば、みるみるうちに身体は覚醒する。幽鬼はベッドから上半身を起こし両手を後頭部に回して、布を留めてる為にあるだろうフックを探す。  自分で付けた憶えがないので、どこに留め具があるか、どうやれば外せるかまでの全部が手探り作業の中、どうにかこうにかフックらしき突起を見つけ、拘束を外す事に成功した。  そうして両腕を前に戻して目隠しを取ろうとする寸前に、六十二回の経験が鍛え上げた第六感が待ったをかけた。    ───まさか、目隠しのままでいるのがルールなんて事は、ないよな?      回した手を停止させたまま、考察する。  ……何らかの条件、アイテムの所持が勝利条件になっているゲームは確かに多い。  ただ過度に行動を制限する条件や拘束はプレイヤーの動きを硬直化させ、結果的にゲームの盛り上がりを欠けさせてしまうだろう。  させるにしても事前にルール説明を施している筈。初手で目隠しを外して自滅するプレイヤーを続出させるなんて、興を削がれること請け合いだ。  少女達が必死に命を懸けて生存を目指し時に他者を蹴落とす、一般的なやり取りが大多数となる観客のご要望にお応えする為、一部の特殊な嗜好をお持ちの少数派には、運営も涙を呑んで切り捨てている事だろう。  ……企画側の心理に立った分析だが、概ね間違ってるとは思わない。  後々になってこれが必要になってくる場面を用意してる可能性はあるが、少なくとも今外してどうこうなるかは考えづらい。  改めて、止めていた腕を前に出して───目を焼き潰すような白の視界を開いた。 「っ……」  パチパチと瞬きして目に入る光量を調節し、少しずつ鳴らしていく。  暗所での訓練と同様、暗所から急に強烈な発光で目を晦ます攻撃にも予測と対処をつけている。  細めで僅かに取得した情報から、幽鬼が今いる場所が個室であるのは把握した。  一人暮らしには十分足りる程度のワンルーム。幽鬼の住宅とそう変わらない(清潔さは考慮しない)。  その中に動くもの───幽鬼めがけて突っ込んでくるような物体が見えないところまで確認して、安全と判断。  焦らずゆっくりと回復に努め、やがて元の、右側が曇りガラスから見る夜の風景みたいになった視界に戻る。  手に持った、外した眼帯を見る。  黒地のベルトっぽくて、目の保護を目的とした肌触りの良さより、見えなくする事自体を目的にしたような造りだ。  先程の幽鬼を見れば、黒いマジックペンで目にラインを引いて隠した、テレビで報道される未成年の犯罪者の写真みたいだったろう。  ルール通知が来るまではじっとしていよう。  ゲームのセオリー通り待機しつつ、少しでもゲームのテーマを予想するべく部屋を見渡そうとして……突如として幽鬼の頭に鈍重な衝撃が走った。 「う……っ?」    咄嗟の反射で手で庇う動作を取るが、痛みの出どころは外からではなかった。  頭蓋の内側、空洞に収まった幽鬼の脳味噌が、突如として湧いた文字の羅列に混乱して生じた痛みだった。    「何だこれ……聖杯、戦争……?」  次々と入ってくる……いや、始めから知っていた事であるとでもいうように浮かび上がってくる謎の説明書き。  学校のテストで答えの法則が分からないまま、勝手に答えの解き方を強制的に理解させられる、そんな矛盾の並行。  冥界。死霊。聖杯。葬者。マスター。魔術師。英霊。サーヴァント。令呪。領域。  どれだけ混乱していても入っていた言葉に脳は理路整然としたと説明を受け入れているのも、また気持ち悪い。  まさかいよいよ運営はプレイヤーの脳に直接情報を植え付ける技術を導入したというのか。  最初の【防腐処理】から改造人間ばりに身体の隅々を弄られても気に留めなかった幽鬼だが、唯一手つかずの生の自分だった部位まで侵されたというのには、少なからず思うところがあるらしい。  自暴自棄の世捨て人同然にこの業界に入っておきながら、なんだかんだで自分の体に愛着があったのか。  現実逃避的なノスタルジーに浸りそうになった時、今度こそ現実で自分に近づく黒い影に気づいた。 「マスター、目が覚めた?」 「マ……?」     迎撃反応を取らなかったのは、殺気がなかったから。  幾ら一瞬しか見れなかった暗闇でも、生き物の存在を見落としたりはしない。  右目の不利をフォローするべく他の感覚も鋭敏に開くよう調整している。  なのに幽鬼は、そこに立つ人物を今の今まで認識できなかった。  そして現在は、別の理由で認識を忘れた。 「─────────────────」    芸術が、置かれていた。    銀を融かして液体にしてから、一本一本までを頭髪に変えた色。  肌は正に陶器そのもの。毛穴もしみも見当たらない、なのに柔らかさを備えた奇跡の素材。  その肌で覆われた肢体は天上の楽園の果実。見るだけで舌が甘くなる、五感を突き抜ける禁忌の劇薬。  ……ゲームの趣旨上、参加するプレイヤーはみんな可愛い  美人、ロリータ、カッコいいの属性、嗜好(フェティッシュ)の違いはあれど、殆どが整った容姿をしている。  中にはかなり特殊な属性持ちをねじ込んだり、権力者を骨まで蕩かせる傾国レベルの美女もいた。ちなみにどちらも同一人物だ。 『彼女』はその子とは同一にして対極。  職人がパーツの一点一点細部に至るまでを精魂を絞り尽くす気で綿密に製造し、それらを一部の隙間もなく組み合わせて出来上がった、珠玉の工芸品とでもいうべきか。  ここまで来ると『美人』を外れて『芸術』 のカテゴリに入ってしまってる。ジャンルが変わっているのだ。 「……マスター?」 「えっ? ぁあ私か。うん、そうだよね多分……」  返事がこないのを不審に思っての再度の呼びかけに、初対面の人と会話し慣れてない陰気な子みたいに、ごにょごにょとしてしまう。  顔立ちからして日本人じゃない。流石に運営も外人を勧誘すると国際問題に発展してしまうのか、ゲームで見たプレイヤーは日本人ばかりだ。  直視した顔には、さっきまでの幽鬼と同じ形状のアイマスクが巻かれている。  目を隠された美人というのはそれだけで倒錯的な魅力を与えるが、そこ抜きでも絶世の美形である。  スリットが深く太腿部位の露出は高いが華美のない、喪服の印象を与える衣装。  視線が隠され引き締められた表情が、麗人の雰囲気を強めている。  サーヴァントという、このゲームでの自分の相棒は、胸の前で左腕を構え、軍人よろしく機敏に敬礼をした。 「召喚に応じ参上した。  サーヴァント、アルターエゴ。登録真名、ヨルハ2号B型。  これよりあなたの指揮下に入る」      (3/)    プレイヤーネーム、幽鬼。本名、反町友樹。  職業は殺人ゲームの参加者。普段は夜間学校に通っている。    ゲームとは一種のショージビジネスで、「観客」の要望に応えての生きるか死ぬかのデスゲームを行う。  生存すれば運営から賞金が貰える。プレイヤーの参加目的は概ねこれ。  運営の正体は謎。少なくとも日本国内であればこういった非合法のゲームを何年も回していけるだけの強いバックがいる。  運営について詮索する者やゲームの存続自体を危うくする者は、当然排除される。ゲーム外部であっても例外ではない。    プレイヤーは運営側から事前に説明を受け参加するかを決める。強制ではなく拒否権がある。  選定基準は主にふたつ。女性であることと、美人であること。  年齢制限は特に設けられてないが、条件と生存率の問題から十代前後であるのが殆ど。    ゲーム内容は千差万別。とはいえある程度のルール、セオリーは共通している。  エリア内を一定時間まで生き延びる生存型。制限時間内にエリア外へ出る脱出型。個人もしくはチームを組んで直接殺し合う対戦型。  大まかにこのみっつに分類されるが、特殊なルールや複数組み合わせた種目になる場合もある。  ゲームエリアには無数のトラップが設置され、殺し合う必要性がなくても犠牲者が出る。  一度のゲームの参加人数は、十人以下から数百名までバラつきがある。  プレイヤーはゲームのテーマに合わせたコスプレ衣装を着用する。一般的な学生服からタオル一枚の変態間際までジャンルは様々。  難易度は調整され、死亡率はそう高くない。初心者でも運と実力次第で生き残れる目がある。  ただし観客を飽きさせない為、完全なゼロにはならない。必ず一人は脱落するようになる仕掛けがある。平均的な生存率は7割程度。    プレイヤーには〈防腐処理〉が施される。人が死ぬのは見たくても、あまりに生々しかったりスプラッタなシーンは好まない観客に向けた配慮だ。  出血は白いフェルト状の何かに変わり止血される。全身をバラバラに切り刻まれても肉や内臓が露出する事はない。  死体が時間経過で腐ったりもしないし、体臭も消されてる。人死にを奨励しながらクリーンな職場を約束している。  ゲーム中の負傷は無料で治療してもらえる。運営の医療技術は一般より傑出している。手足の切断ぐらいなら傷跡も残さず元に戻してくれる。  パーツの紛失やデリケートな部位は適用外だが、腕の良い「職人」から本物と大差ない精巧な義肢を提供してくれる。  幽鬼のプレイスタイルは「利他」。徹底した生存を目的にしたスタイル。  複数人が参加するゲームでは他者の協力を必要とする場面が多く、生存者を増やす事をクリア条件の緩和に繋がる。  ゲーム中の素行は生存者から伝わるので、有効的に接して評判を高めておけば、以後のゲームでも協力を取り付けやすくなる。    幽鬼がゲームに参加する動機は、記録の為。  前人未到の九十九連勝。特に景品が賞与が与えられるという話は聞かない。  師匠が目指し、自分が勝手に引き継ぐ形で、誰も届いた事のない記録に辿り着く事を人生の目標にしている。  現在幽鬼のスコアは六十ニ連勝。様々な負傷を抱えつつも継続的に更新中。  (4/4) 「……まあ、こんなとこかな」    サーヴァントに対して幽鬼の最初のアクションは、自分の来歴を明かす事だった。    なにはともあれ自己紹介は大事だ。  生死のかかった状況では、武器や能力よりも仲間の信頼関係がものをいう。  名前や経験を晒してカードを開示する行為は、情報という安心を相手に与える。  ただこの場合、安心を得たいのは幽鬼の方だった。 「……もう一度聞くけど、ゲームや運営についてとかは、本当に知らないんだな?」 「知らない。ここは死後の世界で、これは聖杯戦争。  私はサーヴァントとして召喚され、マスターであるあなたと共に戦う。知識にあるのはそれだけ」 「まじか……」  信じたくないことに、幽鬼が今置かれた状況は、ゲームとは無関係の拉致であるというのだ。  しかも勝手に死亡判定を下され、地獄だか天国だかに連行されて、だ。意味不明にもほどがある。プレイヤーネームが幽鬼だからって本当に幽霊にするやつがあるか。 「それであなたは……西暦1万年越えの未来からやってきた、人類を襲うエイリアンと戦うアンドロイドだと」 「そう。この私はその時代の機体そのものではなく霊基……記録されたパーソナルデータを再現した機体だけど、ヨルハにはバックアップ機能があるから、その意味では私は私のままであるとも言える」  なにやら哲学的な答えを出すのは、幽鬼に充てがわれたサーヴァントだ。  英雄というなら歴史の授業で習った武将でも出てくるかと思いきや、なんと彼女は二十二世紀どころではない遥か未来のロボットだという。  モデル体型のゴシックな服を着た美女に機械っぽい部品は一分も見当たらず、偏執的な思想を感じさせる。一万年も機械を弄ってれば、ネコ型ロボットでは物足りなくなるということか。  ちなみに今の幽鬼も、彼女に近い趣向の服を着ている。  聞けば部隊の正式なユニフォームらしく、幽鬼の世界のゲームのルールに合わせた形だ。明らかに配慮の出力を間違えてる。   『補足:正確には西暦11945年。エイリアンの繰り出す機械生命体相手に人類は月面に避難。  人類はアンドロイドにより構成された人類軍を発足。人類軍直属の最新機体として2B及びヨルハ機体は開発された』  いやに渋く重厚な機械音声が、宙に浮いた物体から流れ出す。  人間型のアンドロイドと対称的に、小箱の下にアームを取り付けた、いかにもロボットといった風体だ。 「人型ロボットの後に浮いた箱が喋ってもあんま驚かないんだよな……」 「当機は箱ではない。随行支援ユニット・ポッド042。ヨルハ機体に随行し任務の支援を行うユニット。  サーヴァント・2Bの保有する装備(スキル)として2Bと共に召喚された。  推奨:マスター・幽鬼の聖杯戦争に関する知識の反芻」  「ポッド……マスターに失礼。彼女は人間。私達が守らなければならない存在」    機械である彼女にとって自分は創造主……神様の一族にでも映っているのだろうか。  自分を守る事を義務か責務であるかの語るのを見て、幽鬼は質問した。   「ヨルハはさ、何を願うんだ?」  普段はクラス名で呼ぶか、真名の略称の2Bの名で呼んで欲しいとの事だが、アルターエゴだなんてのは語呂が悪いし、2Bも記号的すぎてしっくり来ない。  幽鬼の中で一番しっくり来る、ヨルハという名で呼ぶ事にした。  夜葉。もしくは寄葉か。プレイヤーネームらしくていい名だと思う。 「私はサーヴァント。人間でありマスターであるあなたに従い、守るのが任務」 「それはヨルハって機体の役目でしょ。あなたにはあなたで叶えたいのがあるんじゃないの?  サーヴァントにある知識って、そうあるんだけど」  ありがたい助言通り、記録にある文言を引き合いに出して逃げ道を塞ぐ。  横目に見たポッドはアームの作動音だけ鳴らして黙っている。都合のいい時だけ機械っぽくしやがって。 「従うっていうのなら、ちゃんと聞かせてよ。  何が目的なのか分からない相手に背中を預けるなんて、出来ないでしょ?」  卑怯な言い方をしてる自覚はあるけど、言葉自体は本音だ。  ヨルハは目隠しをしていても分かるぐらいに葛藤している。平時は無表情でいるだけに、僅かな変化で感情の機微が見えてしまう。  機械相手の戦いでは、腹芸を使ったりしないんだろうか。  幽鬼が言えた口ではないが、対人関係が少し気になった。  ヨルハは黙り、幽鬼も黙る。ポッドの稼働音も心なしか止まっている。  妙な間が空いてしまい、こうなるとひとり立ち去るか話題を変えたりしたいが、こちらが持ちかけた手前そうもいかない。  観念して答えが出るまで根比べの気持ちでヨルハに視線を戻す。  まだ、彼女の瞳を見られていない。 戦う兵器にこんなにも美しい造形を施した変態共だ。眼球にだって妥協を許さず、最上級の宝石を丸ごと嵌め込んでいてもおかしくない。  全貌が露わになった日には、物質精神の両面で発光を放って、こちらを失明させてきやしないだろうか。  秘められたものを暴きたい欲求がぞくぞくと背筋を掻いている中で、やがてヨルハが艶黒子を乗せた唇を薄く開いた。   「…………会いたい……ヒトが、いる」  親に内緒で予定していた逢引きを白状する女の子みたいに。恥じ入るように、そう告げる。     「そっか」  毒気が抜かれる、とはこの事か。  信頼がどうだと警戒していたのが馬鹿らしくなってきた。  なんだ。全然人らしいじゃないか、こいつ。  任務も使命もないのに好き好んで殺人ゲームをやってる自分なんかよりも。   「願い……願いか……」  ゲームから生還して運営から送られる賞金は一度につき数百万円程度。  数をこなして賭けの額が上がったり、お気に入りのスポンサーがついて色をつけたりしてくれるが、だいたいこの当たりが相場。  未成年の少女が数日で手に入れるには破格の額だが、こんなゲームに金目的で参加するのは、それっぽっちでは足りないだけの負債を抱えているようなのばかりなのが実情。  幽鬼のようにゲームの勝利数を目的にしている変わり種や、いつかの伽羅のような殺人鬼の隔離所兼狩り場として使うヤバい枠もいるわけだが。  まあ要するに、目的を達成するには一発のギャンブルよりも地道にクリアしていくしかない、人生逆転ゲームを期待するには少々夢のない世界なのである。 「願いねえ……」  その点今回のゲームはハイリスクハイリターンだ。  生還枠を極限まで絞り、その分配当は何倍にも跳ね上がる。  億万長者。世界征服。ベタすぎる野望も聖杯とやらの力なら、可能だという。  運営の技術力も大概だが、科学の域を越えた神秘の起こす奇跡は、現実の延長でしかない殺人ゲームなんて及びもつかない。    幽鬼の場合であれば───未だ空席の九十九連勝、その位置に容易に送り込ませてくれるのだろう。  あるいは、独力でそこまで達成出来るよう、超人的な身体能力を幽鬼に与えてもいい。  あるいは、あるいは─────────。  悪趣味な見世物にされる可哀想な境遇の少女達に、人並みの幸福を供給してあげたりも。  幽鬼が殺した誰かを、幽鬼に関わらず死んだ誰かを、犠牲になった全ての参加者を、家族友人の元に帰してあげたりも。  こんな不幸のそもそもの原因である運営組織自体を、地上から痕跡ごと消し去ったりも。  聖杯なら、可能なのだ。  世の不幸を、減らせるのだ。    誰だって殺したくて殺してるわけじゃない。そんな希少種はキャラメル頭の集団だけで十分だ。  力試し? 社会に馴染めないはぐれ者の収容所? それが死亡遊戯である必要がどこにある。   プレイヤーの大半は、世知辛い事情から運営の誘いに乗ってる。  そんな子達の手を汚さず怪我させず、平和な社会で生かしてあげられるのだ。誰がどう見たって人道的で皆が救われる方法だ。文句を言われる筋合いがどこにある。      「ふざけんな……」  「え?」     大ありだよクソ馬鹿が。     そりゃあ、過去の幽鬼の生活は一般社会からしたら亡霊だ。  いわゆる不幸な家庭の事情で学校も行かず、昼夜は逆転、ゲームに参加して帰っては休んで、次のゲームに備えるの繰り返し。  他人から見れば碌な人生じゃない。引き留めようと人情を売ってくる外部の大人もいた。  あの頃は体が生きてるだけで、自分は死人も同然だった。    けれど幽鬼は生き方を決めた。目標を持った。物語を手に入れた。  他人に何を言われようと、これが自分の選んだ道だって堂々と宣言してやれる誇りが胸に宿ったのだ。  知識を得る為に定時制だが学校にも行ってる。アパートの家賃もきっちり払ってる。これ以上の義務が必要か? ないだろ?    それなのに、こっちの許可もなく連れてきて死人扱いして。  挙げ句やらされるのは、これまでのゲームとは規模も難易度と桁違いの殺し合い。  幽鬼がやってきた試練が、難関が、苦悩が、取るに足らない児戯だと虚仮にされてる気がして、例えようもないぐらい腹が立ってきた。  この試合は幽鬼のみならず、過去全てのプレイヤーに中指を突き立てる挑発だ。  (上等だ。受けてやるよ)  腹を決めた後の決断は早い。幽鬼の長所のひとつだ。  聖杯なんかに幽鬼の戦歴を汚されたくない。九十九連勝記録は幽鬼だけで成し遂げる。  よってこの戦いは「無かったこと」にする。  戦って、勝って、優勝して、それらをまるっと忘れて元の世界に戻り、何喰わぬ顔でゲームを続ける。   「マスター……?」 「ああ、ごめん。何でもない。うん、今度は私の番だよね」    さりとて、気分だけで悠々と勝ち抜けると思うほど頭は怒りに支配されてはいない。  蓄積した経験を総動員するだろうし、何よりヨルハの協力は不可欠だ。  このゲームの最重要要素、お互いに連携するべく密に取り合う必要がある。  恐らく無傷とはいかない。首尾よく勝っても、死ぬような怪我を負ってるかもしれない。  最低、負傷の全快は聖杯に叶えさせてもらおう。そしてどうせ万能だというのなら、ついでに治して欲しい部位がある。   「右目の視力さ、過去のゲームで負傷して以来、どんどん落ちちゃってんだよね。今じゃもう明るさぐらいしか分からない。こればかりは運営もお手上げでさ。  何でも願いが叶うんでしょ? ならこの目、元に戻してもらおうかなって」 「……それだけ?」 「うん、それだけ」  予定外の強制イベントに巻き込んでくれたツケに、治療代を請求する。  皆が垂涎の的になる聖杯を、小娘一人の目玉一個で台無しにする。  それが幽鬼にとって最大の意趣返しだ。やけくそとも言えるが、どうせ得るものもないのだから気分だけは良くして帰りたい。   『不可解:マスター・幽鬼の生体情報には他にも負傷が見られる。  聖杯によって得られるリソースとは消費がまったく釣り合っていない』 「いいんだよこれで。きっかり同量・同質の重さだ」  顔を見合わせて不可解そうに首を傾げる(ポッドは全身を傾けてる)二人。  こんなところは機械っぽいなあ。ベタといえばベタな反応が微笑ましい。    さて、方針は決まった。後は行動だ。  基本は従来の〈利他〉で行く。協力者を集め、人を増やし、最大効率の生存手段を模索する。  詰め込まれた知識の検証。領域や冥界といった地の調査。有効的なマスターとの接触。戦闘時の符丁合わせ。やる事は多い。  血なまぐさい目標を果たすため。  血なまぐさい日常に戻るため。  いつか、この身が朽ちて通り名と同じになる日まで。  私は今日から、聖杯戦争で飯を食う。 【CLASS】  アルターエゴ   【真名】  ヨルハ2号B型@NieR:Automata 【ステータス】 筋力B 耐久B 敏捷B 魔力E 幸運C 宝具B   【属性】  秩序・中庸   【クラススキル】  騎乗:B 単独行動:B   【保有スキル】 ヨルハ機体:A  地球上に展開されたエイリアンの機械生命体を駆逐するべく投入された、人類会議直属の最新アンドロイド部隊。  対機械、対異星存在に対する特攻・特防効果を得る。  異世界の技術が流用されてるとはいえ量産された機械の為神秘としてのランクは低い。  しかし西暦10000年を越えた先の技術は、単純な威力であれば並大抵の神秘を凌駕する。   ポッド042:B+  随行支援ユニット、ポッド042による支援行動。  情報収集、作戦の助言、機体の牽引、射撃・プログラムによる攻撃と多方面でサポートを行う。たまには撫でて労ってあげよう。  最大で3機まで同時に随行可能。   処刑装置:B  2Bはセイバーの本当の名前ではない。  正式名称はヨルハ2号E型───executor、裏切り者のアンドロイドの処刑モデル。  中度の真名隠匿効果があり、これが突破された場合は、機械・人型属性への攻撃力が上昇する代わりに、精神的に不安定になる。   人類に栄光あれ:─  これは、呪いか。それとも、罰か。   ヨルハ部隊の(表向きの)存在意義。その表明と宣誓。  人類を守護するために造られたアンドロイドは、人を攻撃する事に強い忌避感を持つ。  それがたとえ、既に存在しない創造主だとしても。  人類に対する殺傷の禁止、及び人属性のサーヴァントには攻撃力が低下する。逆に人を守る行為においてはプラス判定。  つまり自分と敵のマスター、双方が天秤にかけられた場合には───。   【宝具】 『寄葉計画(プロジェクト・ヨルハ)』 ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:10000人  衛星軌道上に置かれた前線基地「バンカー」の仮想設置。  それによるヨルハ部隊のオペレーションが宝具となったもの。  具体的には英霊の座にアクセスする事による高度な情報検索、武器や飛行ユニット等の支給、他のヨルハ部隊員を簡易召喚しての援護行動が挙げられる。  予め霊基データのバックアップを取り、自身が消滅してからの再召喚すら可能だが、必要な魔力の関係上令呪での支援が現実的(それでも再召喚としてはかなりの低コスト)。  さらに魔力や土地の条件が重なれば、バンカー自体を召喚し無数のヨルハ部隊の展開も行える。本企画では基本的に使用されない。   『壊レタ世界ノ歌(ザ・エンド・オブ・ヨルハ)』 ランク:E 種別:対機宝具 レンジ:― 最大捕捉:1人  宝具『寄葉計画』の破棄、あるいは2Bが機能停止したのを条件にして発動する。  随行支援ユニット、ポッド042に高位の単独行動スキルを付与。  データサルベージによる2Bの復活、その間にヨルハ機体9S、もしくは脱走した旧ヨルハ機体A2を代替召喚する。  これは2B個人の宝具ではなく、ヨルハ部隊全機に備わった機能でもなく、ポッド042にのみ備わった奇跡。  敵の殲滅能力はない。世界を変革する力もない。未来を自らの手で獲得する小さな宝具。  使用回数は1回のみ。   【weapon】  NFCS(近距離攻撃管理システム)。小剣、大剣、槍、手甲のうち二種を携行して戦闘を行う。   【人物背景】  異星人の来襲により地球を追われ、月に逃れた人類の栄光を取り戻すべく戦うアンドロイド、その最新鋭モデル。  遥か過去に絶滅した人類と、道具である機械生命体に滅ぼされたエイリアンによる、指し手のいない代理戦争の駒にされ、命もないのに殺し合う。   【サーヴァントとしての願い】  もう一度、9Sと……。   【マスターへの態度】  マスターである以上に初めて目の当たりにした生きた人類なので、最重要護衛対象として扱う。  人類のモデルと見做すには大分普遍性から外れている幽鬼個人については、若干困惑気味。 【マスター】  幽鬼@死亡遊戯で飯を食う   【マスターとしての願い】  さしあたっては、目の視力の治療。それ以上を望むのはフェアプレー精神に欠けると思っている。   【能力・技能】  六十回以上の殺人ゲームをクリアした経験と知識。ひと通りの武器を扱え、その場の環境を利用する機転にも富んでいる。  クリア効率や他のプレイヤーと協力を結びやすい点から「利他」のスタンスを取っているが、いざという時の損切りする切り替えは非常に早い。  ゲームのプレイヤーには「防腐処理」という処置が施されている。  ゲームを円滑に進める、観客への配慮のためのこの処置により、体臭は消え、出血は白いフェルト状の綿になってすぐに止血される。  ゲーム運営の医療技術は極めて優れており、手足を切断しても跡も残さず復元する事が可能。ただし切除部位が激しく損壊する等で回収不可能になった場合は精巧な義肢が用意される。また眼球といった精巧な部位も再生は不可能で、代替も造れない。  幽鬼は過去のゲームの負傷で左手の中指小指を失い義肢を付け、右目の視力が低下している。このハンデを補うため反響定位、エコーロケーションを訓練中。   【人物背景】  本名、反町友樹。  命を賭けた生き残りゲームで賞金を得る裏営業に天職を見出し……それ以外に生き甲斐を見出だせず、師の目標だった前人未踏のゲーム九十九連勝を引き継ぎ死亡遊戯で飯を食っている。  4巻「ロワイヤルパレス」終了直後、初めての弟子を手にかけ車で帰路につく途中から。 【方針】  基本はやはり利他・生存のスタンス。情報収集に専念しながら攻略法を探っていく。どうしようもないと判断すれば優勝に切り替え。   【サーヴァントへの態度】  めっちゃ美人。  今回のゲームの最大の要素である以上コミュニケーションは必須であると捉えている。  ポッドは小うるさい奴だと思っている。
(1/4)    暗闇の中で幽鬼(ユウキ)は目を覚ました。   (2/4)   「……ん?」  瞼を開けてもいっこうに明るくならない視界に、幽鬼は仰向けのまま首を傾げた。 「……んー?」    なにかがおかしいと、逆方向に首を傾げる。  ただ暗いというのであれば、こうはならない。幽鬼は夜型人間で、暗闇でのゲームの経験もあるのだから、それ用に夜目が利くよう訓練してある。  視力の著しく落ちた右目も、既にものの判別ができないほど濁っているが、明暗ぐらいの区別はつけられる。  しかしこれはおかしい。電柱や深夜営業のコンビニの電灯も、月明かりですら感じられない、深い森の中に入ったも同然の完全な暗闇だ。  少なくとも目を覚ます前の記憶ではまだ左目は健常だった筈だ。両目の機能不全の原因に、まったく心当たりがない。  よもやとうとう右目の機能が停止し、それに引きずられて無事な方の視力も無くなってしまったのか……。  薬の効果がまだ残って寝ぼけたままの愚鈍な思考が良からぬ想像をし出した辺りで、顔にある違和感にやっと気付いた。 「あ、目隠しか」    それも目の部位だけを隠すアイパッチなどではなく、どうやら布を巻きつけて固定して視界の一切を遮断する本格的なタイプだ。  一度気づけば、みるみるうちに身体は覚醒する。幽鬼はベッドから上半身を起こし両手を後頭部に回して、布を留めてる為にあるだろうフックを探す。  自分で付けた憶えがないので、どこに留め具があるか、どうやれば外せるかまでの全部が手探り作業の中、どうにかこうにかフックらしき突起を見つけ、拘束を外す事に成功した。  そうして両腕を前に戻して目隠しを取ろうとする寸前に、六十二回の経験が鍛え上げた第六感が待ったをかけた。    ───まさか、目隠しのままでいるのが[[ルール]]なんて事は、ないよな?      回した手を停止させたまま、考察する。  ……何らかの条件、アイテムの所持が勝利条件になっているゲームは確かに多い。  ただ過度に行動を制限する条件や拘束はプレイヤーの動きを硬直化させ、結果的にゲームの盛り上がりを欠けさせてしまうだろう。  させるにしても事前にルール説明を施している筈。初手で目隠しを外して自滅するプレイヤーを続出させるなんて、興を削がれること請け合いだ。  少女達が必死に命を懸けて生存を目指し時に他者を蹴落とす、一般的なやり取りが大多数となる観客のご要望にお応えする為、一部の特殊な嗜好をお持ちの少数派には、運営も涙を呑んで切り捨てている事だろう。  ……企画側の心理に立った分析だが、概ね間違ってるとは思わない。  後々になってこれが必要になってくる場面を用意してる可能性はあるが、少なくとも今外してどうこうなるかは考えづらい。  改めて、止めていた腕を前に出して───目を焼き潰すような白の視界を開いた。 「っ……」  パチパチと瞬きして目に入る光量を調節し、少しずつ鳴らしていく。  暗所での訓練と同様、暗所から急に強烈な発光で目を晦ます攻撃にも予測と対処をつけている。  細めで僅かに取得した情報から、幽鬼が今いる場所が個室であるのは把握した。  一人暮らしには十分足りる程度のワンルーム。幽鬼の住宅とそう変わらない(清潔さは考慮しない)。  その中に動くもの───幽鬼めがけて突っ込んでくるような物体が見えないところまで確認して、安全と判断。  焦らずゆっくりと回復に努め、やがて元の、右側が曇りガラスから見る夜の風景みたいになった視界に戻る。  手に持った、外した眼帯を見る。  黒地のベルトっぽくて、目の保護を目的とした肌触りの良さより、見えなくする事自体を目的にしたような造りだ。  先程の幽鬼を見れば、黒いマジックペンで目にラインを引いて隠した、テレビで報道される未成年の犯罪者の写真みたいだったろう。  ルール通知が来るまではじっとしていよう。  ゲームのセオリー通り待機しつつ、少しでもゲームのテーマを予想するべく部屋を見渡そうとして……突如として幽鬼の頭に鈍重な衝撃が走った。 「う……っ?」    咄嗟の反射で手で庇う動作を取るが、痛みの出どころは外からではなかった。  頭蓋の内側、空洞に収まった幽鬼の脳味噌が、突如として湧いた文字の羅列に混乱して生じた痛みだった。    「何だこれ……聖杯、戦争……?」  次々と入ってくる……いや、始めから知っていた事であるとでもいうように浮かび上がってくる謎の説明書き。  学校のテストで答えの法則が分からないまま、勝手に答えの解き方を強制的に理解させられる、そんな矛盾の並行。  冥界。死霊。聖杯。葬者。マスター。魔術師。英霊。サーヴァント。令呪。領域。  どれだけ混乱していても入っていた言葉に脳は理路整然としたと説明を受け入れているのも、また気持ち悪い。  まさかいよいよ運営はプレイヤーの脳に直接情報を植え付ける技術を導入したというのか。  最初の【防腐処理】から改造人間ばりに身体の隅々を弄られても気に留めなかった幽鬼だが、唯一手つかずの生の自分だった部位まで侵されたというのには、少なからず思うところがあるらしい。  自暴自棄の世捨て人同然にこの業界に入っておきながら、なんだかんだで自分の体に愛着があったのか。  現実逃避的なノスタルジーに浸りそうになった時、今度こそ現実で自分に近づく黒い影に気づいた。 「マスター、目が覚めた?」 「マ……?」     迎撃反応を取らなかったのは、殺気がなかったから。  幾ら一瞬しか見れなかった暗闇でも、生き物の存在を見落としたりはしない。  右目の不利をフォローするべく他の感覚も鋭敏に開くよう調整している。  なのに幽鬼は、そこに立つ人物を今の今まで認識できなかった。  そして現在は、別の理由で認識を忘れた。 「─────────────────」    芸術が、置かれていた。    銀を融かして液体にしてから、一本一本までを頭髪に変えた色。  肌は正に陶器そのもの。毛穴もしみも見当たらない、なのに柔らかさを備えた奇跡の素材。  その肌で覆われた肢体は天上の楽園の果実。見るだけで舌が甘くなる、五感を突き抜ける禁忌の劇薬。  ……ゲームの趣旨上、参加するプレイヤーはみんな可愛い  美人、ロリータ、カッコいいの属性、嗜好(フェティッシュ)の違いはあれど、殆どが整った容姿をしている。  中にはかなり特殊な属性持ちをねじ込んだり、権力者を骨まで蕩かせる傾国レベルの美女もいた。ちなみにどちらも同一人物だ。 『彼女』はその子とは同一にして対極。  職人がパーツの一点一点細部に至るまでを精魂を絞り尽くす気で綿密に製造し、それらを一部の隙間もなく組み合わせて出来上がった、珠玉の工芸品とでもいうべきか。  ここまで来ると『美人』を外れて『芸術』 のカテゴリに入ってしまってる。ジャンルが変わっているのだ。 「……マスター?」 「えっ? ぁあ私か。うん、そうだよね多分……」  返事がこないのを不審に思っての再度の呼びかけに、初対面の人と会話し慣れてない陰気な子みたいに、ごにょごにょとしてしまう。  顔立ちからして日本人じゃない。流石に運営も外人を勧誘すると国際問題に発展してしまうのか、ゲームで見たプレイヤーは日本人ばかりだ。  直視した顔には、さっきまでの幽鬼と同じ形状のアイマスクが巻かれている。  目を隠された美人というのはそれだけで倒錯的な魅力を与えるが、そこ抜きでも絶世の美形である。  スリットが深く太腿部位の露出は高いが華美のない、喪服の印象を与える衣装。  視線が隠され引き締められた表情が、麗人の雰囲気を強めている。  サーヴァントという、このゲームでの自分の相棒は、胸の前で左腕を構え、軍人よろしく機敏に敬礼をした。 「召喚に応じ参上した。  サーヴァント、アルターエゴ。登録真名、ヨルハ2号B型。  これよりあなたの指揮下に入る」      (3/)    プレイヤーネーム、幽鬼。本名、反町友樹。  職業は殺人ゲームの参加者。普段は夜間学校に通っている。    ゲームとは一種のショージビジネスで、「観客」の要望に応えての生きるか死ぬかのデスゲームを行う。  生存すれば運営から賞金が貰える。プレイヤーの参加目的は概ねこれ。  運営の正体は謎。少なくとも日本国内であればこういった非合法のゲームを何年も回していけるだけの強いバックがいる。  運営について詮索する者やゲームの存続自体を危うくする者は、当然排除される。ゲーム外部であっても例外ではない。    プレイヤーは運営側から事前に説明を受け参加するかを決める。強制ではなく拒否権がある。  選定基準は主にふたつ。女性であることと、美人であること。  年齢制限は特に設けられてないが、条件と生存率の問題から十代前後であるのが殆ど。    ゲーム内容は千差万別。とはいえある程度のルール、セオリーは共通している。  エリア内を一定時間まで生き延びる生存型。制限時間内にエリア外へ出る脱出型。個人もしくはチームを組んで直接殺し合う対戦型。  大まかにこのみっつに分類されるが、特殊なルールや複数組み合わせた種目になる場合もある。  ゲームエリアには無数のトラップが設置され、殺し合う必要性がなくても犠牲者が出る。  一度のゲームの参加人数は、十人以下から数百名までバラつきがある。  プレイヤーはゲームのテーマに合わせたコスプレ衣装を着用する。一般的な学生服からタオル一枚の変態間際までジャンルは様々。  難易度は調整され、死亡率はそう高くない。初心者でも運と実力次第で生き残れる目がある。  ただし観客を飽きさせない為、完全なゼロにはならない。必ず一人は脱落するようになる仕掛けがある。平均的な生存率は7割程度。    プレイヤーには〈防腐処理〉が施される。人が死ぬのは見たくても、あまりに生々しかったりスプラッタなシーンは好まない観客に向けた配慮だ。  出血は白いフェルト状の何かに変わり止血される。全身をバラバラに切り刻まれても肉や内臓が露出する事はない。  死体が時間経過で腐ったりもしないし、体臭も消されてる。人死にを奨励しながらクリーンな職場を約束している。  ゲーム中の負傷は無料で治療してもらえる。運営の医療技術は一般より傑出している。手足の切断ぐらいなら傷跡も残さず元に戻してくれる。  パーツの紛失やデリケートな部位は適用外だが、腕の良い「職人」から本物と大差ない精巧な義肢を提供してくれる。  幽鬼のプレイスタイルは「利他」。徹底した生存を目的にしたスタイル。  複数人が参加するゲームでは他者の協力を必要とする場面が多く、生存者を増やす事をクリア条件の緩和に繋がる。  ゲーム中の素行は生存者から伝わるので、有効的に接して評判を高めておけば、以後のゲームでも協力を取り付けやすくなる。    幽鬼がゲームに参加する動機は、記録の為。  前人未到の九十九連勝。特に景品が賞与が与えられるという話は聞かない。  師匠が目指し、自分が勝手に引き継ぐ形で、誰も届いた事のない記録に辿り着く事を人生の目標にしている。  現在幽鬼のスコアは六十ニ連勝。様々な負傷を抱えつつも継続的に更新中。  (4/4) 「……まあ、こんなとこかな」    サーヴァントに対して幽鬼の最初のアクションは、自分の来歴を明かす事だった。    なにはともあれ自己紹介は大事だ。  生死のかかった状況では、武器や能力よりも仲間の信頼関係がものをいう。  名前や経験を晒してカードを開示する行為は、情報という安心を相手に与える。  ただこの場合、安心を得たいのは幽鬼の方だった。 「……もう一度聞くけど、ゲームや運営についてとかは、本当に知らないんだな?」 「知らない。ここは死後の世界で、これは聖杯戦争。  私はサーヴァントとして召喚され、マスターであるあなたと共に戦う。知識にあるのはそれだけ」 「まじか……」  信じたくないことに、幽鬼が今置かれた状況は、ゲームとは無関係の拉致であるというのだ。  しかも勝手に死亡判定を下され、地獄だか天国だかに連行されて、だ。意味不明にもほどがある。プレイヤーネームが幽鬼だからって本当に幽霊にするやつがあるか。 「それであなたは……西暦1万年越えの未来からやってきた、人類を襲うエイリアンと戦うアンドロイドだと」 「そう。この私はその時代の機体そのものではなく霊基……記録されたパーソナルデータを再現した機体だけど、ヨルハにはバックアップ機能があるから、その意味では私は私のままであるとも言える」  なにやら哲学的な答えを出すのは、幽鬼に充てがわれたサーヴァントだ。  英雄というなら歴史の授業で習った武将でも出てくるかと思いきや、なんと彼女は二十二世紀どころではない遥か未来のロボットだという。  モデル体型のゴシックな服を着た美女に機械っぽい部品は一分も見当たらず、偏執的な思想を感じさせる。一万年も機械を弄ってれば、ネコ型ロボットでは物足りなくなるということか。  ちなみに今の幽鬼も、彼女に近い趣向の服を着ている。  聞けば部隊の正式なユニフォームらしく、幽鬼の世界のゲームのルールに合わせた形だ。明らかに配慮の出力を間違えてる。   『補足:正確には西暦11945年。エイリアンの繰り出す機械生命体相手に人類は月面に避難。  人類はアンドロイドにより構成された人類軍を発足。人類軍直属の最新機体として2B及びヨルハ機体は開発された』  いやに渋く重厚な機械音声が、宙に浮いた物体から流れ出す。  人間型のアンドロイドと対称的に、小箱の下にアームを取り付けた、いかにもロボットといった風体だ。 「人型ロボットの後に浮いた箱が喋ってもあんま驚かないんだよな……」 「当機は箱ではない。随行支援ユニット・ポッド042。ヨルハ機体に随行し任務の支援を行うユニット。  サーヴァント・2Bの保有する装備(スキル)として2Bと共に召喚された。  推奨:マスター・幽鬼の聖杯戦争に関する知識の反芻」  「ポッド……マスターに失礼。彼女は人間。私達が守らなければならない存在」    機械である彼女にとって自分は創造主……神様の一族にでも映っているのだろうか。  自分を守る事を義務か責務であるかの語るのを見て、幽鬼は質問した。   「ヨルハはさ、何を願うんだ?」  普段はクラス名で呼ぶか、真名の略称の2Bの名で呼んで欲しいとの事だが、アルターエゴだなんてのは語呂が悪いし、2Bも記号的すぎてしっくり来ない。  幽鬼の中で一番しっくり来る、ヨルハという名で呼ぶ事にした。  夜葉。もしくは寄葉か。プレイヤーネームらしくていい名だと思う。 「私はサーヴァント。人間でありマスターであるあなたに従い、守るのが任務」 「それはヨルハって機体の役目でしょ。あなたにはあなたで叶えたいのがあるんじゃないの?  サーヴァントにある知識って、そうあるんだけど」  ありがたい助言通り、記録にある文言を引き合いに出して逃げ道を塞ぐ。  横目に見たポッドはアームの作動音だけ鳴らして黙っている。都合のいい時だけ機械っぽくしやがって。 「従うっていうのなら、ちゃんと聞かせてよ。  何が目的なのか分からない相手に背中を預けるなんて、出来ないでしょ?」  卑怯な言い方をしてる自覚はあるけど、言葉自体は本音だ。  ヨルハは目隠しをしていても分かるぐらいに葛藤している。平時は無表情でいるだけに、僅かな変化で感情の機微が見えてしまう。  機械相手の戦いでは、腹芸を使ったりしないんだろうか。  幽鬼が言えた口ではないが、対人関係が少し気になった。  ヨルハは黙り、幽鬼も黙る。ポッドの稼働音も心なしか止まっている。  妙な間が空いてしまい、こうなるとひとり立ち去るか話題を変えたりしたいが、こちらが持ちかけた手前そうもいかない。  観念して答えが出るまで根比べの気持ちでヨルハに視線を戻す。  まだ、彼女の瞳を見られていない。 戦う兵器にこんなにも美しい造形を施した変態共だ。眼球にだって妥協を許さず、最上級の宝石を丸ごと嵌め込んでいてもおかしくない。  全貌が露わになった日には、物質精神の両面で発光を放って、こちらを失明させてきやしないだろうか。  秘められたものを暴きたい欲求がぞくぞくと背筋を掻いている中で、やがてヨルハが艶黒子を乗せた唇を薄く開いた。   「…………会いたい……ヒトが、いる」  親に内緒で予定していた逢引きを白状する女の子みたいに。恥じ入るように、そう告げる。     「そっか」  毒気が抜かれる、とはこの事か。  信頼がどうだと警戒していたのが馬鹿らしくなってきた。  なんだ。全然人らしいじゃないか、こいつ。  任務も使命もないのに好き好んで殺人ゲームをやってる自分なんかよりも。   「願い……願いか……」  ゲームから生還して運営から送られる賞金は一度につき数百万円程度。  数をこなして賭けの額が上がったり、お気に入りのスポンサーがついて色をつけたりしてくれるが、だいたいこの当たりが相場。  未成年の少女が数日で手に入れるには破格の額だが、こんなゲームに金目的で参加するのは、それっぽっちでは足りないだけの負債を抱えているようなのばかりなのが実情。  幽鬼のようにゲームの勝利数を目的にしている変わり種や、いつかの伽羅のような殺人鬼の隔離所兼狩り場として使うヤバい枠もいるわけだが。  まあ要するに、目的を達成するには一発のギャンブルよりも地道にクリアしていくしかない、人生逆転ゲームを期待するには少々夢のない世界なのである。 「願いねえ……」  その点今回のゲームはハイリスクハイリターンだ。  生還枠を極限まで絞り、その分配当は何倍にも跳ね上がる。  億万長者。世界征服。ベタすぎる野望も聖杯とやらの力なら、可能だという。  運営の技術力も大概だが、科学の域を越えた神秘の起こす奇跡は、現実の延長でしかない殺人ゲームなんて及びもつかない。    幽鬼の場合であれば───未だ空席の九十九連勝、その位置に容易に送り込ませてくれるのだろう。  あるいは、独力でそこまで達成出来るよう、超人的な身体能力を幽鬼に与えてもいい。  あるいは、あるいは─────────。  悪趣味な見世物にされる可哀想な境遇の少女達に、人並みの幸福を供給してあげたりも。  幽鬼が殺した誰かを、幽鬼に関わらず死んだ誰かを、犠牲になった全ての参加者を、家族友人の元に帰してあげたりも。  こんな不幸のそもそもの原因である運営組織自体を、地上から痕跡ごと消し去ったりも。  聖杯なら、可能なのだ。  世の不幸を、減らせるのだ。    誰だって殺したくて殺してるわけじゃない。そんな希少種はキャラメル頭の集団だけで十分だ。  力試し? 社会に馴染めないはぐれ者の収容所? それが死亡遊戯である必要がどこにある。   プレイヤーの大半は、世知辛い事情から運営の誘いに乗ってる。  そんな子達の手を汚さず怪我させず、平和な社会で生かしてあげられるのだ。誰がどう見たって人道的で皆が救われる方法だ。文句を言われる筋合いがどこにある。      「ふざけんな……」  「え?」     大ありだよクソ馬鹿が。     そりゃあ、過去の幽鬼の生活は一般社会からしたら亡霊だ。  いわゆる不幸な家庭の事情で学校も行かず、昼夜は逆転、ゲームに参加して帰っては休んで、次のゲームに備えるの繰り返し。  他人から見れば碌な人生じゃない。引き留めようと人情を売ってくる外部の大人もいた。  あの頃は体が生きてるだけで、自分は死人も同然だった。    けれど幽鬼は生き方を決めた。目標を持った。物語を手に入れた。  他人に何を言われようと、これが自分の選んだ道だって堂々と宣言してやれる誇りが胸に宿ったのだ。  知識を得る為に定時制だが学校にも行ってる。アパートの家賃もきっちり払ってる。これ以上の義務が必要か? ないだろ?    それなのに、こっちの許可もなく連れてきて死人扱いして。  挙げ句やらされるのは、これまでのゲームとは規模も難易度と桁違いの殺し合い。  幽鬼がやってきた試練が、難関が、苦悩が、取るに足らない児戯だと虚仮にされてる気がして、例えようもないぐらい腹が立ってきた。  この試合は幽鬼のみならず、過去全てのプレイヤーに中指を突き立てる挑発だ。  (上等だ。受けてやるよ)  腹を決めた後の決断は早い。幽鬼の長所のひとつだ。  聖杯なんかに幽鬼の戦歴を汚されたくない。九十九連勝記録は幽鬼だけで成し遂げる。  よってこの戦いは「無かったこと」にする。  戦って、勝って、優勝して、それらをまるっと忘れて元の世界に戻り、何喰わぬ顔でゲームを続ける。   「マスター……?」 「ああ、ごめん。何でもない。うん、今度は私の番だよね」    さりとて、気分だけで悠々と勝ち抜けると思うほど頭は怒りに支配されてはいない。  蓄積した経験を総動員するだろうし、何よりヨルハの協力は不可欠だ。  このゲームの最重要要素、お互いに連携するべく密に取り合う必要がある。  恐らく無傷とはいかない。首尾よく勝っても、死ぬような怪我を負ってるかもしれない。  最低、負傷の全快は聖杯に叶えさせてもらおう。そしてどうせ万能だというのなら、ついでに治して欲しい部位がある。   「右目の視力さ、過去のゲームで負傷して以来、どんどん落ちちゃってんだよね。今じゃもう明るさぐらいしか分からない。こればかりは運営もお手上げでさ。  何でも願いが叶うんでしょ? ならこの目、元に戻してもらおうかなって」 「……それだけ?」 「うん、それだけ」  予定外の強制イベントに巻き込んでくれたツケに、治療代を請求する。  皆が垂涎の的になる聖杯を、小娘一人の目玉一個で台無しにする。  それが幽鬼にとって最大の意趣返しだ。やけくそとも言えるが、どうせ得るものもないのだから気分だけは良くして帰りたい。   『不可解:マスター・幽鬼の生体情報には他にも負傷が見られる。  聖杯によって得られるリソースとは消費がまったく釣り合っていない』 「いいんだよこれで。きっかり同量・同質の重さだ」  顔を見合わせて不可解そうに首を傾げる(ポッドは全身を傾けてる)二人。  こんなところは機械っぽいなあ。ベタといえばベタな反応が微笑ましい。    さて、方針は決まった。後は行動だ。  基本は従来の〈利他〉で行く。協力者を集め、人を増やし、最大効率の生存手段を模索する。  詰め込まれた知識の検証。領域や冥界といった地の調査。有効的なマスターとの接触。戦闘時の符丁合わせ。やる事は多い。  血なまぐさい目標を果たすため。  血なまぐさい日常に戻るため。  いつか、この身が朽ちて通り名と同じになる日まで。  私は今日から、聖杯戦争で飯を食う。 【CLASS】  アルターエゴ   【真名】  ヨルハ2号B型@NieR:Automata 【ステータス】 筋力B 耐久B 敏捷B 魔力E 幸運C 宝具B   【属性】  秩序・中庸   【クラススキル】  騎乗:B 単独行動:B   【保有スキル】 ヨルハ機体:A  地球上に展開されたエイリアンの機械生命体を駆逐するべく投入された、人類会議直属の最新アンドロイド部隊。  対機械、対異星存在に対する特攻・特防効果を得る。  異世界の技術が流用されてるとはいえ量産された機械の為神秘としてのランクは低い。  しかし西暦10000年を越えた先の技術は、単純な威力であれば並大抵の神秘を凌駕する。   ポッド042:B+  随行支援ユニット、ポッド042による支援行動。  情報収集、作戦の助言、機体の牽引、射撃・プログラムによる攻撃と多方面でサポートを行う。たまには撫でて労ってあげよう。  最大で3機まで同時に随行可能。   処刑装置:B  2Bはセイバーの本当の名前ではない。  正式名称はヨルハ2号E型───executor、裏切り者のアンドロイドの処刑モデル。  中度の真名隠匿効果があり、これが突破された場合は、機械・人型属性への攻撃力が上昇する代わりに、精神的に不安定になる。   人類に栄光あれ:─  これは、呪いか。それとも、罰か。   ヨルハ部隊の(表向きの)存在意義。その表明と宣誓。  人類を守護するために造られたアンドロイドは、人を攻撃する事に強い忌避感を持つ。  それがたとえ、既に存在しない創造主だとしても。  人類に対する殺傷の禁止、及び人属性のサーヴァントには攻撃力が低下する。逆に人を守る行為においてはプラス判定。  つまり自分と敵のマスター、双方が天秤にかけられた場合には───。   【宝具】 『寄葉計画(プロジェクト・ヨルハ)』 ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:10000人  衛星軌道上に置かれた前線基地「バンカー」の仮想設置。  それによるヨルハ部隊のオペレーションが宝具となったもの。  具体的には英霊の座にアクセスする事による高度な情報検索、武器や飛行ユニット等の支給、他のヨルハ部隊員を簡易召喚しての援護行動が挙げられる。  予め霊基データのバックアップを取り、自身が消滅してからの再召喚すら可能だが、必要な魔力の関係上令呪での支援が現実的(それでも再召喚としてはかなりの低コスト)。  さらに魔力や土地の条件が重なれば、バンカー自体を召喚し無数のヨルハ部隊の展開も行える。本企画では基本的に使用されない。   『壊レタ世界ノ歌(ザ・エンド・オブ・ヨルハ)』 ランク:E 種別:対機宝具 レンジ:― 最大捕捉:1人  宝具『寄葉計画』の破棄、あるいは2Bが機能停止したのを条件にして発動する。  随行支援ユニット、ポッド042に高位の単独行動スキルを付与。  データサルベージによる2Bの復活、その間にヨルハ機体9S、もしくは脱走した旧ヨルハ機体A2を代替召喚する。  これは2B個人の宝具ではなく、ヨルハ部隊全機に備わった機能でもなく、ポッド042にのみ備わった奇跡。  敵の殲滅能力はない。世界を変革する力もない。未来を自らの手で獲得する小さな宝具。  使用回数は1回のみ。   【weapon】  NFCS(近距離攻撃管理システム)。小剣、大剣、槍、手甲のうち二種を携行して戦闘を行う。   【人物背景】  異星人の来襲により地球を追われ、月に逃れた人類の栄光を取り戻すべく戦うアンドロイド、その最新鋭モデル。  遥か過去に絶滅した人類と、道具である機械生命体に滅ぼされたエイリアンによる、指し手のいない代理戦争の駒にされ、命もないのに殺し合う。   【サーヴァントとしての願い】  もう一度、9Sと……。   【マスターへの態度】  マスターである以上に初めて目の当たりにした生きた人類なので、最重要護衛対象として扱う。  人類のモデルと見做すには大分普遍性から外れている幽鬼個人については、若干困惑気味。 【マスター】  幽鬼@死亡遊戯で飯を食う   【マスターとしての願い】  さしあたっては、目の視力の治療。それ以上を望むのはフェアプレー精神に欠けると思っている。   【能力・技能】  六十回以上の殺人ゲームをクリアした経験と知識。ひと通りの武器を扱え、その場の環境を利用する機転にも富んでいる。  クリア効率や他のプレイヤーと協力を結びやすい点から「利他」のスタンスを取っているが、いざという時の損切りする切り替えは非常に早い。  ゲームのプレイヤーには「防腐処理」という処置が施されている。  ゲームを円滑に進める、観客への配慮のためのこの処置により、体臭は消え、出血は白いフェルト状の綿になってすぐに止血される。  ゲーム運営の医療技術は極めて優れており、手足を切断しても跡も残さず復元する事が可能。ただし切除部位が激しく損壊する等で回収不可能になった場合は精巧な義肢が用意される。また眼球といった精巧な部位も再生は不可能で、代替も造れない。  幽鬼は過去のゲームの負傷で左手の中指小指を失い義肢を付け、右目の視力が低下している。このハンデを補うため反響定位、エコーロケーションを訓練中。   【人物背景】  本名、反町友樹。  命を賭けた生き残りゲームで賞金を得る裏営業に天職を見出し……それ以外に生き甲斐を見出だせず、師の目標だった前人未踏のゲーム九十九連勝を引き継ぎ死亡遊戯で飯を食っている。  4巻「ロワイヤルパレス」終了直後、初めての弟子を手にかけ車で帰路につく途中から。 【方針】  基本はやはり利他・生存のスタンス。情報収集に専念しながら攻略法を探っていく。どうしようもないと判断すれば優勝に切り替え。   【サーヴァントへの態度】  めっちゃ美人。  今回のゲームの最大の要素である以上コミュニケーションは必須であると捉えている。  ポッドは小うるさい奴だと思っている。

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