気付けば、私は私の知らない地球にいた。 この世界、西暦という紀元で呼ばれている地球では宇宙に人は進出していない。だから、スペーシアンとアーシアンの対立というものは存在していないらしいし、私が生まれて育った水星は未だに人類未踏の地となっている。何か不思議な気分だな。 アド・ステラでは当然の様に存在していたパーメットもMSも存在しない。……だから当然、ここにはエアリエルもいない。私の家族がいないのは心細い、それでもエアリエルがこの聖杯戦争というものに巻き込まれなかったことにはホッとしている。 そう、聖杯戦争。ここはマスターと呼ばれる参加者と、聖杯っていうものの力でそのマスターのペアになる様に呼ばれたサーヴァントっていう凄い力を持った幽霊……みたいな人が最後の一組になるまで争って、そして優勝した組はなんでも願いが叶えられる儀式、らしい。 なんで、私がそのマスターとして呼ばれたのかなんて分からない。アスティカシア学園で学生をしていた筈の私は、気付いたらこの場所にいて、勝手にマスターということになっていた。 それでいきなり願いが叶えられる命を賭けた殺し合いをしろ、と言われても困ってしまう。 だから、考える時間が欲しいと私は私のサーヴァントにお願いをしていた。 「あの、ライダーさん。いますか?」 「おう、ここにいるぜ」 「うひゃあ!?」 何もいないところから聞こえてきた声にびっくりしながら振り向くと、そこには大昔の記録映像でしか見たことないような船乗りの服を着たお爺さん、私のサーヴァントであるライダーさんの姿があった。霊体化というものらしいけど正直慣れない。 真名も教えて貰っている。クリストファー・コロンブスという船長さんだそうだ。大昔の歴史については知らなかったけれど、ミオリネさんと一緒に育てていたとても馴染み深い野菜であるトマトを世界に広めたのがこの人だというのだからとても驚いた。 お爺さんとのやり取りなんて水星くらいでしかなかったけれど、コロンブスさんは水星のお爺さんに比べるととても明るくてエネルギッシュな人だった。戸惑う私に聖杯戦争の[[ルール]]やこの世界のことを丁寧に教えてくれたり、私のいるアド・ステラや私の置かれている状況を親身になって聞いてくれたりと信頼できるいい人だ。 「俺を呼ぶってことは方針は決めたってことだよな?」 「は、はい!」 すうっと息を大きく吸って、吐く。 これがコロンブスさんの納得してもらえる答えになるかは分からない。 それでも、ここは悩んで悩んで出た答えを正直に話そう、そう思った。 「わ、私、夢があるんです。いつか、水星に学校を建てるって」 「ほう、それじゃあそれが嬢ちゃんの聖杯に賭ける望みってことか?」 「い、いえ!あの、なんというか、この夢を聖杯戦争とか、そういうので叶えるのはなんか違うんじゃないかなって、そう思うんです!」 私は、水星に学校に建てたい。 でも、それはアスティカシア学園で勉強して、色んなことを覚えて、そうやって叶えていくもので、戦争で誰かを蹴落としてポンと叶えて貰う望みではない。こんな形で叶えるのは、学園に送り出してくれたお母さんや私の夢を応援してくれた人達を騙している様で嫌な気持ちになる。そう思った。 「そうすると、聖杯に賭ける望みはねえっていうのが嬢ちゃんの答えって訳だ」 「はい、私はこういう方法で叶えたい望みなんてありません」 「ならどうする、棄権するか?棄権したところで嬢ちゃんが元の世界に帰れるって訳でもねえんだぞ」 「……それも、分かっています。だから戦う事はします」 戦う、という決意は伝える。 コロンブスさんが言う通り、この聖杯戦争には棄権[[ルール]]なんていうものはない。それに棄権したところでこの東京から出る手段がないなら棄権する意味がない。私はお母さんやエアリエル、ミオリネさんや皆がいるアド・ステラに帰りたい。 「私は私のいた世界に帰りたいです。でも帰れる方法は分かりません。そんな私が今出来る事は聖杯戦争で戦うことくらいです。棄権すれば、逃げれば、この聖杯戦争で襲われることはないかもしれません。でも、戦えば、進んでみたらアド・ステラに帰る方法が分かるかもしれません。私みたいな境遇の参加者の人や協力してくれる人が見つかるかもしれません。だから私、棄権はしません。聖杯戦争で戦います。でも、あまり人を殺すとか、そういうことは出来ればやりたくないです」 そう、一息に伝えた。 サーヴァントにも叶えたい望みがあるから聖杯戦争に参加しているっていうことはコロンブスさんに教えて貰った。内容は聞いていないけれど、コロンブスさんも聖杯に叶えて欲しい望みがあることも。 そういう人から見たら私の方針はあまりよく思われないかもしれない。 「一つ確認だ。もしも、もしも聖杯戦争に勝ち残る以外でアド・ステラに帰る手段が見つかったとしたら、嬢ちゃんはどうする?」 「か、帰ります。でも、コロ……ライダーさんが私がいなくなった後でも勝ち残れる様に、マスターの資格を他の人に渡すとかやれることは全力でやってから帰ります!」 これも本当のこと。アド・ステラには帰りたいけれどここまで親身になってくれたコロンブスさんを裏切るような真似はしたくない。出来るだけのことはしてから帰るつもりだ。 痛いぐらいの沈黙。コロンブスさんはくるんっと伸びている顎鬚の先を弄りながら考え事をしている。 なんて返事がくるかは分からない。ドキドキと胸の鼓動が聞こえてくるくらいに大きくなってきた。 「……ま、そこまでこっちを尊重してくれるっていうんならそこが妥協ラインか」 ふうーっと大きなため息を一つついた後に、しょうがなさそうにコロンブスさんが私に笑いかけ、右手を差し伸ばしてくる。 「いいぜ、嬢ちゃんの方針は聞かせてもらった。改めて契約成立といこうじゃねえか」 「い、いいんですか?」 「応よ!巻き込まれた嬢ちゃん……『マスター』の立場は分かってるつもりだ。そんな中でもお前さんは『逃げる道』じゃなくて『進む道』を選んでくれた!サーヴァントとしちゃこんなにありがたい話はねえさ。マスターの道は困難だが、こと諦めねえってことに関しちゃ俺ァ相当よ。諦めずにマスターを元の世界に帰してやろうじゃねえか」 そのコロンブスさんの返事に、こみあげてくる嬉しさに私は差し伸ばされた右手をとって握手をした。私のサーヴァントがコロンブスさんで本当に良かったと思う。 お母さん。やっぱりお母さんの言う通りだね。進んでみたからこうやってコロンブスさんも協力してくれたよ。 お母さん、エアリエル、ミオリネさん。私、絶対に帰るから。それまで待っててね。 ◇ 能天気な笑顔を浮かべる嬢ちゃんにブンブンと握られた腕を振られながら俺は作った笑顔を崩さない。 何事も値踏みは必要だ。 それが、命を預けなきゃならねえ相棒のポジションであるならなおの事。噛み合いが悪そうならそもそも出航することすら見送らなきゃいけなくなる。誰だって沈むと分かっている船に乗ろうとなんざ思わねえ。当然の話だ。 そこで俺を召喚したマスターの嬢ちゃんは俺が背を預けるに足るマスターかどうかという話になる。 スタンス。ここに関しては問題ねえ。 あの嬢ちゃんはかなりのお人好しのようだが、聖杯戦争に勝ち残る事自体は当面の目標として飲み込んでくれちゃいる。不要な犠牲は出したくねえと甘い事を言っているが、それはまあ許容範囲、妥協できるラインだ。穏健派な考えだがその分他の参加者と交渉の予知は生まれやすい。何分俺の地力じゃあ神話に出てくる様なサーヴァント相手じゃ分が悪いのもあって共闘を方針に入れて立ち回る方がやりやすい。懸念事項があるとすりゃ元の世界に帰る手段が見つかっての途中棄権だが、それに関しちゃ協力するフリをして上手い事潰してやりゃあいい。あの素直さ、信じ込みやすさであれば俺の口先で丸め込めるだろう。 身体スペック。少々不安は残る。 元の世界じゃある程度は鍛えていたのか動きは悪くねえが、だからといって年相応のガキだ。軍人でも魔術師でもねえ以上どうしたって鉄火場に慣れた奴に比べれば地力は不測するだろうし俺が嬢ちゃんを守る比重は高くなる。立ち回りは多少頭を使わないといけねえだろう。 精神力。これに関しちゃあ文句なしだ。 自分の命の危機であっても何が出来るかを判断する力と体を動かせる度胸。命の取り合いには慣れてねえが命の危機と隣り合わせの仕事でもしていたのか。何にしろ窮地に強えっていうのは明確な長所と言えるだろう。 そして何よりも評価しているのは嬢ちゃんの信条だ。『逃げたら一つ、進めば二つ』母親からの受け売りらしいが良い言葉だ。戻ることで得られるものもあるが諦めず進んだ先の方がより多くのものが手に入る。その理屈には大賛成だ。もし会うことがあったら握手して讃えてやりたいくらいだぜ。 結論として、当面手を組む相手としちゃあ悪くねえ。もっと強い戦闘力を持ったマスターもいるかもしれねえが、嬢ちゃんの評価点は扱いやすさと諦めの悪さだ。嬢ちゃんの方からは分からねえが、俺からすれば好ましい気質だと言える。よっぽどのことでもなければ切り捨てることは考えなくていいっていうのはありがたい話だ。この様な縁をお恵みくださった主には感謝を捧げなきゃいけねえだろう。 加えて何よりも好ましいのは嬢ちゃんのおかれた環境だ。まだ学校に籍を置いている若造どもによる新興企業の立ち上げ?禁忌とされていた技術による新規事業?業界トップシェアの財団のご令嬢と嬢ちゃんが主要メンバー? ハッハァ!最ッッッ高に儲かりそうな話じゃねえか!!! 嬢ちゃんの願いを叶えてやった暁にゃあアド・ステラとかいう歴史を辿った世界に受肉してその儲け話に一枚噛ませてもらいてえところだ。その為にも事前投資として売れるだけの恩は売っておかなきゃならねえ。 グフフフ、さあて今回の航海の第一目標は定まった。どれだけの困難があったところで後はもう進むだけだ。 嬢ちゃんの座右の銘に敬意を表して『逃げたら一つ、進めば二つ』の精神でガンガン進んで行こうじゃねえか!! 【CLASS】 ライダー 【真名】 クリストファー・コロンブス@Fate/Grand Order 【性別】 男性 【属性】 中立・悪 【ステータス】 筋力C 耐久B 敏捷D 魔力E 幸運EX 宝具A 【クラス別スキル】 対魔力:D 魔術に対する抵抗力。詠唱が一工程(シングルアクション)の魔術を無効化。魔力除けのアミュレット程度の耐性。 騎乗:B 乗り物を乗りこなす能力。Bランクでは、大抵の乗り物は乗りこなせるが、幻想種は乗りこなせないレベルである。 【固有スキル】 嵐の航海者:B 船を駆り、船員、船団といった集団を統率するスキル。 「軍略」と「カリスマ」を兼ね備えている。これ程の指揮力を以ってしても、第一回航海時には、前例の無さ、過酷さが故に船員達が反乱寸前の状態になった。 不屈の闘志:C あらゆる苦痛、絶望、状況に絶対に屈しない極めて強固な意思を示すスキル。 彼の場合、その対象は「自分の夢の実現を阻むあらゆる因難」と定義される。問題に対する瞬発的な抵抗力というよりは「決して諦めない」という継続力に通じる在り方。そう――諦めない限り、夢は必ず叶うのだ。 コンキスタドール:EX 大航海時代、航海の果てに未開地を征服した者のスキル。 未開の地への侵攻、支配、略奪、奴隷化などの手際の良さを示す。厳密に言えば、航海の結果「アメリカ大陸」を征服した者こそをコンキスタドールと呼ぶ向きもあるが、その源流――「スペインからの征服者」という概念を最初に発生させた者として、コロンブスはこのスキルをEXランクで有している。 【宝具】 『新天地探索航(サンタマリア・ドロップアンカー)』 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~30 捕捉:200人 最も有名な最初の航海が結実したもの。 彼の乗っていた旗船サンタマリア号が出現。接岸(陸地のど真ん中であっても)し、そして彼の指示に従い、為すべき事を為す。 これは「サンタマリア号よ、錨を下ろせ」という、船長としての略奪開始命令である。 主にサンタマリア号から錨を発射しての拘束などが行われる。 【weapon】 サーベル:一般的なサーベル マスケット銃:一般的なマスケット銃 鞭:一般的な鞭 錨?:舵と鎖と錨を複合させたような武器 【人物背景】 アメリカ大陸への航路発見により西半球と東半球の動植物・文化の一大交流を起こし、人類史のターニングポイントの一つともよべるコロンブス交換を起こした世界でも有数の冒険家。その一方で原住民に対する大規模な殺戮・陵辱・略奪を行った功罪激しい人物。 表向きは豪放磊落で寛容な好人物であるが、その本性さ打算的かつ狡猾。必要とあらば味方へのだまし討ちや謀殺すら良しとし自分の利益を追求する極めて利己的な性格。 またスキルに昇華するほどの諦めの悪さを有しており、どのような厳しい状況においても打開策を練り続ける忍耐力、そして機会を逃がさぬ観察力と発想力を併せ持つ。 一般道義的には悪人と呼んで相違ない性格・所業を行ってきた人物であるが一方で敬虔なキリスト教信徒である一面も併せ持つ。 【サーヴァントとしての願い】 金儲け。現状ではスレッタに恩を売った状態でアド・ステラで受肉し株式会社ガンダムを利用して人財産を築く 【マスターへの態度】 扱いやすく、またメンタリティが好印象のため現在は友好的。現状では切り捨てる気はない。 【マスター】 スレッタ・マーキュリー@機動戦士ガンダム 水星の魔女 【マスターとしての願い】 聖杯にかける願いはない。アド・ステラに帰りたい。 【能力・技能】 特になし。 【人物背景】 水星からアスカティシア学園へとやってきた少女。夢は自分の故郷である水星に学校を建てること。 気弱だが正義感が強く真っすぐな性根の持ち主。純朴で素直な反面、気を許した相手の言動を無条件で信用したり好意的に解釈するなど騙されやすい一面がある。また、おどおどしつつも退くべきでないところでは退かずに反論するなど図太いと形容できるレベルで肝が座っている場面も見受けられる。 水星の過酷な環境かでガンダム、エアリエルを駆り人命救助を行って来たため緊急時の判断力・行動力については高い一方で彼女のワンオペの状況ばかりであったせいか集団行動に不慣れなところがある。 【方針】 一先ずは優勝を狙う。他に元の世界に帰還できる方法があればライダーを託すための出来るだけことをしてから棄権して帰還する。 【サーヴァントへの態度】 親身に接してくれたことから完全に気を許して信頼している。