一目見た時から感じ取っていた。 纏わりつく血と死の臭い。 俺が初めて気を許した友と似た気配。 こいつは、俺と同類だと。 だから思ったんだ。こいつはこの戦いに勇んで乗ってくれると。 ところがだ。 「うーん、聖杯か...イマイチ興が乗らないんだよね」 まさか、そう来るとは思ってもいなかった。 心底退屈そうに。 嘘偽りなく、万物を叶えてくれるグラスを興味が無いと吐き捨てやがった。 俺の嗅覚が鈍ったか?―――そんな不安を察したかのように、ソイツは言葉を紡ぎ始める。 「ああ、勘違いしないでね。別に戦わないわけじゃないし、思考を放棄して束の間の平和を享受するようなつまらない死に方をするつもりもない。現実や未来に希望が持てなくてもまずは一歩を踏み出す。それが私の生きる上での信条だからね」 「そうかい?それなら文句はねえが...」 少なくとも、ここまできて誰とも殺りあうことすらなく脱落、なんてくだらない終わり方はせずに済みそうなのはいいが。 じゃあ、なんでこいつはこうもやる気が無さそうなんだ? ちょっと気になってきた。 「なあ。オマエはなにを求めて生きてきたんだ?」 「何を求めて、か。一つ言えるのは、可能性を求めて、かな」 「可能性?」 「非術師・術師・呪霊...おっと、きみには馴染みのない言葉かもしれないね。一応簡潔に補則させてもらおうか。 「まず、如何なる人間にも規模の差異はあれ、皆、呪力を宿している。基本はソレを認識せずに生きているのだが、これを非術師とカテゴリーに分類する。己の呪力を認識し、各々の魂に見合った形に出力して扱えるのが術師。 人の害意や敵意から発生し、自然の畏れなどからも生じる呪いが集い生まれたのが呪霊。彼らは人間を呪わずにはいられないため、術師・非術師を問わず呪い殺し、呪術師は呪いを祓うことで生計を立てている者が多い。 ちなみに呪霊は術師からは生まれないんだ。術師本人が死後呪いに転ずるのを除いてね。術師は呪力の漏出が非術師に比べて極めて少ない。これは呪力を認識できているかどうかの差だね。そして、呪力が漏れなければ呪霊も生まれることができない。 この三者は切っても切れない関係といえるだろうね」 「話が脱線したかな。とにかく、私は彼らという存在に可能性を求めた。『人間』という『呪力』の形のね。その為に千年研究を重ねてきたが...こんなものじゃない。まだ。まだまだやれる。人間はこんなものじゃない。そう信じて新たな形として出力もしてみたりした」 「だがそれでは駄目なんだ。私から生まれるモノは、私の可能性の域を出ない。そんな私が、『万物の願いを叶える器』だなんて矮小なもので満足できると思うかい?」 「ああ、無理だなそりゃ」 納得しかなかった。 聖杯で願いを叶えるってのは、要は自分が考えられる限りで欲したものを与えられるっつーことだ。 そんな自分の頭の中で完成している願いをそのまま出されたところでこいつが喜ぶはずもない。 まるで夢に夢見る女の子だな、とそんな感情を抱いた。 「じゃあよ。もう少し突っ込んだことを聞かせてもらいてえんだが...なんでそんなに『可能性』を求めてんだ?」 大多数の人間にとって戦いは目的の手段の一つに過ぎない。 世の平和や家族を守るために『戦う』。 国や一族を豊かにするために『戦う』。 金が欲しいから『戦う』。 どいつもこいつも大義名分を掲げて戦うのがお好きな奴らばかりだ。 俺は違う。 俺は命のやり取りが好きだ。戦いそのものが目的だ。 『楽しむため』。 より善く生きる為でも誰かにつなぐためでもない。 己の命も道具の一つにすぎない。 矜持も使命もなく、ただひたすらに意地汚く生を謳歌する。 それが俺の人生ってやつだ。 さて。俺を呼んでくれたマスター様は、どんな人生を歩んできたのかな? 「面白いと思ったから」 ―――最高じゃねえかよ。 「気に入ったぜ、あんた。友達になりたいくらいだ」 「そうかい?嬉しいね。では条件を二つ言っておこう。①私を退屈させてはならない。②私と対等であること。他にも色々と求めたいことはあるが、少なくともこの二つだけは守ってもらいたいね」 「ああ、それでいい。俺も聖杯なんぞにかける願いは無え。思う存分に使いつぶしてやってくれ」 俺がどうして一目で好感を抱いていたのかわかった。 こいつの纏う空気は、グリムとよく似ていた。 生涯で初めて心の底から気が合った友達だったあいつと。 己の描いた夢へとひたすらに邁進するその影に、こいつが被さっちまったんだ。 「俺の名はジェスロ。お前が人生を謳歌し続ける限り、どこまでもついていってやるよ」 「私は羂索。身体の名前は[[夏油傑]]だ。よろしく、ジェスロ」 ☆ 生きるとはどういうことか。 必要最低限の呼吸をし、健康のみを求めた食事のみを取り、無用な情報を遮り、漫然と与えられたものだけをこなして漠然と寿命まで生きて、死ぬ。 果たしてそれを生きているというのだろうか。 いいや言わない。 知性と理性を持ち合わせながら、考えるのを放棄し、歩むのを止め、枯れ木のように漠然と息をするだけの愚物を私は生きていると認めない。 見たことないものを見たい。 面白いと思ったことが本当に面白いか確かめたい。 それが生きるということだろうに。 現実や未来に希望が無くとも死ぬことはいつだってできる。 だからまずは一歩を踏み出す。 目先が暗闇でも己の理想に近づく。 その実感を知らないまま死んでいく人間を私は嫌悪する。 だから私はそうならない。 たとえ興味のない景品を目指すくだらない催しだとしても、まずは一歩を踏み出す。 この会場には無い面白いと思ったことの面白さを確かめるために前に進む。 私は、最後まで私の生を追い求め続ける。 とはいえ、最後まで勝ち抜いたら自動的に聖杯を手に入れることになるけど、さてどうしようかな。 ただ放棄するというのもなんだかつまらないし、かといって兼ねてより進めてきた計画に関与させるのも、可能性を潰しちゃうからイヤだし...う~ん。 「なあ羂索。優勝したら聖杯はどうするんだ?」 「それいま考えてるとこ。どんな形であれ、私が関与すると掌から離れた混沌からは遠ざかっちゃうからねえ」 「ならこういうのはどうだ?お前が笑い転げるような面白い顔を見せること。ただし!お前の趣味趣向を繁栄させず、聖杯自身にお前が笑えるような顔がどんななのかを考えさせるのを条件にだ」 「―――ああ、なるほど。いいかもねそれ」 聖杯に私が『面白いものを見たい』と願えば、結局、ソレは私自身から生じたものでしかない。しかし、こうして第三者が絡めば私の予想だにしない答えを導き出してくれるかもしれない。 それに。 もしも聖杯戦争だなんて大仰な競争に大勢を巻き込んで。 参加者たちの魂を捧げて生み出された神聖なトロフィーが、抱腹絶倒のマヌケ面を生み出したら。 あるいは、それだけの代償を払って生み出されたモノが、大御所ぶって出てきた癖に、ひな壇にも呼ばれない独り善がりな三流芸人よりも場を白けさせてしまったら。 笑っちゃうよね。 【クラス】 アサシン 【真名】 ジェスロ@銀狼ブラッドボーン 【ステータス】 筋力C 耐久C 敏捷A 魔力E 幸運C 宝具D 【属性】 混沌・悪 【クラススキル】 気配遮断:A サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。 完全に気配を絶てば発見することは不可能に近い。 ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。 【保有スキル】 直感:B 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。 人体理解:A 人体を正確に把握していることを示す。アサシンは殺戮を繰り返したため、相手の急所を突くことに長けている。 単独行動:A 本来は弓兵の能力だが、ずっと一人で戦ってきた彼の経歴から反映された。 マスターとの繋がりを解除しても長時間現界していられる能力。 【宝具】 『血流の目』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:視界に入る範囲 ジェスロが生前に重ねた経験により開花した才能が反映されたもの。 血の巡りを見ることで動きの起こりを察知し、次の行動が読める。 血液を操る術を持つ相手に大きな効力を発する。 ただし、読めるだけなので実際に回避できなければさして意味はない。 【weapon】 アーミーナイフや銃火器など、軍人らしい装備をまんべんなく扱える。 【人物背景】 傭兵及び吸血鬼ハンターとして戦ってきた男。 吸血鬼と人間との大戦時はまだ若く大した活躍もできなかったため、主な活動内容は吸血鬼の残党狩、その中でも誰もやりたがらない子供吸血鬼の処分だった。しかし老若男女の命を差別しない彼はこれを嬉々として請け負った。 殺し・戦いを楽しむ為だけに戦ってきたため、他の人間と違い矜持や使命といったものを抱いたことがない。 その為、誰からも理解されず、彼自身も理解しようとしなかった。ただ一人、『グリム』という怪物の青年だけが彼の良き理解者となった。 彼と出会って以降は異形の身体を与えられるものの、結局、その力は使わず人間時代の技術と経験のみで最期まで戦い続けた。 【サーヴァントとしての願い】 戦いと殺し合いを楽しむ。 【マスターへの態度】 かなり好感度が高い。聖杯を手に入れたら、羂索の思考が絡まない面白いモノを見せてやりたい。 【マスター】 羂索@呪術廻戦 【身体】 夏油傑のもの。 【マスターとしての願い】 無い。ただ帰還できればそれでいい。 【能力・技能】 己の脳と肉体を入れ替え、身体及び刻まれた術式を自在に扱える術式を有する。 『呪霊操術』 呪霊を球状にして体内に取り込み、自在に使役する術式。味は吐しゃ物を処理した雑巾っぽいらしい。 呪霊の数と質が多ければ多いほど強力になり、消費する呪力も呪霊持ちなので非常に低燃費。 極ノ番『うずまき』は保管した呪霊を一斉に放出し超圧出した呪力をぶつけられる。 手持ちの呪霊をどの程度有しているかは現状不明。 『反重力機構』 能力の詳細は不明。ただ、羂索いわく術式反転使用時ほどの出力はなく、発動時間の制限が設けられている模様。 術式反転で使用することで重力を展開することが可能。効果範囲は術者から半径2~3mで持続時間は6秒。持続時間を過ぎると再使用までインターバルを要する。ノーモーションで自身の周囲に重力を展開し、相手を強制的に地面に叩きつけることができるので、近接戦において非常に強力な能力となっている。相手目線いつ重力を展開されるかまったくわからないので、攻撃はもちろん、防御にも非常に優れた能力と言える。 『領域展開:胎蔵遍野』 ムンクの叫びの様な絶望した表情をした無数の顔で構成された幹を、下部はアフリカの呪術師風の妊婦、上部は顔をもぎ取られ磔にされた妊婦が囲む樹木のようなシンボルが具現化される、見るも悍ましい領域。 宿儺の領域と同様に空間を閉じずに領域を展開する事が可能。ただし、領域の範囲は宿儺程ではなく、空間を閉じない縛りを術式効果の底上げに使っていると推測される。 詳細は説明されていないので不明だが、おそらく重力術式を必中化させて範囲内の対象を叩き潰す必中必殺領域である。 さらに結界術の技量の高さから、簡易領域程度なら数秒で剥がせる精度を持つ。 【人物背景】 計略を巡らせ、非常に慎重で用心深く計算高い狡猾な人物。自身の探究心や欲を満たす為ならどんな手段も厭わず、何者をも犠牲にする事も一切気にしない極めて非情な人物でもある。 過去に加茂憲倫として行った所業だけでも、史上最悪の呪術師として呪術界の歴史にその悪名を刻まれる程である。 「好奇心」が強い為、自身の目的から逸れる呪術以外のジャンルやサブカルに対しても見識が広く、漫画を読み込んでいたり、最新の電子機器を難無く使っている。 新たな可能性の探求として行動を起こしており、その行動原理は『人間もっとなんかできるだろ!!という果てなき情熱』によるものらしい。はた迷惑すぎる。 【参戦時期】 五条悟を獄門疆に閉じ込める前のどこか 【方針】 聖杯は興味ないけど、計画の途中だし漫然と生きるのはイヤなのでとりあえず優勝する。 【サーヴァントへの態度】 今のところは好感触。