目が覚めると空を見上げていた。 星空はなく、髪の毛ように黒い夜空が飲み込むように私を見下ろす。 自分は何をしていたのだろうと視点をニュートラルに戻すと見知った校舎が目に入った。 「あれ……ここ……アビドス……」 目の前の校舎はアビドス高校だ。 通い慣れた場所なのだから見間違えるはずがない。 なのに……砂に埋もれていなかった。さらに見回せば砂塵の舞っていた市街には塵一つなく、銃声の一つも聞こえてこない。 意味が分からなくて困惑した時、頭に情報が走った。 「『葬者』……『運命力』……『聖杯戦争』?」 どれも聞きなれない単語だ。 娯楽小説の設定かと思うくらいデタラメで、だけどこの上なく真実だと理解した。 「これカタカタヘルメット団のドッキリとかじゃないよねー。本当に撃っちゃうよー」 返事はない。 この冥界に呼ばれた人間は銃で殺せてしまうらしい。 ふと先生の顔を思い出す。 ニコニコした顔。最初は怪しくて頼りない大人に見えた人。 それをシロコちゃんが拾ってきて砂のように沈む日々が変わった。 自分が人殺しをしたらどんな顔をさせてしまうだろうか。 「でも帰らないとね。みんな待っているだろうし。」 待っている人たちがいる。 まだ死ぬ訳にはいかないのだ。 「うへ~どうしておじさんばかり変なことに巻き込まれちゃうかなー」 なんて愚痴を言っても聞く人なんていないか──いいや、そんなわけがない。 与えられた知識にはマスターにサーヴァントという存在が与えられるとあった。だがそれらしき影はない。 「あれ? サーヴァントさーん」 呼びかける声は虚空を振るわすだけだった。 何一つ。誰一人。声を上げるものは── 「問おう。貴方が私のマスターか?」 誰もいないはずの虚空から響く凛とした女声。 そしてするりと透明だった霊体がエーテルの実体を得て現われる。 キヴォトスのロボットかと見間違うような、全身を金属の鎧で覆っていた。 肩から仕立てのいい外套をたなびかせ、その手には馬上槍を持っている。 知識では知っている。これは“騎士”だ。 「うへ~なんかすごい子が来た」 彼女の体躯は小さい。さすがに自分ほど小さくないがセリカちゃんとほとんど変わらない。 どう見ても大人に見えなかった。なのに全身から溢れる威風は間違いなく絶対者のもの。 まるで砂嵐の前に立っているかのような錯覚すら感じる。 「………………」 騎士は無言だった。 先ほどの問いに対する答えを待っている。 「そうだよー。よろしくねー」 「……契約は果たされた。貴方をマスターとして認めよう」 ひとまずの契約を終える。 ここからどうするのか。どうすればよいのか。 分からない事はたくさんあるけど最初にやるべきは一つ。 「それじゃあまず初めに自己紹介から始めようか。 私は[[小鳥遊ホシノ]]だよー」 「……私の真名はアーサー王だ。もしくは骸王。 呼ぶときはクラス名であるランサー、あるいはプリテンダーと呼ぶがいい」 「じゃあアサちゃんねー」 ゆるいあだ名を作っても無反応だった。無視したというより無関心だ。 まるで機械が振られたIDを自分と認識するように骸王はそれは受け入れた。 こりゃあこの先大変かなって考えた矢先── 「マスター。尋ねたいことがある」 厳かにそれは私に聞いたんだ。 「死とは、なんだ?」 それは死を知らぬアトラスの七大兵器の一つだった。 ただ契約に従いアーサー王を模倣していただけの冷たい機械だ。 それが唐突に死を与えられて死を解析し、暴走した。 世界の全てを記述できる賢者の石を持ってしても答えが分からなかった。 否、答えは手に入れた。 自分を殺しに来るもの。それが死。 だが結局それも状況的に与えられたものにすぎない。 不合理・不出来・不可解でバグった状態で算出されたものが答えであるはずがない。 ゆえに答えを求める。 それに対してホシノが返せることはたった一つ。 「そんなこと聞かれても分からないよー」 彼女も答えられない。 未だその頭上にはヘイローが輝いているのだから。 【CLASS】 ランサー(骸王) プリテンダー(ロゴスリアクト) 【真名】 ロゴスリアクト@ロード・エルメロイの事件簿 【ステータス】 筋力D 耐久C 敏捷D 魔力A++ 幸運C 宝具A+ 【属性】 秩序・中庸(骸王・ロゴスリアクト共通) 【クラススキル】 【対魔力】 ランク:A+ 無尽蔵の魔力を生成するロゴスリアクトは高い対魔力を有する。 ランクA以下の魔術は全て無効化する。 【道具作成(再演)】 ランク:A+ 本来はキャスタークラスのスキル。 情報として分解したものは生物・無生物関係なく自由に再現できる。 【陣地作成】 ランク:E 本来はキャスタークラスのスキル。 ロゴスリアクトは「工房」ではなく賢者の石で情報分解したものを再現する 「シミュレーター空間」を作成する。 魔術工房としてのランクは低いが村一つを丸ごと再現することも可能。 【誤作動】 ランク:E→A 「狂化」スキルの亜種。 骸王ことロゴスリアクトは死の解析が進むたびに不合理・判断不全・理論矛盾に陥っていく。 言うなれば自爆する論理爆弾であり、最終的に暴走して骸王であることをやめる。 【保有スキル】 【賢者の石】 ランク:EX 自らの精製した強力な魔力集積結晶───ないしフォトニック結晶を操る技術。 ロゴスリアクトの正体はこの賢者の石の赤化物質でできたシミュレーターであり 自己増殖すら可能。事実上、魔力切れは存在しない。 アトラス院の魔術師を凌駕する高速演算と有り余る膨大な魔力のほとんどが再演に使用される。 【カリスマ】 ランク:B アーサー王の精神性を模倣したことで保有するスキル。 軍団を指揮する天性の才能。骸王は主にスケルトンを指揮する際に使用する。 骸王の外装が剥がされた時、このスキルは無用のものとなる。 【最果ての加護】 ランク:B 闘時においてのみ、魔力と幸運のパラメーターを一時的にランクアップさせる。 骸王もグレイと同じくロンゴミニアドを有するため加護を得ている。 しかし彼女もアーサー王本人ではないためランクは低下している。 骸王の外装が剥がされた時、このスキルは無用のものとなる。 【宝具】 『最果てにて輝ける槍』 ランク:A 種別:対城宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:100人 ロンゴミニアド。 アーサー王の保有していた宝具。 世界の表裏を繋ぎ止める錨であり、それが個人兵装用に小型化した塔の影にすぎないもの。 真名解放によって聖槍は最果てにて輝く光の力の一端を放つ。 アーサー王の精神を模倣しているが、それは騎士たちに認められていないようだ。 骸王の外装が剥がされた時、この宝具は封印される。 『世界中の記憶がいつか砂のように消えてしまっても』 ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:???(人理版図と同じ) 最大捕捉:人類の数 レッド・アーカイブ。 あるいはロゴスリアクト・オーバーロード。 ロゴスリアクトの機能の暴走。 誤作動スキルが発動した際に使用可能となる。 人理の届く範囲全てをシミュレート空間として認識し、徐々に情報分解して賢者の石の赤化物質に記述していく。 自身は赤い砂によって変幻自在に姿を変えながら無限に生成される魔力で攻撃を行う。 この宝具の最大の恐ろしさは永遠に止まらないことである。 世界中を情報分解して赤い砂漠を拡げ続け、その中で取り込んだ人々を再演してシミュレートする地球環境シミュレーターと化す。 小宇宙(ミクロコスモス)から大宇宙(マクロコスモス)へ。 それは異なる時間軸においてオシリスの砂と呼ばれる死徒が見せた賢者の石しかない世界であり、 とある汎人類史の地球環境モデルに類似する所業である。 余談であるが錬金術の語源となったのはアル・ケメト──ナイル川の恵みを受けた生命溢れる「黒い大地」である。 それに対してナイル川の恵みを得られなかった土地はアル・デシェレト──恵み無き死の世界、「赤い大地」と呼ばれた。 【weapon】 『最果てにて輝ける槍』 【人物背景】 アトラスの七大兵器と呼ばれる魔術礼装の一つ。 世界を救済するべく作られた世界を滅ぼしてしまう兵器。 絶賛稼働中に誤作動し、世界を滅ぼそうとしたところをロード・エルメロイⅡ世とその助手、弟子たちに阻止された。 本人はあくまで世界救済のために活動する。 しかしそのために与えられた死を解析しなければならず、 死を解析するにつれて暴走し世界を滅ぼす。 【サーヴァントとしての願い】 死を理解する。 【マスターへの態度】 観察対象。 要保存。 【マスター】 小鳥遊ホシノ@ブルー・アーカイブ 【マスターとしての願い】 元の世界へ帰る 【能力・技能】 キヴォトス最高の神秘を有するとされる。 すさまじい対衝撃性能を持つ「キヴォトスの生徒」の一人であり、爆発や銃弾がジャブ程度、あるいはそれ以下のダメージしかない。 ただし頭上のヘイローと呼ばれる輪が継続的にダメージを受けると破壊され、ホシノ自身も死に至る。 【人物背景】 学園都市キヴォトスにあるアビドスと呼ばれる地区の生徒。 砂漠に覆われ、返せないほどの借金を抱えた学校の廃校を防ぐべく活動している。 そんな状況でも強盗などの方法を取らないのは取り戻したい学校はそんなもので取り戻せないため。 そして一度でも手を染めると次も仕方ないと逃げてしまうかもしれないから。 【方針】 戦いは逃げないが殺しは極力避ける。 あと見て見ぬふりできない場合も同様。 【武装】 ショットガン『Eye of Horus』 【サーヴァントへの態度】 アサちゃん。 死が知りたいという彼女の言葉に何とも言えない気持ちになっている。 「そんなことよりくじらさんの話しようよ」