人理継続保障機関、ノウム・カルデアに身を置いていれば常識や固定観念を覆す様々な出来事(イベント)に出くわすことになる。 凄烈を極める異聞帯や大規模特異点、頭のネジが数本外れたかのような奇天烈(トンチキ)な特異点、唐突にカルデアから強制レイシフトされるサーヴァント、記録で見たチェイテピラミッド姫路城。 人(サーヴァント)との出会いもある。一番大事な人は今でも変わらないけれど、人との交流の幅はカルデアに来てから増えた。 サーヴァントの枠組みにいるためか背丈はちっとも伸びないけれど、何年かカルデアにいるうちに多少は成長できたのだと思う。 「………」 「どうかした?美遊ちゃん。コーヒーでも淹れようか?虎のじゃないやつで」 「あ、いえ、わたしは大丈夫です。 でもコーヒーはお願いします。……ブラックはちょっと苦いので、ミルクと砂糖入りで」 それでもやはり、今回の特異点はキャスタークラスのサーヴァントとしてカルデアに所属する美遊・エーデルフェルトにとってあまりにも未知の要素が大きすぎた。 まずもって今の美遊は葬者(マスター)の身でこの特異点に存在している。この特異点限定であるにせよ、霊体ならぬ肉体を持った生者として。 カルデアの記録で見たセイレム村の特異点でも同行したサーヴァントたちが生身の人間に近づくかのような現象があったが、それとも違うように思う。 自分が「今を生きる人類」なる特異な身のサーヴァントだからこうなったのだろうか? また当面の大きな問題として、美遊には多くの葬者に与えられるのだという役割(ロール)がなかった。 カルデアでイリヤやクロエ、エリセやボイジャーと過ごしていたら急に意識が遠のき、気づけば着の身着のまま葬者としてこの地に降り立っていた。 即座に脳に叩き込まれた冥界の聖杯戦争の知識([[ルール]])のおかげもあり、どうやら自分が強制的なレイシフトに巻き込まれたらしいことまでは理解できたものの、途方に暮れるしかなかった。 そんな時に現界し、何くれと世話を焼いてくれているのが美遊のサーヴァントとして割り当てられた一組の男女のサーヴァントだった。 「美遊ちゃん、砂糖入りミルクコーヒー入ったよ。 アスランさんもちょっと休憩しませんか?」 「そうだな。ちょうどドローンの組み立ても終わったところだ」 アサシンクラスでありながら、ライダークラスの性質をも併せ持つ二人一組のサーヴァント、アスラン・ザラとメイリン・ホーク。 今、美遊は彼らの宝具、『颯爽たる赤き残像(ズゴック)』の一部であるキャバリアーアイフリッドの中にいる。 当座の生活拠点として居住スペースのあるキャバリアーと宝具本体にあたる巨大ロボ(モビルスーツと言うらしい)、ズゴックが合体したアメイジングズゴックを使用している。 当然ながら2020年代の東京において全長約20メートルもの巨大な人型兵器は恐ろしく目立つため、東京湾の底で体育座りのような姿勢で身を潜めている。 アスランとメイリンは生活拠点だけでなく、物資まで用意してくれた。 彼らは特殊な保有スキルによって東京で使える通貨を持参してきており、それを使って食糧や美遊の着替えの衣服など、生活に必要な物資まで購入してくれた。 さらには街の偵察を目的としたドローンを自作するためのパーツまで買っており、アスランはそれを組み立てていた。 間違いなく善い人たちなのだろう。だからこそ心苦しくもある。肝心のマスターである自分が状況に流されるままであるから。 「……二人とも、改めてありがとうございます。 わたしたちだけだと今頃路頭に迷ってたかもしれません」 『美遊様の年齢であれば公的施設に保護される選択肢もあったでしょうが、他のマスターの標的にされるリスクがありますからね』 「気にする必要はないさ。それを言えば俺たちも聖杯から与えられた基礎知識があるとはいえ、魔術世界のことは門外漢だからな。 君たちが持っている魔術知識やカルデアの情報があるおかげでだいぶ助かっているんだ。 第一、こいつを出し続けていられるのは君たちの魔力供給のおかげじゃないか」 「そうそう!魔力供給が無限とかチート感すごいよね~! 私たちってサーヴァントとしては魔力保有量がダメダメだから、本当ならモビルスーツはここぞって時にしか出せないはずなんだから! それにこの世界、再構築戦争よりも前の時代だから端末の性能が違いすぎてやりたい放題できてもう最高! 私たちの架空の戸籍に身分証明書に口座も作れたし、お金はハッキングで企業情報盗みまくりで株のインサイダー取引もやり放題だから問題なし! もうじき都内の中心に仮住まいも準備できそうだから、それまでもうちょっとだけここで我慢してね」 「……あまり羽目を外しすぎるなよ?仮初めの世界と言っても、ここには確かな人の営みや社会秩序があるんだからな」 英霊や宝具の種類にもよるが、基本的に宝具の展開には多量の魔力を必要とする。 生前駆ったモビルスーツを宝具とするアスランとメイリンではあるが、一方で彼らの魔力保有量は非常に低く長時間モビルスーツを召喚しておくことはできない。 だが美遊が持っている愉快型魔術礼装、カレイドステッキ・マジカルサファイアは並行世界からの無限の魔力供給を行える。 これにより四六時中宝具であるアメイジングズゴックを出しっぱなしにしておき、あまつさえ生活拠点代わりにすることすら可能になっている。 カルデアのサーヴァントである間は無限の魔力供給に制限があったが、葬者として仮初めであれ生身の肉体がある今はカルデアに来る前と同様の機能を発揮できている。 その意味では確かに美遊はアスランたちの助けになれているのかもしれない。けれど、まだ何も自分の意思で決められていない。 「焦らなくていい。カルデアという組織の一員なのだとしても、本来君のような子供がこんな血腥い戦争に身を置くべきじゃないんだ。 ただ、自分が本当はどうしたいのか、何が正しいと信じるのか。これからどんな事態になろうと、それだけは見失わないでくれ」 「どうしたいのか……」 アスランの言葉は美遊の不安を見透かすかのようだった。その上でこちらを気遣ってくれている。 出会った当初は彼らとやっていけるのかと不安にもなったが、今なら言える。彼らは信じるに値する人たちだ。 おかげで踏ん切りがついた。言おう、美遊がやりたいこと。守りたい人たちの名前を。 「…探したい人たちがいます。わたしの大切な友達のイリヤと、同じぐらい大切なわたしたちのマスター、藤丸立香さんです。 カルデアのサーヴァントのわたしが巻き込まれた以上、他にも巻き込まれたカルデアの仲間がいるかもしれません。 我が侭を言ってるのはわかってます。でもお願いします。一緒にわたしの大切な人たちを探してくれませんか?」 すぐに返事は返ってこなかった。けれど、答えは笑顔で頷き合うアスランとメイリンの姿が何より物語っていた。 【CLASS】 アサシン/ライダー 【真名】 アスラン・ザラ&メイリン・ホーク@劇場版機動戦士ガンダムSEED FREEDOM 【性別】 男性&女性 【属性】 秩序・善 【ステータス】 筋力D 耐久D 敏捷D 魔力E 幸運A 宝具A 【クラス別スキル】 気配遮断:A サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。 完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。 騎乗(MS):A+++(B) 乗り物、特に人型機動兵器たるモビルスーツを乗りこなす能力。()内はメイリンの騎乗スキル。 その時代における頂点クラスの操縦技能を持ち、本来専用パイロットでしか使いこなせない特殊な機体や兵装さえぶっつけ本番で万全に使いこなす。 クラススキルによる補正でメイリンの操縦技能は生前以上に高められており、モビルスーツである程度までの戦闘行動が可能になっている。 【保有スキル】 二重召喚:B ダブルサモン。アサシンとライダー両方のクラス別スキルを持って現界する。極一部の英霊のみが持つ稀少特性。 ターミナルのエージェント:B 地球連合、プラント、オーブ各国の穏健派が集った秘密情報組織・ターミナルに所属するエージェント。 アスランとメイリンはオーブ軍からターミナルに出向し、生前大いに活躍した。 Aランクの単独行動スキルを内包する他、都市を舞台とする聖杯戦争に召喚された際にその世界で使用可能な通貨を一定額持参することができる。 正義貫く意志:A アスランのスキル。常に正しき道を模索し、時に迷うことがあってもそこへ向かって進み続ける強い意志。 自らの行いの正しさを確信できる、あるいは対峙した相手の悪性を確信している時、Aランクの勇猛、心眼・真のスキル効果を得る。 破壊工作(電子):A+ メイリンのスキル。電子機器やインターネットに対する超高度なハッキング能力。 機械特性を持つサーヴァントに対してハッキング行為を行う場合に成功率を大幅にアップする。 また他のサーヴァントからのハッキング、その他の電子的干渉に対する強力な耐性としても機能する。 生前のメイリンは下準備も込みではあるが、強固な軍事要塞を丸ごとハッキングすることに成功した逸話を持つ。 やはりアスラン・ザラが最強か:B アスランのスキル。生前、負けられない重要な戦いで勝ち続けた逸話とそんな彼に対するとある風評から成立した無辜の怪物の亜種スキル。 アスランが強敵と認識した相手との戦闘における各種判定に有利な補正が働き、戦闘を離脱する際の成功率がアップする。 間違いなくプラスの効果を齎すスキルなのだが、このスキルの由来が生前倒した見下げ果てた男の言葉であることを英霊になってから知ったアスランは微妙な顔をしている。 【宝具】 『託された自由の剣(ストライクフリーダム)』 ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~90 最大捕捉:700人 生前一度だけ搭乗したストライクフリーダムガンダム弐式を召喚する。 一対多数を前提とした砲撃戦に長けた高機動モビルスーツであるが、アスランが本機に搭乗したコズミックイラ75年の時点では既に旧式扱いされている。 本機の専用パイロットであるキラ・ヤマトにしか扱えないよう調整されたはずのスーパードラグーン機動兵装ウイングを使いこなした逸話から、宝具化に際して重力下環境でもドラグーンを使用可能になっている。 アスランが本来のパイロットでないため追加装備のプラウドディフェンダーを持ち込むことができず、本来のランクよりもランクダウンしている。 本機を目撃したサーヴァント、あるいはコズミックイラを知る者に対して高確率でパイロットの真名をキラ・ヤマトと誤認させる。 『颯爽たる赤き残像(ズゴック)』 ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~85 最大捕捉:600人 生前のアスランの愛機、ズゴックを召喚する。支援機であるキャバリアーアイフリッドもこの宝具に内包されている。 ズゴック本体は格闘戦用のクロ―やメガ粒子砲を備え、背中にバックパックであるリフターを装備することで飛行を可能とする。 粒子を纏うことで肉眼やレーダーから姿を隠蔽できるミラージュコロイドシステムを搭載しており、聖杯戦争ではミラージュコロイドを展開することで本機自体に気配遮断と同等の効果を持たせることができる。 支援機のキャバリアーアイフリッドはビーム砲やミサイルランチャー、機銃を装備し、ズゴックや他のモビルスーツとドッキング・輸送が可能。 キャバリアーもミラージュコロイドシステムを搭載している他、極めて高度なハッキングを行える電子戦装備があり、電波妨害が行われている環境下であってもモビルスーツの無線操縦を可能とする。 内部に居住スペースがあるため、宝具を展開し続けることさえできればマスター共々長期間キャバリアー内部で生活することさえ可能。 ズゴックとドッキングすることでアメイジングズゴックとなる。 ズゴックを目撃したサーヴァント、あるいはコズミックイラとは異なる歴史、宇宙世紀を知る者に対して中確率でパイロットの真名をシャア・アズナブルと誤認させる。 装甲が破壊されることでキャバリアーを除くこの宝具の機能が停止する代わりに後述の最終宝具が解禁される。 『強さ、其は意志の総称(インフィニットジャスティス)』 ランク:A 種別:対人・対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:300人 ズゴックの装甲が破壊されることで解禁される最終宝具にしてアスラン・ザラの真の愛機。 本機に偽装用のオーバーボディとして被せられたのがズゴックであるが、爆発するズゴックの中から無傷の本機が現れた逸話からズゴックの装甲が健在の間、本機はあらゆる敵対的干渉に対して概念的に命中判定自体が存在しない状態になっており、絶対に損傷することがない。 従来のビームサーベル二本に加え、リフター、脚部、ビームシールド、果ては頭部にまでビーム刃を内蔵した全身凶器とでも呼ぶべき白兵戦特化型モビルスーツ。 生前ブラックナイトスコードへの対抗策としてレールガンを携行した逸話から、ビームライフルとレールガンを自由に持ち替えることができるようになっている。 大出力のビームサーベルを展開する頭部ビームサーベルは、『対峙した相手の不意を突く』、『相手の態勢が崩れている』の二点の条件を満たす時、Aランクの防御突破の概念を宿し、命中判定時に相手の運命力を3ランク低下させる。 【weapon】 上記の宝具、並びに生身での戦闘時に使うハンドガンとナイフ。 【人物背景】 当人は至って大真面目だがやることなすことが波乱万丈で面白くなる男と、特等席から面白い男を楽しむ女のバディ。 二人一組のサーヴァントの宿命として、片方が倒されるともう一方も消滅する。 【サーヴァントとしての願い】 自分が願いを叶えるためではなく、人類史、特にコズミックイラの歴史やオーブを脅かしかねない危険人物に聖杯を渡さないために現界した。 【マスターへの態度】 メイリン:良い子ですよね~、美遊ちゃん。魔法少女の服がちょっとアレだけど……。 アスラン:あの格好は人前でさせないようにしないとな……。カルデアの風紀はどうなっているんだ? 【マスター】 美遊・エーデルフェルト@Fate/Grand Order 【マスターとしての願い】 この特異点の解決。 ……でも今はイリヤやマスター(藤丸立香)を探したい。 【能力・技能】 カレイドの魔法少女としての能力。 カルデアのサーヴァントだった時と違い、葬者として生身の肉体を得ているため無限の魔力供給の制限から解放されている。 ……今のところ明かす踏ん切りがついてはいないが、神稚児の力も持っている。 【weapon】 マジカルサファイア 魔法使い・宝石翁ゼルレッチの制作した愉快型魔術礼装カレイドステッキとそれに宿っている人工天然精霊。マジカルルビーの姉妹機にあたる。 クラスカード エインズワースによって作られた魔術礼装。 冥界の聖杯戦争ではランサーのクラスカードのみ所持している。アサシンへの魔力供給の都合か夢幻召喚(インストール)はできず、限定召喚(インクルード)のみに留まる。 【人物背景】 神稚児で魔法少女でイリヤスフィール・フォン・アインツベルンの親友。そして今はカルデアのサーヴァントのうちの一騎。 奇妙奇天烈(トンチキ)なイベントやサーヴァントにもだいぶ慣れてきて、生来の頭の固さはやや改善傾向にあり、巨大ロボ宝具を見てもさほど動じなくなっている。 【方針】 親友のイリヤ、カルデアのマスター・藤丸立香。他にクロエなどカルデアの仲間が巻き込まれているようであれば彼らの捜索・合流を最優先。 聖杯については良くてもカルデアでよく回収される単なる魔力リソース、あるいは何かロクでもないものではないかと疑っている。 【サーヴァントへの態度】 信じられる人たち。アスランさんたちの纏う雰囲気はカルデアの仲間のそれに似ている気がする。 ……ところで、どうして転身状態で人前に出たらいけないんでしょうか?