糞尿の匂いがする。 子供の頃からずっとそうだった。浅倉威の周囲には糞尿の匂いのついた黒い手が無数に漂っていて、体に纏わりついてくる。 サーヴァントになっても。冥界という場所に来ても。それは変わらなかった。 血の匂いだけが黒い手を駆逐する。だから威は人を殺す。人間として生きていた頃となにも変わらない。 違う点は一つだけ。マスターという面倒な存在がいることだ。 「やめな」 マスターは女だった。名前は言われた気もするが覚えていない。 目についたスーパーで人間を殺そうと思ったところを呼び止められた。 「まだ聖杯戦争とやらは序盤でしょ。いきなり目立つのは……」 「うるせえ。知るか」 こいつも他の人間と何も変わらない。死んでない人間はどいつもこいつも臭い。 マスターだから殺しはしないがそれだけの存在だ。従うつもりはないし興味もなかった。 威は駐車場の車の後部ガラスをぶち破り、一番鋭い破片を持って店内に入った。 ちょうど外に出ようとしていた男と鉢合わせて、そいつの喉を切り裂いた。 血が勢いよく吹き出す。静寂。悲鳴。そしてまた血。 威に近づいた人間から老若男女問わず、血と臓物を撒き散らして死んでいった。 女がひとり、威が離れた隙に出入り口から逃げようとしていた。逃がすつもりはなかった。 自動ドアが開いて女の右足が外に出る。威はガラスを持った手を振りかぶった。 投げようとして――それよりも先に女は倒れた。店の中に向かって。 「あ?」 胸を血に染めて絶命している。その向こうには別の女が立っている。 見覚えのある女。威のマスター。 「あーあ。せめて最初のうちくらいは大人しくしてようと思ってたのに」 女は手に持ったナイフを見つめながら言った。 「まあ痕跡消すのは慣れてるし。目撃者を残さなきゃなんとかなるか」 そう言うと女はナイフを投げ、走った。 立ち竦んでいた男の心臓をナイフが貫くとほぼ同時に引き抜いて、隣の男の頸動脈切り裂く。その勢いのままに女は次々と殺していった。 若い女だった。髪が長くて、胸がでかい。 少し変わった髪色をしていた。ちょうどいつの間にか威の足元に転がっていた菓子(キャラメル)と同じ色。 女からは、糞尿の匂いがしなくなっていた。 ● どうしてみんな人を殺さないんだろう。 小さい頃からずっと思っていた。 世の中は人を怒らせ、不快にさせ、イライラさせるもので溢れている。 なんでこんな世界でみんな誰も殺さずに生きていられるんだろう。 彼女には無理だった。 仕事に疲れた中年が酒を飲まないとやってられないように、彼女は人を殺さないとやってられなかった。 自分が世間にとって異端者であり、少数派であることは理解できている。しかし彼女からすれば世間のほうこそが異常だった。 自分のサーヴァントが人を殺したがっていることはすぐにわかった。自分がそうするときと同じ雰囲気をしていたから。 警察相手ならどうとでもできる自信があるが、今回の敵はどんな力があるかもわからないサーヴァントだ。 最初の内くらいはなるべく控えようと思っていたが、思うがままに暴れる彼の姿を見て、馬鹿らしくなって自分もやってしまった。 殺人鬼の知り合いはいたけど、こうやって誰かと一緒にやるのは初めての経験だった。 悪くない感覚だった。 「せっかくスーパー貸し切りにしたんだし、高い肉でも持って帰ろうか」 スーパーにいた人間を全員きっちり逃さず殺し尽くし、一通りの証拠隠滅も終えたあとに彼女は言った。 「あんたはなにか食べたいもんある?」 質問を聞いているのはいないのか。サーヴァントは言った。 「おまえ、名前なんつった?」 「一度名乗ったはずだけどね」 覚えていないことには怒りと呆れを覚えるが、同時にまあそうだろうな、という感じもした。 彼女は答えた。 「私の名前は……」 【マスター】 伽羅@死亡遊戯で飯を食う。 【人物背景】 殺人鬼。 彼女が人を殺す理由は快楽目的というより、人や物に八つ当たりする行為の延長である。一言で言えば『イライラするから』 本人に言わせれば、周りから殺したい気分にさせるから殺しただけで望んで殺したわけではない。 とはいえ殺しを楽しむ感情もあるし、実力者との殺し合いでも高揚する。 若い女にコスプレじみた格好をさせて行わせるデスゲームに参加していた。 プレイヤー間の殺し合いを推奨する[[ルール]]のときもそうでないときも彼女を慕う者以外の全てのプレイヤーを全員殺してきた。 あまりにプレイヤーを殺したため、一時期はデスゲーム界隈をプレイヤー不足に陥らせたある意味伝説的存在。 【マスターとしての願い】 自身の蘇生。 【能力・技能】 殺人鬼として生きてきて培われた戦闘力や、隠蔽知識。 デスゲームで一般人には入手困難な武器を使用した経験もある。 体のあちこちに防具として金属を埋め込んでいる。 『防腐処理』 デスゲームのプレイヤーに施される肉体改造。 血液が体外に出るとぬいぐるみの綿のような白いモコモコに変化する。 自動的に止血がされ、体が腐ることもない。 手足の切断のような大怪我を負っても然るべき治療を受ければ大抵は完治する。 一般的な病院で然るべき治療ができるかは不明だが。 【サーヴァントへの態度】 殺人鬼仲間として仲良くやっていこうと思っている。 【CLASS】 ライダー 【真名】 浅倉威@小説 仮面ライダー龍騎 【性別】 男性 【属性】 混沌・悪 【ステータス】 筋力A 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運D 宝具D 【クラススキル】 対魔力:B 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。 騎乗:B 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、 魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。 【固有スキル】 仮面契約者:B ミラーモンスターと契約したもの。 エンブレムを使用することでミラーモンスターの力を得て仮面契約者(ライダー)王蛇に変身できる。 鏡を通ってミラーワールドに移動する能力は失われている。 変身ヒーロー(悪):C 変身状態でないとき敵の奇襲、先制攻撃の成功率を下げる。 戦闘続行:C 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、死の間際まで戦うことを止めない。 【宝具】 『命蝕む毒の蛇(ベノスネーカー)』 ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:5人 巨大なコブラの姿をしたミラーモンスター。 仮面契約者に変身する力の源。王蛇と共にベノスネーカー自身も戦闘が可能。 口から強力な毒液を吐く。王蛇は毒液に耐性があり、吐き出される毒液の勢いに乗って蹴る連携技を持っている。 【weapon】 王蛇に変身するとベノサーベルというドリル状の剣を使える。 【人物背景】 母親に汲み取り式の共同便所に産み捨てられた。 自力で便所から這い上がったがあの時の糞尿の臭いがいつまでも追いかけてくる。 本来はバーサーカーに非常に高い適正が持つ、彼の行為を異常と思わないマスターに呼ばれたことで、ライダーのクラスがあてがわれた 【サーヴァントとしての願い】 ミラーワールドで戦い続ける。 【マスターへの態度】 誰がマスターだろうとどうでもよかったが…… 【方針】 殺したい時に殺したい奴を殺したいように殺す。