袖振り合うもなんとやら [#o21d8cf7]



―目に留まった。

―足が止まった。

―難しいとわかってた。

―でもとまった。


ネプトゥヌスの首都、アトランティス。
その一角にある、そこまで大きくはない服屋。
その前に一人の女性が立っていた。

「・・・・・・・・・。」

その目に映るのは、ガラス張りの店頭陳列。
向こう側には、煌びやかではないが、意匠をこらした様々な服が並んでいた。

「・・・・・・・・・。(はぁー」

思わずため息がこぼれる。
いつからこう眺めていただろうか。
そこに並ぶ、数々の衣装。
どれも可愛らしく、一度は着てみたい。そう思う。
でも。でも、この服は。

「・・・・・・。・・・(ふるふる。はぁ」

着れない。
自分でも理解している、己の体。
普通のヒトとはちょっと違う、自分の体。
故に、着れる物は自ずと限られてしまう。だから、着れない。
諦めるしか、ない。

「・・・・・・。」

立ち去ろうとした、そのときだった。

「あの」
「!?Σ(びくっ!」

驚きのあまり、外れそうになる頭を両手で押さえて振り向く。
そこに立っていたのは、一人の物腰柔らかな青年だった。

「あ、驚かせてしまって申し訳ありません、大丈夫ですか?」
「・・・・・・(こくり」
「そうですか、良かったです。・・・それで、こちらでなにを?」
「! ・・・・・・;(ふるふる」
「・・・服、ですか」
「・・・;(あわあわ」

何もしていない。
ただ、見ていただけ。
ただ、一人で勝手に憧れを抱いて。
ただ、一人で勝手に諦めに打ちひしがれて。

「・・・何か訳あり、ですか?」
「!!?(ドキッ」

確信をついたその言葉に、思わず頭がずれそうになるのを慌てて押さえる。

「・・・・・・むぅ」
「・・・・・・;(どきどき」

青年が怪訝な目でじっと見つめる。
帰ろうとした、その時。

「・・・よろしければ」
「・・・?」
「中で、お話を伺えませんか?ここで立ち話もあれですし、何かお力になれればと思うのですが・・・どうでしょう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・!!?(びくぅーん!」
「っ!?」
「!!(あわわわわ」

唐突な事実に驚くあまり、首がポロリと外れてしまう。
その様子をはっきりと見られ、慌てるあまりに頭は跳ね――

「おっと」
「っ・・・!」

青年の腕の中に納まる。
距離の近さと、青年から香るほのかないい香りに、思わず鼓動が上がる。

「そういうことでしたか・・・。」
「・・・・・・///(どきどき」

体へと首が戻る。
近かったやら、知られてしまったやらで赤く染まってしまう。

「・・・まあ、なんです。よろしければどうぞ。」

青年が苦笑しながら、店の扉を開ける。
入ることはないと思っていた場所。
戸惑いはある、が・・・。

「・・・・・・・・・(こくり」

こうして出来た縁。
少しばかり、よってみるのも、いいかもしれない。

最終更新:2012年03月27日 20:09