最近のなりチャのその後の話になります ただ話を書きたかっただけなので色々と分かりにくい所がありますアハハァ
「…………………父よ。」
「何だ、ドップラー。」
無機質な工作室。夏が近づく季節であるにも関わらず、薄暗く寒い。 しかし、気温など機械の体を持つ二人には特に関係無かった。
「小生は強くなりとう有ります。」
「その通り!父が強くなれと言えば子がそう思うのは当たり前だ」
「さし当たって、「ダークルーム」…闇討ちは純然たる強さには関係無いのではないかと、考えました。短い期間ですが、闘争を繰り返す内…闘争はお互いを認識した時から始まるのであり、相手が己の存在に気付かぬ内より死を与えるという行動は、闘争ではなく、別の何かとなるのではないかと――――」
「…じゃあお互い認識した後に使えばいいじゃん」
「…肌に合いませぬ」
「ワガママか!まぁナルホドォ〜…しかしこの私には強さの質など分からぬ…お前の思ったとおり好きにやれば良か!…で?」
「…?で、とは」
作業台に突っ伏していた父、赤いロボットが急に身を翻し、ドップラー、黒いロボットに迫る。 眼にも留まらぬ動作で胸のパーツを開閉し、内部の装置の接続を外して取り出し、そして胸の蓋を閉める。
「この胴体に入っていた四角いヤツをどうするかだ!お前にはもう必要ないのだろ?私にどうして欲しいのだ?言ってごらん。」
「む、失礼仕った…処分をお願いする為にここに参った次第です。父上の技術をそこらの屑捨場に置き去りにするのは忍びなく…」
「ドップラー、お前には兄弟を愛する心を教え忘れていたようだな〜」
赤い「父」が姿勢を変えずに言う。
「ど、どういうおつもりで…?」
「これをお前以外の兄弟にやりなさい。」
「小生以外の?…ビュールやボンカー等に?」
「ヤツら以外に誰が居るのだ。そのビュールやボンカー等、バリバにパッチとオンギョウザップとゴール、あとバサラね。」
「ザップも…で御座いますか?」
「ならば一抜け候補落ち、外しときなさい。父親に口答えするんじゃ有りませんッ!…自分だけ強くなるのでは自己中心的だと言う物だよドップラー君!兄弟が居る限りは相手がどのような者でも愛さなければいけないよドップラー君、だから彼らを愛し、同じく強さを求める兄弟あればこのダークルームをあげなさいドップラー君」
「…分かり申した。」
「じゃあ、他の兄妹が今どこに居るか調べてやろう。手当たり次第に押し付けやがれィ」
「押し付ける、等と…いえ、その通りですな」
その後、先程まで自分の胸中に入っていた機械を渡され、息子は研究所を出た。
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操舵室。高度は良く分からないが、雲の中に居るという事は確かな高さ。 4機のロボットが雀卓を囲んでいる。
「と、言うわけで……この装置を貰ってはくれまいか。というか、欲しくは無いだろうか。」
東家の、透明なボディを持つ女性型ロボットが答える。
「べっつに〜…あたしゃ興味無いわよ、そんなもん。…あ、それポン」
「むゥ、そうか…あ、はいコレ中。…ではザップは?」
問いかけた先の水色の、子供ほどの小さなロボットは北家。
「ぼ、ぼく・・・そんなのいらない。・・・暗いのキライ」
「そうか…ビュール、どうだ?」
「アホウ…何故このボクにそんな装置を押し付ける!蒼空の更に上、天に座し輝く美しい星は他者の発する光を吸収し金剛石以上の輝きを発するのだ!一切の光を通さぬ闇の中では鈍光を発する事も出来ないだろう!」
「ちょっとビュール、それポン。ほらさっさとお寄越し!」
「ふん、持って行きなさい!」
東家二度目のポン。しかし場に晒された中と發を眼に留めたのは北家の子供型、ザップだけだった。
「そうか、お前達は誰も要らぬのか…他を当たってみる事にしよう。」
「だからって今帰んのは無しよ。ちゃんと賭け分払ってからお行き。ツモ大三元、16000オール」
「…む、ビュール。お前飛んだのではないか。」
「寝言も休み休み言いなさい!この輝く灰色CPU脳汁満ち溢れる頭脳を持つ老獪で狡猾で点棒を強かに拾ってきたボクが ない!!!」
「ふふーん、アホーアホー。よくもまあ自分でそうやって褒められたものね!…あ、ドップラー。つき合わせて悪かったわね。負け分置いて帰んな」
「むゥ、分かった。突然押しかけてすまなかったな。」
「いいって。他のヤツに会ったら宜しく頼んどきます。」
「あい分かった。」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬうぬうぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ」
「あうあう…」
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四方を山に囲まれた、風の気持ち良い草原。 どこに立てど場の中央に見えるような広い場所に、ロボットが3機、井戸端会議のように集まっている。 ドップラーの視点から、右に真っ紅なロボット、中央に茶色い戦車型の下半身を持つロボット、左に浮遊する黄色いロボット。
「…でして、あの時のナパームの弾けっぷりと言えばもう!思わず私も全身をパープルに染めたい衝動に駆られましたナ」
「クス…クス…クスクス…」
「ばりりりりりりりりり!」
談笑する3機に近寄るドップラー。
「…もし、ボンカー、バリバ、パッチ。」
「おや誰かと思えばドップラー。どうしたのですかァ、こんな日に。今日は武者修行の相手は居ませんぞ」
「ばりりり、偶然ってワケでも無いんでしょ!!」
「その通り。今日はこれを渡したく、参った。」
ローブの下から、例の四角い装置を取り出すドップラー。眼前の三機に見えるように差し出す。
「ばりり?なにさなにさコレ」
「おやァん、これは」
「ダークルーム…ですか…クスクス…………どうして……クス……コレを。君の……クスッ…大切な、武器でしょう?…クスクス」
「それにはこうこうこれこれ、ぴょんぴょんかもしかな理由が有って…」
「なァるほどォ、文字ってベンリ!それで私達に貰って欲しいというワケですかァ」
「そうなのだ。お前達、誰か必要なものは居ないか?」
「ばりり〜ん、ぼくはいらないよ!暗いの弱点だもん、やーだよ!バトンパッチへー」
「う〜ム、残念ですけどォ、これといって今はコマって居ません!かさばるダケですナ!はいバトンボンカーへー」
「クスクス…兵器では有りません…クス…そんなものは…私は必要としない…クス…バトン、ドップラー君に返品…クスクス」
「そうか…邪魔をしたな。では残る兄弟を当たって見ることにしよう。」
「ばりりり、さよなら!ドウチュウ気をつけてねー」
「拾い食いしては………クス、クス………いけませんよ……クスクス」
「…イマのはジョークですかナ?ボンカー」
「…………クスクス」
「ばりりりりり!」
「アフフフフ!!!」
談笑する三人を背に、足早に草原を駆けていくドップラー。 暫くボンカーの声を潜めた喋り方と笑い声が耳に残って仕方なかった。
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所変わって、深い森。木漏れ日は少なく、薄暗い。
「バサラ、ドップラーだ。…居ないか。居れば返事をして欲しい。」
……… 返事は返ってこない。
「バサラ、居らぬのか。居らぬのかー………バサラー!!!」
叫んでみると、背後から木々が大きくざわめく音。
「むッ」
振り返ってみると、巨大な空飛ぶムカデの頭頂部に、木肌色をしたロボットが座していた。
「おぉ、バサラ。」
「何の用だ」
久しぶりに会う木肌色の兄弟、バサラはとても機嫌が悪そうだった。
「…どうしたのか、とても気分が悪そうだが」
「森を広げても足りぬ」
「まだ森を広げているのか?」
「広めど広めど人類共が森を焼き斬り使うのだ!ここ一ヶ月で分かった。忌々しいが俺一機の力では足りん!!」
「それはそうではないか。星はとても広いぞ」
「それが忌々しいのだ!いっそ人を減らし自然を増やすより、まず星を割り欠片を森で支配した方が早いのではないか!?後の欠片は滅ぼしてしまえ!!」
「そのような身も蓋も無い事を…」
「うるさい、さっさと用件を話せ。俺は管理に植林にと忙しいのだ」
「ム、そうであった…実はダークルームを貰って欲しいのだ。理由はさいぱんとこなつやしのみまずすぎというところでな・・・」
「断る。」
「ヌ、そうか…しかし何故?」
「一概に必要が無いからだ。たかだか数m四方黒い丸で囲んだ所で1000km四方に森が発生する訳でも有るまい!」
「そういう意味か」
「そういう意味だ!」
「すまぬ、お前にこういう物を渡すのは些か兄弟としての配慮の足りぬ行動だったかもしれぬ」
「あぁ、分かったら帰れ!此処に木は沢山有るが茶葉も肉も無いんだぞ」
「元より我らには食せぬよ」
「それらを妄りに消費する人間共を滅ぼすのだ!俺の責務を邪魔するならこのスカーテールに外まで送らせるぞ」
「心配無用、小生の足で帰れるとも。邪魔をした。」
「フン」
バサラの前から、加速装置で掻き消えるドップラー。
「ああまで気性の荒い奴だったろうか…いや、そもそも我ら兄妹、そう会う機会が無かったのだ」
そう呟いた後、頭の片隅で加速装置の必要の是非も浮かび始めたが、帰ってから考えようと胸より排除された。
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そして最後の兄弟の居る場所となる、降雪の絶えない場所に建てられた浄水施設。 施設の奥は、周囲とは違い設備が凍りつかないよう適温に調節されている。
「ゴール、そういうワケでお前が最後なのだ。」
「ぬ……………う。」
最後の兄弟の、所々は圧縮された氷を装甲に用いた深い青の巨体がドップラーの眼前に聳えている。
「…………………………」
「勿論必要ならば、だ。死荷重を厭っているのであり、必ず必要な事ではない。もしお前が必要としなければ―――」
「貰っておく………」
「おお、そうか。貰ってくれるか。有難う。これで父の望みと小生の望みが同時に果たされる」
「……俺の望みも………適うかもしれん。………その…先…必要、無いと思えば…これは、俺が処分して…おく。…それで良い、か。」
「あぁ、構わぬ。…ではな。お前の武運を祈るぞ」
「……………そんな言葉も……覚えたか…」
「戦士は戦士に対し、別れの際こう言うらしい」
「…今生の……別れに……ならなければい…いがな…」
「そう願う。」
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場所はドップラーの出発した研究所に戻る。 時刻はそろそろ午後7時を過ぎ、日が沈むか沈んだかの頃。
「父よ、只今戻りました」
「よく帰ってきたな、ドップラー。誰が受け取ったか父さんに聞かせておくれ」
「その事ですが、ダークルームはゴールめが受け取りました。」
「ほう!ゴールが。理由は?」
「戦に使うのだと。」
「フム!少し意外だよ!案外ゴールもお前と似た方向に進んでいるのかもしれないね」
「…そうかと思います。しかし、その似た方向の中では少し違う方法かもしれませぬ」
「何となく分かる気もするぞ!今後、兄弟と会い話す機会が有ればその時の事をまた私に話してくれ。息子娘の成長はやはり少し聞くだけで楽しい物だな」
「心得ました。では、今日の本来の予定である整備に。」
「そうしなさい。ラミヤに今日はここで泊まると話してあるな。ハイドトレイナーの運行も任せたか?」
「はい、抜かり無く。」
「抜かりというよりうっかりになるがね!よし、メンテベッドに入るのだドップラーよ。」
「暫しの眠りを楽しませて頂きます。」
「あぁ。」
黒い、左腕の無い不満足な五体が、似た黒色を表面に湛える四角い、棺にも似た寝具に納まる。
「(…大地の戦士よ、この疵を見る度貴方達に再び遭える事が楽しみになる。武芸者とは語り合えぬものだろうか?…戦士同士のコミュニケーションを紐解く書物など有ればよいのだが)」
だが。その後瞬きほどの時間を感じる暇も無く、意識は閉じた。