山崎今朝弥 (Kesaya Yamazaki) archive内検索 / 「廃業萬両の弁解にあらず」で検索した結果

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  • 廃業萬両の弁解にあらず
    廃業萬両の弁解にあらず  去年東京法律事務所から壱萬円取つたと云ふ評判から或親戚に家政の困難と秘密に属する其内情とを打明けて千円の融通を申込まれマサカ願懸を破る訳にも行かず、断らぬ訳にも参らす、大に閉口した。其外では誤解の為色々面白い思こそしたが格別の損はなかつた。  併し上告廃業の評判には少々面喰つた。事務所で一般に配つた端書に対しても、真実か又は人の喧嘩を見物し度いと云ふ僕等の様な野次馬性からか、之に対する弁解を勧誘して呉れた友人が多かつた、僕としては実際負け惜みではなく、聊かも苦痛を感ぜぬ故、却て友人の親切を用心しただけであつた。処が次には地方の友人から、事務所で要所々々へ出した手紙を甲第一号証として、何故廃めるのかとか是非弁解を為ろとか迫つて来た。併し今更神様を欺くことは出来ぬ、又前の友人の手前もある。考へた末私は三百理屈ではあるが、弁解せずして弁解になる訴訟をオツ初める事に決...
  • 2.04・第一編
    ...の性状を白状す」 廃業萬両の弁解にあらず 去るの記
  • 危険人物の弁解にあらず
    危険人物の弁解にあらず  明治四十何年か、大逆事件頃、一方僕は甲府で三百円余も貯めて東京は帝都の真只中、銀座大通裏へ移転した。巣拵へが出来ぬ前に隣家へ交番所が出来上つたには少からず驚いたが、何却つて愉快を感じた。  其後事件の話は益々拡大する、一日偶六法全書を見ると刑法第七十三条には危害を加へんとしたる者は死刑に処すとある。甲府検事局で諏訪の秘密結社事件と僕及び新村忠雄の関係、新村忠雄が途中僕の処に泊まつた事等取調べられた事が浮び出す、其以来警察の活動状態は遂日本の生糸王片倉兼太郞翁をして、ナーニ、今朝彌なら金の番の外出来るもんジヤー、ねーに、役人ニヤー、人は使へねーナー、と嘆せしめたと謂ふ事に思ひ付く、流石平素官僚裁判の危険を信用する僕丈に、一時に氷の中へ突落され首丈冷蔵庫へ入れられた様にヒヤリとし、我知らず手で頭を撫でて見た。若しあの時新村が僕に一言何か話したら如何。逆謀を告げらる...
  • 3.01・序
    序  コレは僕の小説であり、創作であり、処女作である。尤も僕は何が小説で、何が大説だか実はその区別も碌々知らない、テンで小説といふものを読んだ事すらもないのだから。ソレを僕がコレをココに小説と遠慮したのは、イクラ盲目蛇の僕でもマサカ之れを大説だと自称する度胸はなかつたからである。  コノ小説には僕が心から言つて見たいことを糞真面目に書いた処もあるが、テンで腹にも無い事を冗談半分に云つたり又はイマイマしさの余り思ふことと全く反対のことを書いた処もある。併し今となればドコがドレであるか僕にもわからない。ソレでも読者にはその積りで読んで貰ひたいと言つて見たい。  コノ小説は僕一代の心血を濺いだ結晶で、文界稀に見ざる、世に比儔なき大傑作だとは云へもしまいが、前後十年に亘る新規の旧稿で、初版にして既に二版三版乃至四版五版に達し、坊間有り触れたる普通の小説とは全くその類型を異にする破...
  • 勿驚噫大審院の妙判決
    勿驚噫大審院の妙判決  大審院が大正六年(オ)第三六八号事件に於て五月二十九日言渡され本日下附されたる謄本の判決要旨に曰く、然れども株式の申込は株式申込証に依り之を為す事を要件とし又株式申込証には真正なる定款作成の年月日を記載する事を要件とすること商法第一二六条の規定に依り明白なり。故に株式申込証に斯る年月日の記載を欠くときは株式申込の無効なること言を俟たず而して本件に在りては被上告人が本件株式の申込を為すに当り其用に供したる株式申込証には上告会社定款作成の年月日として大正二年三月一日の記載あること及び該定款が同年三月一日に完成せざりしことは原判決の確定したる事実なり由是観之被上告人が本件株式申込の用に供したる株式申込証は法定要件を備へざるを以て該株式申込は無効に帰するものと云ふべし。然らば本訴の株金払込の請求は失当にして原判決に所論の違法あるも之を以て原判決を破毀するに足らず。と。 ...
  • 近世判決見本
    近世判決見本           弁護士山崎今朝彌評釈 大正四年れ第一六六七号       判決書           東京都芝区三田四国町二番地医師           奥山伸           当四十三年  右痘病及血清、其他細菌学的予防治療品製造取締規則違反被告事件に付、大正四年五月六日東京地方裁判所に於て、言渡したる判決に対し被告及弁護人は上告を為したり、因て判決する左の如し  本件上告は之を棄却す       理由 [上告趣意書第一点]  原判決は被告を警視総監の許可を受けず、細菌学的予防治療品の一種なる「チブス」予防液を製造して、販売したる者とし、内務省令細菌学的予防治療品製造取締規則第四条を適用罰金拾円に処し、其証拠として原審に於ける被告の「私の製造したる本件予防液は、一合乃至七合入七百十壜乃至千四百壜なる旨」の供述を採用せり、右被告の供述せる所のもの...
  • 高尾平兵衛保釈願
    高尾平兵衛保釈願  私事出版法違反にて事件発生以前より投獄引続中の処今回愈々御取調無之審理終結致し候に付き保釈許可相成度、逃亡等の御疑念は以ての外にて、警察以来未だ曽て一言の弁解も二言の申立も致したる事無之候条保釈御許可相成度候、尤も例の起立問題にては官憲を侮辱し法律を無視し神聖なるべき法廷を帝国議会の如く心得、我国開闢以来の騒擾を巻き起し盛んに其威厳を傷け候段重々不屈の至りと存候も、又翻て静かに之を考ふるに、為めに慣例を破り被告に退廷を命じ片言秘かに獄を断するの新例を開き、以て栄達を願はず検事を怖れず只管司法の威信と裁判の公平との為めに、専ら訟訴を静粛に、聴取を完全にし被告に満足を与へる従来の優柔不断なる当該判事に、其手腕と模範とを示し之れをして少なからず教訓を得せしめ、私かに会心の笑を漏したるは独り貴官のみの名誉にあらざるべく、若し其れ酷暑の候憤然次回公判期日が忽ち一ケ月の延期となり...
  • 事務所で受けた裁判(4)
    事務所で受けた裁判(4)           山崎今朝彌    如此は理由齟齬の裁判にして破毀を免れず  原判決前段に於ては甲が大正二年六月及び十二月の二回に全部之が支払を為したる事実を認め得べしと判示しながら後段に於ては故に甲は大正二年十二月に至り初めて全部を弁済したりと判定せるは前段は大正二年六月に於て其一部を支払ひたる事実を認め後段は其事実を否定したるものにして理由齟齬の不法あり原判決は破毀を免れず(大民一)    民法八百十三条第五号は同居に堪へざる重大なる侮辱を離婚原因とするものにあらず  上告人が本訴請求原因の一として上告人が被上告人より同居に堪へざる虐待を受けたること及上告人が被上告人より重大なる侮辱を受けたることを主張したることは明なり然るに原判決の理由を観るに「夫が他の婦女に通ずるは不道徳の行為なること勿論にして事情に依りては妻に対する同居に堪へざる...
  • ホン乃木家とウソ乃木家・牧野所長答弁書
    ホン乃木家とウソ乃木家  近来の癪事蓋し所謂乃木家冒認問題に如くはない、如何に大将を毛嫌し誹毀する者と雖も未だ曽て大将心事の高潔と誠忠と公明と正大とを疑ふた者はない、果して然らば之れに免じても大将の遺思を全ふせしむべきは世の道人の心常の態である、大将の遺思は「根も幹も枝も残らず朽ち果し楠の薫りの高くもあるかな」「いたづらに立ちしげりなば楠の木もいかで香りを世にとどむべき」の二首に尽きて敢て説明を要すべき理由がない、然るに何たる大べら棒ぞや、乃木大将一人が馬鹿に偉くなるを厭ひ又は其真似を為さざるを得ざる羽目に陥るを恐るるの徒二三輩が、寄つて集つて大ソレた悪戯を働くとは。  毛利元智氏は子爵毛利元雄氏の家族なれば今回の授爵に依り明治三十八年法律第六十二号第一条第一項の適用を受け一家を創立し第二項の適用により民法中分家に関する規定準用の結果、本家の毛利姓を冒さざる可からず、然るに新聞の伝ふる...
  • 平民法律無料原稿請願書式
    平民法律無料原稿請願書式  前略 愈々御廃業近々御開業の由、就てはにては無之候へ共早速此事件御願申度、御多忙中甚だ恐入候へ共廿五日迄に『平民法律』一頁是非御埋被下度願上候。  抑々当『平民法律』は方弁護士又は不明弁護士を除く全国の弁護士に、洩れなく配布するを条件として、殆んど他人の計算、総て小生の責任に於て、小生の発行する雑誌に候へば、弁護士に対する君の廃業開業の広告には、充分其目的を達する事を得る事と存候。  私かに思ふ、君が此度『今村恭太郎以来の名判官』の評判を抛て弁護士になつた故事来歴有の儘を告白したら、上は天下を裨益し下は萬心を覚醒するに足るものあらん。今日の新聞に拠れば、君業の廃開は生活の安定の為めとある、学生時代からの君を知る僕は、今も尚君がソンナに馬鹿だとは思はない。生活の保証、収入の安定を得る為めに裁判官に成り下がる弁護士は、其手続に於て敢て不適法ではないが、其反対は...
  • 事務所で受けた裁判(3)
    事務所で受けた裁判(3)  一、玉石同架次第不同大小取交の事  一、但素人にも玄人にも良く利く事           山崎今朝彌 集 ○森林主事の犯所実況書及び被害物件調書の効力  凡犯罪事実を認定する資料たるべきものは即ち証拠又は徴憑にして、証拠又は徴憑は法令の規定を俟て発生するものにあらず、所論被害物件調書並に犯所実況書は司法警察官たる森林主事が捜査処分上実験せる事実を記載して作製したる書面にして其捜査処分は法の命ずる処に従ひ之を行ひたるものに外ならず、故に其行為は職務の執行にして違法にあらず、又之れが書面を作製することは法の命ずる処にあらずと雖も亦法の禁ずる処にあらず故に其書面は法律上無効にあらず従て之を断罪の資料に供するを妨げず。(大、刑、二) ○検事控訴と未決勾留  原審検事に於て科刑軽きに失すとて已に附帯控訴を為す以上は新に刑期を量定するに当り未決勾留日数を...
  • 北里博士告発状
    北里博士告発状           京橋区新肴町一番地           告訴告発専門弁護士           告発人 山崎今朝彌           芝区白金三光町、北里研究所長           医学博士、医師           被告人 北里柴三郎       告発の要旨  被告は其筋の許可を受けず細菌学的予防治療品たる赤痢予防液、感作コレラワクチン腸チブス予防液、感作腸チブスワクチン、狂犬病予防液を製造販売したるものなり。       告発の事実  (一)貴庁所管三田警察署は大正元年十二月、医師奥山伸が、其筋の許可を受くることなく、細菌学的予防治療品の一種腸チブス予防液を製造し、之を官公署、学校、病院、医師に実費分与したる事実を省令違反として告発し、検事は之を起訴したり。  (二)奥山及び其弁護人たりし告発人等は、省令は営利の目的を以て製造販売する者を取...
  • 続々相撲見物無罪論(完)
    続々相撲見物無罪論(完)           山崎今朝彌       一  検事は(一)被告は会長副会長等の区別に従ひ役員候補者其他に約二萬円の運動費を寄附せしめ総会前後の宴会に於て一人前一回四円以上の御馳走を給し其費用五千円を下らずと論ずるも一人平均八円乃至十円の御馳走を頂戴するものが一円又は五十銭の相撲切符にて買収せらるる理あらんや(二)三宅今村氏が相撲協会に縁故ある以上常陸山の予審廷に於ける供述は全部之れを信用するを得ずと云ふも検事と関係ある司法警察官の作成書類と雖も証拠の材料となるにあらずや(三)当日会長が検事正に電話を以て「即刻職権により臨席せられたし」と申請したるは被告有罪の確証なりと論ずるも亡者が安んぞ赤鬼の来場を乞ふの愚に出でんや(四)総会当日に於ける討議提案妨害喧噪乱暴狼藉一切の余興係を其一族郎等譜代恩顧に請負はしめたるは被告の業にあらずして何ぞやと問ふも川島加瀬卜...
  • 法治国秩序紊乱事件弁論要旨
    法治国秩序紊乱事件弁論要旨  本件記事は第一項乃至第七項に至る迄何れも秩序を紊乱する虞れある記事にあらざる事一点の疑なし従て被告は全部無罪ならざるべからず。  本件にして萬一有罪の判決を受けんか、弁護人は堅く信ずる所に従ひ本書末尾に参考として添付せる告発をなさんと欲す、希くは熟読玩味せられん事を。  大正八年一月卅一日    被告 長野国助、小松利兵衛、荒畑勝三               右三名弁護人弁護士 山崎今朝彌 東京区裁判所判事 石川音次 殿       告発状           東京市芝区新桜田町十九番地 平民法律所長弁護士           告発人 山崎今朝彌           雑誌太陽方           被告人 内田魯庵           被告人 与謝野晶子           雑誌中央公論方           法学博士兼被告人 福田...
  • 刑法俗論
    刑法俗論       三井事件の品位問題  海軍収賄事件たる三井収賄事件の弁護人が、自己の弁護する被告弁護の為め、相弁護人の弁論を妨害し、弥次り仲間喧嘩し、検事の嘲笑を買ひ、社会の擯斥を蒙りたるは、法廷の神聖を汚し弁護士の品位を傷けたるものなり、特に其弁護人が悉く当世第一流の御歴々たるに於て益々怪しからぬ事なり、宜しく懲戒すべきものなりとの論、蔭にて喧しけれど、一笑にも値せざる愚論なりと思ふ。  弁護士迚商売なり、あの位弁護料を取れば義理にも熱心が過ぎ喧嘩の一つ位為さざるを得ず、之を兎や角云ふは焼餅にあらんずんば羨べいなり、又法廷たりとて議会や御前以上神聖なる訳もなし、議会の弥次御前会議の争論殆ど滅多にある例なり、若し夫れ第一流云々に至つては、能く顔を見詰め「これで女房があつてソシテ・・・・・・」と思へば決して特に尊敬の念の起るべき筋合のものにあらず       将校の判事斬事件 ...
  • 発売禁止と森戸教授の起訴、出版法と新聞紙法
    発売禁止と森戸教授の起訴、出版法と新聞紙法       一、問題  帝国大学経済学部教授が、学術研究の結果を発表する機関として新たに発行したる『経済学研究』第一号に掲載されたる、帝国大学助教授森戸辰男氏の「クロポトキンの社会思想の研究」と題する一文は、安寧秩序を紊すものとして、其雑誌第一号は直ちに全部の発売を禁止され、森戸氏は其雑誌の編集兼発行人たる同大学助教授大内兵衛氏と共に、新聞紙法第四十一条の違反として起訴された。との報導を機会に、私は私が平素出版法及び新聞紙法の解釈に付き有する疑問中、新聞雑誌の一部に安寧秩序を紊す事項あるときは、其新聞雑誌全体の発売を禁止し若くは之を差押へ得るや否や、及び出版法第二条但書により学術雑誌として届出たる雑誌の記事が安寧秩序を紊すものなる場合に、其雑誌を新聞紙法により発行すべき雑誌なりとして、之を新聞紙法違反として起訴処罰し得るや否やの問題に付き、茲...
  • 3.23・忌避の申請・忌避申請の決定・上申書・山崎氏の忌避申請却下されて抗告・大審院の決定書(大正十一年(な)第二号)
    忌避の申請           申請人(被告弁護士) 山崎今朝彌           被申請人(裁判長判事) 牧野菊之助           同判事 西郷陽           同判事 遠藤武治  右当事者間の東京控訴院に於ける懲戒裁判所大正十一年(よ)第一号弁護士懲戒被告事件に付き、申請人は弁護士法第三十四条判事懲戒法第十一条刑事訴訟法第四十一条第四十二条民事訴訟法第三十五条第三十六条に依り左の申請を為す       主文  被申請人を忌避す       理由  被申請人は東京控訴院に於ける懲戒裁判所の本件係判事にして其職務に従事中、曩きに大正十一年四月十九日申請人に対し懲戒裁判を開始すへきや否やを決定するに当り、弁護士法第三十四条判事懲戒法第十七条に基き其決定書主文に於て「弁護士山崎今朝彌に対し懲戒裁判を開始す」と決定し、其理由に於て『被告山崎今朝彌は東京地方裁判所所...
  • 法律逆用の意義と実例
    法律逆用の意義と実例  法律の逆用といふ文字元来の意味はどういふ事であるか僕は知らないが、僕が言ひ初めた法律の逆用といふことは、反抗反逆の手段として法律を利用するといふだけの事である、警察が盛んに職権を濫用して天下の悪法違警罪即決例や行政執行法を悪用し、無辜の良民を矢鱈に拘留する事も法律の逆用であらふし、又強権と法律とを無視否認するアナーキストが、進んで裁判をする事も法律の逆用と言へよう、が僕のはソンナ高遠な哲理から出たものではないらしい。  何時から僕が法律の逆用といふ事を云ひ出したかはハツキリ覚へはないが、大正八年の「平民法律」にはコンナ広告がある。  平民法律は平民大学直営の平民法律が、法律逆用のため、無料専門我儘御免にて実地取扱ひたる、社会問題に関係ある法律事件を、通俗平凡、面白可笑しく解説する、平民法律所の御用誌なり。(大正八年改正)  本年正月朝日新聞の「大正十二年を迎へて」の...
  • 東京瓦斯事件訴訟・準備書面
    東京瓦斯事件訴訟           原告 山崎今朝彌           被告 東京瓦斯株式会社 瓦斯代値上無効確認訴訟       請求の目的  一定の申立と同一なり       一定の申立  被告は一千立方呎一円七十五銭の割合を以て原告に瓦斯を供給する義務あることを確認すべし       請求の原因  被告は東京市内の瓦斯需用者に対し一千立方呎金一円七十五銭の割合を以て瓦斯を供給することを市に約し、原告は右の利益を享受すべき事即ち一円七十五銭にて瓦斯を費用すべき事を被告に申込み今日に至る迄久しく之を費用し来りたり  然るに被告は突然原告に何等の相談もなく本日より一千立方呎に付二円二十五銭宛に瓦斯代を値上せり  尤も市と被告との契約には「市は被告に瓦斯営業の独占を許容する代りに、被告は九分以上の利益あるときは其利益の半額だけは瓦斯代を値下げ又利益九分に達せざるとき...
  • 新年に際して大審院の御大典判決を評す
    新年に際して大審院の御大典判決を評す           山崎今朝彌       第一点  大審院第三民事部は大正三年(オ)第七八五号物品返還請求事件に付  甲第六号証は鑑定書と題し本訴提起後係争獺皮の価格を証明する為め一私人の作成したる書面に過ぎざれば相手方に於て之を否認する以上は何等の証拠力を有するものにあらず、然るに原審が、同証に対し上告人は不知の陳述を為すに拘はらず、之を採用して本件係争の獺皮一枚の代価合計二五九円なることを確定したるは採証の法則に違背したる不法あるものにして破毀を免れず。と判示せり。  雖然当所より提出せる答弁書には  本件甲第六号証は記録第七五丁初行以下に「控訴人(上告人)は甲第一号証乃至第六号証は各其成立を認む」とある如く其成立に就ては原審に於て当事者間に争なかりしものなれば原裁判所が之を採て以て事実を判断したるは不法にあらず。 ...
  • 山崎の忌避申請書(5月1日付)
          忌避の申請          申請人(被告弁護士) 山崎今朝彌          被申請人(裁判長判事) 牧野菊之助          同(判事) 西郷 陽          同(判事) 遠藤武治  右当事者間の東京控訴院に於ける懲戒裁判所大正十一年(よ)第一号弁護士懲戒被告事件に付申請人は弁護士法第三十四条判事懲戒法第十一条刑事訴訟法第四十一条第四十二条民事訴訟法第三十五条第三十六条に依り左の申請を為す       主文  被申請人を忌避す       理由  被申請人は東京控訴院に於ける懲戒裁判所の判事にして其の職務に従事中曩に大正十一年四月十九日申請人に対し懲戒裁判を開始すべきや否やを決定するに当り弁護士法第三十四条判事懲戒法第十七条に基き其決定書主文に於て「弁護士山崎今朝彌に対し懲戒裁判を開始す」と決定し其理由に於て『被告山崎今朝彌は東京地方裁判所々属...
  • 同盟罷工の場合
    同盟罷工の場合       ストライキは不法にあらず  同盟罷工は悪い事であるか不法行為であるか犯罪行為であるか、昔は、と云ふより近年迄は、否な遂ひ昨年又は一昨年頃迄はストライキ同盟罷工と云へばすぐ犯罪の如く考へられていた事は事実である。大正六年十月私の書いた同盟罷工是認論は、可なりの訂正削除を以て雑誌に掲載された。大正元年正月元旦だった。かの東京電車大ストライキ事件即ち片山潜等に対する同盟罷工煽動事件の弁護に於ける私の同盟罷工権利論は公開禁止を以て迎へられた。併し今日では、内務大臣、警保局長でさへも、日本には同盟罷工を禁じた法律はない、治安警察法第十七条は同盟罷工を煽動する事を禁じたのみであると公言しなければならない位、何人と雖も同盟罷工其れ自体を犯罪行為である不法行為である悪い事であると言ひ得る者はなくなつて来た。此一二年間の事であるのに、実に今昔の感に堪へぬ。私も茲に今更仰々しく...
  • 当所旗印 民主々義と自由主義
    当所旗印 民主々義と自由主義  民主々義は世界の大勢なり天下の輿論なり、之に逆行する頑冥の徒、危険の思想は必ず亡ぶ。当所民主を提唱して茲に八年、所論今日漸く世に認めらる、豈嬉しからざるを得んや。微力到底完全を企及すべからずと雖も又聊か確信する処あり、努力以て信任に応へ成績を挙げ苟も期待に背かざらん事を期す。只憂ふる処は民主に対する世の誤解なり、民主決して民本にあらず、両者は根本に於て全然其意義を別にす、当所は成立に於て聊か他と其国体を異にし民刑上告を以て専門とす。又民主必ずしも刑従にあらず、否其数と実に於て当所は正に寧ろ刑主民従主義なり。然るを故ら頻りに民主を高調する所以のものは唯夫れ時代思潮に順応したるに外ならず、敢て元祖の名義を争ふ意にあらず、区々たる大義名分我に在て又何かせん、当所の眼中、唯福利満腹あるのみ。  自由主義を以て、専恣放縦無規無則、人を駆つて再び猛獣に回するものなり...
  • 事務所で受けた裁判(6)
    事務所で受けた裁判(6)           山崎今朝彌 ■口頭弁論調書鑑定書及び鑑定人訊問調書のみに依つては如何なる鑑定を為したるや不明なりとするも鑑定申立書と対照して鑑定の結果明なる場合には其鑑定の結果を採用したる判決は不法にあらず。(大民一) ■証人の証言に付何等判示する所なきは其証言を採用せざりし事を知るに足るものとす。(大民一) ■根抵当設定契約に因り抵当権を設定したる場合に其抵当権の根抵当権なる事を以て第三者に対抗するには其登記に登記原因として根抵当設定契約の記載あるを要す若し然らずして単純なる抵当権設定契約を以て登記原因と為したるときは其登記は根抵当設定の登記たるの効を有せず(大民一) ■年金証書又は恩給証書の返還を求むる訴訟は所有権に基き証書の返還を求むるものにして財産権上の請求たること疑を容れず然れども貼用印紙は財産権上の請求にあらざるも...
  • 3.11・偉大なる低能
    偉大なる低能 前編 僕の・・・・・・でありたい事  (一)(法律家)としては、常に法律界の異端者、弁護士界の反逆者でありたい。  (二)(社会運動者)としては、何事にも黙々と賛成する相談役でありたい、どつちにも味方となれる喧嘩の仲裁役でありたい、如何なる屁理窟にでも感心出来る苦情の聴役でありたい。  若し夫れ(三)(家庭の人)としては、何にも知らない唯々諾々の好々爺でありたい、圧制極まる純粋無垢の専制君主でありたい。  これは僕が、昨年暮某誌の創刊号によせた、貴下の・・・・・・でありたい事、と題する問合せの返答である。其後其雑誌は見た事がないが、僕は実際、反逆を好み喧嘩をすく。平和を愛し抵抗を厭ふ。自由を求め専制を欲す。僕の『偉大なる低能児の化石』も、遠く源をこれに発し、流れ流れて漸くここに問題に入つたのだ。 森下代議士の除名と見舞状  けふの新聞には、日本弁護士協会はトウトウ...
  • 警官強盗事件
    警官強盗事件           本郷区駒込千駄木町二一〇 画工           原告 望月 桂           府下巣鴨町一七八六 文工           原告 橋浦時雄           右二名訴訟代理人 弁護士           山崎今朝彌           京橋区北紺屋警察署 警視           被告 渡邊鉄三郎           同所 警部           被告 中島義明           同所 巡査           被告 吉川勝太郎 贓物返還並に強盗損害請求之訴訟       訴訟の目的  本訴の目的は一定の申立と同一なる外官吏の暴行若くは直接行動に基く危険思想の伝播を防止するに在り       請求の原因  一、原告は訴外同志数十名と共に大正九年十一月二十三日より同二十八日迄黒耀会第二回展覧会を京橋区南伝馬町...
  • 珍品事件上告状
    珍品事件上告状           被告人 広岡宇一郎           同 加藤高明           同 内田信也           弁護人 山崎今朝彌  右被告等に係る大正十年(珍)第五号事件に付き同年三月天庁に於て言渡され、同月廿八日発行の法律新聞第千八百十五号を以て公布ありたる、左記有罪の判決は全部不服に付き茲に上告申立候       原判決の表示       判決           代議士 広岡宇一郎           子爵 加藤高明           政商 内田信也  右大正十年人騒せ事件に付天庁に於て判決すること左の如し  一 被告宇一郎を叱り置く  一 被告加藤高明は自今不高明と名乗る可し  一 被告内田信也は自今不信也と名乗る可し       理由  一、被告広岡宇一郎は代議士の職に在り、政友会幹事長の重責を負ひながら、加藤高...
  • 上申書(一)~(三)
    上申書(一)           東京市芝区新桜田町十九番地 弁護士           上申人 山崎今朝彌       上申の趣旨  上申人申請非常上告職権開始事件に関し相当の援助を乞ふ       上申の理由  貴殿御干与の『労働新聞』『青服』『民衆の芸術』に対する新聞紙法違反被告事件は、曩きに東京区裁判所に於て貴殿御論告通り何れも新聞紙法違反として夫々の刑を科せられ候処、右中『民衆の芸術』の判決に対し被告の一人より控訴の結果東京地方裁判所は、『内務省に於て出版法に依り出版する雑誌として取扱はれたるものは、偶々其記事が出版法第二条の範囲外に渉るも直ちに之を以て新聞紙なりと認めて新聞紙法を適用すべきものにあらず』との理由を以て無罪を言渡し其判決は確定仕り候右判決の擬律が正当なりとせば『裁判所は内務省の取扱如何に係はらず其雑誌が新聞紙法に依り出版すべきものなりと認むるときは偶々...
  • 法廷不起立問題の研究
    法廷不起立問題の研究 大正九年(れ)二三五〇号 住谷操次郎上告趣意書       一、本件の事実  原判決は不法に上告人の弁護権を侵害略奪し、其弁論を聴くことなく為されたる違法の裁判なり。原審第二回公判始末書に依れば、裁判長宇野要三郎は上告人に対し検事瀧川秀雄の論告を起立聴取すへき旨諭告したるも、上告人は検事の論告に対しては起立聴取すへき義務なしと述へ起立せさりし故、裁判長は上告人か起立して論告を謹聴するにあらされは法廷の秩序は維持せされさるものと認め、再び上告人に起立を命し上告人の之に応せさるや遂に裁判所構成法第百九条の規定により上告人に退廷を命し、刑事訴訟法第百八十二条に基き対席として審理し、上告人に所謂最後の供述を為さしむる機会即ち弁護権を行使して弁論弁解を為すの機会を与へさりしものなり。  抑々刑事訴訟に在つては検事は弾劾し、被告は弁解し、判事は双方の申分を聴きて之を裁断...
  • 山崎による抗告申立書(同10日付)
          抗告申立書  抗告人に対する東京控訴院に於ける懲戒裁判所大正十一年(よ)第一号弁護士懲戒事件に付き曩きに抗告人より忌避の申請を為したる処今回却下の決定ありたるを以て茲に即時抗告す       一定の申立  原決定を破棄す  抗告人の本件忌避申請は誠に理由あり       抗告の理由    一、抗告人の忌避申請理由は 懲戒裁判開始決定には如何なる所為が問題たるか其所為ありたる事は如何なる証拠に依て之れを認めたるかを開示して裁判を開く旨を宣言すれば足るものにして其所為が如何なる理由により如何なる条項に違背するものなるかを断定論決すべきものにあらず然るに本件係判事は抗告人は斯く斯くの所為を為し其事実は斯く斯くの証拠により之れを認む依て懲戒裁判を開始すと宣言決定したる外尚進んで右の抗告人の為したる行為は弁護士の体面を汚すべきもの(即ち汚したるもの)にして東京弁護士会の会則に違反するも...
  • 3.20・懲戒裁判開始決定
    懲戒裁判開始決定           東京市芝区新桜田町十九番地           平民           東京地方裁判所所属弁護士           山崎今朝彌           明治十年九月生  右に対し当院検事長豊島直通より懲戒裁判開始の申立ありたるを以て当裁判所は左の如く決定す       主文  弁護士山崎今朝彌に対し懲戒裁判を開始す       理由  被告山崎今朝彌は、東京地方裁判所所属弁護士にして其業務に従事中曩きに広島地方裁判所に於いて新聞紙法違反事件に付、有罪の第二審判決を受けたる被告人小川孫六同丹悦太の選任に因り該事件に於ける上告審の弁護人と為り、大正十一年二月二十日上告趣意書を大審院に提出したるが、其論旨第一点前段に於て「第二審裁判所の有罪と認定したる事実に係る新聞紙の記事は文詞用語頗る冷静平凡奇矯に失せず激越に渉らず、十数年来萬人の文章...
  • 日比谷警察人権蹂躙告訴状
    日比谷警察人権蹂躙告訴状           告訴人 望月 桂           告訴人 久板卯之助           右両名告訴代理人 弁護士 山崎今朝彌           日比谷警察署勤務 被告人(署長) 増田伝次郎           被告人 吉川警部           被告人 福田警部補           被告人(高等主任) 網島巡査部長       傷害罪の告訴  被告等は他の氏名不詳の巡査十数名と共に大正九年十二月九日夜十一時半頃日比谷警察署内拘留部屋にて告訴人等を殴打し別紙診断書の如き療養十数日を要する負傷を与へたり       告訴事実の詳細  一、大正九年十二月十日は日本社会主義同盟の創立大会当日なりしを以て、頑迷乱暴市内に冠たる日比谷署は政府の意を忖度迎合し、独り其功を専にせんと欲し、九日朝先づ手初に前貴族院副議長侯爵黒田長成二男長七郎を...
  • デッサン(アウトライン)
    デッサン(アウトライン)           山崎今朝彌  八月は銷夏随筆号で社中惣出と相談はとうにきまつたが、待てば海路の日和見主義に限り、其中には頁数超過で自然消滅が例となつてる。と高を括つて命令一下随筆デツサン何百枚でもと引受けては置いたが元より書く気はなかつた。愈々今日半ペラ九枚の厳命しかも編集後記でゴマカシなしの条件附。  しかし若し之れがセメテ百枚の命令であるなら「壁の耳」とか「山羊の角」とか題して、平民大学以来此処で集つた公私公秘の諸会合、時効がかりの内輪話しをデツサンし、セメテ半ピラ五十枚もあれば、病気見舞、母の死、帰省などデツサンし併せて其際吊電を辱ふした市電自治会、組合総連合、自由法曹団其他の諸君に対して厚く御礼を申上げ、以て義理を塞げるが、生ジツカあと七枚の半ピラでは、母の死に就てデツサンをアウトラインする外はない。  母の死を語る前に先づ父の死を語る、七年前...
  • 続相撲見物無罪論(二)
    続相撲見物無罪論(二)           山崎今朝彌       法律上の無罪論  成程検事と共に本件を有罪視する者の論ずる如く法文には「賄賂を以て投票を為さしめたる者は云々に処す」とありて、被告等が賄賂を提供し投票を為さしめたるは天下に争なき処なれば、犯罪の成立に付ても一点の疑なきが如しと雖も、旧刑法二三四条は公選の投票を偽造する罪の二三三条を受けたる規定なれば文理解釈上茲に所謂投票とは公選の投票を云ふ、公選の投票とは公共的性売を有する職務を遂行する議員を選挙する為めの法定投票を指す(註二)が故に、本件犯罪の成立するには常議員は弁護士会の事務を、弁護士会の事務は弁護士の職務を遂行するものにして、弁護士の職務は公的性質を有し弁護士は公人なる事を確かめざるべからず。  或は弁護士法一条「弁護士は裁判所の命令に従ひ法律に定めたる職務を行ふ」との規定を引用して弁護士は公人なり其営業は公...
  • 正力事件の告訴状
    正力事件の告訴状           本郷区曙町十三番地           告訴人 大杉 栄           警視庁刑事課長警視           被告人 正力松太郎       告訴の事実  被告は大正八年七月十九日被告の勤務する警視庁に於て、同庁関係の時事を報道する為め同庁に詰め居る東京市内の各日刊新聞記者に対し  (一)大杉栄は大正五年以来、支払を為すの意なくして十数人の商人より米、味噌、醤油等の日用品其他の物品を取寄せ之れが支払をなさず  (二)又同人は大正五年以来家賃を支払ふ意思なくして住宅を借入れ之れが支払を為さざるのみならず家主より立退を請求せらるるときは直ちに居直りて立退料を請求し  (三)特に同人は現住宅なる前警視庁消防本部長占有の家宅に無断侵入移住し其立退を請求せらるや却て立退料を請求せり  (四)故に大杉栄が家宅侵入詐欺並に恐喝取財の犯行あ...
  • 告訴状・不起訴処分に対する抗告
    人間社会に対する詐欺及び偽作罪の告訴に就て           告訴人 堀 保子 代理人 山崎今朝彌           被告 [甲野太郎] [乙川一郎] [丙山二郎] 告訴状       告訴の事実  被告[太郎]は告訴人の知人堺利彦氏を介して本年五月頃、『人間社会』の創刊号に告訴人及び伊藤野技神近市子二氏の著作を掲載し雑誌の呼物となし其売行を図り度、原稿料は最高の額を支払ふ故是非寄稿を願ふ旨再三再四の懇請ありたるも、告訴人は他二氏と其性格経歴思想を異にし、彼等と共に喧伝せられ彼等と共に類別せられ常に世の評に上る事に少なからず無上の苦痛不快を感する折柄なれば、右懇請を其都度堅く拒絶したり。  六月上旬頃[一郎]は『女の世界』記者と称して告訴人を訪問し、右雑誌に掲載すべき、近時の感想に就き告訴人の演述を求めたり、告訴人は主筆青柳有美氏編集長安成二郎氏とは年来懇親の間柄にして大概...
  • 続裁判時代
    続裁判時代           山崎今朝彌       田中金造の売位売爵事件  田中金造君を知つてる者は恐らく一人もあるまいが、これは近藤憲二君の行司で、私と田中君と一騎打の薄気味悪い一本勝負をし、当時伯爵が負けた負けたと、近藤君が方々触れ回つた面白い話である。       ○  当時近藤君が大学に寝泊まりして居たと思うから、頃は大正七八年社会主義同盟の前後であつたらう。金沢市だか石川県だかの、七尾町とか八尾町とか云つた町の某会社の、技師だか技手だかに田中金造と云ふ人があつた。此人が其頃私の総長をしてゐた、平民大学に百円だか寄附して、大学令第何条だかの学士位を請求して来た。規定に則り雑誌何月分かを送り学位を許した。其の年の学士大会には態々上京出席して又何百円かを寄附して帰つた。  其頃(だと思ふが)何か癪に障つた事があつたと見え私は大学令第何条かに基づいて山縣公土方宮内大臣(...
  • 医薬の法律
    医薬の法律           米国医学博士 日本弁護士 山崎今朝彌       問題 ■或医師が七月一日午後二時腸窒扶斯病疑似症患者を診断し七月二日朝十時頃、再び診察を為すことなく其時初めて診察したる事とし初めて警察署に、伝染病届、患者何某病名腸窒扶斯疑似症、大正六年七月二日十時診断と記載して届出たり、後日発覚して検事に起訴され第一、二審共、実際診断した時より十二時間内に届出を為さざりし点は、伝染病予防法第二条により、事実診断せざる日を届書に書き届出たる点は、刑法第百六十条、医師警察署に提出す可き診断書に虚偽の記載を為したるときは三年以下の禁錮又は五百円以下の罰金に処すとの条文に依り、双方にて罰金五十円に処せられたり。       解答 ■私は右判決の後の分を不当と信じ、刑法第百六十条に所謂医師の診断書とは、医師が診察の結果に対する判断を表示して、人の健康上の状態を証明する為め...
  • 『平民法律』第11年10号
    平民法律           山崎今朝彌独集 前編       僕の・・・・・・でありたい事  (一)(法律家)としては、常に法律界の異端者、弁護士界の反逆者でありたい。  (二)(社会運動者)としては、何事にも黙々と賛成する相談役でありたい、どつちにも味方となれる喧嘩の仲裁役でありたい、如何なる屁理窟にでも感心出来る苦情の聴役でありたい。  若し夫れ(三)(家庭の人)としては、何にも知らない唯々諾々の好々爺でありたい、圧制極まる純粋無垢の専制君主でありたい。  これは僕が、昨年暮某誌の創刊号によせた、貴下の・・・・・・でありたい事、と題する問合せの返答である。其後其雑誌は見た事がないが、僕は実際、反逆を好み喧嘩をすく。平和を愛し抵抗を厭ふ。自由を求め専制を欲す。僕の『偉大なる低能児の化石』も、遠く源をこれに発し、流れ流れて漸くここに問題に入つたのだ。     ...
  • 忌避申請却下決定(5月6日付)
          決定           申請人 山崎今朝彌  右に対する東京控訴院に於ける懲戒裁判所大正十一年(よ)第一号弁護士懲戒被告事件に付き右申請人より忌避の申請を為したるに付き決定すること左の如し       主文  忌避の申請は之を却下す       理由  申請の要旨は東京控訴院に於ける懲戒裁判所裁判長判事牧野菊之助判事西郷陽判事遠藤武治は大正十一年四月十九日申請人に対し懲戒裁判開始決定を為し其理由に於て被告山崎今朝彌は東京地方裁判所々属弁護士にして其業務に従事中小川孫六外一名新聞紙法違反被告事件の弁護人として大正十一年二月二十日上告趣意書を大審院に提出したるが其論旨中第一点前段に於て「第二審裁判所の有罪と認定したる事実に係る新聞紙の記事は文詞用語冷静平凡奇矯に失せず激越に渉らず十数年来萬人の文章演説に上り都鄙各所に行はれたる常套の論議なれば毫末も社会の平静を紊り共同...
  • 上級判決
    上級判決 判決(一)           大杉 栄  右に対する新聞紙法違反被告事件に付き検事金山季逸干与審理を遂げ判決すること左の如し       主文  原判決を取消す被告人は無罪       理由  本件控訴事実は被告人は大正七年九月二十三日頃大石七分が発行人兼編集人となり新聞紙「民衆の芸術」第一巻第四号(四年十月号)を編集し該紙上に「恵まるる政治」及「生活の反逆」と題する安寧秩序を紊乱する事項を掲載するに際し其編集を担当したるものなりと云ふにあり按ずるに被告人が「民衆の芸術」第一巻第四号に掲載せられたる「恵まるる政治」及「生の反逆」と題する安寧秩序を紊乱する記事の編集を実際担当したる事実は之を認め得べきも右「民衆の芸術」は内務省に於て出版法に依り出版する雑誌として取扱はれたるものなること明白にして偶其記事が出版法第二条の範囲外に渉るも直ちに之を以て新聞紙なりと認め新聞...
  • 大正十二年を迎へ
    大正十二年を迎へ  大正十二年は去年に引続き、其れにもまして旧勢力が衰へ新勢力が擡頭する。総じて反動運動が勃興し随所に血腥い事件が頻発する。都会の社会運動が地方に移つて農民運動や小作争議が猛烈に繁昌する。裁判に対する不信用が極度に厚くなり日本も愈文明国となる。  社会運動が政治運動となる。無政府主義が忘れられて社会主義者が悉く国家社会主義者となる。労働運動から主義者排斥の声が揚がり、法律の運用応用逆用が盛になる。労働者が政治運動に利用されたり却て利用したり。団体の決裂と合同が流行し労働組合の大連合がキツトできる。政府は其間私に制定中の過激法案を通過させるかさせないか。其他枚挙に遑あらずと雖も概ね確実の類にあらず。(東京朝日新聞来年元旦号より転載、山崎今朝彌寄) <以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとし、旧漢字は適宜新漢字に修正した。> <底本は『復刻版...
  • 久板卯之助君を偲ぶ
    久板卯之助君を偲ぶ           山崎今朝彌 久板君の事が何か書いてないかと山崎伯爵疳作集『弁護士大安売』を出して見たら、日比谷警察人権蹂躙訴状の項に告訴人久板卯之助、望月桂、告訴代理人山崎今朝彌、被告人日比谷警察署長警視、増田傳次郎外大勢、傷害罪の告訴として、コンナ一節があつた。 一、大正九年十二月十日は日本社会主義同盟の創立大会当日なりしを以て、頑迷乱暴市内に冠たる日比谷署は猥りに政府の意を忖度迎合し独り其功を専らにせんと欲し云云九日夜十一時頃被告等に取押へられ途中打たれ殴られ蹴られ踏まれて云云此際被告増田は自宅にて大杯を傾け僕婢妻妾を相手に大に天下を論じ形勢を語り独り悦に入りしならんか、告訴人等の新入を聞き直に出署、酒気満面望月の居城に侵入し云云十数名の巡査と共に約七八分間目茶苦茶に打擲殴打し別紙の如く負傷して遂に人事不省に陥りたり。 二、平素温厚柔和羊の如く神の如き告...
  • 事務所で受けた裁判(2)
    事務所で受けた裁判(2)  一、玉石同架次第不同大小取交の事  一、但素人にも玄人にも良く利く事           山崎今朝彌 集 ○十五才未満の養子の実親は自分の名で離縁の訴訟が出来る           東地、民、一  民法八百六十七条には養子が十五歳未満なる時は其実親より離縁の訴を起す事を得とあり他の似た場合の法文の如く法定代理人はとか代はりて起す事を得とか書いて無い、故に養子の実親自ら原告となり、原告の子何某と養親某とを離縁す、との判決を求むる事が出来る。  富山地方裁判所では最近之れと反対に右様の原告の訴を却下して原告名義は養子自身でなければならぬと判決したが田舎の方が違ふてると思ふ。 ○賭博常習者とお負け           大、刑、三  賭博常習者が月日を異にして、数十回賭博を為したる時と雖も之を包括的に観察して一罪と為すべきものなれば常習者...
  • 訴状(2)
    訴状           芝区桜田町十九番地(註一)           原告 弁護士 山崎今朝彌           同区[某町某番地]           被告 貸席業 [甲野太郎] 損害要償の訴       目的及申立  被告は金百円に大正九年正月元日より年五分の損害を付して原告に支払ふべし(註二)       請求の原因  (一)原告は平民大学主催の学術講演会を開く目的にて大正八年六月初め自身又は代理人を以て数回被告と交渉し被告の貸席玉の井を左の条件にて借受け被告の請求する儘六月七日手付金五十円を支払ひたり 1期間は八月八日より十四日迄一週間但夜間の事 2料金は一日十一円計七十七円但座布団及煙草盆四百人分の賃料を含む 3被告に於て七月下旬より会場前に平民大学講演会の大看板を掲出する事 4飲食物の販売は被告の勝手たるべき事但酒類を禁ず  (二)右契約成るや...
  • 我輩の懲戒問題
    我輩の懲戒問題          山崎今朝彌    一、『小僧判事』の蔭口  で忽ち天下の同情を十身に蒐めた弁護士高木益太郎氏の法律新聞第千九百五十五号(三月十八日発行)に「山崎弁護士の奇異な上告趣意」と云ふ題で、又仲間が一人増へたそうな。  米国伯爵、法学博士、医学博士、哲学博士、平民大学総長、其他色々の肩書を有する奇人弁護士山崎今朝彌氏は今回「民権新聞」に対する新聞紙法違反事件に付きて刑事上告趣意書を大審院刑事第一部横田裁判長に差出し、藤波判事主任となり、目下取調中なるが其趣意書中の一節に曰く  若し之をして強いて安寧秩序を破壊するものなりとせば日毎日常の新聞雑誌は悉く秩序紊乱となり之を不問に付する全国の司法官は原審判事山浦武四郎殿、江木清平殿、西豊芳二郎殿三名を除く外皆偉大なる低能児の化石なりと云はざるを得ず、天下断じて豈に斯くの如き理あらんや云云、原裁判は真に呆きれて物が...
  • 3.24・期日進行再度上申書・懲戒裁判所の判決(第一審東京控訴院)
    期日進行再度上申書 大正十一年(よ)第壱号事件に付左に上申候。       要領  口頭弁論期日一日も早く御指定相成度候。尤も期日と通知との間は極めて短く願上候。明日の期日が今日の通知にても差支無之候。判決言渡は即日に願度、送達一切は電話により当方より書記課へ出頭請取候て差支無之候。  右希望申上候。       理由  実の処小生は本件を拾ひ物の様に考へ居り、こんな事で人に厄介をかけてはと、凡て消極的に謹慎仕り候処、友人は色々と心配して呉れ、会ふ毎に結果や成行を聞かれ又は意見を提出され、其親切に困り居り候。之れを無視し何時迄もだまし通すは何だか悪い様な気持が致し候。と申して一々正直に報告するも何んだか同情に甘へる様にも見え、之れも厭に候。依て小生は二三日又は五六日病気して、此間に疾風迅雷的に、判決言渡より控訴申立迄済まし、然る後一々報告かたがた控訴審の弁護を依頼し度と考へ居り...
  • 3.13・司法官心理
    司法官心理  今し方、十二月十五日の中央法律新報が配達された。直に封を切つて、飛び読みして行くと、ガーンと私の頭に響き同時に目の廻りがボツとして倒れる様な気持になつた一項があつた。一度に読んで了ふは惜しくて二度にも三度にも読んで漸く冷静になつた。  問題は十九頁の松山の『不穏文落書事件』だ。実際僕も、天長節の日に松山市十五ケ所に不穏の落書をした者があつて、国中、上を下へで大騒動との松山電報の新聞記事を見て、アー之れも亦例のと思ふてると、二三日過ぎて十九歳乃至二十歳の青年四五名が捕へられたとの記事が出た。之は困つた、ヒヨツとすると又例の恐懼蒼惶不敬罪にでもするかと案じてると、案ずるより来るが早く、四五日すると五年二人三年二年の判決電報があつた。マサカと思ふたがドノ新聞にも書いてある。ソレでも今迄僕は之れを信じなかつたが、今中央法律新報の記事を見ると、愈以て事実らしい。事実として偖諸君之れ...
  • 不敬罪とはどんなものか
    不敬罪とはどんなものか          弁護士 山崎今朝彌  今し方、法律新聞と同時に十二月十五日の中央法律新報が配達された直に封を切つて、飛び読みして行くと、ガーンと私の頭に響き同時に目の廻りがボツとして、倒れる様な気持になつた一項があつた。一度に読んで了ふは惜しくて二度にも三度にも読んで漸く冷静になつた。  問題は十九頁の『松山の不穏文落書事件』だ。実際僕も、天長節の日に松山市十五ケ所に不穏の落書をした者があつて国中、上を下へで大騒動との松山電報の新聞記事を見て、アー之れも亦例のと思ふてると、二三日過ぎて十九才乃至廿才の青年四五名が捕へられたとの記事が出た。之は困つた、ヒヨツとすると又例の恐懼蒼惶不敬罪にでもするかと案じてると、案ずるより来るが早く、四五日すると、五年二人三年二年の判決電報があつた。マサカと思ふたがドノ新聞にも書いてある、ソレでも今迄僕は之れを信じなかつたが今は...
  • 尾佐竹猛君と平松市蔵君と
    尾佐竹猛君と平松市蔵君と  人として秀才でない者はありません、女にして美人でない者はありません、尾佐竹君も明治大学秀才中の秀才です、当時流行の法曹会討論問題のビラ下に白鳥徳利を赤黒く塗つて逆にした雁首から矢鱈に白い泡を吹いて、短かい袴から赤い丸い足を出して盛んに議論の中心となつて居た書生さんは尾佐竹君です、何の必要からアノ顔の中にアノ目元と口元が存在するかとの疑問を懐いた愛嬌を以て幾百の野次を沈黙せしめ、学は東西を極め識は古今を貫くの議論をした弁士は尾佐竹君です、首席優等を以て学校を出で直ちに判検事試験に及第する、自ら好んで無給試補となり東京に留まる、今も尚癖であるが如くすぐ役にも立たぬ金にもならぬ事柄を飽迄研究する、校友からは明治大学が第一に出すべき博士の候補者と評決されました人は尾佐竹君です、其後強固不抜の意思を以て終始一貫陪席判事に志し、事物の解釈法を知らぬ校友からは多少期待に背い...
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