山崎今朝弥 (Kesaya Yamazaki) archive内検索 / 「3.22・心機一転又再転」で検索した結果

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  • 3.22・心機一転又再転
    心機一転又再転  僕の腹の底を割れば、分のよい喧嘩を売つて、其喧嘩に勝ちたい、であつた。この喧嘩が僕に分のよいことは誰にもわかる、勝つには僕が無罪になるか、相手を閉口させなくてはならない。相手が取上げないでは喧嘩にならないが、買つて出られた以上、ドーしても無罪になるか又は敵を深く反省させて閉口させなくてはならない。僕の一番希望する処は、僕が弁護士会に対する態度、青木博士高木弁護士事件等で述べた主張でも明かなる如く、敵を閉口させる事である。しかし喧嘩の手段方法は時と人に依つて異る。岸博士等が弁護士会の輿論を作りデモンストレーシヨンなりテストメントなりに出づるは、左程困難の事ではない、表向き運動したら表向き反対する者はあるまい。僕となると聊か趣きが違ふ。弁護士を立派なものエライものだと思ふてる弁護士で、僕の主張に反対しない弁護士はあるまい。弁護士会を我物顔に心得てる弁護士で、僕を憎まない弁護...
  • 『山崎伯爵創作集』
    ....21・新聞記事 3.22・心機一転又再転 3.23・忌避の申請・忌避申請の決定・上申書・山崎氏の忌避申請却下されて抗告・大審院の決定書(大正十一年(な)第二号) 3.24・期日進行再度上申書・懲戒裁判所の判決(第一審東京控訴院) 3.25・忌避から判決まで・書記課への抗議・控訴状・控訴取下書・日記秘第四五号秘号 3.26・大団円 3.27・チツトにタント、テロリとケロリ・其後の近況と法律萬能主義 3.28・訛伝正伝 3.29・奥付
  • 平民法律無料原稿請願書式
    平民法律無料原稿請願書式  前略 愈々御廃業近々御開業の由、就てはにては無之候へ共早速此事件御願申度、御多忙中甚だ恐入候へ共廿五日迄に『平民法律』一頁是非御埋被下度願上候。  抑々当『平民法律』は方弁護士又は不明弁護士を除く全国の弁護士に、洩れなく配布するを条件として、殆んど他人の計算、総て小生の責任に於て、小生の発行する雑誌に候へば、弁護士に対する君の廃業開業の広告には、充分其目的を達する事を得る事と存候。  私かに思ふ、君が此度『今村恭太郎以来の名判官』の評判を抛て弁護士になつた故事来歴有の儘を告白したら、上は天下を裨益し下は萬心を覚醒するに足るものあらん。今日の新聞に拠れば、君業の廃開は生活の安定の為めとある、学生時代からの君を知る僕は、今も尚君がソンナに馬鹿だとは思はない。生活の保証、収入の安定を得る為めに裁判官に成り下がる弁護士は、其手続に於て敢て不適法ではないが、其反対は...
  • 3.29・奥付
    大正十三年十一月二十二日印刷   売価壱円 大正十三年十一月二十五日発行   送料廿銭 全権所有 著者兼発行者 東京市芝区新桜田町十九番地        山崎今朝彌 印刷者    東京市本郷区追分町五十八番地        佐藤三郎 拾版元    東京市芝区新桜田町十九番地        平民大学        振替東京三一三七〇番 <山崎今朝弥著、山崎伯爵創作集に収録>
  • 3.26・大団円
    大団円  どうせ有罪の判決がある。コツソリ会心の控訴理由書でも作成し、時機を見て取下げ、人の騒ぐ頃は停職六ケ月も既に済んだ頃にしよう。控訴はした。弁護は不用になつた。取下てはならない条件はなかつた。言ひ免れはチヤンと出来てる。然るに今日の新聞には悉く五月二十七日もう停職四ケ月の言渡しがあつた事が報道されてる。何処から洩れたかと司法記者に聞いたら書記課だと答へる。書記課なら呉れ呉れも頼んで置いたにと憤慨して見ても後の祭りである。取り敢へず病気になつてユツクリ考へて見ても、どうする事も出来なんだ。取り敢へず書記長への恨み状とはなつたが瓢箪から駒が出て串戯から肺炎が出た。理由は後から名文でと又取敢へず控訴状だけ出して置いたが、よく考へて見れば遺憾は遺憾でも之れも亦バカバカしい。盲人に孔雀は豚に真珠、それより懲戒裁判にも控訴取下の規則があるかどうかを試した方がせめてもの役得と早速六月廿九日に控訴...
  • 3.28・訛伝正伝
    訛伝正伝  一犬虚を吠ゆれば萬犬実を伝ふ。併し新聞紙は犬と全然同一でないから、幾分新味新説を附加して虚実を伝へなければならない。で棒大は棒大となり枝葉は枝葉が繁茂し、ウソかホントか自分で自分の事が判らなくなる。之れが寧ろ当然だとは言ひ条、今度といふ今度は僕も自分の正伝訛伝に呆れる程面白かつた。此の新聞雑誌の切抜は中々面白いから集めて一冊の本にもする積りではあるが今其中から本篇及び「弁護士大安売」と重複せず又附篇として茲に掲げても良ささうな正伝に属する分数種を並べて見る。尤も此正伝と雖も今回の懲戒事件に関連して伝へられたるものだから、文体はなるべく多少又は少多訂正する。 巡査に貼札 <新聞記事。著作権の観点から公開しない。>  正伝を正すも可笑しいが、序だから一言する。  神戸へ行つたときは汽車中の送りで間違へたのか、降りてからに間違へたのか、風彩堂々たる弁護士宮澤武七君には...
  • 3.21・新聞記事
    山崎弁護士懲戒に付せらる(新聞記事其一) <新聞記事。著作権の観点から公開しない。> 山崎弁護士は懲戒か(新聞記事其二) <新聞記事。著作権の観点から公開しない。> 青鉛筆(新聞記事其三) <新聞記事。著作権の観点から公開しない。> 懲戒裁判のレコード破り(新聞記事其四) <新聞記事。著作権の観点から公開しない。> 起訴猶予附の懲戒(新聞記事其五) <新聞記事。著作権の観点から公開じない。> 転んでも只は起きない(新聞記事其六) <新聞記事。著作権の観点から公開しない。> 司法官専門金融所(新聞記事其七) <新聞記事。著作権の観点から公開しない。> 自由法曹団と山崎氏事件(新聞記事其八) <新聞記事。著作権の観点から公開しない。> 模擬裁判の興行(新聞記事其九) <新聞記事。著作権の観点から公開しない。> ...
  • 3.20・懲戒裁判開始決定
    懲戒裁判開始決定           東京市芝区新桜田町十九番地           平民           東京地方裁判所所属弁護士           山崎今朝彌           明治十年九月生  右に対し当院検事長豊島直通より懲戒裁判開始の申立ありたるを以て当裁判所は左の如く決定す       主文  弁護士山崎今朝彌に対し懲戒裁判を開始す       理由  被告山崎今朝彌は、東京地方裁判所所属弁護士にして其業務に従事中曩きに広島地方裁判所に於いて新聞紙法違反事件に付、有罪の第二審判決を受けたる被告人小川孫六同丹悦太の選任に因り該事件に於ける上告審の弁護人と為り、大正十一年二月二十日上告趣意書を大審院に提出したるが、其論旨第一点前段に於て「第二審裁判所の有罪と認定したる事実に係る新聞紙の記事は文詞用語頗る冷静平凡奇矯に失せず激越に渉らず、十数年来萬人の文章...
  • 『弁護士大安売』の新聞広告
    『弁護士大安売』の新聞広告 大杉栄主幹にかかる『労働運動』第6号(大正11年8月1日発行)12頁に山崎の著書である『弁護士大安売』の広告が掲載されているので下記に転載する。 全面広告ページのうちの四分の一面広告であり、同サイズ内に、下記のとおり平民法律所の広告と一緒に掲載されている。同ページには、『弁護士大安売』の広告の他に、凡人社による吉田只次著『貧乏人根絶論』の広告、三越呉服店の広告、星製薬株式会社のホシ胃腸薬の広告がそれぞれ掲載されている。 広告文句は下記のとおり諧謔に富んでおり、山崎の作であるかもしれない。また、平民法律所の下記広告について、山崎は『山崎伯爵創作集』収録の「我輩の懲戒問題」の中で、「入獄で赤化した自分の経験を以て、僕を頻りに赤化しようと企んだ者があつた。同時に殆んど全部の赤色新聞雑誌に左の広告が載つた。(中略)この悪戯者は、これを以て尚飽き足れりとせず、...
  • 3.02・地震、流言、火事、暴徒
    地震、流言、火事、暴徒       一  気の利いた地震なら、余震でも今頃は引つ込む時節に、まだ地震々々とビクツカせるのには抑々訳がある。  今は凡大正十三年の三月過ぎであらふか、此原稿は、新年一月号に載せるべく其筋の命により激震の余震前、去年十一月中旬中、其大部分を書いたのだ。其れが突然博文館の印刷能力とかの問題で、一月発行が三月発行となり、原稿だけは一と月延期の十二月中旬限りとなつた。元来頭脳明白、至極単純、他に何物も混入しない僕には、直に手を代へ品を変へ、若は題を改へて、全然別個の原稿を製造することは、到底不能でもあり不服でもあり、厭でもあり損でもあつた。そこで、腐つた個所を切取り、不足の部分を継ぎ足し、漸く今茲に去年の十二月中旬、中古の此のバラツクに取掛かつたのである。木の香りが無いのは当然であるが、でも尚前人未到の地を跋歩した新材が多少はあらふと思ふ。  序に題も初めは、『地震、...
  • 3.11・偉大なる低能
    偉大なる低能 前編 僕の・・・・・・でありたい事  (一)(法律家)としては、常に法律界の異端者、弁護士界の反逆者でありたい。  (二)(社会運動者)としては、何事にも黙々と賛成する相談役でありたい、どつちにも味方となれる喧嘩の仲裁役でありたい、如何なる屁理窟にでも感心出来る苦情の聴役でありたい。  若し夫れ(三)(家庭の人)としては、何にも知らない唯々諾々の好々爺でありたい、圧制極まる純粋無垢の専制君主でありたい。  これは僕が、昨年暮某誌の創刊号によせた、貴下の・・・・・・でありたい事、と題する問合せの返答である。其後其雑誌は見た事がないが、僕は実際、反逆を好み喧嘩をすく。平和を愛し抵抗を厭ふ。自由を求め専制を欲す。僕の『偉大なる低能児の化石』も、遠く源をこれに発し、流れ流れて漸くここに問題に入つたのだ。 森下代議士の除名と見舞状  けふの新聞には、日本弁護士協会はトウトウ...
  • 2.02・序文
    序文  明後日中に刷り上げるから今日中に序文を書き送れと、発行所よりの電話。今日は何うしても手が離されぬから明日の日光紅葉狩り(も一寸仰山だが)を止して、と、一日の猶予を願ひ、偖愈々今日となつて見ると。人は来る用事は出来る。オマケに、洋式生活改善の第一歩として、私案大掃除を思ひ立つた当日の事とて、僕はペンを持て、室をアチコチ逃げ廻り気も心も更に落付かず、イクラ考へても、良い甘い、変つた奇抜の名案が出て来ない。依て思ひ切つて極平凡で其代り極無難の凡例でも書いて序文の代りとする事に決めた。  一、書名は発行の仲介人たる堺利彦君のお好とあつて『弁護士大安売』と極まるらしい、僕は余り好まぬが、ト云ふて外に之れ以上の良い名が付けられなんだ。著者の肩書は、総裁、総長、博士、所長などと、余り不真面目にならぬ様アツサリ、山崎伯爵疳作集、上の方へ、平民大学昇格記念出版とでもして呉れと申込んでは置いた。 ...
  • 3.00・凡例
    凡例 1.本ページは、山崎今朝彌氏の著書、『山崎伯爵創作集』(平民大学刊)をデータ化したものである。 2.底本には、山崎今朝彌著『山崎伯爵創作集』(平民大学、1924年)を用いた。 3.原文は縦書きである。仮名遣いは旧仮名遣いのままとし、踊り字は修正した。旧漢字は適宜新漢字に変更した。句読点を一部補正し、明らかな誤植・誤字は訂正した。 4.上記作業にあたっては、山崎今朝弥著、森長英三郎編『地震・憲兵・火事・巡査』(岩波文庫、1982年)を参考にさせて頂いた。 5.入力者のコメントは< >内に記載した。 6.本文中には、差別用語とみられる用語が用いられているが、著者が故人であること、歴史上の文献であること、また差別の意図で用いられたものではないこと、から原文のままとした。 7.本書の著作者は山崎今朝彌氏(1954年没)である。その他の人物による文章や新聞記事について...
  • 3.27・チツトにタント、テロリとケロリ・其後の近況と法律萬能主義
    チツトにタント、テロリとケロリ 其後の近況と法律萬能主義  病気は全快した。僕は六月初めから肺炎をやつた。しかし、抑々の初まりは去年頃から続きの風邪の続きらしい。達者の間は工合も随分悪く、熱も可なり高かつたが、愈々たまらなくなつて寝てからは却て頗る楽になつた。  当時僕の懲戒は忌避申請の却下中で、色々の都合上五六日病気にならなくてはならなかつた。ソコでその旨を早速裁判所へ届けると、すると今度は突然ホントの病気になり、自分ながら心外の至りで、到底事実とは思へなかつた。ソレにも拘はらず病気は用捨なく全快せず、全治には到底三四ケ月を要すと医者は鑑定した。総てを計算に加へ、二十九日大審院の懲戒控訴を取下げ、七月十一日に相州茅ケ崎へ転地した。茅ケ崎へきてからも二三週間は薬を呑んでみたが、何時とはなしに忘れた。七月一杯は運動が過ぎたり、勉強が過ぎたりすると、胸の辺が病人らしかつたが、八月何...
  • 3.24・期日進行再度上申書・懲戒裁判所の判決(第一審東京控訴院)
    期日進行再度上申書 大正十一年(よ)第壱号事件に付左に上申候。       要領  口頭弁論期日一日も早く御指定相成度候。尤も期日と通知との間は極めて短く願上候。明日の期日が今日の通知にても差支無之候。判決言渡は即日に願度、送達一切は電話により当方より書記課へ出頭請取候て差支無之候。  右希望申上候。       理由  実の処小生は本件を拾ひ物の様に考へ居り、こんな事で人に厄介をかけてはと、凡て消極的に謹慎仕り候処、友人は色々と心配して呉れ、会ふ毎に結果や成行を聞かれ又は意見を提出され、其親切に困り居り候。之れを無視し何時迄もだまし通すは何だか悪い様な気持が致し候。と申して一々正直に報告するも何んだか同情に甘へる様にも見え、之れも厭に候。依て小生は二三日又は五六日病気して、此間に疾風迅雷的に、判決言渡より控訴申立迄済まし、然る後一々報告かたがた控訴審の弁護を依頼し度と考へ居り...
  • 今日の『新聞』
    今日の『新聞』    □      山崎今朝彌  「現代の新聞」即ち「資本主義新聞」が専ら営利事業、として、野心機関として存在するものなることは、天下萬人の均しく周知してゐる処であります。ソレを社会だの、木タクだの、理想だの、影響だの、スだの、コンニヤクだのと、全く筋違ひの注文をした処で、ネツカラ初りません。ソレを云ひたいなら、自分で勝手に好いた新聞を拵へるがよろしい。成立しない中にキツト潰れること請合です。  私は、右新聞の真使命をチヤンと念頭に置き、其に依て、之れを利用する事を心懸て居ります。実際、私は永久無配者で、自分の機関新聞を市内に十計り持つてる気がしてゐます。其故か、私は「現代の新聞」に対して、格別の親しみと非常の期待を持つてゐる物であります。 <以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとし、旧漢字は適宜新漢字に直した。> <底本は、『解放...
  • 3.25・忌避から判決まで・書記課への抗議・控訴状・控訴取下書・日記秘第四五号秘号
    忌避から判決まで  判事も検事も警察も一つ穴の狸と思ふてる素人に。予審裁判をした判事は、公判で其事件に関係する事ができない、一審裁判をした判事は、二審で其事件に関係する事ができない、其訳は先入主となる弊害があつて、公平の裁判ができないからだ。と話せば何を?!べら棒な、チヤンチヤラおかしいと笑ふだらうが、玄人はそんな事は当り前の事としてゐる。然るに弁護士判検事の懲戒となると、予審判事のする予審裁判と同じ事を、懲戒開始決定と名を付けて公判々事がやり、其同じ公判々事が又懲戒の裁判をやつてる。刑事々件なら恰ど予審判事と公判々事と、一審判事と二審判事とを一人でやるようなものだ。此不思議の現象はどこかに間違つた処があるにきまつてる。玄人のチヤキチヤキたる判検事弁護士であるから、此事は誰も気が付く筈であるのに、今迄これを問題にした被告のないのは、蓋し被告上黙つていた方が得た利益だと計算したからであらふ...
  • 3. Memorandum
    【山崎の論文等備忘録】  この項では、未入力の山崎の論文等を記録しておくこととする。 山田富太郎著『文官高等判事検事登用弁護士試驗及第者答案集』(博文館・1902年)に収録(未確認)・・・国立国会図書館が運営する国立国会図書館サーチで「山崎今朝弥」で検索すると、本書がヒットする(ただし、館内限定公開)。同サーチの詳細情報によると、本書には山崎の「判検事登用試験」の再現答案(筆記試験:憲法、行政法、商法、民法、民事訴訟法、刑事訴訟法、国際私法)、「弁護士試験」の再現答案(筆記試験:憲法、行政法、民法、民事訴訟法、商法、刑法、刑事訴訟法、国際公法、国際私法)が掲載されているようである。これらは山崎の最初期の公刊文である(なお、山崎による最古の公刊文は、学生時代に雑誌『筆戦場』の「論説と陣幕」欄に掲載された(号数等不明)「節倹と吝嗇」なる投稿文と思われる(森長英三郎著『山崎今朝弥』(紀伊...
  • 3.01・序
    序  コレは僕の小説であり、創作であり、処女作である。尤も僕は何が小説で、何が大説だか実はその区別も碌々知らない、テンで小説といふものを読んだ事すらもないのだから。ソレを僕がコレをココに小説と遠慮したのは、イクラ盲目蛇の僕でもマサカ之れを大説だと自称する度胸はなかつたからである。  コノ小説には僕が心から言つて見たいことを糞真面目に書いた処もあるが、テンで腹にも無い事を冗談半分に云つたり又はイマイマしさの余り思ふことと全く反対のことを書いた処もある。併し今となればドコがドレであるか僕にもわからない。ソレでも読者にはその積りで読んで貰ひたいと言つて見たい。  コノ小説は僕一代の心血を濺いだ結晶で、文界稀に見ざる、世に比儔なき大傑作だとは云へもしまいが、前後十年に亘る新規の旧稿で、初版にして既に二版三版乃至四版五版に達し、坊間有り触れたる普通の小説とは全くその類型を異にする破...
  • 3.12・革命の宣言(但来年より)・社会運動通信・革命来る(但本誌に)
    革命の宣言(但来年より)  本誌は来年一月号から保証金を積み新聞紙法により発行し時事評論雑誌とします。蓋し労働運動、労働者、労働新聞、大衆運動、社会主義、自由人等皆枕を並べて発行禁止になつたからです。併し本誌は主として時事を評論せず、専ら同志又は団体の消息を掲載する事にします。但、被告学、犯罪学、裁判学、監獄学、等法律学説も研究する事従前の通りです。就ては同志諸君の寄稿寄附、を切望します。       第一、寄稿  一、自己若しくは他己の事を成るべく簡単で最も詳しく。  二、裁判事件等は其起原沿革結果等を最も詳細に本誌は之れに一々論評批判を加へたく思ふ。  三、個人消息は幾分運動に関するものに限る。  四、地方の情況は個人又は団体の消息と見做す。  五、悪口と宣伝とは常に没書することあるべし。  六、原稿は保存も返還もせず、其代り郵便局にて公開する事あるべし、中途押収を望ま...
  • 3.10・罰の跋
    罰の跋  此書は大部分清俊印刷所で刷りかけ、遅くも九月一日には確実に記念出版出来る筈であつたが、延びにのびて何時出るか今にわからない。由来馬鹿と気違にはかかしらうな、とは先祖代々の言伝へであるのに、俺がとか又はマサカ俺にはとか自惚れて、少からずオセツカイ心を起したのが抑々間違の初まりで、詐欺にはかかる、横領はされる、相手にもなれない挙句の果が、詐欺の詐欺で、漸く出来上りかけて見れば素人も素人驚き切れもしない程の素人で、到底物にはなるまいと思つてる処へ、電気は止まる、差押はくる、検挙はされる、破産にはなるといふ始末、仕方泣く泣くドコをドウしてか漸くマトメて貰ふたのがコレである。僕は祖先の遺言を守らなかつた罰と諦めもするが、前金払込済の読者に対しては如何なる名目で諦めて貰はうか。(十三年十一月十八日珍無類快晴の日) <山崎今朝弥著、山崎伯爵創作集に収録>
  • 3.15・前編終り
    前編終り  随分飽き性の僕だが、物好から試みた弁護士はもうかれこれ二十年になる。何かで局面の展開をやりたい、乾坤一擲の勝負をして見たい。イクラ卑怯の僕でも、本気に腹が立つたら、憤然と奮ひ立つ勇気も出るだらう。余りに人にイク地がない、人バカ当にする僕には尚更意気地がない。何か天下に事起れかし、とソンナ大きな野心もなかつたが、何かムシヤクシヤ、早く弁護士を棒に振りたい位の考は此時分から常にあつた。 <山崎今朝弥著、山崎伯爵創作集に収録>
  • 3.14・裁判の正体
    裁判の正体       一、廃止か改善か  裁判制度の起原沿革や他国との比較研究、其他物識りに関する事に就ては他にイクラも適当の人があり、又僕のガラでもないから、僕は貧乏弁護士の一人として貧乏人の立場から、自ら経験体得した裁判制度に対する観察を書いて見る。『法廷より観たる裁判制度』『貧乏弁護士の観たる裁判制度』などが適当の表題であらうか。  戦争は平和の為である。武術は逃げる為の用意である。法律は法律を無用にする為である。然らば裁判は裁判を廃止する為であらねばならぬ。裁判を廃止するには裁判の原因である争の根本を廃止せねばならぬ。我が物、人の物の区別を廃して詐欺泥棒の類を根絶しなくてはならぬ。自分の為め他人の為めの区別を取払ふて、横取り抜け駆けを禁止せねばならぬ。併しソレでは人生に余り曲がない、アヤが無さ過ぎる、マー気永にチヨビリチヨビリそう云ふ事に致さうとあつて茲に改善問題が起る。...
  • 3.13・司法官心理
    司法官心理  今し方、十二月十五日の中央法律新報が配達された。直に封を切つて、飛び読みして行くと、ガーンと私の頭に響き同時に目の廻りがボツとして倒れる様な気持になつた一項があつた。一度に読んで了ふは惜しくて二度にも三度にも読んで漸く冷静になつた。  問題は十九頁の松山の『不穏文落書事件』だ。実際僕も、天長節の日に松山市十五ケ所に不穏の落書をした者があつて、国中、上を下へで大騒動との松山電報の新聞記事を見て、アー之れも亦例のと思ふてると、二三日過ぎて十九歳乃至二十歳の青年四五名が捕へられたとの記事が出た。之は困つた、ヒヨツとすると又例の恐懼蒼惶不敬罪にでもするかと案じてると、案ずるより来るが早く、四五日すると五年二人三年二年の判決電報があつた。マサカと思ふたがドノ新聞にも書いてある。ソレでも今迄僕は之れを信じなかつたが、今中央法律新報の記事を見ると、愈以て事実らしい。事実として偖諸君之れ...
  • 3.17・我輩の問題
    我輩の問題       一、『小僧判事』の陰口  で忽ち天下の同情を一身に蒐めた、弁護士高木益太郎氏の法律新聞第千九百五十五号(三月十八日発行)に『山崎弁護士の奇異な上告趣意』と云ふ題で、又仲間が一人増へたそうな左の記事が出た。  米国伯爵、法学博士、医学博士、哲学博士、平民大学総長、其他色々の肩書を有する、奇人弁護士山崎今朝彌氏は今回「民権新聞」に対する新聞紙法違反事件に付きて、刑事上告趣意書を大審院刑事第一部横田裁判長に差出し、藤波判事主任となり、目下取調中なるが其趣意書中の一節に曰く  若し之をしも強いて安寧秩序を破壊するものなりとせば、日毎日常の新聞雑誌は悉く秩序紊乱となり、之を不問に付する全国の司法官は、原審判事山浦武四郎殿、江木清平殿、西豊芳二郎殿三名を除く外皆偉大なる低能児の化石なりと云はざるを得ず、天下断じて豈に斯くの如き理あらんや云云、原裁判は真に呆きれて物が言へ...
  • 3.23・忌避の申請・忌避申請の決定・上申書・山崎氏の忌避申請却下されて抗告・大審院の決定書(大正十一年(な)第二号)
    忌避の申請           申請人(被告弁護士) 山崎今朝彌           被申請人(裁判長判事) 牧野菊之助           同判事 西郷陽           同判事 遠藤武治  右当事者間の東京控訴院に於ける懲戒裁判所大正十一年(よ)第一号弁護士懲戒被告事件に付き、申請人は弁護士法第三十四条判事懲戒法第十一条刑事訴訟法第四十一条第四十二条民事訴訟法第三十五条第三十六条に依り左の申請を為す       主文  被申請人を忌避す       理由  被申請人は東京控訴院に於ける懲戒裁判所の本件係判事にして其職務に従事中、曩きに大正十一年四月十九日申請人に対し懲戒裁判を開始すへきや否やを決定するに当り、弁護士法第三十四条判事懲戒法第十七条に基き其決定書主文に於て「弁護士山崎今朝彌に対し懲戒裁判を開始す」と決定し、其理由に於て『被告山崎今朝彌は東京地方裁判所所...
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    【Menu】 Top page 【Archive】 1. Books (1) 『粗食養生論』(Soshoku youjou ron / Regimen of lean diet;隆文館 1907年) 国立国会図書館の近代デジタルライブラリーにて本文公開中。「粗食養生論」で検索すると出ます。 (2) 『弁護士大安売』(Bengoshi ooyasuuri / Attorney s fee is under discount;聚英閣 1921年) 2.00・凡例 2.01・表紙 2.02・序文 2.03・自伝 2.04・第一編 2.05・第二編 2.06・第三編 2.07・第四編 2.08・第五編 2.09・第六編 2.10・第七編 2.11・奥付 国立国会図書館の近代デジタルライブラリーにて本文公開中。「弁護士大安売」で検索すると出ます。 (3) 『山崎伯爵創作集』(Ya...
  • 3.18・問題となるまで
    問題となるまで  コレも又少々ウソがある。ウソのない処にはホラがある。さて話しは抑々初めからする。  僕が此事件を大審院閲覧室で調べた日はイツであつたか覚へがないが、調べるとすぐ判決の間違つてる事が解つた。腹の立つ程でもなかつたが、田舎の判事の判らないには呆れた位には思つた。一体判決に本気に憤慨するなどは、滅多にはない事だ。僕だつて、自分で取扱つた事件で、噛んでふくめる様に、云つてきかせたのが、余り無茶な事になつた、と云ふような場合でなければ、本気に腹は立つまいと思ふ。然るに此判決は、ドコの何判事が下したものかさへも今は忘れて了つてる位無関係のもので、又其の内容にしても、此判決に対する大審院の判例があつた前は、東京辺の判事だつて、此位の処で皆有罪にして居る。従て僕にさう腹が立つ理由がない。併し此節無暗に弁護士に対する懲戒問題が起る、之れが真に弁護士の風紀を維持する必要なら異論はないが、...
  • プラグイン/ニュース
    ニュース @wikiのwikiモードでは #news(興味のある単語) と入力することで、あるキーワードに関連するニュース一覧を表示することができます 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_174_ja.html たとえば、#news(wiki)と入力すると以下のように表示されます。 ドラゴンクエストけしケシ攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) マニュアル作成に便利な「画像編集」機能を提供開始! - ナレッジ共有・社内wikiツール「NotePM」 - 川崎経済新聞 【グランサガ】リセマラ当たりランキング - グランサガ攻略wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【ウマ娘】隠しイベントの発生条件と効果まとめ - Gamerch(ゲーマチ) 「Wiki」創設者のPC 競売に - auone....
  • 3.08・平澤計七君を憶ひて
    平澤計七君を憶ひて  僕と平澤君との交際は余り長くはない。平澤君が亀戸警察で殺されたは、確か地震九月の三日真夜中で、僕の平澤君を知つたは、その前年十一月の三日真昼間であつた。僅かに一年ソコソコ確かに長くはないが、その間平澤君は、一人で僕の『労働週報』を編輯し、家族と共に僕の家庭に同居し、僕と共に色々の陰謀も企て、僕の看板で『労働者法律相談所』もやつた位だから、短い割合には深い間柄だとも云へる。之れが即ち此序文を書く資格を取つた所以であらう。  本の序文には一体どんな事を書くものであるか、素人の僕には商売の呼吸がサツパリわからない。のみならず、僕は一体誰に頼まれて、どんな本に序文を書くのだかも知らず、ただ平澤君記念の本にチヨツトした序文を書くのだといふ命令を受けただけだ。  チヨツト忘れたが、何とかいふ諺があつた。実際僕は、今平澤君が生きてゐてくれたらばと思ふ事が度々ある。僕の『社会運...
  • 3.16・本編・無料事件依頼状
    本編 無料事件依頼状 <丹悦太から山崎宛の事件依頼状。著作権の観点から公開しない。>  新人会が主として帝大生及び帝大出身者を以て組織されてる事、丹君が新人会広島支部の代表者で通つてる事を知つていた僕は、今迄噂さにきいていた丹君を、帝大出の法学士が社会運動の為め、身を労働者の群に投じて働いてるのだと計り思ふて遙かに尊敬して居つた。然るに此手紙で見ると、さうではなくアベコベに、真の労働者が喰ふに困つて革命運動に参加してるらしい、さなきだにの僕は喜んで早速快諾の返事を出した。が丹君の処へも矢張り必要の手紙は矢鱈に早速届かなかつたと見へ、久しくたつてから、今、全国の軍隊赤化宣伝事件で不日公判開廷せらるべく曩きに大正十一年十月中有罪の予審決定を受けた。茂野藤吉君から、左記僕に対する非難状めいたものが来た。 <茂野藤吉から山崎宛の手紙。著作権の観点から公開しない。> ...
  • 3.06・社会葬・高尾君の思出
    社会葬  吾々無産階級の解放運動に一身を捧げてゐた高尾平兵衛君は、遂に其の犠牲となつて斃れた。しかも解放運動とは全然反対の立場にある反対運動者の為めに悲壮な最後を遂げた。吾々は其の思想に於て、其の運動方法に於て必ずしも高尾君と一致する者ではないが、反動運動の敵たる点と、解放運動に志す点とに於て全く同志であり、兄弟である。  吾々は同志高尾平兵衛君の此の尊き犠牲に対し、明後八日午後一時、無産階級社会一般の、最も厳粛なる社会葬を以て酬ゆることに決した。広く同志を誘ひ、諸君の奮つて会葬せられんことを切に希ふ次第であります。  七月六日      故高尾平兵衛君社会葬委員一同       社会葬執行順序 大正十二年七月八日午後正一時青山斎場に於て開式 一、開式ノ挨拶      一、弔歌合唱 一、遺文朗読       一、告別文朗読 一、経歴文朗読      一、弔文電報披露 一、...
  • 3.07・外二名及大杉君の思出
    外二名及大杉君の思出       (一)  この表題で一度原稿を書き終つたは十月七日の夜であつた。其原稿では先づ大杉家の系図を掲げ、栄と栄の妻伊藤野枝と、栄の末妹あやめの一子宗一(七歳)とが、大正十二年九月十六日夜、麹町区大手町一丁目一番地で死んだこと、栄等兄弟と陸軍中将山田保永とは三親等の姻族、陸軍中将現京都師団長前憲兵司令官山田良之輔とは四親等の血族であること、幼児宗一は米国人でもあること、其他色々のことを明かにし、以て其筋があくまでも秘くさんとした処を意地悪くバラさんと試みた。  然るに九月一日の激震は事咄嗟に起り其の震動極めて峻烈にして家屋の潰倒、男女の惨死幾萬なるを知らず、剰へ火災四方に起りて災焔天に冲り京浜其の他の市邑一夜にして焦土と化したが、十月八日の解禁は事止むなきに出で、其の範囲極めて案外にして、折角の苦心屁の足しにもならず、剰へ公判の結果は疑実四方に起りて新聞天下...
  • 3.04・大庭君を殺した者は誰か
    大庭君を殺した者は誰か  廿一日であつたか、廿二日であつたか少々頭の工合が悪いので、風を引いた事にして夜早く八時頃から寝てゐると、何時頃であつたか『東京日日』より『今大庭柯公氏が露国で殺されたといふ電報があつたが事実だらうか。』といふ電話があつた。安眠して頭を取返さうといふ計画がフイになつて、其の夜はとうとう昻奮して眠られなんだ。出発の際見送つたは僕一人であつたこと、大庭君が何となく淋し相に見えた事、遺言めいた伝言があつたこと、など順々と思ひ出された。ドーセ露国電報であらうとは思つても、一度言つて置き度い言つて置き度いと思ひながら、今暫く暫くで、つい遠慮してコンナ事がある迄言はなんで口惜しかつた事が、僕を極度に昻奮させた。  僕はエライ人でもなし、干からびた人間でもないから、知らないレーニンが二度や三度殺られても、ヨツフエが一人や二人殺されてもビツクともしないが、知つてる堺君が刺された...
  • 3.05・自から不良老年となつて
    自から不良老年となつて       (一)  不良老年の最も特徴とする所は、昔から若死をした者のない事であらう。此の特徴は、不良老年が概ね食ふに困らない、心配のない、楽天家である事も慥かに其の一原因ではあらうが、若死したのでは到底不良老年になれないことも、恐らく一の原因として与つて力があらう。  不良少年は多く貧乏人の群から輩出する。新聞に出る団長が大概良家の子女であることに依つても、上流社会の低能児が不良少年となる事は如何に困難の事であるかといふ事が判かる。之れに反して不良老年は極まつて有産、有閑の階級から生れる。七十で撫切をした、八十で子供を生んだ、老衰して政権獲得運動をした、授爵運動が効を奏した、出娑婆つた、お節介だといふ事は到底貧乏人の話ではない。  不良少年は多く困るから、苦しいから、虐げられるから出て来る。だから可憐い所があり、同情する所がある。が、不良老年は全く我儘か...
  • 『平民法律』第11年10号
    平民法律           山崎今朝彌独集 前編       僕の・・・・・・でありたい事  (一)(法律家)としては、常に法律界の異端者、弁護士界の反逆者でありたい。  (二)(社会運動者)としては、何事にも黙々と賛成する相談役でありたい、どつちにも味方となれる喧嘩の仲裁役でありたい、如何なる屁理窟にでも感心出来る苦情の聴役でありたい。  若し夫れ(三)(家庭の人)としては、何にも知らない唯々諾々の好々爺でありたい、圧制極まる純粋無垢の専制君主でありたい。  これは僕が、昨年暮某誌の創刊号によせた、貴下の・・・・・・でありたい事、と題する問合せの返答である。其後其雑誌は見た事がないが、僕は実際、反逆を好み喧嘩をすく。平和を愛し抵抗を厭ふ。自由を求め専制を欲す。僕の『偉大なる低能児の化石』も、遠く源をこれに発し、流れ流れて漸くここに問題に入つたのだ。     ...
  • 3.09・朝鮮問題の問答集・選外壱等
    朝鮮問題の問答集       (一)  今、日本が米国に併呑され、米国人が日本及日本人を軽蔑し又は虐待するなら、僕はキツトその時、日本の独立運動に狂奔するに相違ない。印度や愛蘭以上の深刻激烈のものであるに相違ない。さうして、先づ第一に独立運動を国家主義だの愛国主義だのと嘲笑する日本人に向つて、生命がけの戦争を開始するに相違ない。解放運動が有らゆる桎梏から逃れることが目的である以上民族的隷属に基く軽蔑や虐待からも解放さるべく、先づ独立運動を捲き起すのは当然だ。僕は今朝鮮問題を考へて真に『自分を抓つて人の痛さを知れ。』と云ふことをシミジミ日本人として感ずる。       (二)  実に甚だ遺憾ながら、東洋第一の文化を誇る日本内地と雖も、信濃川電化工事に際し鮮人虐殺頻々と起らば、死体陸続信川に浮ぶ位は朝飯前のことと存候。  此の事が東洋第一の日本に起りたること、電化工事に際し起りたるこ...
  • 3.19・判決(大正十一年(れ)九九号)・劃時代的の判決
    判決(大正十一年(れ)九九号)           小川孫六           丹悦太  右新聞紙法違反事件に付、大正十年十二月二十六日広島地方裁判所に於て言渡したる判決に対し、各被告は上告を為したり。因て判決すること左の如し。       主文  原判決を破毀す  被告孫六、悦太は無罪  押収物件は差出人に還付す       理由  各被告弁護人山崎今朝彌上告趣意書に縷々陳述する所あれ共、要するに第一、原判決が安寧秩序紊乱として判示したる被告等署名発行の本件記事は「自由? 死?」と題し、第一段に現代社会の幸福は所謂「ブルジヨアジー」のみ享くる所にして無産者は毫も顧みられざる事を論じ、其例として言論の自由は憲法に於ては保障せらるる所なるも、事実に於ては保証金なき「プロレタリア」は一新聞をも発行するを得ざる事を挙げ、第二段は社会運動が常に不法の圧迫干渉を受くる事、総ての法...
  • 3.03・露国討つ可し、日本べからず・露国飢饉救済金募集趣旨書
    露国討つ可し、日本べからず 露国飢饉救済金募集趣旨書  露西亜はいま未曾有の大飢饉に見舞はれて居る。豊僥なボルガ河畔の耕地は昨年の収穫期に一物をも産しなかつた。而して其地方の二千六百萬の住民が飢餓に曝されて居る。或者は木の根や雑草を食つて露命を繋ぎ、或者は麦藁や粘土を囓つて空腹を満して居る。否、それすら今は尽き果てて、全く絶望の裡に悶え死ぬもの数を知らぬ。死屍途にみちて葬る術もなく、萎びたる母の乳房に空しく乳を求めて泣く幼児は、狂へる母の手からボルガの懐に投ぜられて居る。而も最も痛ましいことは、一千萬の子供が餓死に瀕して居ることである。何といふ凄惨な物語であらう。之が人類史上空前の悲劇でなくて何であらう。  それは然しゆ飢る人の罪であらうか?否、断じて否。労農政府の秕政の結果であるといふ憶説は信を措くに足らぬ。主因は天災である。来る月も、来る月も一滴の雨も降らず、早魃は雑草まで...
  • 2.00・凡例
    凡例 1.本ページは、山崎今朝彌氏の著書、『辯護士大安賣』(聚英閣刊)をデータ化したものである。 2.底本には、山崎今朝彌著『辯護士大安賣』(聚英閣、1921年)を用いた。 3.原文は縦書きである。仮名遣いは旧仮名遣いのままとした(踊り字のみ修正した。)。旧漢字は適宜新漢字に変更した。Web環境の問題から漢字を片仮名に直した箇所がある。句読点を一部補正した。また明らかな誤植・誤字は訂正した。目次の見出しが本文の見出しと対応していない箇所は本文の見出しに合わせた。判読不能の文字は□とした。 4.上記作業については、山崎今朝弥著、森長英三郎編『地震・憲兵・火事・巡査』(岩波文庫)を参考にさせて頂いた。 5.歴史上著名な人物、政治家、公務員は実名としたが、一部私人については仮名・仮地名とし、[ ]内に記した。治安法制の被告人は、現在では非犯罪であるから名誉を毀損しないと考え原文のままと...
  • 反動団体に対する方策如何
    反動団体に対する方策如何           山崎今朝彌  思想的に突撃を要する程の者が出た時は又其時の話、今の反動団体など歯牙にかけるに足らず、只先方が得意の暴力で突撃して来た時は、断乎としてやつつけるか又は奮然として逃げるかリンキ応変の処置をとる事也 <以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとした。旧漢字は適宜新漢字に直した。> <底本は、『復刻版進め』(不二出版、1989年)、底本の親本は、『進め』(進め社)第6年1号(昭和3年(1928年)1月号)22頁>
  • 免災財産共用(免災財産を収用せよ)
    免災財産共用(免災財産を収用せよ) ◇久しぶりに薬師寺教授一流の、共同海損理論を準用して都市免災家屋を国有にしろという思いきつた名論をよみ、教授に敬意を表する。 ◇が、この理は都市に限らず、町村免災家屋についても、家屋に限らず土地、山林、産業、債権その他全国の全資産についても同一であるから、君も免災財産国有論には毛頭異論なかろうと思う。 ◇問題は国有か公有か、共有か共用か、無償収用か補償収用か、私有または私用をどの程度に許すか、運営は社会党の社会主義と共産党の共産主義と無政府主義者の自由自治と何れを選ぶかにあるであろうが、君はどれをとるか。私はどれでも、またさきの民間経済学者石橋湛山君唱えたところの課税没収(後に寸解する)でもよい。要は一刻も早く実現可能とみた組につく。 ◇石橋湛山氏が昭和八年五月廿四日東京基督教青年会館での第三回自由懇談会(公然中秘密裏の平和運動結社、同八年九月廿...
  • 山崎の控訴状(同13日付)
          控訴状           東京地方裁判所々属弁護士           控訴人 山崎今朝彌           対手人 不明  右当事者間の大正拾壱年(よ)第壱号事件に付只今其判決謄本送達ありたるも不服に付控訴す       控訴理由  判決の罰の量定は高木氏の「小僧判事」に比し決して高からず、問題の文句相当不穏当にして控訴人に為めにする不謹慎ありしことは之れを認む然れ共不穏当不謹慎は必ずしも弁護士の体面を汚すものに非らざるに判決は全然其点に関し説明を欠くを以て不服なり尚控訴人は目下重病中にて詳細の理由書を提出し得ざるを遺憾とするも夫れは追て直接之れを控訴裁判所に提出すべし  大正十一年六月拾三日    右山崎今朝彌 口授閲覧 大審院に於ける懲戒裁判所 御中 <底本は、法律新聞社編『法律新聞[復刻版]』(不二出版)。底本の親本は『法律新聞』(法律新聞社)大正...
  • 大正十二年を迎へ
    大正十二年を迎へ  大正十二年は去年に引続き、其れにもまして旧勢力が衰へ新勢力が擡頭する。総じて反動運動が勃興し随所に血腥い事件が頻発する。都会の社会運動が地方に移つて農民運動や小作争議が猛烈に繁昌する。裁判に対する不信用が極度に厚くなり日本も愈文明国となる。  社会運動が政治運動となる。無政府主義が忘れられて社会主義者が悉く国家社会主義者となる。労働運動から主義者排斥の声が揚がり、法律の運用応用逆用が盛になる。労働者が政治運動に利用されたり却て利用したり。団体の決裂と合同が流行し労働組合の大連合がキツトできる。政府は其間私に制定中の過激法案を通過させるかさせないか。其他枚挙に遑あらずと雖も概ね確実の類にあらず。(東京朝日新聞来年元旦号より転載、山崎今朝彌寄) <以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとし、旧漢字は適宜新漢字に修正した。> <底本は『復刻版...
  • 社会的正義の先駆者
    社会的正義の先駆者    □      山崎今朝彌  共鳴とは何ぞや、動機とは何ぞや、抑抑現状打破の思想とは何ぞや、等と小六づかしき理窟はぬきにして、要するに私は矢張り遺伝と性格と境遇と感染とよりコンナ人間になつたと思ひます。先祖代々謀反者ヒネクレ者の血を承け、幼にして既に反逆を好み、稍々長じてはテロリケロリで復讐を続け、強情意地ツ張り小面憎く、生れ乍らにして赤貧素寒貧、農家に育ちて耕すにものなく、工場で稼いで小遣手に入らず、見下げ果てたる浮世のバカ者ウツケ者を見るに付け、不平ウツ憤やる瀬なく、世を詛ひ人を茶化すより外なき処へ、先づ初めて米国で赤羽、幸徳、岩佐君等と相識り、コイツ少々話せるなと思ふたが病付きで、友人が悉く革命家若くは社会運動家と変更し、目は何も知らぬ間に耳は確く其ウン奥を極め其後は之を中外に施して決して誤らず過たず、今は只其死期を待つのみと相成候。 <以上は、山崎今朝...
  • 警官暴行とは
    「所謂警官暴行事件と之に対する資本家地主政府の態度とから何事を学び取るべきか」という問いに対する回答。           山崎今朝彌  警官暴行とは、和歌山の警官告訴代理弁護士皆殺し、大山氏等に対する東京駅頭白昼公然の保護なぐり、昔しからなる無産者に対する××××ゲンコ、本所公会堂の滅多打××等々々所謂警察国難の事でせう。  資本家政府の態度とは、見て見ぬ振り、知つて知らぬ振り、サギを烏の言ひ黒め、暴行団本部の本庁嫌疑、大広告料の不審出所、告訴告発不取上げ等々々の態度でせう。  和歌山事件でも御覧なさい。  当世流行の死刑など云ふ事なくキツト何とか理クツを付けて助けますよ。  大山事件は写真もあり白昼でもあつたが、新聞も世間も検事局もあの通りでせう。  本所公会堂の新聞記者が労働運動者でもあつたらドウだつたでせう。  私はコレから、警察も、検事局も、裁判所も、議会も...
  • 東京控訴院による懲戒判決(6月12日付)
          判決           東京市芝区新桜田町十九番地平民           東京地方裁判所々属弁護士           山崎今朝彌           明治十年九月生  右に対する懲戒事件に付検事三浦栄五郎関与の上審判する如左       主文  被告今朝彌を停職四月に処す       理由  被告今朝彌は東京地方裁判所々属弁護士にして其業務に従事中曩に第二審として広島地方裁判所に繋属したる新聞紙法違反被告事件に付判決を以て有罪の言渡を受たる被告人小川孫六同悦太の選任に因り同被告事件の上告審に於ける弁護人と為り大正十一年二月廿日上告趣意書を大審院に提出したる所其の論旨中第一点前段に於て「広島地方裁判所が前記被告人等に対し有罪と認定したる新聞紙の記事は文詞用語頗る冷静平凡奇矯に失せず激越に渉らず十数年来萬人の文章演説に上り都鄙各所に行はれたる常套の論議なれば...
  • 「法治国」新聞紙法違反被告事件
    「法治国」新聞紙法違反被告事件  『法治国』は山崎が一時期在籍していた東京法律事務所の機関誌である。  『法治国』1918年9月号に掲載された荒畑勝三(寒村)氏の「大正聖代の一揆」と題する記事が新聞紙法第41条(安寧秩序紊乱)に触れるとして、荒畑、編集発行人たる長野国助(東京法律事務所の事務員、のち弁護士、日弁連会長)、及び小松利兵衛(同事務所の事務員)の3人が起訴されるという事件が起きた。この記事は1918年に起きたいわゆる米騒動について述べた記事であり、同月号は米騒動について特集した号であった。  この記事は、長野国助「我が法廷の記(1)」『判例時報』(345号2頁)、及び「長野国助」伝刊行会編『長野国助』(1976年)91頁に全文収録されている。  この事件の弁護人は48名もの大弁護団であり、山崎も弁護人の1人として参加している。法治国秩序紊乱事件弁論要旨はこの事件の第一審に...
  • 忌避申請却下決定(5月6日付)
          決定           申請人 山崎今朝彌  右に対する東京控訴院に於ける懲戒裁判所大正十一年(よ)第一号弁護士懲戒被告事件に付き右申請人より忌避の申請を為したるに付き決定すること左の如し       主文  忌避の申請は之を却下す       理由  申請の要旨は東京控訴院に於ける懲戒裁判所裁判長判事牧野菊之助判事西郷陽判事遠藤武治は大正十一年四月十九日申請人に対し懲戒裁判開始決定を為し其理由に於て被告山崎今朝彌は東京地方裁判所々属弁護士にして其業務に従事中小川孫六外一名新聞紙法違反被告事件の弁護人として大正十一年二月二十日上告趣意書を大審院に提出したるが其論旨中第一点前段に於て「第二審裁判所の有罪と認定したる事実に係る新聞紙の記事は文詞用語冷静平凡奇矯に失せず激越に渉らず十数年来萬人の文章演説に上り都鄙各所に行はれたる常套の論議なれば毫末も社会の平静を紊り共同...
  • 相撲見物無罪論
    相撲見物無罪論           山崎今朝彌       緒言  本編は例の東京弁護士会喧嘩の翌日、清水検事が、桃李倶楽部惣代相撲切符事件の検挙に着手したりと聞き、多少性急の誹は免れざるも、平素の親交上座視するに忍びず、幹部諸氏の為と思ひ、公判廷に於ける其無罪論の大綱を記したるものなり、幸ひ該事件は有耶無耶の裡に立消え、今日に至つては殆んど其必要なきに至りたるも、折角調査研究を遂げたる身に執つては、聊か鶏肋の憾なき能はざれば、茲に本紙上に之れを非割愛する事とせり、読者幸に之を諒とし、其足らざるを補ひ其誤れる処を指摘し給はば豈独り学界の為めのみならんや、但文中の註は今回新に私の加へたる処のものなり。       公訴事実(註一)  東京弁護士会は十数年来閥族派(註二)非閥派の二派に対立し事々に反対し故らに衝突して相下らず久しく世間の擯斥する処となり識者の指弾を蒙りたるものなるが被...
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