事業仕分けの内容

行政刷新会議 事業仕分け結果の詳報<11日分>
(11月11日 21:35)

 政府の行政刷新会議作業グループ(WG)による11日の事業仕分け結果の詳報は次の通り。

 ▽国土交通省

 【国土・景観形成事業推進調整費】年度途中で再開可能となった公共事業に充てるため、2010年度予算に200億円を概算要求。「ほかの予算分野の流用で対応できる」「厳格な運用が求められる」などを理由に13人中12人が廃止、1人が予算削減と評価し、廃止に。

 【下水道事業】概算要求は5188億円。仕分け人から「人口の少ない過疎地などでは、下水道よりも低コストな浄化槽などの汚水処理施設の整備を進める方が効率的だ」との指摘が相次ぎ13人中廃止1人、自治体の判断に任せるが7人、10%程度の予算削減が3人などとなり、判定は「地方自治体に財源を移した上で、実施は各自治体の判断に任せる」となった。

 ▽国交省、農林水産省

 【港湾、漁港、海岸、河川環境整備事業】バレーボール場や広場などレクリエーション施設の整備などに批判が集中し、予算の削減を求めた。

 ▽農水省

 【農道整備事業】都道府県の農道整備を国が補助する事業で、10年度の概算要求額は168億円。農水省は中山間地での農業生産性向上のため必要だと主張したが、「一般道と一体的に整備するべきだ。国が補助する根拠が不明だ」といった意見が相次いだ。11人中で廃止が6人、自治体の判断に任せるとの意見が1人、予算削減が4人だったが、最終的には廃止と判定された。

 【里山エリア再生交付金と田園整備事業】約90億円を要求。森林や用水施設、遊歩道など居住環境の整備を助成する里山エリア再生交付金と、都市と農村の交流目的で施設整備などを行う田園整備事業はいずれも廃止。重複する事業が多いことや効果が不明だとの指摘が多く出た。

 【農業農村整備事業】農村集落の下水処理施設の整備を進める農業集落排水事業は「自治体に財源を移譲し、判断を任せるべきだ」と、国が補助事業として行う必要はないとの意見が大勢を占めた。農業に使う水利施設の整備や維持を行うかんがい排水事業は「予算要求の削減」と判定。1774億円を要求しているが、20%程度の削減が適当との声が多かった。

 ▽国交省

 【道路整備事業】1兆2332億円を概算要求。仕分け人からは、費用対効果分析で効果が費用を上回って着手できる事業でも「コストをカットすべきだ」とコスト縮減を求める意見などが続出した。事業評価の厳格化やコスト縮減、道路構造令の柔軟化などにより予算の見直しを行うとした。

 【河川改修事業】1945億円を堤防の整備などに要求。「改修個所の個別の評価を行い、優先順位を明示すべきだ」などの意見が相次いだため、個所ごとの事業評価、コスト縮減のインセンティブの導入などにより、予算の見直しを行うと判定した。

 ▽厚生労働省

 【健康増進対策費(地域健康づくり推進対策費)】食生活改善の啓発活動で、厚労省は1億8600万円を要求。仕分け人から「国は情報提供だけで足りる」「農水省の事業と重複している」と、必要性を疑問視する意見が相次いだ。13人中8人が廃止、5人が自治体や民間への委託を選び、判定は廃止。

 【レセプトオンライン導入のための機器整備等の補助】厚労省は要求額215億円を151億円に減額する方針を表明したが、仕分け人から「所得が高い開業医に補助する必要はない」などと厳しい指摘が続出。13人中7人が10年度予算への計上見送り、5人が廃止、1人が民間委託との意見で「来年度予算の計上見送り」と判定された。

 【独立行政法人雇用・能力開発機構運営費交付金等】もともと「予算の無駄が多い」との指摘があり、麻生政権が08年12月に同機構の廃止と事業の大半を別法人に引き継ぐことを閣議決定済み。厚労省は「高度な職業訓練は国でしかできない」と主張したが、判定は「地方や民間への移管や業務のスリム化をさらに進めるべきだ」となった。

 【診療報酬の配分(勤務医対策等)】仕分け人は「小児科など医師が必要な診療科に報酬を重点配分すべきだ」「厚労省のこれまでの価格設定は失敗」と指摘。16人全員が配分の見直しが必要と判定し、開業医と病院勤務医の収入格差の平準化や、整形外科や眼科など収入の高い診療科の報酬引き下げなどを求めた。

 【後発品のある先発品などの薬価の見直し】主成分が同じで安価な後発薬(ジェネリック医薬品)がある先発医薬品について、後発薬並みの薬価水準まで引き下げるかどうかを議論。厚労省は「国内メーカーの開発意欲をそぐ恐れもある」と主張したが、15人全員一致で、一層の引き下げを必要とする「見直し」と判定した。

 【医療関係の適正化・効率化】医療機関や薬局に支払われる診療報酬の不正をチェックする厚労省の外郭団体「社会保険診療報酬支払基金」と「国民健康保険団体連合会」を統合すべきだとして「見直し」とした。入院時の食費・居住費も「見直し」と判定、「療養病床に比べ、一般病床の患者の自己負担は低い」と患者負担増につながる意見も。整骨院など柔道整復師の報酬請求の一部ケースで減額を求めた。

 【若者自立塾(若者職業的自立支援推進事業)】ニートなどの若者に合宿型の施設で就労体験をしてもらう事業で、10年度は3億7500万円を要求。作業グループでは対策の必要性自体は否定されなかったものの、08年度の利用者がわずか490人にとどまったことがやり玉に挙がった。12人中5人が廃止、4人が「自治体や民間に任せる」と割れたが、最終的には廃止が決まった。

 ▽文部科学省

 【施設関係独立行政法人】「青少年自然の家」などを運営する国立青少年教育振興機構と、教員研修センターは地方自治体にも類似施設があり「地方または民間非営利団体(NPO)に移管」。男女共同参画に関する研修を実施する国立女性教育会館は、役員報酬が高額なことなどから国からの運営費交付金(10年度概算要求額約6億円)を削減する。

 【子どもの読書活動推進事業と子どもゆめ基金】読書活動を進めるために教員や保護者向けの資料を作り、ネットサイトを運営する。「地方や市民レベルの活動があり、国が行う必要はないのではないか」との意見が出され廃止。「子どもゆめ基金」についても廃止の判定が出された。

 【スポーツ予算】地域のスポーツ施設整備やドーピング防止活動などの事業について、予算の大幅な削減が必要と判定。サッカーくじの収益をもとに独立行政法人日本スポーツ振興センターが実施する事業などとの類似が理由だ。

 【独立行政法人日本芸術文化振興会】芸術家への助成など振興会が関係する事業は、運営の方法に批判が目立ち予算の削減と判定された。

 【芸術家の国際交流等】若手芸術家の海外派遣など交流事業(要求額32億円)は、帰国後の活動状況を調査していないことなどから予算を削減。全国約5千カ所で小中学生に日本舞踊や茶道などの伝統文化を体験してもらう「伝統文化こども教室」など3事業(22億円)は「国として行う必要はない」となった。

 【放課後子どもプラン推進等】空き教室で子どもの居場所をつくり地域の交流も支援する放課後子ども教室推進事業は、厚労省の「放課後児童クラブ」と似ていると指摘されたが、「放課後の居場所は大事」と強調する声もあり、結論は「継続」「自治体に任せる」の両論併記。家庭教育支援基盤形成事業などほかの3事業はそれぞれ「廃止」や「自治体に任せる」などとなった。

 【学校ICT活用推進事業等】小中学校で配備が進む電子黒板やコンピューターなどICT(情報通信技術)機器を効果的に活用してもらうため、教員の研修などを実施する学校ICT活用推進事業(要求額7億円)は、機器そのものの必要性に疑義が示され廃止。新学習指導要領に基づく11年度からの小学校での外国語活動(英語)必修化に向けた「英語教育改革総合プラン」(モデル事業)も、教材の全児童らへの配布が無駄遣いなどと指摘され、廃止となった。

 【農山漁村におけるふるさと生活体験推進校事業等】小学生に自然の中で1週間程度の宿泊体験をさせるモデル事業。メンタルヘルスなどに対応するため、専門医を学校に派遣する事業と一緒に論議された。モデル事業として行われることに疑問の声が上がり、評価は「廃止」と「地方自治体へ移管」が拮抗。結論は「国の事業として行わない」となった。

行政刷新会議の12日の事業仕分け結果の詳報は次の通り。

 ▽国土交通省

 【まちづくり関連事業】2010年度予算に計1698億円を概算要求。市町村のまちづくりを支援する「まちづくり交付金」(要求1300億円)、市街地再開発事業(同232億円)、都市再生推進事業(同130億円)、都市・地域交通戦略推進事業(同25億円)、みなと振興交付金(同10億円)の5事業で、仕分け人からは「地方は交付金を受け取る方が得をする。そのため無駄な公共事業の温床になっている実態がある」などの批判や、地方に財源と権限を移すべきだとの意見が相次いだ。仕分け人のうち3人が廃止、6人が自治体移管などと評価し、「地方自治体や民間の判断に委ねるべきだ」と判定され地方移管となった。

 【財団法人民間都市開発推進機構】30億円を概算要求しているまち再生基金は、10年度予算への計上見送りを判定。まち再生参加業務円滑化基金(09年度残高37億円)、無利子貸付金(同1097億円)、事業促進支援基金(09年8月末残高80億円)には、全額国庫返納を求めた。このうち無利子貸付金と事業促進支援基金について国交省は既に、09年度内に全額返納予定としている。民間都市再生基金(09年度残高98億円)は、過大分の国庫返納となった。

 【直轄国道の維持管理】財務省の予算査定担当者が「清掃回数などを定めた統一的な管理基準がなく、現場任せのため無駄が生じている」と指摘。仕分け人からも、国交省OBの天下り先の公益法人が業務を受注していることに批判が集中。判定では、こうした問題点を改善し、10年度で2325億円としている概算要求額を10~20%削減するよう求めた。

 【直轄河川・直轄ダムの維持管理】1254億円を概算要求。委託先が国交省所管の建設弘済会などの公益法人に集中していることや、1社だけの入札も多くコスト高になっていることが問題視され、予算の10~20%削減と判定された。

 【国営公園の維持管理】「民間に開放し経費を削減すべきだ」とし、概算要求115億円からの20%削減を求めた。

 ▽厚生労働省

 【こども未来財団】企業の拠出金を財源とする特別会計などから311億円の基金を設け、その運用益や国の補助金で、授乳室の整備助成などの子育て支援事業を行っている。人件費など財団の管理費が約5億円に上り、厚労省OBの役員が高額報酬を得ていることが批判された。判定では管理費を見直し、基金を国庫に全額返納することなどが求められた。

 【医師確保、救急・周産期対策の補助金等(一部モデル事業)】来年度の要求額は573億円だが、医師不足対策に向け診療報酬の配分を見直すことを前提に「50%削減」と判定された。事業は産科や救急などの医師不足を受け、病院の救急勤務医への手当金や周産期母子医療センターの整備など。仕分け人は「昨年度の予算執行率が約70%」などと指摘した。

 【健康増進対策費(女性の健康支援対策事業委託費)】女性特有の疾患の予防活動で、厚労省は4億円を要求。仕分け人からは「各自治体に任せれば十分」「緊急性はない」との意見が出され「廃止」に。

 【社会保障カード】年金手帳と健康保険証、介護保険証の機能を1枚のカードに持たせる構想。自公政権下で11年度の導入に向け、検討が進められていた。厚労省は、調査費などとして計上した10月時点の要求額7億円を3億円減らす方針を表明した。しかし、民主党の方針である年金通帳や「税と社会保障制度共通の番号制度」との整理が必要として、「来年度の予算計上は見送り」と判定された。

 【キャリア交流事業費】中高年のホワイトカラーの再就職を支援するため全国15カ所にキャリア交流プラザを設置。10年度の概算要求は11億円。「都道府県やハローワークでも可能だ」「土地や建物のコストが高すぎる」との批判が相次いだ。厚労省は事業存続を主張したが、判定結果は「自治体や民間の実施に任せる」だった。

 【労働者派遣事業雇用管理改善等推進事業費】労働紛争を未然に防ぐため、民間の専門相談員に委嘱して派遣労働者や企業からの相談に応じる事業(要求額4億円)。判定結果は「予算を半額に削減」。地方労働局の職員が直接相談に応じるようにするなど事業を抜本的に見直すことも求めた。「具体的な効果が不明確」などの指摘が相次いだ。

 【障害者保健福祉推進事業費(障害者自立支援調査研究プロジェクト)】公益法人や特定非営利活動法人などが行う障害者支援のための調査研究事業に助成する。厚労省の要求額は13億円。全国精神障害者社会復帰施設協会(全精社協)がこの事業で不正に補助金を受け取っていたとされる。仕分け人から不透明さを指摘する意見が出され、廃止となった。

 【障害者保健福祉推進事業費(工賃倍増5カ年計画支援事業費)】授産施設などで働く障害者の経済的自立を目指し工賃の引き上げを図るため、職業指導員の研修や経営コンサルタントの派遣などを行う。予算の執行率は08年度で22・2%にとどまっており「効果的でない」などとして、予算の半減を求めた。

 【水道施設整備事業】簡易水道の施設整備や老朽化した水道施設の耐震化で地方自治体を補助する事業で、厚労省は818億円を要求していた。同省は、水道料金の地域格差を緩和し、水道施設の耐震化を進めるため必要と強調したが、仕分け人からは「独自に取り組んでいる自治体もある」などの意見が相次ぎ「10~20%」の削減。

 ▽農林水産省

 【耕作放棄地再生利用緊急対策】農地所有者に利用する意思がない「耕作放棄地」を再び耕す際にかかる費用を国が補助する制度だが、9月末時点の執行率は約3%。農水省は「食料自給率向上に欠かせない」と主張したが、結論は「今ある基金の範囲内でも来年度の執行に支障を来さない」。農水省が10年度に求めていた70億円の基金積み増しは見送るべきだと判定した。

 【農地集積対策(1)食料安定供給特別会計農業経営基盤強化勘定】同勘定には、剰余金が382億円、積立金が153億円滞留している。「いったん国に返して有効な使い道を考えるべきだ」として判定は国庫返納。農地集積関連の融資は「国からの支援は利子補給までに限るべきだ」、補助金は「少なくとも半減させるべきだ」との結論に。

 【農地集積対策(2)担い手支援貸付原資基金等】地方自治体の公社などが離農する農家から農地を買い取る際などに無利子資金を貸し付ける事業。事業そのものの必要性が低いとする意見が大勢を占めた。他の2基金を合わせて計823億円を国庫に返納するべきだと判定。

 【農地の保全】農業用の水利施設の保全を国が補助する事業(10年度要求額40億円)については「自治体の判断に任せる」と判定。土地改良事業関連の普及啓発活動(2億円)と、フードバンク活動を行う民間非営利団体(NPO)などへの補助(4億円)は「廃止」とした。いずれの事業も仕分け人からは「国がそこまでやる必要はない」との意見が出された。

 【農村振興関係(1)】都市部の若者が農村で働く際に、研修手当などを補助する農村活性化人材育成派遣支援モデル事業(概算要求5億円)は「自治体に判断を任せるべきだ」という意見と「要求通り計上する」が同数だったため、両論併記。新たな農山漁村コミュニティ・マネジメント創造支援事業は「国が行うべきではない」。「農山漁村地域力発掘支援モデル事業」も「国の事業としての必要性を感じない」と結論付けた。

 【農村振興関係(2)】農山漁村活性化プロジェクト支援交付金など農水省の都市農村交流関連の三つの交付金は、いずれも「削減するべきだ」と判定。削減幅は半分から3分の1が大勢だった。都市と農村の交流を促進させるために必要だとする農水省に対し「そば打ち道場などのハコモノが農村の活性化に本当に役立つのか」といった疑問が出された。

 【基金(1)】燃油高対策として設けられた水産業燃油高騰緊急対策基金など水産庁所管の4基金について「10年度の所要額を除き、国庫に返納すべきだ」と判定。4基金は単純合算で1269億円。事業自体については評価する声が出たが、基金の方式では実際に資金が漁業者に届くまで時間がかかりすぎるとの指摘があった。

 【基金(2)】土地改良事業に対する農家の負担の軽減を目的とした土地改良負担金対策資金など4基金について、10年度の所要額を除いた全額の国庫返納を求めた。多年度にわたる資金を保有する必要がないと判断した。4基金の09年度末残高見込みは計2千億円を超える。

 ▽内閣府

 【普及・啓発(青少年育成、犯罪被害者等施策、自殺総合対策などの推進)】概算要求は13億円。内閣府は「政府としての輪郭を示す上で最低限必要な事業だ」と主張。仕分け人からは「フォーラムを行うことが目的化している」「他省庁が主体のものは統合すべきだ」などの意見が出た。廃止論も飛び出したが、3分の1程度縮減に決定。

 【政府広報】概算要求に85億円を盛り込んでおり、内閣府は「重要施策は国民に広く理解してもらう必要がある」と意義を強調。これに対し仕分け人から「費用対効果を検証すべきだ」「誰も見ていない」との指摘が出された。最終的に「政府広報は必要だが、抜本的見直しを求める」として、「半額」と判定した。


行政刷新会議 事業仕分け結果の詳報<12日分>
(11月12日 21:33)

 行政刷新会議の12日の事業仕分け結果の詳報は次の通り。

 ▽国土交通省

 【まちづくり関連事業】2010年度予算に計1698億円を概算要求。市町村のまちづくりを支援する「まちづくり交付金」(要求1300億円)、市街地再開発事業(同232億円)、都市再生推進事業(同130億円)、都市・地域交通戦略推進事業(同25億円)、みなと振興交付金(同10億円)の5事業で、仕分け人からは「地方は交付金を受け取る方が得をする。そのため無駄な公共事業の温床になっている実態がある」などの批判や、地方に財源と権限を移すべきだとの意見が相次いだ。仕分け人のうち3人が廃止、6人が自治体移管などと評価し、「地方自治体や民間の判断に委ねるべきだ」と判定され地方移管となった。

 【財団法人民間都市開発推進機構】30億円を概算要求しているまち再生基金は、10年度予算への計上見送りを判定。まち再生参加業務円滑化基金(09年度残高37億円)、無利子貸付金(同1097億円)、事業促進支援基金(09年8月末残高80億円)には、全額国庫返納を求めた。このうち無利子貸付金と事業促進支援基金について国交省は既に、09年度内に全額返納予定としている。民間都市再生基金(09年度残高98億円)は、過大分の国庫返納となった。

 【直轄国道の維持管理】財務省の予算査定担当者が「清掃回数などを定めた統一的な管理基準がなく、現場任せのため無駄が生じている」と指摘。仕分け人からも、国交省OBの天下り先の公益法人が業務を受注していることに批判が集中。判定では、こうした問題点を改善し、10年度で2325億円としている概算要求額を10~20%削減するよう求めた。

 【直轄河川・直轄ダムの維持管理】1254億円を概算要求。委託先が国交省所管の建設弘済会などの公益法人に集中していることや、1社だけの入札も多くコスト高になっていることが問題視され、予算の10~20%削減と判定された。

 【国営公園の維持管理】「民間に開放し経費を削減すべきだ」とし、概算要求115億円からの20%削減を求めた。

 ▽厚生労働省

 【こども未来財団】企業の拠出金を財源とする特別会計などから311億円の基金を設け、その運用益や国の補助金で、授乳室の整備助成などの子育て支援事業を行っている。人件費など財団の管理費が約5億円に上り、厚労省OBの役員が高額報酬を得ていることが批判された。判定では管理費を見直し、基金を国庫に全額返納することなどが求められた。

 【医師確保、救急・周産期対策の補助金等(一部モデル事業)】来年度の要求額は573億円だが、医師不足対策に向け診療報酬の配分を見直すことを前提に「50%削減」と判定された。事業は産科や救急などの医師不足を受け、病院の救急勤務医への手当金や周産期母子医療センターの整備など。仕分け人は「昨年度の予算執行率が約70%」などと指摘した。

 【健康増進対策費(女性の健康支援対策事業委託費)】女性特有の疾患の予防活動で、厚労省は4億円を要求。仕分け人からは「各自治体に任せれば十分」「緊急性はない」との意見が出され「廃止」に。

 【社会保障カード】年金手帳と健康保険証、介護保険証の機能を1枚のカードに持たせる構想。自公政権下で11年度の導入に向け、検討が進められていた。厚労省は、調査費などとして計上した10月時点の要求額7億円を3億円減らす方針を表明した。しかし、民主党の方針である年金通帳や「税と社会保障制度共通の番号制度」との整理が必要として、「来年度の予算計上は見送り」と判定された。

 【キャリア交流事業費】中高年のホワイトカラーの再就職を支援するため全国15カ所にキャリア交流プラザを設置。10年度の概算要求は11億円。「都道府県やハローワークでも可能だ」「土地や建物のコストが高すぎる」との批判が相次いだ。厚労省は事業存続を主張したが、判定結果は「自治体や民間の実施に任せる」だった。

 【労働者派遣事業雇用管理改善等推進事業費】労働紛争を未然に防ぐため、民間の専門相談員に委嘱して派遣労働者や企業からの相談に応じる事業(要求額4億円)。判定結果は「予算を半額に削減」。地方労働局の職員が直接相談に応じるようにするなど事業を抜本的に見直すことも求めた。「具体的な効果が不明確」などの指摘が相次いだ。

 【障害者保健福祉推進事業費(障害者自立支援調査研究プロジェクト)】公益法人や特定非営利活動法人などが行う障害者支援のための調査研究事業に助成する。厚労省の要求額は13億円。全国精神障害者社会復帰施設協会(全精社協)がこの事業で不正に補助金を受け取っていたとされる。仕分け人から不透明さを指摘する意見が出され、廃止となった。

 【障害者保健福祉推進事業費(工賃倍増5カ年計画支援事業費)】授産施設などで働く障害者の経済的自立を目指し工賃の引き上げを図るため、職業指導員の研修や経営コンサルタントの派遣などを行う。予算の執行率は08年度で22・2%にとどまっており「効果的でない」などとして、予算の半減を求めた。

 【水道施設整備事業】簡易水道の施設整備や老朽化した水道施設の耐震化で地方自治体を補助する事業で、厚労省は818億円を要求していた。同省は、水道料金の地域格差を緩和し、水道施設の耐震化を進めるため必要と強調したが、仕分け人からは「独自に取り組んでいる自治体もある」などの意見が相次ぎ「10~20%」の削減。

 ▽農林水産省

 【耕作放棄地再生利用緊急対策】農地所有者に利用する意思がない「耕作放棄地」を再び耕す際にかかる費用を国が補助する制度だが、9月末時点の執行率は約3%。農水省は「食料自給率向上に欠かせない」と主張したが、結論は「今ある基金の範囲内でも来年度の執行に支障を来さない」。農水省が10年度に求めていた70億円の基金積み増しは見送るべきだと判定した。

 【農地集積対策(1)食料安定供給特別会計農業経営基盤強化勘定】同勘定には、剰余金が382億円、積立金が153億円滞留している。「いったん国に返して有効な使い道を考えるべきだ」として判定は国庫返納。農地集積関連の融資は「国からの支援は利子補給までに限るべきだ」、補助金は「少なくとも半減させるべきだ」との結論に。

 【農地集積対策(2)担い手支援貸付原資基金等】地方自治体の公社などが離農する農家から農地を買い取る際などに無利子資金を貸し付ける事業。事業そのものの必要性が低いとする意見が大勢を占めた。他の2基金を合わせて計823億円を国庫に返納するべきだと判定。

 【農地の保全】農業用の水利施設の保全を国が補助する事業(10年度要求額40億円)については「自治体の判断に任せる」と判定。土地改良事業関連の普及啓発活動(2億円)と、フードバンク活動を行う民間非営利団体(NPO)などへの補助(4億円)は「廃止」とした。いずれの事業も仕分け人からは「国がそこまでやる必要はない」との意見が出された。

 【農村振興関係(1)】都市部の若者が農村で働く際に、研修手当などを補助する農村活性化人材育成派遣支援モデル事業(概算要求5億円)は「自治体に判断を任せるべきだ」という意見と「要求通り計上する」が同数だったため、両論併記。新たな農山漁村コミュニティ・マネジメント創造支援事業は「国が行うべきではない」。「農山漁村地域力発掘支援モデル事業」も「国の事業としての必要性を感じない」と結論付けた。

 【農村振興関係(2)】農山漁村活性化プロジェクト支援交付金など農水省の都市農村交流関連の三つの交付金は、いずれも「削減するべきだ」と判定。削減幅は半分から3分の1が大勢だった。都市と農村の交流を促進させるために必要だとする農水省に対し「そば打ち道場などのハコモノが農村の活性化に本当に役立つのか」といった疑問が出された。

 【基金(1)】燃油高対策として設けられた水産業燃油高騰緊急対策基金など水産庁所管の4基金について「10年度の所要額を除き、国庫に返納すべきだ」と判定。4基金は単純合算で1269億円。事業自体については評価する声が出たが、基金の方式では実際に資金が漁業者に届くまで時間がかかりすぎるとの指摘があった。

 【基金(2)】土地改良事業に対する農家の負担の軽減を目的とした土地改良負担金対策資金など4基金について、10年度の所要額を除いた全額の国庫返納を求めた。多年度にわたる資金を保有する必要がないと判断した。4基金の09年度末残高見込みは計2千億円を超える。

 ▽内閣府

 【普及・啓発(青少年育成、犯罪被害者等施策、自殺総合対策などの推進)】概算要求は13億円。内閣府は「政府としての輪郭を示す上で最低限必要な事業だ」と主張。仕分け人からは「フォーラムを行うことが目的化している」「他省庁が主体のものは統合すべきだ」などの意見が出た。廃止論も飛び出したが、3分の1程度縮減に決定。

 【政府広報】概算要求に85億円を盛り込んでおり、内閣府は「重要施策は国民に広く理解してもらう必要がある」と意義を強調。これに対し仕分け人から「費用対効果を検証すべきだ」「誰も見ていない」との指摘が出された。最終的に「政府広報は必要だが、抜本的見直しを求める」として、「半額」と判定した。

最終更新:2009年11月28日 14:55
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