行政刷新会議の内容 4.厚生労働省

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▽厚生労働省

 【健康増進対策費(地域健康づくり推進対策費)】
食生活改善の啓発活動で、厚労省は1億8600万円を要求。
仕分け人から「国は情報提供だけで足りる」「農水省の事業と重複している」と、必要性を疑問視する意見が相次いだ。
13人中8人が廃止、5人が自治体や民間への委託を選び判定は廃止

 【レセプトオンライン導入のための機器整備等の補助】
厚労省は要求額215億円を151億円に減額する方針を表明したが、
仕分け人から「所得が高い開業医に補助する必要はない」などと厳しい指摘が続出。
13人中7人が10年度予算への計上見送り、5人が廃止、1人が民間委託との意見で「来年度予算の計上見送り」と判定された。

【独立行政法人雇用・能力開発機構運営費交付金等】
もともと「予算の無駄が多い」との指摘があり、麻生政権が08年12月に同機構の廃止と事業の大半を別法人に引き継ぐことを閣議決定済み。
厚労省は「高度な職業訓練は国でしかできない」と主張したが、判定は「地方や民間への移管や業務のスリム化をさらに進めるべきだ」となった。

【診療報酬の配分(勤務医対策等)】
仕分け人は「小児科など医師が必要な診療科に報酬を重点配分すべきだ」「厚労省のこれまでの価格設定は失敗」と指摘。
16人全員が配分の見直しが必要と判定し、開業医と病院勤務医の収入格差の平準化や、整形外科や眼科など収入の高い診療科の報酬引き下げなどを求めた。

【後発品のある先発品などの薬価の見直し】
主成分が同じで安価な後発薬(ジェネリック医薬品)がある先発医薬品について、後発薬並みの薬価水準まで引き下げるかどうかを議論。
厚労省は「国内メーカーの開発意欲をそぐ恐れもある」と主張したが、15人全員一致で、一層の引き下げを必要とする「見直し」と判定した。

【医療関係の適正化・効率化】
医療機関や薬局に支払われる診療報酬の不正をチェックする厚労省の外郭団体「社会保険診療報酬支払基金」と「国民健康保険団体連合会」を統合すべきだとして「見直し」とした。

入院時の食費・居住費も「見直し」と判定、「療養病床に比べ、一般病床の患者の自己負担は低い」と患者負担増につながる意見も。
整骨院など柔道整復師の報酬請求の一部ケースで減額を求めた。

【若者自立塾(若者職業的自立支援推進事業)】
ニートなどの若者に合宿型の施設で就労体験をしてもらう事業で、10年度は3億7500万円を要求。
作業グループでは対策の必要性自体は否定されなかったものの、08年度の利用者がわずか490人にとどまったことがやり玉に挙がった。
12人中5人が廃止、4人が「自治体や民間に任せる」と割れたが、最終的には廃止が決まった。


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▽厚生労働省

【こども未来財団】
企業の拠出金を財源とする特別会計などから311億円の基金を設け、その運用益や国の補助金で、授乳室の整備助成などの子育て支援事業を行っている。
人件費など財団の管理費が約5億円に上り、厚労省OBの役員が高額報酬を得ていることが批判された。
判定では管理費を見直し、基金を国庫に全額返納することなどが求められた。

 【医師確保、救急・周産期対策の補助金等(一部モデル事業)】
来年度の要求額は573億円だが、医師不足対策に向け診療報酬の配分を見直すことを前提に「50%削減」と判定された。
事業は産科や救急などの医師不足を受け、病院の救急勤務医への手当金や周産期母子医療センターの整備など。仕分け人は「昨年度の予算執行率が約70%」などと指摘した。

 【健康増進対策費(女性の健康支援対策事業委託費)】
女性特有の疾患の予防活動で、厚労省は4億円を要求。仕分け人からは「各自治体に任せれば十分」「緊急性はない」との意見が出され「廃止」に。

 【社会保障カード】
年金手帳と健康保険証、介護保険証の機能を1枚のカードに持たせる構想。
自公政権下で11年度の導入に向け、検討が進められていた。
厚労省は、調査費などとして計上した10月時点の要求額7億円を3億円減らす方針を表明した。しかし、民主党の方針である年金通帳や「税と社会保障制度共通の番号制度」との整理が必要として、「来年度の予算計上は見送り」と判定された。

【キャリア交流事業費】
中高年のホワイトカラーの再就職を支援するため全国15カ所にキャリア交流プラザを設置。
10年度の概算要求は11億円。「都道府県やハローワークでも可能だ」「土地や建物のコストが高すぎる」との批判が相次いだ。
厚労省は事業存続を主張したが、判定結果は「自治体や民間の実施に任せる」だった。

【労働者派遣事業雇用管理改善等推進事業費】
労働紛争を未然に防ぐため、民間の専門相談員に委嘱して派遣労働者や企業からの相談に応じる事業(要求額4億円)。判定結果は「予算を半額に削減」。地方労働局の職員が直接相談に応じるようにするなど事業を抜本的に見直すことも求めた。
「具体的な効果が不明確」などの指摘が相次いだ。

 【障害者保健福祉推進事業費(障害者自立支援調査研究プロジェクト)】
公益法人や特定非営利活動法人などが行う障害者支援のための調査研究事業に助成する。厚労省の要求額は13億円。
全国精神障害者社会復帰施設協会(全精社協)がこの事業で不正に補助金を受け取っていたとされる。仕分け人から不透明さを指摘する意見が出され、廃止となった。

 【障害者保健福祉推進事業費(工賃倍増5カ年計画支援事業費)】
授産施設などで働く障害者の経済的自立を目指し工賃の引き上げを図るため、職業指導員の研修や経営コンサルタントの派遣などを行う。
予算の執行率は08年度で22・2%にとどまっており「効果的でない」などとして、予算の半減を求めた。

 【水道施設整備事業】(編者注:鉛水道管対策)
簡易水道の施設整備や老朽化した水道施設の耐震化で地方自治体を補助する事業で、厚労省は818億円を要求していた。
同省は、水道料金の地域格差を緩和し、水道施設の耐震化を進めるため必要と強調したが、仕分け人からは「独自に取り組んでいる自治体もある」などの意見が相次ぎ「10~20%」の削減

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▽厚生労働省

 【両立支援レベルアップ助成金など】
企業に仕事と育児、介護の両立支援や短時間労働者の雇用管理改善などの取り組みを促す助成金。
財団法人「二十一世紀職業財団」を通じて支給される。管理費を計約12億円も計上したことに仕分け人から批判が相次いだ。財団を通じた支給を見直すよう求められた。

【フリーター等正規雇用化支援事業など】
卒業時に就職できずフリーターになった若者らの正規雇用支援などの3事業。
雇用保険料などが原資の労働保険特別会計と一般会計から支出しているが、仕分け人からは特会への一本化を求める意見が相次ぎ、判定はいずれも「特会への移管」。「同じような事業がいろいろあり、利用者が混乱している」との声も。

【若年者地域連携事業】
都道府県が設置した若者向け就職支援センター「ジョブカフェ」内で、中学・高校生の就業体験受け入れに賛同する企業の開拓などを行う事業で4億円を要求していた。
「各地に同様の組織がある」と批判が相次ぎ、廃止と判定された。大学生の就業体験先を探す事業も廃止。

【グローバル人材育成支援事業など】
中小企業の海外赴任予定者などに、派遣国の労働慣行や文化に関する研修などを行う。概算要求は3億円。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の事業との重複などが指摘された。委託先に天下り役員が在籍していることなどから、09年度限りで廃止すべきだとの結論。
技能検定の実施経費などを補助する技能向上対策費補助事業は、補助金の支出先に多くの天下り役員がいるほか、補助事業と関係のない人件費や懇親会の飲食費などの不正経理が会計検査報告で指摘された。予算を半額程度に縮減すべきだと判定した。

 【職業能力習得支援制度実施事業、キャリア・コンサルティングによるメール相談事業】
いずれの事業も「廃止」と判定。職業能力習得支援制度実施事業は、基礎的な職業能力があると認められる若者に証明書を発行したり、事務職などの職業能力を評価するビジネス・キャリア検定を実施。
仕分け人からは「本当に就職に役立つのか」という疑問の声が相次いだ。メール相談事業も実際の相談は1日平均35件と低迷。コストも高く、「有効性に問題がある」として廃止が打ち出された。

【個別労働紛争対策の推進】
紛争調整委員会や総合労働相談コーナーを運営する経費で、15億円を要求。
うち2億円は一般会計だが、「企業側も受益者だから、企業側が全額負担すべきではないか」との意見があり、「一般会計分を労働保険特別会計へ移管する」と結論付けた。非正規雇用の労働者から相談を受けるケースが多く、必要性は認められた。

 【シルバー人材センター援助事業】
定年退職後の高齢者の就業機会を確保・提供するシルバー人材センターの運営に対し補助を行う。概算要求は136億円。
仕分け人は「センターの活動そのものは一定の役割を担っている」としつつも、補助率が高すぎて効率的な運営がされていないうえ、民業を圧迫していると指摘。予算の3分の1程度を削減すべきだと判定。

【8020運動特別推進事業】
自分の歯を80歳になっても20本以上保つことを目的とした運動で、厚労省は4億円を要求。
2000年度の事業開始以前から子どもの虫歯の本数が減少傾向にあることから「事業の効果が疑問」として、予算額や事業内容など総合的な「見直し」が必要と判断。


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▽厚生労働省

【高年齢者職業相談室運営費】
高年齢者の就職支援に向けて自治体などに相談窓口を設置する事業で、10年度の要求額は3億円。
仕分け作業では「ハローワークで対応した方が効率的だ」との意見が続出した。厚労省は雇用情勢の悪化で重要性が増していると主張したが、判定は「廃止」

【延長保育事業(次世代育成支援対策交付金)】
市町村が策定した子育て支援のための計画に対する交付金(440億円)のうち、私立保育所の延長保育を推進する事業。
必要性は認められたが、働く保護者向けのサービスであり、休日・夜間保育などと同じように企業からの拠出金を財源とする特別会計で支出するよう求められた。

【労災レセプト電算処理システム】
労災の請求や支払いに関するレセプト(診療報酬明細書)オンライン化のため、5億円を要求。
システムにかかる保守料の見積額が高額などの意見が相次ぎ、業者への発注の仕方、コスト積算の抜本的「見直し」が必要となった。

【介護サービス適正実施指導事業など】
地域包括支援センター職員らを対象に研修を実施。都道府県などに対し、厚労省が半額を補助している。
08年度の当初予算4億7千万円のうち執行されたのが1億5千万円にとどまるなど、未執行分の多さが指摘された。
国は関与せず、研修内容も含めて各自治体に任せるべきだと判定した。介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格更新などの際に行われる研修も、未執行の予算が多く、要求の3億円を半減し、研修内容を改善するよう求めた。

【優良児童劇巡回等事業】
社会保障審議会が推薦した児童劇や映画を児童館で上演したり、児童館の指導員の研修を行う事業。
仕分け人12人のうち6人が予算の縮減などを求め「見直し」としたが、とりまとめ役の菊田真紀子衆院議員が必要性を強調。研修事業の在り方を検討するよう要請した上で「政治的判断」で概算要求(事項要求)通り認めるべきだと判定。

【生活保護費等負担金(医療扶助の不正請求対策)】
厚労省はセーフティーネット支援対策等事業費として630億円を要求した。このうちの一部が、医療扶助費の適正化を図るための対策費。
今年7月の奈良県の病院による不正請求事件を踏まえ、仕分け人は「レセプト点検の外部委託を進めるべきだ」と指摘し、10人全員が「見直し」と判定した。

【生活保護費等負担金(住宅扶助の不正請求対策)】
ホームレスらを受け入れる無料低額宿泊所の一部で、入所者の生活保護費が不当に天引きされていたとされる問題を受け「刑法の適用も考えるべきだ」「不要になった公的宿泊施設の活用を」といった意見が出された。
厚労省の検討チームで早急に対策を検討するよう「見直し」を要求。

【生活保護受給者のうち就労能力がある者の支援対策】
セーフティーネット支援対策等事業費の一部。就労意欲や能力がある生活保護受給者に、福祉事務所で民間企業OBなどが就労を支援する。
07年度の事業費14億円に対し、就労による保護費削減効果は53億円で、仕分け人は「珍しくいい政策」と評価。実施する福祉事務所を増やすようプラスの「見直し」判定を下した。


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▽厚生労働省

 【福祉医療機構】
国が出資した基金の運用益で、高齢者や障害者の支援に取り組む特定非営利活動法人などに助成し、08年度は計30億円を支出。
仕分け人は「基金の運用益だと財務省の査定がない。毎年度、一般会計から支出する形に変えた方が良い」などと指摘し「見直し」と判定。基金全額の2787億円をいったん国庫に返納するよう求めた。

【雇用関係独立行政法人への運営費交付金】
高齢者や障害者の就業を支援する「高齢・障害者雇用支援機構」への運営費交付金として325億円を要求。
「見直し」で人件費などを削減すべきだとした。
「勤労者退職金共済機構」への交付金も「見直し」と判定し、一般会計からの支出をやめるよう求めた。

【国立保健医療科学院の養成訓練などの経費】
自治体の保健所職員らに感染症などに関する研修を行うほか、医療・福祉行政に必要な研究を実施する厚労省所管の研修・研究機関で、要求額は6億円。
「組織が肥大化している」「研修の応募率が低い」などの指摘が続出、業務スリム化や経費削減を求める「見直し」と判定した。

【企業年金等普及促進費】
企業年金連合会などが年金給付に必要な事務を行う際に厚労省が支給する補助金や、国民年金に上乗せして給付される付加年金の国庫負担分など。10年度予算では22億円を要求。
「予算の算定根拠があいまい」などとして、3分の1程度削減するよう求めた。

【年金に関する広報等の経費】
国民年金の保険料を割り引く前納制度について社会保険庁が新聞広告などで周知する1億円の経費。
判定は「予算削減」が多数だったが、「前納制度はある程度周知されている」とし、結論は「廃止」に。仕分け人からは、新聞購読層のサラリーマンの多くは年金の支給対象ではないとの意見も出た。

【仕事と生活の調和推進事業】
仕事と生活の調和(ワークライフバランス)推進を目的に、長時間労働の是正に取り組む企業活動の紹介などを進めるため、9億円を要求。
仕分け人からは「本来は民間企業が取り組むべきもの」などと公金投入への疑問が相次ぎ「予算計上見送り」

【介護予防事業】
介護が必要になる恐れの高い高齢者の運動機能向上に取り組む市町村に厚労省が事業費の一部を補助し、10年度予算で200億円を要求。
仕分け人の多くが「介護給付費の削減にどれだけ役立つのか、科学的根拠が示されていない」などとデータ収集が不十分だと反発。要求額を「縮減」するよう求め、削減率は「判定不能」とした。

 【保育所運営費負担金(利用料設定の仕組みを含む)】
保育料について、0~2歳の子どもでは生活保護世帯の月0円から年収が932万円以上の世帯の月8万円まで、収入に応じて国が設定する基準額について議論。
収入がより高い世帯については、新たな区分を設けて保育料を徴収するなど、基準額を見直すべきだと判定した。

 【国連・障害者の十年記念施設運営委託費】
堺市にある障害者の交流施設を財団法人に委託運営する費用として厚労省は3億円を要求。
仕分け人は「財団への委託をやめ民間に直接委託して効率化を図るべきだ」と指摘し「見直し」と判定した。

 

 


 

 

 

最終更新:2010年01月13日 00:35
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