暗黒、それ以外に表現する言葉が見当たらない。
見渡す限り一面の黒黒黒黒黒、思考までも染めていくようだ。
周りからは一切音も聞こえない。
完全隔離された場所、『無』の世界とでもいうのだろうか。
さて、何時の間にこんな場所にいたのか。
少なくとも先ほどまで俺ことアビスはすべての村を攻略し、すべてを打ち破ったところだったはず。
だが、それだけでは終わらなかったようだ。
俺をこのようにした奴に、心当たりがある。
ソイツをどうにかしないといけないのだろう。
きっとこの世界は『妄想』で、俺はその『一部』となっているのだろう。
だから、このような状況が作られているのだ。
『妄想』だからあり得る完全なる『無』の世界……そしてこの世界を作れるような人間は少なくとも、一人しか知らない。
「ハッ……あの腐れ【hidden】か、まったくブチ殺したくなる」
無損失疎通路による妄想の共有、それを奴が使ったとしか思えない。
奴の他に使える奴を知らないが現状ではあの糞女のせいと考えるのが妥当だろう。
『新しき敵』や『裏で牛耳っていた黒幕』などの存在の可能性もあるが、あくまで可能性を考えるだけだ。
「――――ん?」
暗闇の先に、一筋の光が見えた。
その場所に向かい足を踏み出した瞬間、体に悪寒が走った。
それはあの時、糞女――――チェルシーに告白をされたときと酷似していた。
論理的根拠のない不吉な予感、前の自分ならばそんなことがありるのかと否定した。
だが、今の俺は変わったのだ。
僅かながら心に変化が生まれた。
この先に進むのは、危険を伴う。
だから進まないか? いいや、そんなことはあり得ない。
このままいたところで精神に何か仕掛けてくるだろう。
あの糞女の事だ、その可能性を考えておいた方がいい。
この場所においては考えておくことは悪手ではない。
むしろ、『考えなければ』いけないのだから。
まぁ、あくまでそれはここがあの女の妄想世界であればの話だが。
「上等だ……乗ってやるよ、その手に」
その不吉な予感を振り切り、光が差す場所へと向かう。
一歩歩くごとに、光の面積が増えていく。
その徐々に増大していく光が目から視力を一時的ながら奪っていく。
一面が真っ白になったあたりだろうか。
その音は、間違いなく耳に、鼓膜に、脳に、『声』となって響いた。
「――――どうも、アビスくん」
間違いなく、その声はチェルシー、あの糞女だった。
もう間違えることはない、因縁づけられた相手……。
面と向かって対話するのは、何時ぶりだろうか。
時間的にはそれほど経っていないのだが、やはり長らく対面していない錯覚を覚える。
「よぉ、二度と会いたくなかったぜ。 くたばってくれりゃあよかったのによ」
「フフフ――――そうですねぇ」
相も変わらず気味の悪い笑いだ。
吐き気を催すというレベルを超えている。
まったく、ぶち殺したくなる。
「それで、俺にフラれた挙句俺を殺そうとした馬鹿女が俺に何のようだ?
まさか今から直接俺を殺そうだなんて笑えるようなことを考えてるんじゃないだろうな。
短絡的思考しかできないお前みたいな糞女じゃあそういう考えしかできねえか?」
「いやいや、私がそんなことをするわけがないじゃないですか。
根拠もなく人を疑うなんてアビスくんらしいですが、そういう風に言うのは貴方らしくないですよ☆」
「ハッ、笑わせてくれるな。 お前は俺を笑いすぎで窒息死させたいのか。
こちとらお前の下僕に殺されかけているんだからよ、否定しても無駄だぞ?
この時点で否定するという選択肢はないからな。 あったとしても俺が選ばせない」
「へぇ……アイツ失敗したんだ、これはお仕置きなりなんなり対処が必要になるじゃないの」
「そういうことはもうこの際どうだっていいんだよ、さっさと俺をここに呼んだ理由を話せ。
話をずらそうだなんて少しでも思ったらその瞬間お前を殺すぞ、とっとと言えよ。
それともお前は俺が今言っている意味も分からないほど頭まで腐ってんのか。
とっとと俺に殺したいという気を起こさせないように客観的に述べろ」
「――――そうね、もうわかったわ。 お前はもう掌握するには知りすぎた。
もう一度試そうとしてもやっぱり駄目、駄目、駄目、駄目、駄目!
どうしてお前は私をここまで不愉快にさせるの!? いい加減にしろよ!!」
「やっぱり猫被ってやがったか、だがそれが俺を呼んだ理由なのか?
そうだと言うのならばお前は思考が腐っていると俺は断言できるぞ。
それはお前の主観による理由だろうが、俺は客観的理由を述べろと言った。
お前の個人的な私怨なんざ聞きたくもないんだよ気持ち悪い」
そう言うと糞女はいつもの吐き気がするようなニヤケ顔をしながら俺を見た。
言っていることが本格的に理解できないのか。
それとも説明するのが不可能な事象だとでも言うのだろうか。
いいや、この世界にはそんな事象があってはたまるか。
無損失疎通路なんていう常識から超越しているトンデモ理論ですら急に話すような奴だ。
説明をできないだなんてあり得るはずがない。
ならば何かを企んでいるのだろうか、それならばあり得るというものではある。
「さて、準備がそろそろ揃いますね」
「――――準備、とは何のことだ」
「アビスくんならばわかるんじゃないんですか? 私がしたいことを」
「それはお前の思考レベルが俺と同等だとでも言いたいのか?
場合によっては今この場でお前をぶち殺してやってもいいくらいには不愉快だな。
お前の腐ってる思考が読めないからわざわざ聞いてやってるんだよ。
それくらいも理解できないのならやっぱお前は腐れ【hidden】だな」
「それならば説明してあげるから耳をかっぽじってよーく聞きなさい。
誰でもわかるように超簡単に説明してあげるわ、感謝しなさい」
「そうか、だったらさっさと説明しろ」
糞女が指を鳴らすと、一面真っ白だった世界に色がついた。
だが単色ではない、空は青く地面は緑の草木で彩られている。
「どうですか? だいぶ変わったでしょう?」
「――――ここは、お前のあのメルヘン妄想世界の中だとでも言うのか。
それにしては随分現実的な世界になったもんだな、お前のその腐った妄想が痛すぎるとわかったのか?」
「いいえ、またそのうち元の世界に戻る予定です……。 さて、では本題に入りましょうか」
「言ってみろよ、コッチはお前のその茶番に付き合わされてお前どころが他に数人殺したいレベルにまでイライラしてたんだ。
ちゃんと俺に分かるように客観的に説明をしろ、もう茶番に付き合うのも面倒だしな」
「そうですね、それでは超簡易的に結論だけを言わせてもらいますね」
「貴方には、この世界で殺し合いをしてもらいます」
「……ハッ、何を言うかと思えばやっぱり気でも狂ってるようだな。
殺し合いをしてもらうっていつの時代の小説だよ、お前が言うに相応しい野蛮な言葉だな。
思考回路が常識を逸している奴が主催者、そういえば元々の小説もそんな感じだったな」
「あら、怖がらないんですね。 少しくらい焦ると思ったんですが」
「焦る? どこにそんな意味があるっていうんだよ。
そこら辺のガキにもわかるような理由ですぐさま説明しろよ。
焦りを生んだ奴から死んでいく、どんな物でもそういう定石があるんだよ。
運が良くてもミスを繰り返せば死ぬ、だが運が悪くても順序を踏めば生存は可能だ。
お前が俺にやらせたあのゲームで俺が少なくとも得た教訓だよ」
「チッ、まぁいいとしましょう。 別に怖がらないのならばそれでいいですしね。
ただ面白いものが一個見れなくなっただけですし。
でも殺し合いには何があろうが参加してもらいますよ?」
「……今からお前をブチ殺してそれで万事解決ということだってできるはずだ。
ここはお前の妄想世界だからと言ってすべてが思い通りにいくわけじゃあない。
つまり俺が今この時点でお前を殺すことだってできるんだよ。
ユヴネの奴がいれば無理かもしれないが、俺一人でもお前くらいなら殺せる」
「残念でしたね、アビスくん……それはできないんですよ」
「ハッ、お得意のハッタリか? 俺はお前にもう精神掌握はされてない。
テメェを殺したところでもうオレの精神に支障をきたすことは一切ない。
何ならお前をこの場で殺すことで証明してやろうか? 無能女が」
「残念ながら、それは絶対的不可能なんですよ。 今のあなたでは私を殺すことは絶対にできない。
というか、私が今本当にこの場にいるだなんて考えちゃいましたか?
そんな訳ないに決まってるだろうが! バカはお前の方なんだよ!!
いつから『本物のチェルシー』がここにいると思っていた! ここは私の妄想の中なんだよ、一時的に私の形状をした通信端末を置くことはできるんだよ!
それに、お前を今から即刻殺すことだってできるんだよ!!」
「へぇ、じゃあやってみろよ。 お前にそれができるというのならな」
ここが奴の妄想世界の中だということは把握できた。
元々予想して、そうであると仮定して話していたが奴の口から確証を得れた。
だが、あくまでそれは面倒になっただけだ。
なんでも思い通りになるわけではないが、この殺し合いは奴の手中に完全にあるということだ。
俺に対するハンデ的な物もあるのだろう。
「フフフ、大丈夫ですよアビスくん……殺し合いは絶対平等、貴方だけ何もなしだなんてあるわけないじゃないですか」
そう言うと糞女……の幻覚かなんかは俺の目の前にバックを置いた。
それがいったいどんなものなのか、と言うのは大方理解した。
殺し合いをするために必要な武器や道具などだろう。
「
ルールなどは、そのバックの中に入っている端末がありますからそれでも見ておいてくださいね。
私が説明するよりわかりやすいでしょうし」
「あぁ、そうだな……だがこれだけは言っておいてやろう」
糞女が言っていた『恐怖』、なんてものはなく。
ただその時の俺にあったのは。
「テメェは、殺す」
ただこれだけだった。
糞女は相変わらずのニヤケ顔で俺を直視する。
「それでこそアビスくんです。 でも……これを見て言えますかね?」
そう言うと、先ほどまで一面自然で埋まっていた周りが真っ暗になる。
あの糞女の姿もなくなった。
奴の口ぶりだと今から俺に対して何らかの精神的な衝撃でも与えるつもりなのだろう。
「――――あ?」
などと考えていると、いつの間にか背後に見知った顔がいた。
だが少なくとも、予想に若干ながら反していた。
いや、ある意味予想通りだったのかもしれない。
これは奴の妄想の中であり、その中に再びこいつが来るとは思わなかったからだ。
「なんでテメェがここにいやがる」
「それに関してはお前にしても私にしてもどうでもいいことではないか?
結論として私は今この場にいてお前と会話をしている、それだけのことさ」
エデン、俺を創り出した存在にして俺の姉に当たる人物。
俺を試すために、あのゲームで敵を演じた。
あの時は俺を試すという少なからず正当な理由が存在したが今回に関してはこの場に登場する意味がないはずだ。
「だが私はもうすぐこの場から立ち去ることになるだろうよ、その前にお前に一言伝えておこうと思ってな」
「ハッ、死に際の言葉みたいなことを言いやがるな」
「どちらでもいいさ、最後であろうが最後でなかろうがな」
少なくとも、俺はこの時すでにわかっていたのだろう。
なぜこの場に奴がいるのかということを。
そして、どうなるのかということを。
それは奴もわかっているのかもしれないが、そんなことは俺には分からない。
わかるつもりも微塵もないがな。
「お前はやはり最高傑作だったよ――――」
グチャッ!
そんな音が俺の目の前で鳴った。
その瞬間にアイツの体はグチャグチャになった。
内蔵の一部と思わしきものが足元に転がっている。
少し遠くに転がっている頭が見えた。
目は髪に隠れて見えない。
だが、口は見にくいほど歪み、笑っていた。
「どうですか? これで私に逆らう気は無くなったでしょう?」
「――――ハァ、お前の馬鹿さに呆れるな、これで俺が怒りに任せて暴走でもするとかでも考えたのか?
そう言う思考だったなら、それこそ笑いものだな……さぁ、始めろよ……そのゲームをよ」
少なくとも、これは奴の妄想世界の中だ。
死体を急遽俺の前に作ることも可能なはず。
これは奴の俺への精神掌握の一部であると取るのが一番だ。
「フフッ、そうですか……ではせいぜい無様に生き残って、無様に死んでいってくださいね?
すぐに死んでしまってはつまらないですから、それでは」
「よろしく、」
「やって」
「ください、」
「ね☆」
【Stage26 起終点の村(フリーゲームバトルロワイアル) 開始】
【エデン@絶対的人狼 死亡確認――――?】
【主催者・チェルシー@絶対的人狼】
【現状生存人数 47名】
[備考]
※これはアビス@絶対的人狼のOPです。
※他のキャラクターにはそれぞれ違うOPがありますがそれはSS内で補完してくださっても完全すっ飛ばしでも構いません。
※そのキャラによって見せしめに目の前で殺されるキャラが変わるかもしれません。
◆ ◆
「さぁ、この村の真実を知りに行こう」
| START |
アビス |
[[]] |
| START |
チェルシー |
[[]] |
| START |
エデン |
GAME OVER |
最終更新:2013年01月11日 17:37