危機等級




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#5_危機等級
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《淵越の釣舟(ヴェルーリヤ)》によって各檻に伝来したヤコウの区分法。それが『危機等級』である。
ヤコウの名称自体は各地に根付いた呼び名を流用しつつ、脅威評価に基づいた分類を行ったこの指標は、現在最も主流なヤコウの区分法として知られている。
『危機等級』は そのヤコウの討伐に要する武力規模 に応じて分類を行う区分法である。1〜5の5つの等級に分けられており、数字が高い等級ほど必要な武力規模の想定が大きくなる。なおこの際、位相による脅威度の変化は考慮されず、その夜行が通常棲息している位相深度を基準として区分が行われる。また、夜行の 群れ に対しての危機等級は、一個体に対する等級評価の一段階上で評価される。
中でも最も脅威評価が高い「第五等級」に関してはその全てが『特異個体(ナンバーズ)』で構成されており、討伐に必要とされる武力規模は最大レベルの『都市』。
『第◯號・□□』の法則で命名されるこれらの『特異個体(ナンバーズ)』は現在12体まで確認されているが、人類はその膨大な回数の挑戦に反し、未だ一体たりとも討伐を成し遂げられていない。
また、「第四等級」に指定されている夜行には『指定個体(ネームド)』と呼ばれる 特に凶暴な個体 が含まれているが、此方は『特異個体』とは異なり、過去に少なくない数の討伐例が残されている。




〈第一等級〉
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最も脅威度が低い等級分類である第一等級は、 討伐に要する武力規模 が『兵士一人』程度であるヤコウによって構成される。なお、ここで言う兵士は、邂化を習得し戦闘訓練を受けた個人のことを指す。第一等級のヤコウは種の総数では第二・第三等級に及ばないものの、最も各種のヤコウに関する性質や生態の解明が進んでいる等級である。
ただし脅威度は最低とはいえ、一般人が一対一で相対したときの生存確率は10%を切る。また、訓練された兵士であっても油断していたり、高い位相で遭遇した際には容易に命を失う。
最も低い脅威度ではあるものの、その弱さの反面、罠や集団による襲撃などの手段をとる種が多く確認されるため、注意が必要である。





〈第二等級〉
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第一等級に次いで脅威度が低い等級分類である第二等級は、 討伐に要する武力規模 が『精鋭一人』程度であるヤコウによって構成される。この等級のヤコウは最も多くの種が確認されており、同時に最も総数が多い等級である。位相深度1〜3にかけて広く分布しており、位相深度1における夜行被害の大半は第二等級である。
大きな特徴として、第二等級以上の夜行は『邂化』を行使した人類と同程度、あるいはそれを上回る身体性能を保有する。そのため、一般人が一対一で相対したときの生存確率は絶望的とされる。また、第二等級でも上位の夜行は桁外れの身体能力を保有するため、精鋭の兵士であっても討伐確率は50%を切るとされる。
なお、イルミナを長距離移動する際に最も脅威とされるのは第二等級の群れである。単騎では対処の仕様がなく、大隊であっても多少の被害を覚悟しなければならない第二等級の群れとの戦闘は、着実に彼らの物資と体力を抉っていく。





〈第三等級〉
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危機等級の五段階のうち中堅である第三等級は、その実、基本的に白夜の匡(イルミナ)で遭遇する夜行種の中では最上位の等級と言っていい。というのも、第四・第五等級は基本的に種ではなく、特殊な変異を遂げた 個体 に対して振り分けられる等級だからだ。
討伐に要する武力規模 は『一個小隊』。
この等級のヤコウはその高い等級に反し、第二等級に次いで最も多くの種が確認されている。個別の対処法が確立されていない種も多く、そもそもの生息域が位相深度3〜4と高位相であるため、未だ未発見の種も数多く存在する。
また、稀に位相深度2にも出没するため、位相深度2における全滅事例の多くは第三等級による強襲である。
大きな特徴として、第三等級以上の夜行は一部の例外を除き『血統』に類する権能を保有する。これらの権能は人類の血統を凌駕する性能を発揮するため、血統保有者であろうとも一対一での戦闘は避け、集団での討伐を行うことが多い。尤も集団による討伐であろうとも殉職確率は非常に高いため、第三等級の存在は探索者の間で忌避の対象となっている。
これは大遠征の際も例外ではなく、白夜の匡(イルミナ)探索は第三等級との会敵を可能な限り避け、不要な損耗を削減することが前提として成立するほどである。





〈第四等級〉
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独自の変異を遂げた『指定個体(ネームド)』とも呼ばれる第四等級は、 討伐に要する武力規模 が『大隊』程度とされる、特に凶暴な夜行によって構成される。
多くは位相深度4の深層に生息しているため、位相深度3未満の『罅縫軌跡(ネルフ・ライン)』で邂逅することは極めて稀。ただし一部の獰猛な個体は位相深度の壁を破って檻周辺の位相深度1にまで追撃してくるほか、檻周辺を巡遊する個体も確認されているため、人類は過去幾度となくこの驚異と対面してきた歴史を持つ。
邂化状態を遥かに凌駕した身体能力、または複数の強力な擬似血統。或いはその両方を併せ持つ彼らは、人類種にとっての強敵とも言える。また、その多くは体内の龍血濃度の高さに由来する龍血の霧を周囲に纏っているため、多少の位相変化を許容する特異性を持つことも特徴である。この体表付近の龍霧は大抵の防護装置であれば貫通するため、近接時には位相深度4以上を想定した防護装備が推奨される。
なお、第四等級において最多の討伐数を誇る蒸霧領ダヴェドは大遠征の他、これら体表の龍霧を大幅に減衰させる汽水域を駆使することで『凱旋』を成し遂げている。だが、『凱旋』による結界への負荷の甚大さは明言するまでもない。






〈第五等級〉
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『特異個体(ナンバーズ)』。或いは『龍』とも。
人類には討伐できない とされる超越個体の総称。
評価基準は『檻一つを単騎で殲滅可能』であること。
討伐に必要とされる武力規模は『都市』。
第四等級以下全ての夜行を凌駕する強度の権能と、人類種に対する殲滅能力を保有する 天敵 。現時点で十二体確認されており、発見順に第○號のナンバリングと、代名詞とも言える二文字の異名が与えられている。第十二號が登録されたのは凡そ百年前であり、この百年間で新たな個体は発見されていない。
その多くは位相深度4、或いは龍脈異常の主として領域深層に生息しているため、記録上、実際に人類が初めて彼らを目視したのは僅か500年前である。
ただし異常領域自体が移動し、時に『罅縫軌跡(ネルフ・ライン)』を横断する個体もいる他、そもそも特定領域に固執せず、白夜の匡(イルミナ)を駆ける個体もいるため、低い位相深度であっても遭遇しないとは断言出来ない。
未だ第五等級の討伐例はなく、そもそもまともな『戦闘』まで発展したケースが皆無に近いのが現状である。そのため、基本的に遭遇した時点で死が確定するとされている。
また、第四等級の例に漏れず、その多くは体内の龍血濃度の高さに由来する龍血の霧を周囲に纏っていると考えられる。そのため既存の防護装備は殆ど意味を成さないか、急速に摩耗していくと予想されている。『彼等が檻を今まで滅ぼしていないのは、何かの奇跡としか思えない』とは、過去の夜行第十二號の移動ログを確認した回析課の口述である。或いは、既に幾つかの檻が滅びた後なのか?白夜の匡の霧が晴れるまで、その謎が明かされることはないだろう。
第五等級の情報は民衆のパニック抑制のため、無意味な公開を避けている檻が殆どである。尤も、十分なデータが蒐集されているとは言い難いが。回析課の担当隊員は機密文書-N5を確認すること。
最終更新:2025年04月24日 17:17
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