ショウ「お疲れ。」
リュータ「おう。」
リュータ「今日も客、全然入ってなかったな。」
ショウ「まあな。」
リュータ「吉田さんとさやかちゃんしか来てなかったよ。」
ゼンジ「ははっ。」
リュータ「何がおかしいんだよ。」
ゼンジ「吉田さんとさやかちゃんて…逆に常連の観客の名前覚えちゃうって、そんなことある?」
リュータ「ひどい話だよな。そろそろ潮時ってことかな、俺たち…。」
ゼンジ「シゲが辞めて、ドラムもなくなったからな。」
リュータ「もうバンドとして成立しないよな。」
ゼンジ「解散か。」
…
ショウ「もうちょっとだけ待ってくれ。」
リュータ「いや、もういいだろう。」
ゼンジ「ショウ、もうこのバンドにしがみ付いてんの、お前だけだよ。俺たちはもういいよ、就職するよ。」
リュータ「俺も田舎帰る。」
ショウ「もう一度、もう一度だけやろうぜ、次のライブで結果が出なかったら解散でもいいから、頼む。」
リュータ「わかった、じゃあ次のライブで結果が出なかったら解散な、お前もいいだろう?」
ゼンジ「ああ、いいよ。」
ショウ「よし、じゃあ次のライブ、死ぬ気でやろうぜ!」
涼子「こんばんは。」
ショウ「こんばんは、ファンの方?」
涼子「いえ、あの私、しあわせの会の会員、篠崎涼子と申します。」
ショウ「はあ…。」
涼子「あなたは今、幸せですか?私共の会は、会員が会員のしあわせのために生きる運命共同思想の団体で…」
ショウ「あの、僕そういうのいいんで。」
涼子「まあまあ、ちょっとお話を聞いてくださいよ。私たちの会には現在、全国に1万人の会員がいるんですが、この会員一人一人が、自分を含めた会員全員の幸せのために日々様々な努力をしているのです。あなた、悩んでいますね?顔が曇っていますよ。」
ショウ「…。」
涼子「話してみてくれませんか?お力になれると思うのですが。」
ショウ「実は、田舎の友達4人と上京して、バンドやってたんですけど。」
涼子「はい。」
ショウ「全然売れなくて、メンバーは減るし、ライブをやってもお客さんが来ないから、会場代とかいろいろかかるし…。もう潮時かなって思って…。」
涼子「でも、あなたは夢を捨てきれない、と?」
ショウ「はい、次のライブで観客が入らなければ、終わりなんです。」
涼子「わかりました、応援させていただきますよ。」
ショウ「ははっ、ありがとうございます。」
涼子「ライブ、いつなんですか?」
ショウ「明日ですよ、これチケット、良かったら聞きに来てください。」
涼子「1枚だけ?」
ショウ「え?」
涼子「余ってるチケット、全部下さらない?」
ショウ「いや、でも。」
涼子「他に渡す人がいないのなら、全部いただきますわ。」
ショウ「じゃあ、どうせごみになっちゃうなら。」
涼子「ごみになんてなりませんわ、きっと満員にしてみますわ。」
ライブ当日、会場はファンで溢れかえることになる。
最終更新:2021年10月28日 18:49