ショウ「お疲れ。」
リュータ「お疲れ!おい、今日のライブ、やばかったな。」
ゼンジ「うん、会場に入りきらなくて、外で聴いてた客もいたらしいぞ。」
リュータ「興奮したな、初めてじゃないか?こんなの。」
ゼンジ「俺たちにもあんなにファンがいたんだな。」
リュータ「これは辞められないでしょう。」
ゼンジ「ああ。でもさ、なんかおかしくないか?」
リュータ「何が?」
ゼンジ「今までチケットほとんど余ってたのに、今回完売だろう?なんで急に?」
リュータ「多分、俺たちのライブが最後になるって、みんな知ってたんじゃない?」
ゼンジ「ああ、そういうこと?確かに、それなら納得いくかな。」
ショウ「よし、じゃあこれからも俺たち、プロ目指して頑張るか!」
リュータ「おう。」
ゼンジ「じゃあ心機一転、新しいスタートを切るためにも、飲みに行くか。」
ショウ「ごめん、俺ちょっとだめなんだ。」
リュータ「なんでだよ。」
ゼンジ「リーダーだろう、お前がいないと始まらないよ。なあ?」
リュータ「ああ。」
ショウ「ちょっと用事あってさ。」
リュータ「なんだよ用事って。」
ショウ「ごめん、ちょっと大事な用事があって、また次、次必ず行くから、今日は二人でやってくれよ。」
リュータ「そうか。」
ゼンジ「用事があるなら仕方ないな。」
ショウ「ごめんな、じゃあおれはこれで。」
リュータ「お疲れ。」
ゼンジ「お疲れ様。」
ショウ「おう、お疲れ。」
涼子「こんばんは。」
ショウ「あ、どうも。」
涼子「ライブ、お疲れさまでした、素敵でしたよ。」
ショウ「本当にありがとうございました、すごく良いライブでした、本当に満員になるなんてびっくりです。」
涼子「これがしあわせの会なんですよ、みんなは一人のために、一人はみんなのために。あなたのしあわせのために、みんなで尽力したんです。」
ショウ「ありがとうございます。」
涼子「次はあなたの番ね。」
ショウ「はい。」
涼子「彼は電車で一目惚れした女性となんとか知り合いになりたいと考えています。でもたまたま同じ電車に乗っていただけの男性から突然声をかけられれば、普通の女性は怖がりますよね。」
ショウ「はい。」
涼子「そこで、古典的ではありますが、我々は考えました。対象の女性が道すがら、通りすがりのチンピラに因縁をつけられます。」
ショウ「え?」
涼子「そこを彼が助けて、女性と知り合う、というストーリーです。そこで、あなたにはチンピラ役をやってもらいます。」
ショウ「…うまくいくんですかね?」
涼子「うまくいかせるしかありません、彼のしあわせのために。」
ショウ「でも僕、芝居とかしたことないし。」
涼子「やるんです、あなたが幸せになれたのも、彼を含めた会員たちが尽力したからです。」
ショウ「それは感謝してますけど。」
涼子「だから、あなたには彼を幸せにするために尽力する義務があるのです。心配しないでください、あなたがまたピンチになれば、またほかの会員があなたのために尽力しますから。みんなは一人のために…。」
ショウ「一人はみんなのために、ですね。」
涼子「そうです。」
ショウ「わかりました、俺やってみます。」
涼子「ありがとうございます。ちなみに、彼はあなたが会員であることや、チンピラが絡んでくることを知りません。」
ショウ「打合せしてないってことですか?」
涼子「彼がこの段取りを知っていればやらせになってしまいますからね、彼には飽くまで本心で彼女を救ってほしいのです。チンピラに絡まれている女性を自分の意志で助けたことがきっかけで知り合ったという事実に何の嘘もないわけですから。私たち会員が陰で手助けをして、それで彼が幸せになればそれでいいので。」
ショウ「わかりました。」
涼子「そろそろ対象の女性がこちらへ歩いてくる頃です、あなたはその女性に絡んでくださいね。」
ショウ「頑張ります。」
ショウ「おうねえちゃん。」
杏子「はい?」
ショウ「良かったら飲みに行かない?」
杏子「…。」
ショウ「無視すんなって、悪いようにはしないからさ、一緒に飲みに行こうよ。」
杏子「ちょっと、やめてください。」
ショウ「そう言わないでさ、絶対後悔させないから、な、いいだろう?」
杏子「もう、しつこいですよ、やめてください。」
ショウ「いいじゃねえか、なあ。」
杏子「ちょっと、放してよ。」
ショウ「放さねえよ、俺と一緒に…。」
前島「その手を放すんだ。」
ショウ「なんだおま…彼氏か?」
前島「彼氏ではない、が、女性が嫌がっているじゃないか。」
バシッ!
ショウ「痛えっ!この野郎…」
涼子「…。」
ショウ「くっ…このやろ、おぼえていやがれ。」
逃げていくショウ。
ゼンジ「え!?」
目撃するゼンジ。
前島「大丈夫ですか?」
杏子「あ、ありがとうございました。」
前島「この辺りはああいった連中が多いですからね、良かったら駅まで送っていきましょうか?」
杏子「いや、大丈夫です。」
前島「いやいや、遠慮なさらずに。」
杏子「いや、遠慮とかじゃなくて…。」
前島「さあ、行きましょう。」
杏子「うぅ…わかりました。」
涼子「お疲れさまでした。」
ショウ「これでいいんですかね?」
涼子「はい、二人が知り合うきっかけはできました、これから先は彼の努力次第です。また私たちの力が必要になれば、その時はまたみんなで助け合えばいいのです。」
ショウ「うまくいってほしいですね、じゃないと僕殴られ損ですから。」
涼子「お疲れさまでした、また必要があればお願いしますわ。」
ショウ「は、はあ…。」
涼子「もちろん、あなたのための尽力も忘れていませんので、ご安心を。」
ショウ「わかりました、一応、連絡先を聞いておいていいですか?」
涼子「ふふ、あなたが私を必要とする時、私があなたを必要とする時、私の方から姿を現しますわ。」
最終更新:2021年10月28日 18:50