サンタになりたかった男達…

2002年頃、モアエニイなるサイトにて投稿した作品。
当時中学二年生、非情に稚拙な文章である。

本編

「12月23日。」
「並べ!ぬかすんじゃないぞ!」
警備員の声が食堂に響きわたり、死刑囚達は並んでいる。
警備員に反抗はおろか、挑発や恨み。全てに対して何も感じなくなったのは、死期が刻々と迫っているからであろう。

夕食もスムーズに終え、死刑囚等は部屋へ戻っていく。
部屋は全部で16部屋あった。6畳間の部屋に、3人ずつ生活している。その16部屋の中の1部屋には、不気味な3人が生活していた。

 森 真治  32歳
丸浜 彰吾  40歳
志村 忠夫  41歳
彼等3人は、富山県で連続殺人事件の犯人であり、被害者15名を、なんともむごく殺したのだ。
当然死刑であった。死刑執行日は12月の24日。明日だ。

しかし彼等はどうしてもやりたい事があった。 
人に優しくした事のない3人は、最後に人に暖かいクリスマスプレゼントを渡したかった。自分達の殺した人の数と同じ15人の子供達に・・・。
しかしこんな牢獄に入ったままではどうしようもない。
彼等は警備員を呼び出し、暗い口調で問いた。
「俺達・・・死ぬ前に・・・町でクリスマスプレゼントを、15人の子供達に渡したいんだ・・・。たった一時間でいい!
その間だけ俺達3人をここから出してくれないか!?必ずここに帰ってくるから・・・・約束するから・・・。」
3人のリーダーである志村が、警備員に言った、が
「はははは・・・連続殺人犯なんだぞお前等は。今まで人を騙し、殺してきたのではないのか?」
さすがに15人も殺した男達の言う事は、脱獄の計画としか考えてもらえず、警備員は去っていった。
「やはり・・・だめか。」
副リーダーである丸浜がガッカリした。
「まぁ。確かにこんな悪魔の言う事なんて聞いてもらえないと思ってたがな・・・。」
ワカゾウの森がそっとつぶやいた。
「死刑囚・・・・・・・か・・・・・。」
志村がそう言いながらベットに腰掛けた。
「ん・・・・・・・・?」
丸浜が何かに気づいた。
「俺達は・・・もう何をしたって殺される身なんだろ・・・?脱獄してもしなくても殺されるんだろ・・・?」
丸浜の以外な考えに、森が口を開いた。
「・・・・やって・・・みますか・・・・?」
志村も口を開く。
「俺達が本当に人に優しくしたい気持ちを奴等にみせてやる・・・!」
ガラガラ・・・・
隣の部屋とののぞき窓を開け、志村は隣の死刑囚に言った。
「脱獄に・・・協力してくれないか・・・?」
志村の突然の発言に、 松田 を始めとする別室の死刑囚は息を飲んだ。
「話は聞いてたろ?必ず帰ってくるから・・・。」
丸浜も言った。
「何を・・・すればいい・・・?」
松田の言葉に乗せられ、他の囚人も耳をすませた。
志村の作戦は、朝食の時にいる警備員は、反抗して来ないと油断しているのか、二人しかいない。そこで、総勢48人が2人の警備員を襲う。そのスキに逃げるという手口だ。
この作戦は、隣の窓から隣の窓へどんどん伝わって、全ての死刑囚に伝わった。結果は、皆協力してくれるらしい。
この結果は、全ての死刑囚が、人に優しくしたいという気持ちを持っているからであり、志村、丸浜、森の3人に代表として、自分達の代わりに行ってきてほしいという気持ちからであった。

「12月24日。」
3人の死刑執行の日、そして脱獄の日である。
死刑囚はオロオロしながら食堂へ入り、並んだ。
その時、志村が合図した。
(いけ!)
一斉に囚人は警備員に襲い掛かった。
とっさに外に出た3人は、後ろを見ずに、そのまま町へ出た。


町には、きれいなイルミネーションが飾ってあったり、クリスマスの曲がかかっていて、とてもにぎやかだった。
久しぶりに出た世の中に、3人は涙を流していた。
「最後だな・・・・最後の町だな・・・。」
丸浜は言った。
「最後の買い物に行こう。最後のプレゼントを買いになっ。」
志村が言うと、3人はプレゼントを買いに行った。


夜・・・
皆が眠りについた頃、3人は動き出した。
「人生最後の仕事だ・・・張り切っていくぞ・・・!」
3人は、1人5個ずつプレゼントを配った。
人生最後の仕事は、死を間近に控えた男達が、涙を流して行った。

プレゼントを配り終えた3人は、村の入り口まで来ていた。
とそこに、10数名の警備員が立っていた。
「行こうか・・・。」
志村の声に、2人はうなずき、3人は警備員とともに、夜の闇へと消えていった。

(さらば・・・。)

終わり    

あとかぎ
この話は、もうひとつのクリスマスがメインだった。
クリスマスが近づくにつれて、町の雰囲気も変わってきたし、ヤフーのページも、クリスマス風になってきたので、クリスマス関連の物語を書きたくなった。だから書いた。
この話は、いろんな人に読んでもらって、もうひとつのクリスマスを知ってもらいたい。


レビュー

  投稿者:麒麟丸 投稿日:2003/05/18  
   設定に少々、無理を感じました。
   優しくしたいという気持ちは、どういう心境の変化から来たものか、それについての説明・経緯があると、物語に入り込み易いです。
   邪から正に変化することは、唐突に思いついたように変わるものではないと思うので、きっかけ等のエピソードがあると良いかと思いました。

  投稿者:エルダ 投稿日:2002/12/3  
   いろんな人のいろんなクリスマス。その一つの優しいクリスマスは、読んでとても感動すると思います。是非読んでみてください。

  投稿者:哲矢 投稿日:2002/11/25  
   感動的ないい話です。ある意味古典的ないい話と言えるでしょう。
   ただ、細かい部分がかなり荒くなっていて、もう少し掘り下げて話を作ってほしかった。(後半の部分の手段が…)
   また、これは作者のねらいだろうが続きが気になる終わり方をしていた。また、主人公の名前や年齢はこの際いらなかったような気がする。

  投稿者:水道のおいしい水 投稿日:2002/11/24  
   感動しますね。世の中にこういう人がたくさんいればいいのに。この後の男達が、気になります。
   いろいろなことを犯してきた人でも、こんな面もあるなんて・…

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2022年08月28日 00:11