魔法使い |
今度こそお願い……! |
魔法使い |
……虹色だ! |
魔法使い |
やった! |
神秘の商人 |
どうやら、お目当てのものが召喚できたみたいね。 |
神秘の商人 |
魔法使いってみんな、このキラキラした色が好きなのかしら。 |
魔法使い |
まあ……あはは…… |
モノローグ |
私が別れを告げて、夜明けの館から出ようとした時、ふと謎の商人に呼び止められた。 |
神秘の商人 |
魔法使い、これを。 |
モノローグ |
謎の商人が慣れた様子で空に召喚陣を描くと、微かな光が放たれた。すると空からコーヒーカップが一つ降ってきて、私の手の上に落ちた。 |
モノローグ |
よく見ると、コーヒーカップにはリボンの付いたネコ……いや、女のコ?の絵柄が書かれている。 |
魔法使い |
これは…… |
神秘の商人 |
おまけよ。「ハローキティ」のコーヒーカップなの。 |
魔法使い |
「ハローキティ」? |
神秘の商人 |
知らないの? |
神秘の商人 |
ちょうどいいわ。今日、例のふたりが来る予定だから、もう少し残りなさいな。 |
魔法使い |
え、何の話? |
モノローグ |
謎の商人は答えてくれず、ただ意味深にまばたきをしただけだった。それでも私が、好奇心でここに居残ることを見抜いていたようだ。 |
モノローグ |
間もなく、馴染みのある声が聞こえてきた。 |
ラグドール |
オーナーさん、こんにちは~。にゃん?魔法使いさんもいたんだぁ。 |
チェリーパイ |
……こんにちは。 |
モノローグ |
ラグドールは笑顔で挨拶してくれた。チェリーパイも、静かに手を振ってくれた。 |
神秘の商人 |
ちょうどよかった。もう用意できたわよ。 |
ラグドール |
じゃあ着替えてくるにゃん!チェリーパイ、行こ。 |
モノローグ |
…… |
ラグドール |
にゃう~ |
チェリーパイ |
…… |
神秘の商人 |
あら、おかわいいこと。 |
ラグドール |
でしょでしょ~! |
魔法使い |
この服…… |
ラグドール |
これはね、「ハローリリエ」の執行委員として選ばれた証なんだにゃ。 |
魔法使い |
「ハローリリエ」?執行委員? |
ラグドール |
うん!「ハローキティ」をみんなに配って、リリエを素敵な「ハローリリエ」にするにゃん!あと、「乙女心」を集めるのもラグドールたちの仕事にゃん! |
モノローグ |
ラグドールが説明すると、逆に訳がわからなくなる。これならいっそ、チェリーパイに聞くしかない。 |
チェリーパイ |
えっと、これは…… |
チェリーパイ |
……う。 |
モノローグ |
チェリーパイは深く考え込んだ。でも、考えれば考えるほどうつろな顔になっていく。 |
チェリーパイ |
「ハロー」しようって意味……? |
チェリーパイ |
……私も、分からないの。 |
神秘の商人 |
あらあら……ちゃんと説明しなかったかしら。 |
神秘の商人 |
じゃあ、もう一度話しましょうか。ちょうど魔法使いも質問してたことだし。 |
神秘の商人 |
魔法使いは「ロゼット」という名前をご存知? |
魔法使い |
どこで聞いたか忘れたけど、なんとなく覚えているような…… |
神秘の商人 |
ロゼットさんは、最近人気の新人デザイナーさんなの。さっき話した「with ハローキティ」シリーズは、まさに彼女の作品よ。 |
神秘の商人 |
それでロゼットさんから、「ハローリリエ」の執行委員となる妖精を探して、彼女が作った「ハローキティモチーフ」のアイテムを配ってほしいと依頼されたの。リリエのみんなに「ハローキティ」で溢れた温かい冬を過ごしてもらうためにね。 |
神秘の商人 |
あと執行委員には、みんなの「乙女心」を集めてほしいとお願いされたわ。 |
魔法使い |
それじゃ、ラグドールとチェリーパイは…… |
ラグドール |
そうにゃ!ラグドールたちは、選ばれて執行委員になったにゃ! |
チェリーパイ |
でも、どうして私なの? |
チェリーパイ |
私なんかより、もっといい選択肢があったはず…… |
神秘の商人 |
それはね、実は私じゃなくて、ロゼットさんが自らあなたたちのことを指名したからよ。 |
チェリーパイ |
……え? |
神秘の商人 |
ロゼットさんはあなたの個性を気に入ったの。執行委員になったあなたが、どんな成果を出すのか期待しているのよ。 |
神秘の商人 |
ただ最初にも言ったけど、もし嫌なら断っても全然構わなかったわ。無理強いはしたくないもの。 |
神秘の商人 |
それでも、やっぱりあなたは来てくれた。 |
チェリーパイ |
それはラグドールが…… |
モノローグ |
チェリーパイは何かブツブツ言っていたけど、声が小さすぎて何も聞こえなかった――と言うより、ラグドールの声が大きすぎて遮られたと言うべきか。 |
ラグドール |
ラグドールは?ラグドールも、ロゼットさんに気に入ってもらえた個性とかあるの? |
神秘の商人 |
あなたが選ばれた理由はね…… |
神秘の商人 |
実は、ロゼットさんが執行委員をもうひとり探していた時、ちょうどあなたがロゼットさんの前を通ったのよ。 |
魔法使い |
それで? |
神秘の商人 |
それだけよ。 |
ラグドール |
はにゃ? |
ラグドール |
それじゃラグドールって、超ラッキーだったってことじゃん! |
ラグドール |
にゃはは……この幸運を無駄にしないように、執行委員の仕事をしっかりこなして、「乙女心」をたくさん集めるにゃん! |
ラグドール |
あ……でも頑張り過ぎたら、寝る時間が減っちゃうにゃん……むぅ…… |
ラグドール |
まあ、どうにかなるにゃん! |
ラグドール |
「ハローリリエ」大作戦の始まりだにゃん!チェリーパイ、一緒に頑張ろうね! |
チェリーパイ |
ま……まって…… |
モノローグ |
テンションが上がったラグドールは、チェリーパイの手をつかみ、夜明けの館から走り去って行く。その後ろ姿は、あっという間に見えなくなってしまった。 |
魔法使い |
本当に大丈夫かなぁ? |
神秘の商人 |
心配なら、あの子たちを助けたら? |
魔法使い |
あなた、最初から私を巻き込みたかったでしょ…… |
神秘の商人 |
そんなことはないわ。 |
神秘の商人 |
でも、私から一つ依頼してもいいかしら? |
神秘の商人 |
もしあのコたちで解決できないことがあったら、どうか助けてあげて欲しいのよ。 |