| 魔法使い | 寒くなってきてるなあ…… |
| フルル | 冬だもんね……この季節になると、部屋に引きこもりたくなっちゃう。 |
| ラグドール | 魔法使いさん、にゃんはろ~。 |
| ラグドール | よかった、フルルもいたんだにゃ。 |
| フルル | え、私? |
| ラグドール | プレゼントを配りにきたにゃん!あれ……どこだっけ…… |
| モノローグ | ラグドールは背負っているかばんを、だいぶ時間をかけて漁り、ようやく小さな羅針盤を見つけ出した。 |
| モノローグ | 羅針盤のカバーは柔らかいピンク色。文字盤にはお馴染みの、リボンの女のコの模様が刻まれている。 |
| ラグドール | あったにゃん! |
| ラグドール | 魔法使いさんから聞いたにゃん。フルルは道に迷うことにかけては誰よりも優秀で、「ハグレル」なんて名誉ある称号まで与えてもらったって。 |
| 魔法使い | (あれは……称号と言うより、アダ名?) |
| ラグドール | だから、これをあげることにしたんだにゃ。 |
| フルル | こっ……これは、「ハローキティ」の羅針盤! |
| フルル | かわいい!とっても気に入っちゃった。ありがとうラグドール! |
| フルル | 昨日、ちょうど[魔法使い]が「ハローキティ」のコーヒーカップを持って帰ってきたから、羨ましいなあって思ってたところだったの。 |
| 魔法使い | へえ?フルル、そんなに「ハローキティ」好きだったの? |
| フルル | えっ……って言うか、忘れたの? |
| フルル | 新人デザイナーのロゼットさんが立ち上げた「with ハローキティ」ブランドの商品って言えば、発売以来、大流行じゃないの。 |
| フルル | このまえ雑誌で見た時も、「なんでリリエじゃハローキティのアイテムを買えないの?」って私、話してたのに。聞いてなかったの? |
| ラグドール | にゃはは……でも今はもう違うにゃん。 |
| ラグドール | ラグドールたちが、「ハローキティ」でリリエを染め上げて、「ハローリリエ」にしちゃうからにゃん! |
| 魔法使い | そういえば、執行委員の仕事は順調? |
| ラグドール | …… |
| ラグドール | にゃん! |
| ラグドール | 忘れるところだったにゃん! |
| 魔法使い | えぇ!? |
| ラグドール | チェリーパイは?近くにいる? |
| 魔法使い | いや……いないけど。 |
| ラグドール | そっか。じゃ、またにゃん! |
| 魔法使い | 待って! |
| モノローグ | 私は窓から飛び出そうとするラグドールを止め、何かトラブルでも起きたのかと尋ねてみた。 |
| モノローグ | するとラグドールは、身振り手振りで懸命に事情を話してくれた。 |
| モノローグ | 話はいろいろ脱線したが……結論だけ言えば、チェリーパイがいなくなったということらしい。 |
| ラグドール | 昨日はチェリーパイの手を引いて、たくさんお喋りしたんだよ?にぼしのこととか、甘々なミルクのこと……それに、日向ぼっこしながら日暮れまでお昼寝した話とか、毛が抜ける悩みとか…… |
| ラグドール | でも、今日はどこにもいないにゃん! |
| 魔法使い | チェリーパイ、ひとりで行動しているのかな? |
| ラグドール | にゃに?じゃあラグドールが寝ている間に、チェリーパイはひとりで抜け駆けして「乙女心」を集めるってこと!? |
| ラグドール | じゃ……じゃあ……魔法使いさん、早く一緒に行くにゃ! |
| 魔法使い | なんで私まで? |
| ラグドール | オーナーさんが言ってたにゃん!何か困ったことあれば、魔法使いさんを頼れって! |
| ラグドール | 「ハローリリエ」の執行委員――ラグドールと、その助手――魔法使いさん、出発! |
| フルル | [魔法使い]、頑張ってね! |
| モノローグ | ちょっと強引だったが、謎の商人に依頼されていたこともあり、結局は手助けしてあげることにした。 |
| ラグドール | にゃふん~「ハローキティ」のアイテムをみんなに配って♪ |
| ラグドール | にゃははん~「乙女心」も集めて~ロゼットさんに~♪ |
| 魔法使い | そういえば、どうしてロゼットさんは「乙女心」がほしいのかな? |
| ラグドール | いい質問にゃん、助手! |
| モノローグ | てっきり「知らない」という答えが返ってくると思っていたが、ラグドールは足を止め、キラキラした目で見つめてくる。 |
| ラグドール | ロゼットさんは、有名だけど、公の場では一度も顔を出したことがないにゃ。 |
| ラグドール | 誰もロゼットさんの正体が分からなくて、ミステリアスな妖精という噂や、天才魔法使いという噂、実はイブ大陸の者じゃないという噂まであったり…… |
| ラグドール | とにかく、ロゼットさんは特別なデザイナーさんなんだにゃ。 |
| ラグドール | その仕事の仕方も独特で、聞いたところによると、特殊な真っ白い紙に向かってロゼットさんが特別な力を使うそうなのにゃ。するとペンも使わず、紙に素敵な設計図を浮かび上がらせることができるとか。 |
| ラグドール | きっと、そうやって設計図を作るための鍵が、「乙女心」だと推理しているにゃん! |
| ラグドール | それでロゼットさんのために「乙女心」を集めて、設計図を作ってもらえば、もっとかわいくて面白いものが生み出せるにゃん。 |
| 魔法使い | なるほどね…… |
| ラグドール | ということで助手、頼りにしてるにゃ。これからの仕事が大事なんだにゃん! |
| ラグドール | かわいいかわいい「ハローキティ」のアイテムをリリエのみんなに配って、たくさんの「乙女心」を集めるんだにゃん。 |
| ラグドール | ……にゃ!ターゲット発見! |
| モノローグ | 目の前にいくつか、見慣れた姿があった。ラグドールは大きなカバンを引っ掴み、標的に向かってそのまま走り出す。 |
| パンダ(女) | はあ……つまんない…… |
| パンダ(女) | お兄ちゃんのバカ!大掃除の邪魔になるとか言って、私を家から追い出すなんて! |
| カンジキウサギ | じゃ、じゃあ……一緒にスキーに行かない?今なら、山に雪が積もっているのと思うけど…… |
| パンダ(女) | あのねぇ、カンジキウサギ?私とあんたは違うの。 |
| カンジキウサギ | え、え?同じ妖精なんじゃないの? |
| パンダ(女) | あんたみたいなアウトドア系には分からないか……あのねぇ、教えてあげる。私のような引きこもり系をそんなのに誘っちゃダメだからね?ショックが強すぎて、危うく大地に還っちゃうところだわ。 |
| カンジキウサギ | えぇ!?うさ……あたし、そんなつもりなかったの!ごめんなさい! |
| アザラシ | キュ~騙されてる!妹パンダの言うことなんて信用しちゃダメだよ。このコはキュ~だらけてるだけなんだから。 |
| アザラシ | 動きたくないなら、一緒にアイスサウナに行かない? |
| パンダ(女) | こんな寒い日にアイスサウナ?あんたも私を大地に還したいって訳!? |
| アザラシ | アッツアツのキュ~おいしい石鍋が食べられるよ? |
| パンダ(女) | う…… |
| アザラシ | キュ~食べまくって、そして気が済むまでキュ~寝ちゃうっていうのはどう? |
| ラグドール | にゃんはろ~ |
| アザラシ | ラグドール、キュ~いいタイミングに来てくれたね!ちょうどみんなで一緒に石鍋を食べに行くところなの。食べ終わったらお昼寝もできるよ。一緒に来ない? |
| ラグドール | 鍋?お昼寝?行く行く~……にゃん!? |
| パンダ(女) | このモフモフのしっぽ…… |
| パンダ(女) | なんでだろう……ちょっと触っただけで眠くなってきた…… |
| ラグドール | そう言われると、ラグドールも眠くなってきたにゃん…… |
| ラグドール | 違う違う、今は寝ちゃダメにゃん! |
| ラグドール | プレゼントを配りに来たにゃ~ん。 |
| モノローグ | ラグドールは、大きなかばんをすごい勢いで漁っている。それはまるで、体がかばんに吸い込まれ、中で暴れているような光景だった。 |
| ラグドール | これが妹パンダへのプレゼント~!「ハローキティ」のオーダーメイドサングラスにゃん。 |
| パンダ(女) | おお!これ……かわいい! |
| ラグドール | 続いて、カンジキウサギへのプレゼント~!「ハローキティ」の帽子にゃん! |
| カンジキウサギ | 温かい……ピンク色って、気持ちがポカポカする! |
| ラグドール | 最後にアザラシへ、「ハローキティ」のキューティプレートにゃん! |
| アザラシ | これ好き!キュ~好き!石鍋用にちょうどいい! |
| モノローグ | プレゼントを貰った妖精たちが集まり、お互いのプレゼントを眺めながらお喋りしている。楽しい話し声が、この冬の寒い空気を温めてくれるようだ。 |
| ラグドール | 鍋を食べて寝たかったんだけど……ロゼットさんのために、誘惑に勝ったにゃん! |
| 魔法使い | これで「乙女心」を集められたってこと? |
| ラグドール | もちろんにゃん。あのコたちからハートが出てきてるのを見てなかったにゃん? |
| 魔法使い | ハート…… |
| ラグドール | 行こ行こ!これから「ハローキティ」のアイテムを、もっとたくさんの妖精に配らなきゃダメにゃん! |
| ラグドール | 助手も頑張ってね! |