| ラグドール | にゃはろ~ |
| モノローグ | 窓の方から、お馴染みの声が聞こえてきた。ただ今回は、そこにもうひとり、新しい声も加わった。 |
| チェリーパイ | [魔法使い]、こんにちは。 |
| ラグドール | 見て、魔法使いさん!やっとチェリーパイを捕まえたにゃ! |
| チェリーパイ | 捕まっちゃった。 |
| ラグドール | だから今日は、ふたりで一緒に「ハローキティ」のプレゼントをみんなに配って、「乙女心」を集めてくるにゃん! |
| ラグドール | あれ、今日はなんでフルルがいないのかにゃ? |
| 魔法使い | フルルはね…… |
| 魔法使い | 昨日あなたと一緒に森の中を走り回ったから、今日は羽も足もだるくて、横になってるんだよ。 |
| ラグドール | そっか……残念にゃ。今日も助手の助手を連れていこうと思ったのに。 |
| ラグドール | でも疲れてるなら、ちゃんと休まないとダメにゃん!またお土産を持ってくるからにゃ。 |
| ラグドール | よし、魔法使いさんへの挨拶は済ませたにゃ。それにしても今日はいい天気……こんな日は日向ぼっこしながら寝るべきだけど、今は執行委員の仕事が一番大事にゃん!チェリーパイもそう思うよね? |
| チェリーパイ | うん。 |
| モノローグ | ラグドールはしっぽを振りながら、サッと窓から飛び降りた。 |
| モノローグ | こんなお昼寝日和に、ラグドールがこうも動き回っているのは珍しい。もしかしたら、あのコが今までずっと昼寝をしていたのは、この時のために体力を温存していたからだったりして。 |
| 魔法使い | チェリーパイ、大丈夫?もし無理やり付き合されているのなら、ラグドールから逃がしてあげるけど…… |
| チェリーパイ | 大丈夫。本当に誘拐されてるわけじゃないから。 |
| チェリーパイ | 考えてみたの。ずっと逃げてるままでもしょうがないし……また慣れないけど、ラグドールと一緒にいようって決めたの。 |
| チェリーパイ | じゃあ、行ってくるね。 |
| モノローグ | 森の小道にて。 |
| ラグドール | これから、どこへ「乙女心」を集めに行けばいいのかにゃ? |
| ラグドール | この2日で、「ハローキティ」が好きそうな妖精には一通りプレゼントを配り終えたから、集められる「乙女心」はもう無いにゃ…… |
| チェリーパイ | …… |
| チェリーパイ | 「ハローキティ」が好きじゃなさそうな妖精でも、「ハローキティ」に興味を抱くかもしれない。 |
| ラグドール | にゃ? |
| チェリーパイ | 実は…… |
| モノローグ | チェリーパイはラグドールに、昨日イチハツと会ったときの出来事を伝えた。 |
| ラグドール | ……チェリーパイ! |
| ラグドール | キミってば! |
| チェリーパイ | 私? |
| ラグドール | 天才なの!? |
| ラグドール | さすがにゃ!すごいにゃ! |
| チェリーパイ | でも、イチハツからちゃんと「乙女心」を集められたかどうかは分からないけど。 |
| ラグドール | イチハツは「ハローキティ」を気に入ってた? |
| チェリーパイ | うん。 |
| ラグドール | イチハツは「ハローキティ」のぬいぐるみがかわいいって思ってくれた? |
| チェリーパイ | たぶん。 |
| ラグドール | イチハツは嬉しそうだった? |
| チェリーパイ | うん。 |
| ラグドール | じゃあ、きっと集められたに違いないにゃん! |
| チェリーパイ | なんでそう言い切れるの…… |
| ラグドール | チェリーパイがパートナーでよかったにゃ! |
| ラグドール | あと少しで失敗しちゃうところだったにゃ…… |
| ラグドール | 「乙女心」を集めるために、「ハローキティ」が好きそうな妖精だけを狙ってたけど、大事なことを忘れてたにゃ! |
| ラグドール | 「ハローキティ」が好きかどうかは、ラグドールが判断するものじゃなかったにゃ…… |
| ラグドール | それじゃ、大人っぽい妖精たちにも、「ハローキティ」を贈りに行くにゃん! |
| チェリーパイ | 大人っぽい妖精…… |
| モノローグ | …… |
| グリーンティー | はあ……最近は寒いですわね。花のスカートもしおれてきちゃいましたわ。 |
| グリーンティー | こんな季節には、温かいアモルの庭園が恋しくなってしまいます…… |
| アブラカタブラ | 本当に温室育ちのお嬢様なのね。この程度の寒さで文句なんか垂れちゃって。 |
| アブラカタブラ | 私のスカートはいい調子よ?形もいいし、柔らかくて弾力があるし、触り心地もいつも通り贅沢なの。 |
| グリーンティー | 裾の部分は枯れ始めているようですけど。 |
| アブラカタブラ | こ、これはわざとよ!最近はこういう、裾が枯れたみたいに硬くなったスカートが流行りなの。大人びて自立した雰囲気が出せるのよ。 |
| アブラカタブラ | モデルのあなたが、知らないワケはないわよね? |
| グリーンティー | へえ……私はクラシックなものを好むもので。あなたが追いかけているような流行りモノなんて、すぐに廃れてしまうでしょう? |
| アブラカタブラ | ふふふ……ただの「時代遅れ」をそんなお上品に語れる妖精、初めて見たわね。 |
| レッドベルベット | あなたたちね、アモルの庭園からここに来たのはケンカをするためなの? |
| グリーンティー | そう、私も訊きたかったんですの。アブラカタブラったら、アモルの庭園で冬を過ごすって言ってませんでした?なのに、どうしてここへ? |
| レッドベルベット | 彼女はね、リリエであなたがステージに出ると聞いて、すぐに駆けつけてくれたのよ。 |
| アブラカタブラ | な、何が「駆けつけた」よ!バカなこと言わないで! |
| アブラカタブラ | 私はただ……ふと、ちょっとだけリリエの冬を楽しみたいって思って、ここに来ただけよ。 |
| グリーンティー | 嬉しいですわ。私のステージを見るために、わざわざ来てくれましたのね…… |
| グリーンティー | 最高のパフォーマンスを見せてあげますから、ちゃんと私の活躍を見届けてくださいな。 |
| アブラカタブラ | はあ?なんで私が、あなたごときを下界から拝まなきゃならないの? |
| アブラカタブラ | それどころか、スカートすらしおれさせてらっしゃるグリーンティーさんが、どうやって花の妖精の美しさを表現なさるおつもりなんですか?って話なんだけど。 |
| アブラカタブラ | 花の妖精として、あなたレベルが低すぎよ。ここは私もステージに立って、その違いってやつを皆に分からせてあげないとね。 |
| グリーンティー | あら、またまたご冗談を。 |
| チェリーパイ | 彼女たち、目つきが怖いわ……今は行かないほ―― |
| ラグドール | にゃんはろ~グリーンティーにアブラカタブラ、それにレッドベルベット! |
| チェリーパイ | うが…… |
| ラグドール | にゃん?チェリーパイ、なんか言ったにゃん? |
| チェリーパイ | うんん。もう遅いわ。 |
| グリーンティー | あら、ラグドールとチェリーパイじゃありませんか?かわいい格好をしてますわね。 |
| ラグドール | にゃはは~ |
| チェリーパイ | 褒めてくれて……ありがとう…… |
| ラグドール | プレゼントを配りにきたのにゃん! |
| モノローグ | ラグドールは手品を披露するように、かばんから「ハローキティ」の鏡、メイクアイテム、ぬいぐるみなどのプレゼントを取り出した。 |
| グリーンティー | 「ハローキティ」ですか?本当に私たちがいただいていいのでしょうか……? |
| ラグドール | いいにゃんいいにゃん! |
| グリーンティー | 嬉しいですわ!「ハローキティ」、大好きなんです。わざわざありがとうございます。 |
| アブラカタブラ | ふん……レディぶってたくせに、子どものおもちゃみたいなものが好きな妖精もいるもんね。 |
| グリーンティー | かわい子ぶってるくせに、ずいぶん偏屈な妖精もいるものですわ。 |
| チェリーパイ | アブラカタブラは、「ハローキティ」が好きじゃなかったんだ…… |
| アブラカタブラ | まあ、まあ? |
| ラグドール | にゃん……残念にゃん…… |
| アブラカタブラ | ま、待ちなさい。別に嫌だなんて一言も言っていないわ……そんなガッカリした顔しないでよ。 |
| アブラカタブラ | もう……わかったわかった!受け取ればいいんでしょ…… |
| グリーンティー | 安心してくださいな。アブラカタブラはそういう性格ですから。嫌な顔はしているけれど、内心では、私がもらったプレゼントまで奪い取る気なんですのよ。 |
| アブラカタブラ | 誰がそんなことをするのよ! |
| グリーンティー | 本当にめんどうくさいですわね。せっかくプレゼントをもらっているから、もう少し素直になったらどうですの? |
| モノローグ | グリーンティーは話しながら、「ハローキティ」のヘアピンをアブラカタブラに付けてあげた。 |
| グリーンティー | この方がかわいくないですか?今の時代では、ひねくれたツンデレキャラはもう売れないんですわよ? |
| アブラカタブラ | あなたね……他の妖精には親切なのに、なんで私だけにいつもこんな態度を取るワケ? |
| グリーンティー | あら、そのセリフ、そっくりそのままお返ししますわ。 |
| アブラカタブラ | このレタス! |
| グリーンティー | 「レタス」と呼ぶのはやめなさいと何度も言ったじゃないですか! |
| アブラカタブラ | さっきあなたも、私を「ひねくれたツンデレキャラ」だなんて呼んだじゃないの! |
| レッドベルベット | はあ……今日も相変わらず、おさまりそうにないわね。 |
| チェリーパイ | えっと…… |
| レッドベルベット | うん?ほっといて大丈夫よ。 |
| レッドベルベット | このふたりはいつもこの調子なんだから。何度も見てるけど、もはや笑えてきちゃうわ。 |
| レッドベルベット | そうだ、「ハローキティ」のぬいぐるみ、多めにもらっても大丈夫かしら? |
| レッドベルベット | 自分の部屋に飾れば、いつもと違う雰囲気が出せそうだなって思うの。自分の部屋をかわいくかざってみるのも、悪くなさそうじゃない。 |
| ラグドール | 大丈夫にゃん!いくらでも取っていいにゃん! |
| ラグドール | キミたちのような大人っぽい妖精は、「ハローキティ」に興味がないと思っていたにゃ…… |
| レッドベルベット | 他の妖精がどうだかは知らないけど、あの仲良さげになおふたりは、かなり好きみたいよ? |
| レッドベルベット | レディでも少女でも関係なく、誰でもこんなかわいいものをみれば、気分がよくなると思うの。 |
| ラグドール | そう言われると、ラグドールも自信が持てるにゃ! |
| チェリーパイ | ありがとう…… |
| レッドベルベット | そうだ、これからも「ハローキティ」のプレゼントを配りにいくのね? |
| レッドベルベット | じゃあ、時間があれば「忘川の館」に住んでいるお嬢さんを探しに行きなさいな。 |
| レッドベルベット | 彼女もきっと、面白いリアクションをしてくれるはずだから。 |