ラグドール |
あのね……それで……それから、たくさんの「ハローキティ」のプレゼントをみんなに配ったの!「乙女心」も、いっぱい集まったにゃん! |
魔法使い |
順調みたいだね。 |
ラグドール |
今日も「乙女心」をたくさん集めにいくにゃん!ね、チェリーパイ? |
チェリーパイ |
うん。 |
モノローグ |
近況報告が済んだ後、ラグドールはいつも通り、先に工房の窓から飛び降りた。 |
魔法使い |
ラグドールとはうまくやってるの? |
チェリーパイ |
あのコのハイテンションには、慣れてきた気がする…… |
チェリーパイ |
「慣れ」って怖いね。 |
モノローグ |
外からラグドールの呼び声が聞こえる。チェリーパイも手を振って、工房から離れた。 |
ラグドール |
今日の太陽も気持ちいいにゃん。 |
ラグドール |
冬でもこんなに温かい日差しに照らされたら、眠くなっちゃうにゃん…… |
ラグドール |
いつもなら、あの空き地で切り株を探して…… |
ラグドール |
にゃん!?誰だ!そこはラグドール専用の寝床なのに! |
モノローグ |
ラグドールの視線の先には表面がピカピカに研がれた切り株があり、その上では黒白混じった姿の妖精がゴロゴロしていた。 |
パンダ(女) |
またお兄ちゃんに追い出されちゃった……一体、どんだけ掃除が好きなの? |
パンダ(女) |
おっ?あんたらって……「ハローキティ」のプレゼント配りじゃん! |
ラグドール |
違う!プレゼント配りじゃなくて、「ハローリリエ」執行委員にゃん! |
パンダ(女) |
どっちも一緒じゃないの? |
チェリーパイ |
そのサングラスは…… |
ラグドール |
そうだにゃん!数日前は、ラグドールがプレゼントした「ハローキティ」のサングラスをずっとかけていたはずにゃん!なんで今日はいつものやつをかけているのかにゃ? |
チェリーパイ |
失くしたの? |
ラグドール |
そんにゃあ~!せっかくのプレゼントを失くすなんてヒドすぎるにゃ! |
パンダ(女) |
違うよ。失くしてないから。 |
パンダ(女) |
あのサングラスはね、お兄ちゃんにあげたんだ。 |
パンダ(女) |
最初は嫌がってたよ?そんなピンクっぽいものは女の子しかかけないって。 |
パンダ(女) |
無理矢理かけさせて、3日経たなきゃ取っちゃっダメって言ったんだ。 |
パンダ(女) |
そしたら逆に、すっかり気に入っちゃってさ。今はもう、返せって言っても外してくれないかも。 |
パンダ(女) |
写真もたくさん撮ったんだ……ほら、似合わない? |
ラグドール |
見せて! |
ラグドール |
……ここまで似合うと思わなかったにゃん!目つきも和らいでいるにゃん! |
チェリーパイ |
確かに。 |
パンダ(女) |
でしょでしょ~? |
チェリーパイ |
でも、そのサングラスはあなたに贈ったものだから。もしお兄さんも「ハローキティ」が好きなら、お兄さん用の新しいプレゼントを用意するね。 |
チェリーパイ |
はい、これ。「ハローキティ」のエプロンよ。 |
パンダ(女) |
ぷっ……あはははははははははは! |
パンダ(女) |
あのさ……ふふふふふ……お兄ちゃん、お兄ちゃんこれ、絶対気に入ってくれると思う!あははははははは!! |
パンダ(女) |
チェリーパイってセンスいいね、あはははははは…… |
パンダ(女) |
今すぐ帰ってお兄ちゃんに着させてあげるね。大掃除にエプロン必要だし。 |
パンダ(女) |
ありがとう。また写真たくさん撮ってくるからね! |
モノローグ |
妹パンダは笑い泣きした涙を拭きながら、エプロンを手にしてふたりと別れた。 |
ラグドール |
チェリーパイ、大事なことに気づいたにゃん! |
ラグドール |
今まで偏りすぎてたと思うにゃん! |
チェリーパイ |
え? |
ラグドール |
なんでラグドールたち、今までずっと女の子にしか「ハローキティ」のアイテムを贈らなかったにゃ? |
チェリーパイ |
それは、「乙女心」を集めなきゃダメだからでしょ。 |
ラグドール |
でもにゃん!でもにゃん! |
ラグドール |
もし男の子の妖精にも「ハローキティ」が好きなコがいたら、どうするんだにゃ! |
ラグドール |
女の子にしか送らないなら、それは不公平にならないかにゃ? |
煙水晶 |
よくぞ言った! |
ラグドール |
にゃん!?草むらから急に変なのが出てきたにゃん! |
チェリーパイ |
テンション高そうな変わり者ね。 |
煙水晶 |
変わり者なんかではない!あななたちの思いに心を動かされた、煙水晶だ! |
煙水晶 |
なぜ男の子は「ハローキティ」が好きじゃダメなのか? |
煙水晶 |
男の子は「乙女心」を持っちゃダメなのか!? |
ラグドール |
そうだにゃそうだにゃ! |
ラグドール |
だから今日は、男の子たちに「ハローキティ」のプレゼントを贈りに行くにゃん!男の子にも「ハローキティ」を楽しむ権利があるからにゃん! |
煙水晶 |
いい考えだ! |
チェリーパイ |
その前に、聞きたいことがあるの。 |
チェリーパイ |
煙水晶も「ハローキティ」が好きなの? |
煙水晶 |
「ハローキティ」が好きでここに現れたわけではない。 |
煙水晶 |
俺はただ、ラグドールの言葉に引きつけられただけだ。まるで、鉱石と鉱石がぶつかり合い、共鳴するかのようにね…… |
煙水晶 |
そしてあなたの言葉は、まるで煌々とした灯火のように、俺が今まで見えていなかったものを照らしてくれたんだ。 |
煙水晶 |
今までは、「ハローキティ」が好きになるとは思っていなかった。だが、「ハローキティ」が好きになっちゃいけない理由も考えたことはなかった。 |
煙水晶 |
ロゼットさんがデザインした「ハローキティ」のアイテムは、あらゆる者に親しまれていいものなんだ。そして、「ハローキティ」を求めるすべての者は、この楽しみを手にする権利がある。 |
煙水晶 |
楽しみたいことをすべて楽しむ。これが「エンターテイメント」というものだ。 |
煙水晶 |
とにかく―― |
煙水晶 |
今の俺は確かに、「ハローキティ」が好きだ! |
ラグドール |
それなら、話は早いにゃん! |
モノローグ |
ラグドールは、かばんから「ハローキティ」のアイテムを取り出した。 |
ラグドール |
これは煙水晶へのプレゼントにゃん! |
ラグドール |
そしてこれから、「ハローキティ」が好きと言ってくれる男の子たちにもプレゼントを配ろうと思うにゃん! |
煙水晶 |
いいアイデアだ! |
モノローグ |
…… |
チェリーパイ |
煙水晶からも「乙女心」を集められたの……? |
ラグドール |
そう思うにゃん! |
ラグドール |
だって…… |
モノローグ |
ラグドールは、贈られた「ハローキティ」のアイテムに夢中になっている煙水晶を指差した。 |
ラグドール |
煙水晶は、心から「ハローキティ」を楽しんでくれているからにゃん。 |