ラグドール |
「ハローリリエ」の執行委員ばかりやってたから、忘れてたにゃん…… |
ラグドール |
あっという間に、もうお祭りの日になっちゃってたにゃんて! |
チェリーパイ |
妖精がいっぱい……うるさい…… |
チェリーパイ |
一人でお茶を飲みたい…… |
ラグドール |
そんなこと言わないでよ相棒!一緒に来てくれるって、もう約束してくれてたハズにゃん! |
魔法使い |
ラグドール、チェリーパイ。こんにちは。 |
フルル |
あら?ロゼットさんの依頼って、もう終わったんじゃ?なんでまだ執行委員の服を着てるの? |
ラグドール |
だって、これはロゼットさんがデザインしてくれた服にゃん! |
ラグドール |
「ハローキティ」のお祭りは、「ハローキティ」の服で楽しみたいんだにゃん! |
チェリーパイ |
私は……ラグドールがうるさいから着たの。 |
チェリーパイ |
最初の頃と同じように…… |
モノローグ |
チェリーパイはブツブツと何かを言っていた。けれどその言葉は、前のようにラグドールの声で遮られた。 |
ラグドール |
いろんなところに「ハローキティ」がいっぱいだにゃん! |
魔法使い |
そうだね……今でも不思議。 |
ラグドール |
「乙女心」はもうじゅうぶん集まったって手紙を読んだ時も、びっくりしたにゃん。 |
チェリーパイ |
こんなに早く依頼が終わるなんて思わなかった…… |
モノローグ |
ロゼットさんの手紙では、依頼を見事に達成させたふたりへの感謝が述べられていた。 |
モノローグ |
そのお礼として、「ハローリリエ」のイベントに最後のサプライズを用意したいと書いてあったのだ。 |
魔法使い |
そのサプライズが、まさかリリエのために「ハローキティ」のお祭りを用意することだったなんて。 |
モノローグ |
ロゼットさんがどうやってこのお祭りを準備したのかは、誰にも分からない。これこそが、魔法よりも魔法のようなサプライズだった。 |
モノローグ |
たった一晩で、リリエのあらゆるところに「ハローキティ」のアイテムが飾られている。 |
ラグドール |
イチハツがお祭りのために新曲を書いたって聞いたにゃん!今までとは違うスタイルで、甘い感じの曲なんだって! |
フルル |
それ聞いたよ!あとグリーンティーとアブラカタブラが一緒にステージに立つらしいよ! |
チェリーパイ |
またケンカしないといいけど…… |
ラグドール |
レッドベルベッドもハローキティをとっても気に入っているって聞いたにゃ! |
フルル |
本当?じゃあ後で行ってみよう! |
魔法使い |
今のリリエは、まるでピンク色の海みたい…… |
モノローグ |
お祭りに来た妖精たちは、男の子でも女の子でも、とうにみんな「ハローキティ」に心を奪われたようだ。 |
ラグドール |
これ、好きだにゃん!どこまでもピンクで可愛くて、冬なのに暖かくなってきた気がするにゃん! |
チェリーパイ |
ピンクだけじゃなくて、ちょっぴりクールな「ハローキティ」も人気みたい。 |
モノローグ |
夜が訪れると同時に、「ハローリリエ」のお祭りは始まった。 |
モノローグ |
夜風とともに、美しい音楽が森の隅々まで流れていく。妖精たちは歌声と踊りで、この「ハローキティ」であふれた夜を満喫し始めた。 |
謎めいた女性 |
賑やかね。 |
モノローグ |
話し声を辿ってみると、木々の影に、見慣れぬ誰かが立っているのがうっすらと見えた。 |
謎めいた女性 |
「少女」という言葉には、美しさと純粋さという意味が込められているわ。それは、心が育っていく間の、とっても素敵な時期を象徴するものなの。 |
謎めいた女性 |
少女の心の中では、何もかもがかわいくて、面白くて。未来への憧れも、ときめきも、よろこびも宿っていると思うわ。 |
謎めいた女性 |
この「乙女心」を追い求めることこそが、「ハローキティ」のデザインの源になっているの。 |
謎めいた女性 |
このかわいいデザインで、みんなをときめかせたい。そしてみんながときめいた姿が、またこれからのデザインを生み出すためのインスピレーションになるの。 |
謎めいた女性 |
無限に広がる真っ白い紙のような私の想像力の中に、インスピレーションがクレヨンとなって、次々に新たな設計を描き出してくれるわ。 |
謎めいた女性 |
そのために、あのふたりの妖精に依頼を出したの。 |
謎めいた女性 |
ひとりは純粋で活発で、ポジティブな少女だった。まるで、「かわいい」という言葉が、彼女のためにあるように…… |
謎めいた女性 |
もうひとりは、敏感で繊細な少女…… |
謎めいた女性 |
彼女たちが活躍してくれたおかげで、インスピレーションも十分手に入ったし、想像以上の収穫があったわ。 |
謎めいた女性 |
もしかしたら「乙女心」って……「生き方」なのかもしれないわね。 |
謎めいた女性 |
似合っていても似合わなくても、心が幼くても成熟していても、性別を区別しなくても……そして、乙女らしくなくても、「乙女心」は持てる。 |
謎めいた女性 |
好きなものを見て、心に生まれた純粋な喜び。どんな環境でも、喜びを求められる勇気。自分がどんな姿になっても、初心を忘れない活力…… |
謎めいた女性 |
「乙女心」というのは、まさにこういうことなのね。 |
謎めいた女性 |
どうやら私が選んだコたちに、間違いはなかったみたい。 |
魔法使い |
あなたは…… |
謎めいた女性 |
あなたは人間だけれど……妖精たちと同じような特別さを持っていると思うの。 |
謎めいた女性 |
種族のことは気にせず、この記念すべき日を、このかわいい生き物たちと一緒に祝いましょう。 |
謎めいた女性 |
ほら、リリエに送ったこのプレゼント、気に入ってくれた? |
魔法使い |
あなたが……ロゼットさんなの? |
モノローグ |
質問には、答えてもらえなかった。 |
モノローグ |
女のコのような、その声の主は、現れた瞬間と同じように葉の影の向こうへと静かに消えていく。 |
モノローグ |
幻でも見ていたのだろうか。でも、あのコがデザインしたアイテムは、本当にこの森の中に飾られている。幻なんかではなく、「乙女心」は確かに、このリリエの冬を温かく包み込んでくれているのだ。 |