(ネコたちの戯れ)1-8

モノローグ 私も覚悟はしていたが、まさかアメショーがこんなにケーキやら何やら、たくさんのスイーツを持ってくるとは思わなかった。
モノローグ 元から広くはなかった工房が、いっそう狭くなっていく。
アメショー これで準備万端にゃ!
アメショー あれ、船長さん!今日はなんで黒いローブを着ていないのかにゃ?
アメショー いつものクールな船長さんが見たかったのに……
アメショー 闇深い船長さんが、午後の日差しの中でお茶会を満喫し……
アメショー まるで氷山がちょっとずつ溶けていくみたいに、だんだん表情が緩んで、ほわあぁってした顔になっていく様子が拝めるものかと……
魔法使い ちょっ、変な設定付けるのやめてよ……
アメショー なんでー?面白いのに。
ブリショー ……ふむ、ここには座れないな。
ブリショー なぁ魔法使い、あっちに座っていいか?
モノローグ ブリショーは、アフタヌーンティー用の3段プレートスタンドを指差した。
モノローグ このスタンドは人間用のサイズだけど、それでも妖精を座らせるのには無理があるような……?
ブリショー うん、ちょうどいい。
ブリショー ここならゆっくり横になれるし、クッキーにもすぐに手が届く。
魔法使い 危ない、倒れそうだよ!
ブリショー そんなことないよ。
ブリショー ここはお茶会の中心だし……
ブリショー 周りは美味しいものが沢山で……
ブリショー これ以上にない特等席だな。
アメショー そうなの?
アメショー あたしもそっち行くにゃ!
アメショー ブリショー、ちょっとあっち行ってよ!
モノローグ 私もブリショーも反応する暇もなく、アメショーまでもプレートに座り込んでしまった。
モノローグ 当然ながら、その衝撃でスタンドは倒れ、ネコちゃんコンビはテーブルの上に転んでしまった。
アメショー 全然しっかりしてにゃいじゃん!
アメショー まったく。船長さん、もっとしっかりした家具を作ってほしいにゃ!
アメショー そうしたら、あたしもブリショーも、一緒にお茶会の真ん中に座れるにゃ。
ブリショー えー、コホン……
ブリショー アメショー、重いんだが……
アメショー あ、ごめん!
モノローグ アメショーはすぐにブリショーから立ち上がったが、彼らの体はすでにバターまみれだ。
ブリショー うん?このバターは……
ブリショー 美味しい。
アメショー あとはあとは?
アメショー ……って、いっぱい形容詞を教えたでしょ!
ブリショー メモ、忘れた。
アメショー 全然覚えにゃいの?
アメショー 「船乗り」とか、「船長さん」とかの話も教えたのに……
アメショー あと、海の形容詞とかは?
ブリショー うん、美味しい。
ブリショー もっとほかにも、美味しいものはある?
魔法使い こっちだよ。
アメショー 待って、それって、あたしの分なんじゃにゃい?
アメショー ずっとずっと並んで、やっと買えたチョコケーキにゃんだからね!
ブリショー 君の分は、さっき転んだ時、君に潰されたんじゃないか?
アメショー うあーん!やだーっ!
アメショー ふぇ……お茶会をちゃんとやるのって、難しいことにゃんだね……
アメショー チャンスがあれば、やっぱり今度は海の上でやりたいにゃ。
ブリショー うん。
アメショー うん……えっ、「うん」って言った?
アメショー ブリショーもいいと思ったにゃ?
アメショー じゃあ、決まりだね!
アメショー 今度こそ!
アメショー 一緒に海へ、出発、進行!
アメショー 海風に吹かれたケーキは、もっとおいしくなるのかにゃ?
アメショー 海の匂いがする紅茶なら、きっと美味しくなると思うけどにゃあ……ワクワク!
モノローグ アメショーは、もはや自分の世界に浸ってしまっているようだ。
魔法使い ブリショー、本当にアメショーと一緒に行くの……?
ブリショー ……
ブリショー 私はただ、断るタイミングを逃しただけだ。
ブリショー 応じたんだと思っているなら、今はそれでいいかな……
ブリショー また理由を説明するのも、面倒くさそうだし。
ブリショー 未来のことは、そのときになってから考えればいいさ……
モノローグ 言い終わると、ブリショーはお茶を一口飲んだ。
モノローグ 船のデッキで催されるお茶会か……確かに、ロマンチックかもしれない。
最終更新:2022年01月27日 02:24