モノローグ |
私も覚悟はしていたが、まさかアメショーがこんなにケーキやら何やら、たくさんのスイーツを持ってくるとは思わなかった。 |
モノローグ |
元から広くはなかった工房が、いっそう狭くなっていく。 |
アメショー |
これで準備万端にゃ! |
アメショー |
あれ、船長さん!今日はなんで黒いローブを着ていないのかにゃ? |
アメショー |
いつものクールな船長さんが見たかったのに…… |
アメショー |
闇深い船長さんが、午後の日差しの中でお茶会を満喫し…… |
アメショー |
まるで氷山がちょっとずつ溶けていくみたいに、だんだん表情が緩んで、ほわあぁってした顔になっていく様子が拝めるものかと…… |
魔法使い |
ちょっ、変な設定付けるのやめてよ…… |
アメショー |
なんでー?面白いのに。 |
ブリショー |
……ふむ、ここには座れないな。 |
ブリショー |
なぁ魔法使い、あっちに座っていいか? |
モノローグ |
ブリショーは、アフタヌーンティー用の3段プレートスタンドを指差した。 |
モノローグ |
このスタンドは人間用のサイズだけど、それでも妖精を座らせるのには無理があるような……? |
ブリショー |
うん、ちょうどいい。 |
ブリショー |
ここならゆっくり横になれるし、クッキーにもすぐに手が届く。 |
魔法使い |
危ない、倒れそうだよ! |
ブリショー |
そんなことないよ。 |
ブリショー |
ここはお茶会の中心だし…… |
ブリショー |
周りは美味しいものが沢山で…… |
ブリショー |
これ以上にない特等席だな。 |
アメショー |
そうなの? |
アメショー |
あたしもそっち行くにゃ! |
アメショー |
ブリショー、ちょっとあっち行ってよ! |
モノローグ |
私もブリショーも反応する暇もなく、アメショーまでもプレートに座り込んでしまった。 |
モノローグ |
当然ながら、その衝撃でスタンドは倒れ、ネコちゃんコンビはテーブルの上に転んでしまった。 |
アメショー |
全然しっかりしてにゃいじゃん! |
アメショー |
まったく。船長さん、もっとしっかりした家具を作ってほしいにゃ! |
アメショー |
そうしたら、あたしもブリショーも、一緒にお茶会の真ん中に座れるにゃ。 |
ブリショー |
えー、コホン…… |
ブリショー |
アメショー、重いんだが…… |
アメショー |
あ、ごめん! |
モノローグ |
アメショーはすぐにブリショーから立ち上がったが、彼らの体はすでにバターまみれだ。 |
ブリショー |
うん?このバターは…… |
ブリショー |
美味しい。 |
アメショー |
あとはあとは? |
アメショー |
……って、いっぱい形容詞を教えたでしょ! |
ブリショー |
メモ、忘れた。 |
アメショー |
全然覚えにゃいの? |
アメショー |
「船乗り」とか、「船長さん」とかの話も教えたのに…… |
アメショー |
あと、海の形容詞とかは? |
ブリショー |
うん、美味しい。 |
ブリショー |
もっとほかにも、美味しいものはある? |
魔法使い |
こっちだよ。 |
アメショー |
待って、それって、あたしの分なんじゃにゃい? |
アメショー |
ずっとずっと並んで、やっと買えたチョコケーキにゃんだからね! |
ブリショー |
君の分は、さっき転んだ時、君に潰されたんじゃないか? |
アメショー |
うあーん!やだーっ! |
アメショー |
ふぇ……お茶会をちゃんとやるのって、難しいことにゃんだね…… |
アメショー |
チャンスがあれば、やっぱり今度は海の上でやりたいにゃ。 |
ブリショー |
うん。 |
アメショー |
うん……えっ、「うん」って言った? |
アメショー |
ブリショーもいいと思ったにゃ? |
アメショー |
じゃあ、決まりだね! |
アメショー |
今度こそ! |
アメショー |
一緒に海へ、出発、進行! |
アメショー |
海風に吹かれたケーキは、もっとおいしくなるのかにゃ? |
アメショー |
海の匂いがする紅茶なら、きっと美味しくなると思うけどにゃあ……ワクワク! |
モノローグ |
アメショーは、もはや自分の世界に浸ってしまっているようだ。 |
魔法使い |
ブリショー、本当にアメショーと一緒に行くの……? |
ブリショー |
…… |
ブリショー |
私はただ、断るタイミングを逃しただけだ。 |
ブリショー |
応じたんだと思っているなら、今はそれでいいかな…… |
ブリショー |
また理由を説明するのも、面倒くさそうだし。 |
ブリショー |
未来のことは、そのときになってから考えればいいさ…… |
モノローグ |
言い終わると、ブリショーはお茶を一口飲んだ。 |
モノローグ |
船のデッキで催されるお茶会か……確かに、ロマンチックかもしれない。 |