アムールトラ |
これからしばしよろしく頼むぞ。 |
アムールトラ |
アカギツネの客である以上、信頼してよい相手であるのは疑いようもない。アカギツネも、そなたたちを只者ではないと言った。 |
アムールトラ |
協力してくれること、礼を言う。 |
フルル |
ど、どういたしまして……。 |
フルル |
(ぼそぼそ)アカギツネが、1000万の借金を帳消しにしてくれるって言うから……。 |
アムールトラ |
借金?どういうことだ? |
フルル |
アカギツネが-- |
魔法使い |
コホン。 |
魔法使い |
他の妖精が「若」って呼んでいるのを聞いたけど、アムールトラは城主なの? |
アムールトラ |
正確に言うならば、余は次の城主だ。 |
アムールトラ |
未熟な余に、まだ城主の責任を背負う資格はない。今まさに、そのための修行中だ。 |
魔法使い |
では若は……アカギツネのことを信じているの? |
アムールトラ |
無論。アカギツネはいいやつだからな。そなたたちは共に暮らしているゆえ、彼の性格の良さはわかっているはず。 |
アムールトラ |
それから、余のことは友人と思い、「アムールトラ」と呼んでくれて構わないぞ。 |
魔法使い |
……うん。よろしくね、アムールトラ。 |
モノローグ |
私はフルルを見た。彼女はほっぺを膨らませ、悔しそうにしつつも告げ口を諦めた。 |
アムールトラ |
今回の詐欺犯は……組織的なものだ。春節を狙い、ロンユエの民たちを狙ったのであろう。 |
アムールトラ |
多くの妖精が騙されてしまってな……よりにもよって春節の前に、このようなことをしでかしてくれるとは。 |
アムールトラ |
民のため、そしてアカギツネのため、余はこの詐欺犯どもを始末しなければならん! |
アムールトラ |
ここにきて魔法使いとフルルに助けてもらえる以上、もはや何も心配することもなかろう。 |
魔法使い |
じゃあ、これからどうすればいいの? |
アムールトラ |
まだ捕えられてはいないが、騙された妖精たちから話を聞き、解決の糸口が見えてきたところだ。 |
アムールトラ |
今日は元々、幾名かの妖精たち訪ねる予定だったが……協力者も増えたことだし、別れて行動しよう。これで効率も良くなるはず。 |
アムールトラ |
これがそのリストだ。 |
モノローグ |
アムールトラがくれたリストを確認してみたが、まさか馴染みのある名前が載っているとは……。 |
モノローグ |
……。 |
鬼灯(男) |
魔法使い!?君だったの? |
鬼灯(男) |
アムールトラから話があった時、君がくるとは言ってなかったぞ!? |
魔法使い |
まあ、話せば長くなるんだけど……。 |
鬼灯(男) |
詐欺られた上に、知り合いに知られたなんて……。 |
鬼灯(男) |
僕がバカだったよ。本当に。誰か来るとは聞いていたけど、知り合いが来るとは思わなかった。それじゃ、僕が騙されたことはみんなに知られちゃうじゃないか! |
鬼灯(男) |
はあ……帰省するとやっぱりろくなことが起きないな。 |
鬼灯(男) |
早く荷物を片付けて、ここから逃げようかな……。 |
魔法使い |
待って、これには事情があるの……。 |
魔法使い |
本当に、何があったかとかは知らないよ。アムールトラのために情報を集めに来ただけだから。 |
鬼灯(男) |
僕がバカだったんだ……。 |
魔法使い |
そして教えてくれたことは絶対誰にも話さないよ。あ、アムールトラ以外ね。 |
鬼灯(男) |
本当? |
魔法使い |
本当本当。約束するから。 |
鬼灯(男) |
わかったよ……。 |
モノローグ |
鬼灯は悲しげな口調で、今まであったことを語り始めた……。 |
鬼灯(男) |
要約すると、「お上があなたの絵を気に入ったから、一緒に展覧会をやってほしい」と言われてさ。 |
鬼灯(男) |
最初は面倒くさいと思ったけど……。 |
鬼灯(男) |
でも展覧会なんてやれれば知名度を上げられるし、分け前も8割くれるっていうし。 |
鬼灯(男) |
条件が良すぎたんだよ! |
鬼灯(男) |
今回の展覧会は業務拡大のためだからって、費用も負担してくれる、ってさ。 |
鬼灯(男) |
そして僕はほんの少しの保証金を出せば、他のことは心配しなくてもいいって。 |
鬼灯(男) |
ちょうど、ちょっと余った金があったからさ……。 |
鬼灯(男) |
それでしばらくしたら、他の画家も参加しだして、場所が取られちゃったんだ。でも少し宣伝代を上乗せして払えば、僕の絵を一番見やすいところに置いてくれるって。 |
鬼灯(男) |
高くないし、効果もよさそうだから払ったんだ。 |
鬼灯(男) |
結局……はあ……。 |
魔法使い |
向こうがもっともらしい理由を作って、お金を更に払わせたの? |
鬼灯(男) |
そう!そういうこと! |
鬼灯(男) |
変だなと思った時にはもう、連絡がつかなくなってた。 |
鬼灯(男) |
これまで話をする時は、旧市街の商会に誘ってくれてたんだ。そこのインテリアは結構豪華だったから、信頼できるなって思ったんだよ。 |
鬼灯(男) |
結局それは全部、そういうセットだったんだよ!だからいつも同じ部屋にしか連れて行かれなかったんだ。 |
鬼灯(男) |
本当に悪徳すぎる!こんなことをする妖精がいてたまるか! |
モノローグ |
……。 |
モノローグ |
鬼灯の事件を記録してから、リストに載っている他の妖精も訪ねてみた。 |
モノローグ |
「一儲けできる商売」に誘われて、多額の投資金を騙し取られた妖精がいれば、 |
モノローグ |
不思議な効果を持つ最新商品を通販で買ったけど、結局何ももらえなかった妖精もいて、 |
モノローグ |
あまつさえ、出会い掲示板とかいうものでハニートラップに掛かり、お金だけでなく恋まで失った妖精もいた。 |
モノローグ |
--情報が集まったので、約束の場所へ戻る。 |
フルル |
[魔法使い]、待ってたよ! |
アムールトラ |
何か聞けたか? |
フルル |
被害者たちの話を全部記録してきたよ!ものすごく可哀想な妖精がいてね、終焉の地で失踪した家族を探してくれるって言われて、たくさんお金を騙し取られたんだって……。 |
フルル |
本当にひどい!絶対に詐欺犯たちを捕まえなきゃ! |
フルル |
あ、そうだ。詐欺犯は仲間に「荷物を山の上に運べ」とか言ってたらしいよ。 |
魔法使い |
こっちもそんな感じかな。あと気になることといえば……ある妖精が旧市街に詐欺犯たちの偽商会があるって言ってた。それと……、 |
モノローグ |
集めた情報をすべて、アムールトラに教えた。 |
アムールトラ |
役立ちそうな情報が集まったな。感謝する。 |
アムールトラ |
ここ数日調査してみたが、詐欺犯たちの正体はおおよそ推測できたと思う。ただ万が一のこともある、一度見直ししてから結論を下そう。 |
アムールトラ |
明日またここで待ち合わせよう。余の見解を話す。 |
フルル |
アムールトラ、また明日! |
魔法使い |
また明日。 |
モノローグ |
……。 |
アカギツネ |
やれやれ……やってくれるじゃあありませんか。 |
モノローグ |
夜になり、街から妖精の影が少なくなり始めた。薄暗い路地の奥からキツネが目を細め、ゆっくりと姿を見せる。 |
アカギツネ |
予定より早くなりましたが……まあ、いいでしょう。アタシが少し苦労しちゃうんですけどねぇ。 |
モノローグ |
キツネはぐっと腰を伸ばし、それからのんびりと、静かな方へ去っていった-- |