モノローグ |
ルビーチョコの店は、夜までバタバタと忙しかった。 |
モノローグ |
ルビーチョコが言った通り、確かに商売繁盛、書き入れ時な一日だった。 |
モノローグ |
色々なお客さんに会って、色々な「愛」を見た。本当に勉強になる一日だった。 |
ルビーチョコ |
はい、みんなお疲れさま〜。そろそろ閉店だよ〜。 |
ルビーチョコ |
はぁ……本当に疲れたねえ……。 |
ピンクローズ |
どうしたのかしら?腰でも痛めた?後で手伝ってくれるって約束してたのにね? |
ルビーチョコ |
何言ってるのかな?僕みたいに小さい妖精に、痛めるような腰なんてないし? |
ピンクローズ |
ふぅん?ないの?そうなの〜。 |
ルビーチョコ |
うわっ、突っつくな! |
魔法使い |
あれ?ピンクローズとルビーチョコはまだ仕事があるの? |
ピンクローズ |
ええ、このあと後お祭りがあるの。今年は「さっきのこと」もあったし、こいつに手伝わせるのよ。 |
ルビーチョコ |
そうそう〜。魔法使いさんも見ていくといいよ〜。 |
ブラックチョコ |
店主さん……。 |
ルビーチョコ |
ん? |
ブラックチョコ |
あの送り主のことだが……。 |
ルビーチョコ |
えっ?! |
ルビーチョコ |
ま、まさか今でも相手を見つけ出して結婚するつもり?! |
ブラックチョコ |
えっ?!あ、いや、それは―― |
ブラックチョコ |
実は、「愛」とは何なのかって、色々考えたんだ。 |
ブラックチョコ |
今まで、私はずっと空虚な生活をしていたと思う。 |
ブラックチョコ |
でも、このプレゼントをもらった時、何か変わった気がしたんだ。だから、送り主を探そうとした……。 |
ブラックチョコ |
これはもしかしたら、自分の心に起きた変化がなんだったのかを、知りたかっただけなのかもしれない。 |
ブラックチョコ |
今思い返すと、あの時私が感じたのは「愛」だったのかもしれない……だから、今は―― |
ブラックチョコ |
できれば、やっぱり送り主を見つけて、直接感謝の気持ちを伝えたいと思うんだ。 |
ブラックチョコ |
その後は……うん、まあ……すぐ結婚、ではなくて、一旦お互いのことをよく知ろうとしてみようかな、と……。 |
モノローグ |
ブラックチョコの話に、ルビーチョコとピンクローズが目を合わせ、ほっとした表情になる。 |
ルビーチョコ |
あぁ〜、それならよかった。実はね〜。 |
ピンクローズ |
私が送ったのよ、それ。 |
ブラックチョコ |
えっ? |
ブラックチョコ |
ぴ、ピンクローズさんが?! |
ピンクローズ |
ええそう。もう、そんなに驚かなくてもいいじゃない。 |
ブラックチョコ |
でも……私とピンクローズさんは、今日が初対面だよね? |
ピンクローズ |
え?あぁうん、そうね、確かに。 |
ピンクローズ |
でも、愛の伝達者として、私は「愛」を出し惜しみしない。相手が初対面だろうと顔見知りであろうと変わらずね。 |
ブラックチョコ |
では……ピンクローズさんは……。 |
ピンクローズ |
うん、私はね、愛を平等に、みんなに分けて振りまくの。こいつ以外のみんなにね。 |
ルビーチョコ |
僕だって君に愛を振りまきたくはないよ! |
ピンクローズ |
でも、そうね―― |
ピンクローズ |
「愛」の形は本当に、多種多様だけど。 |
ピンクローズ |
キャンディや花束を贈るより、やっぱり私は別の方法で「愛」を表現したいわ。 |
ブラックチョコ |
別の方法? |
ピンクローズ |
この後のお祭りで、あなたのために最前列の席を取っておくわ。だから、絶対に見に来てちょうだいね〜。 |
モノローグ |
ピンクローズはブラックチョコにウインクすると、お店を出ていった。 |
モノローグ |
……。 |
モノローグ |
お祭りが始まった。 |
モノローグ |
ピンクローズの案内で、私とブラックチョコは最前列の席に着く。 |
モノローグ |
いくつかのショーの後、ピンクローズが舞台に立った。彼女の両隣には、バックダンサーの妖精がついている。 |
モノローグ |
気のせいだろうか。その片側、ピンク色のちびっこ妖精の方には、見覚えがある気がした。 |
モノローグ |
舞台上の彼女たちは、観客席を見回す。ピンクローズは偶然なのかどうなのか、私たちの方に向けてウインクした。 |
モノローグ |
そして音楽が始まり、ピンクローズが踊り始める。 |
モノローグ |
その姿を、なんと表現したらいいんだろう? |
モノローグ |
舞い散る花びらのようだけど、生命力があり。 |
モノローグ |
咲き開こうとしている花のようだけど、時を重ねた穏やかさがある。 |
モノローグ |
彼女は軽やかに舞い踊り、世界もまるで彼女と一つになったようだ。 |
ブラックチョコ |
これが……?これが、彼女の愛なんだね……。 |
モノローグ |
ブラックチョコが茫然とつぶやくのが聞こえたけど、私は彼女の姿に見惚れて声も出ない。 |
モノローグ |
私たちは、同じものを感じたと思う。 |
モノローグ |
「愛」を。 |
モノローグ |
私への、ブラックチョコへの、そして観客全てへの愛。 |
モノローグ |
そして、ここにいない全ての者たちへの、アモルの庭園への、イブ大陸への愛。 |
モノローグ |
そう、このダンスは、この特別な日に、彼女が全世界へと贈ったプレゼントだ―― |