ルビーチョコ |
いらっしゃいませ~☆ |
錦玉羹 |
椿、見てください!菓子屋さんですよ! |
椿 |
これで十二軒目です。本当にどれも入らないといけないのですか? |
錦玉羹 |
ふふん。「ただの菓子屋さんじゃないですか?」と言いたいのですよね? |
錦玉羹 |
でも、違いますよ。どの店にも、その店だけの特別さがあるのですから。 |
錦玉羹 |
ほら、看板商品も違っていたでしょう? |
錦玉羹 |
それに、まったく同じお菓子でも、店が違えば作り方も変わっていきますし。 |
錦玉羹 |
更に最も重要な点として……ここは今までの店とは全く違っていませんか? |
錦玉羹 |
さっきまでの店では、あらゆるキャンデー、スイーツ、ドリンク、ケーキを取り揃えていましたよね。食事までとれました。 |
錦玉羹 |
ですが、この店は「菓子屋」お菓子以外は、何も置かれていません。 |
錦玉羹 |
まるで――集客のために色んな策を出し、記念品やお守りの販売、占いや厄除けのサービスも扱い、宿まで設置する競合相手たち……。 |
錦玉羹 |
……そんな流行りに乗ることなく、素朴なまま佇む神社のようではないですか。 |
錦玉羹 |
もしお菓子にも神が宿るのであれば、きっとその神に愛されるでしょうね。 |
椿 |
そんな神がいるかどうかはわかりませんが、オーナーさんをそっちのけにしないでください……。 |
ルビーチョコ |
いいのいいの~お客さんは神様だからね! |
ルビーチョコ |
でも一点だけ訂正させてくださいね?こんな素朴な店だけど、他の地に支店がありますから!そんなかわいそうになる例えはしないでくださいよ! |
ルビーチョコ |
店主は僕一人だけなんだけどね……。はあ、あっちこっち飛び回るのも疲れるよ。おっと、話が逸れちゃった。 |
ルビーチョコ |
コホン。あなたたちは、あまりこの辺りで見ない妖精だね?ここは初めて? |
錦玉羹 |
はい。故郷を離れてから、こんな面白い場所は初めてです! |
椿 |
ここに来てからずっと、怖いくらいに興奮しているんですよ。 |
錦玉羹 |
だって、ここにはたくさんのアメの精がいて、食べきれないほどの甘いお菓子がありますから……。 |
ルビーチョコ |
ここは、お菓子の妖精だけの町だからね~。 |
ルビーチョコ |
お菓子の妖精たちが集まって、食べ物をもっと美味しくする方法を探しているって感じかな。 |
錦玉羹 |
なるほど、だからこんなに店が並んでいるのですね。 |
ルビーチョコ |
お客さんはどんなお菓子がいいの? |
錦玉羹 |
ううん……今度はどんなものがいいでしょう……。 |
ルビーチョコ |
もし迷っているなら、これがおすすめだよ! |
ルビーチョコ |
じゃじゃん――人気チョコレートパック!どれも試したくて決められない君へ! |
錦玉羹 |
よさそうですね! |
錦玉羹 |
故郷にもあらゆるお菓子がありましたが、チョコレートはとても珍しいものでした。一度だけ食べられたのですが、かなり小さい頃でしたから……。 |
錦玉羹 |
2つください。いいえ……やっぱり3つください。 |
ルビーチョコ |
まいどあり! |
ルビーチョコ |
そちらのお姉さんは、何がご所望かな? |
椿 |
私はいいです。ありがとうございます……、 |
ルビーチョコ |
特に気になる商品がないかな?なら、僕がおすすめを―― |
椿 |
実はここに来てから、毎日甘いものばかりで……食事でさえも甘くて……、 |
椿 |
……もう甘いお菓子は勘弁していただけると。 |
ルビーチョコ |
そ、そっか……。 |
椿 |
ですが、興味を抱いているものならあります。それも、かなり欲しいものです。 |
椿 |
ここにあるかどうかはわかりませんが……。 |
ルビーチョコ |
うん?お客さんのほしいものなら、どんなものでも―― |
椿 |
本の扱いはありますか? |
ルビーチョコ |
……本? |
ルビーチョコ |
本……えっと、本……いや、ここは菓子屋だよ!? |
椿 |
そうですよね……。 |
錦玉羹 |
椿はただ、読めるものがほしいだけです。売っているような本でなくても大丈夫ですよ。 |
ルビーチョコ |
読みたい、かぁ……なら、これしかないかな?どうぞ。 |
モノローグ |
ルビーチョコはカウンターから、ある小冊子を椿に渡した。 |
椿 |
これはなんですか? |
ルビーチョコ |
僕の帳簿だよ。店の中で読めるものなんていったら、これしかないし。 |
椿 |
ですが……、 |
ルビーチョコ |
まあ、間違いなく読み甲斐はないものだけどね~。 |
椿 |
それはかなり個人的なものでしょう?読んでしまうのはさすがに……、 |
ルビーチョコ |
ツッコむところそこなんだ!?いいのいいの!そういうこと、僕は全然気にしないから! |
モノローグ |
ルビーチョコの同意の元、椿は帳簿を受け取って読み始めた。 |
椿 |
うん……理解できません。 |
椿 |
なぜ82引く7が77に?58足す43が91になるのですか? |
ルビーチョコ |
そ、そんなことは気にしない気にしない―― |
モノローグ |
……。 |
ルビーチョコ |
お客さん、商品が用意できたよ~!まいどあり! |
ルビーチョコ |
あなたたちはこれからどこに行くつもりなのかな?もしよかったら、おすすめの場所を教えるよ! |
錦玉羹 |
あの、神を祀っているような場所はありますか?ここの神がどのような姿をしているのか、気になります。 |
ルビーチョコ |
うーん、ここにはそんな場所はないよ。 |
錦玉羹 |
……え? |
ルビーチョコ |
ここは神さまに守られた地ではなく、神さまのいない地なんだ。 |
ルビーチョコ |
まあ、お菓子好きの守護神はたまーにここへ加護を授けるけどね……。でも、ここの住民たちにとっては、あれは神様というよりもお客さんに近いかな? |
ルビーチョコ |
みんなお菓子のことしか頭になくて、神さまなんて祀る妖精はいないんだよね。 |
ルビーチョコ |
祀っているような場所を見てみたいのなら……そうだなぁ。アモレの庭園と、リリエの森とかに行ってみたらどうかな? |
錦玉羹 |
そうですか……。 |
錦玉羹 |
では、決まりですね。 |