(春日の贈り物)1-8

イースターエッグ ――そんなことがあった、と。
モノローグ イースターエッグと名乗った妖精は、背負ってきたメイド姿の妖精に困惑の眼差しを向けながら、これまでの経緯を話してくれた。
魔法使い ……。
魔法使い 大変だったね……。
イースターエッグ はあ。
イースターエッグ 人間の魔法使いがここで暮らしていると聞いて来たんだ、どうか助けてもらえないかな……。
イースターエッグ この子は……どうしちゃったんだろう?
魔法使い そうだね……。私もはっきりとはわからないけど、他の妖精を呼んであげようか?
モノローグ 私たちが話していると、傍らにいたネザーがゆっくりと目を開けた。
魔法使い あ、意識が戻ったんだね!
ネザー ……。
ネザー
ネザー あ、み、見つけました――
ネザー なんという気高さ……わたくしはもしかして、神と対面しているのでしょうか!?
イースターエッグ ……。
魔法使い ……。
ネザー まさか、今までの努力がメイドの神に認められ、ついに神へのご奉仕を許されることになったのでしょうか!?
イースターエッグ ……。
イースターエッグ もしそんな神が本当にいるとしたら、君のようなメイドの存在を許さないと思うけど……。
ネザー はぁ!?あなたはなにを――
ネザー あら、イースターエッグさまなではありませんか?なぜここにいらっしゃるのでしょう?
イースターエッグ 僕は君を雇っているんだけど!?
ネザー ああ、確かにそんなこともありましたねぇ。
ネザー ですが正確には、「雇っていた」、だと思うのですが……。
イースターエッグ ど、どういう意味!?
ネザー あら、契約書をきちんとご覧になっていなかったのでしょうか?わたくしたちの契約期間は、八時間だけでしたでしょう。
ネザー つまり今はもう、契約時間外ということになります。
イースターエッグ 待って!ここまで面倒をかけておいて!まさかこれで逃げるつもり!?
ネザー あらまあ……わたくし先程、仕事でかなり辛い思いをいたしましたのに……こんなにかわいそうなわたくしに、まだ無理やり仕事をさせようと……?
イースターエッグ はあ!?
魔法使い えっと……どっちも、落ち着いて……。
魔法使い じゃあ私が手伝うよ。彼女は、私のところで休ませておいてあげようか?
イースターエッグ えぇ?君が気にならないなら、それは構わないけど……。
ネザー な、なんという優しさ!なんという寛大さ!
ネザー あなたさまは本当に、神であらせられるのでは?
魔法使い ……。
イースターエッグ コホン!
イースターエッグ 魔法使い、もし手伝ってくれるなら、早めに出発しておきたい……こいつのおかげで、かなり大変なことになっているんだ……。
ネザー え?イースターエッグさまはまさか、全ての責任をわたくしに押し付けるおつもりでしょうか?そのようなご無体なことは、ございませんよねぇ?
ネザー うぅ……わたくし、長くメイドとして勤めてきましたが、ここまで責任感のない方は初めてです……うう……。
イースターエッグ なんだと!?
魔法使い ええっと、とりあえず、大変なことになってるっていうなら、早く行ったほうがいいんじゃないかな……。
イースターエッグ ……。
イースターエッグ そうだね、面倒をかけるよ……。
イースターエッグ ごめんね、タダで手伝わせたりはしないから。こいつに渡す予定だった報酬は君にあげるね。
ネザー あ、ではわたくしはここで休ませていただいてよろしいでしょうか?
魔法使い はあ、ご自由に……。
モノローグ ……。
イースターエッグ 実はそこまで大変な仕事じゃないんだ。このイースターエッグを――
イースターエッグ ……。
魔法使い どうしたの?
イースターエッグ あいつめええええええ!絶対クレームを入れておかないと!!!!
モノローグ イースターエッグはネザーに「改造」されたエッグを見て、絶望的な悲鳴を上げた。
イースターエッグ ごめん、相当厄介なことになっちゃったかも……。
イースターエッグ エッグを隠す前に、まずは元通りにしないと……これだと、かなり時間がかかるかもしれない……。
魔法使い 大丈夫、気にしないから。
モノローグ そして、私はイースターエッグと一緒に、「改造」されたエッグを元通りの形にしていき、再び草むらの中に隠していった。
モノローグ 全てが終わったのは、もはや深夜といって差し支えない時間帯だった。
モノローグ ヘトヘトになったし、とても疲れたけど、蘇生祭を無事行える状態にできて、イースターエッグと一緒に胸を撫で下ろした。
モノローグ ただこの時、私たちは予想もしていなかった。また新たなトラブルが発生し、それに巻き込まれるだなんて。
モノローグ ――でもそれはまた、別のお話。
最終更新:2022年04月21日 18:05