イースターエッグ |
――そんなことがあった、と。 |
モノローグ |
イースターエッグと名乗った妖精は、背負ってきたメイド姿の妖精に困惑の眼差しを向けながら、これまでの経緯を話してくれた。 |
魔法使い |
……。 |
魔法使い |
大変だったね……。 |
イースターエッグ |
はあ。 |
イースターエッグ |
人間の魔法使いがここで暮らしていると聞いて来たんだ、どうか助けてもらえないかな……。 |
イースターエッグ |
この子は……どうしちゃったんだろう? |
魔法使い |
そうだね……。私もはっきりとはわからないけど、他の妖精を呼んであげようか? |
モノローグ |
私たちが話していると、傍らにいたネザーがゆっくりと目を開けた。 |
魔法使い |
あ、意識が戻ったんだね! |
ネザー |
……。 |
ネザー |
! |
ネザー |
あ、み、見つけました―― |
ネザー |
なんという気高さ……わたくしはもしかして、神と対面しているのでしょうか!? |
イースターエッグ |
……。 |
魔法使い |
……。 |
ネザー |
まさか、今までの努力がメイドの神に認められ、ついに神へのご奉仕を許されることになったのでしょうか!? |
イースターエッグ |
……。 |
イースターエッグ |
もしそんな神が本当にいるとしたら、君のようなメイドの存在を許さないと思うけど……。 |
ネザー |
はぁ!?あなたはなにを―― |
ネザー |
あら、イースターエッグさまなではありませんか?なぜここにいらっしゃるのでしょう? |
イースターエッグ |
僕は君を雇っているんだけど!? |
ネザー |
ああ、確かにそんなこともありましたねぇ。 |
ネザー |
ですが正確には、「雇っていた」、だと思うのですが……。 |
イースターエッグ |
ど、どういう意味!? |
ネザー |
あら、契約書をきちんとご覧になっていなかったのでしょうか?わたくしたちの契約期間は、八時間だけでしたでしょう。 |
ネザー |
つまり今はもう、契約時間外ということになります。 |
イースターエッグ |
待って!ここまで面倒をかけておいて!まさかこれで逃げるつもり!? |
ネザー |
あらまあ……わたくし先程、仕事でかなり辛い思いをいたしましたのに……こんなにかわいそうなわたくしに、まだ無理やり仕事をさせようと……? |
イースターエッグ |
はあ!? |
魔法使い |
えっと……どっちも、落ち着いて……。 |
魔法使い |
じゃあ私が手伝うよ。彼女は、私のところで休ませておいてあげようか? |
イースターエッグ |
えぇ?君が気にならないなら、それは構わないけど……。 |
ネザー |
な、なんという優しさ!なんという寛大さ! |
ネザー |
あなたさまは本当に、神であらせられるのでは? |
魔法使い |
……。 |
イースターエッグ |
コホン! |
イースターエッグ |
魔法使い、もし手伝ってくれるなら、早めに出発しておきたい……こいつのおかげで、かなり大変なことになっているんだ……。 |
ネザー |
え?イースターエッグさまはまさか、全ての責任をわたくしに押し付けるおつもりでしょうか?そのようなご無体なことは、ございませんよねぇ? |
ネザー |
うぅ……わたくし、長くメイドとして勤めてきましたが、ここまで責任感のない方は初めてです……うう……。 |
イースターエッグ |
なんだと!? |
魔法使い |
ええっと、とりあえず、大変なことになってるっていうなら、早く行ったほうがいいんじゃないかな……。 |
イースターエッグ |
……。 |
イースターエッグ |
そうだね、面倒をかけるよ……。 |
イースターエッグ |
ごめんね、タダで手伝わせたりはしないから。こいつに渡す予定だった報酬は君にあげるね。 |
ネザー |
あ、ではわたくしはここで休ませていただいてよろしいでしょうか? |
魔法使い |
はあ、ご自由に……。 |
モノローグ |
……。 |
イースターエッグ |
実はそこまで大変な仕事じゃないんだ。このイースターエッグを―― |
イースターエッグ |
……。 |
魔法使い |
どうしたの? |
イースターエッグ |
あいつめええええええ!絶対クレームを入れておかないと!!!! |
モノローグ |
イースターエッグはネザーに「改造」されたエッグを見て、絶望的な悲鳴を上げた。 |
イースターエッグ |
ごめん、相当厄介なことになっちゃったかも……。 |
イースターエッグ |
エッグを隠す前に、まずは元通りにしないと……これだと、かなり時間がかかるかもしれない……。 |
魔法使い |
大丈夫、気にしないから。 |
モノローグ |
そして、私はイースターエッグと一緒に、「改造」されたエッグを元通りの形にしていき、再び草むらの中に隠していった。 |
モノローグ |
全てが終わったのは、もはや深夜といって差し支えない時間帯だった。 |
モノローグ |
ヘトヘトになったし、とても疲れたけど、蘇生祭を無事行える状態にできて、イースターエッグと一緒に胸を撫で下ろした。 |
モノローグ |
ただこの時、私たちは予想もしていなかった。また新たなトラブルが発生し、それに巻き込まれるだなんて。 |
モノローグ |
――でもそれはまた、別のお話。 |