モノローグ |
でも今は、ローブ姿の妖精について考えている暇はない。まずはカプチーノたちと一緒に工場に入る。 |
モノローグ |
事故が起こったのは、工場の中心部だ。現場の様子から見るに、かなり強烈な爆発があったことがうかがえる。四散したパーツがそこかしこに散らばっていた。 |
魔法使い |
うわ……なんてひどい。怪我した妖精がいなければいいんだけど……。 |
カプチーノ |
そうだね。今日、工場は休みだったから、誰もいなかったはずだよ。 |
魔法使い |
不幸中の幸いだね……。 |
カプチーノ |
うん。さあ、おしゃべりはこれくらいにして、まずは調査をしないと。 |
モノローグ |
とはいえ、誰もどう調査したものかわからなかった。 |
モノローグ |
私は簡単に「調査」してみたけれど、爆発で壊れたパーツしか見つけられなかった。 |
カプチーノ |
うん……。 |
モノローグ |
どうやら、カプチーノも成果がなかったようだ。彼女は仕方なく、最後のひとりに聞いてみた。 |
カプチーノ |
エスプレッソ、何かわかった? |
エスプレッソ |
……。 |
モノローグ |
エスプレッソは返事せず、ただじっと隅を見つめている。 |
カプチーノ |
何を見ているの?ん……この粉末は―― |
魔法使い |
粉末? |
モノローグ |
近寄ってみると、エスプレッソが見つめていた隅っこに、細かな粉末が散乱していた。 |
魔法使い |
これはなに?まさか、爆薬じゃ―― |
モノローグ |
カプチーノは粉末をちょっと口に入れ、吹き出した。 |
カプチーノ |
シュガーだよ。 |
カプチーノ |
はあ、クリーム工場にシュガーがあるのは当たり前じゃない。もう、何か大発見でもしたのかと思ったよ。 |
魔法使い |
シュガー? |
カプチーノ |
どうしたの?魔法使い、何か分かった? |
魔法使い |
もしかして……粉塵爆発!? |
カプチーノ |
粉塵爆発? |
魔法使い |
うん。条件が揃えば、粉末は密閉空間で爆発するって、授業で習ったの……。 |
カプチーノ |
え!?シュガーってそんなに怖いものなの!? |
魔法使い |
条件がそろわなければ大丈夫だよ。でも条件はなんだっけ……カロリーと、なんだっけ―― |
カプチーノ |
それよりさ、おかしいよね……。ここの魔力環境はあまり問題なさそうなのに……、 |
カプチーノ |
どうしてあの衛兵、あんなに頭ごなしに決めつけてきたんだろう……。 |
エスプレッソ |
……。 |
モノローグ |
何かつかめそうだと感じた思考に、不意に声が挟まれた。 |
クリーム |
あら、ここは立ち入り禁止のはずではありませんか?あなたたち、私の言ったことを覚えていなかったのですか? |
カプチーノ |
女王陛下!? |
カプチーノ |
な、なぜここに!?しかもおひとりで―― |
クリーム |
ふむ……そんなことより、まずはそちらの説明を聞きたいのですが? |
クリーム |
あなたたち……まさかとは思いますが、証拠を隠したくて、ここに来た訳ではありませんよね? |
カプチーノ |
あたしたちはただ、今までのことを調査したくて……こら!黙ってないでなんか話しなさいよ! |
エスプレッソ |
……。 |
エスプレッソ |
調査。 |
カプチーノ |
しかも、証拠も見つけました! |
カプチーノ |
ここを見てください!これは―― |
クリーム |
ふむ。爆発は魔力ではなく、粉末が引き起こしたもの。そうですよね? |
カプチーノ |
え? |
魔法使い |
どうしてわかるの―― |
クリーム |
粉塵爆発は二次爆発を起こしやすいので、ここを封鎖しました。 |
クリーム |
疑い深い女王がひとりで工場を調査してみたら、うっかり二次爆発に巻き込まれた……表面上は、そういう風に見えるでしょうね。事情に詳しくない妖精たちにとっては、かなり辻褄の合う話ではありませんか? |
エスプレッソ |
……。 |
魔法使い |
それって―― |
クリーム |
はあ。 |
クリーム |
もう間に合いません。まずはここに入ってください。 |
モノローグ |
クリームは、工場の隅に隠されていた隠し戸まで案内してくれた。 |
モノローグ |
分からないことがまだ沢山残っているが、とりあえず彼女に従って中に入った。 |
モノローグ |
ドアが閉まる時に――クリームの言っていた「二次爆発」が起こり、外で大きな爆発音が響いた。 |