(珈琲王国狂想曲)選択

カプチーノ エスプレッソ?どこに行くの?
エスプレッソ ……。
カプチーノ 待って、女王陛下はここで待っててって言ってたじゃん!
カプチーノ 勝手に離れちゃって大丈夫なの?こんな隠し通路、危ない罠とかがあるかも――
カプチーノ あれ?もう外に出たの!?
モノローグ カプチーノは驚いたが、それについて考える余裕は与えられなかった。とんでもない噂話が、即座に彼女の耳に届いたのだ。
妖精A 陛下が襲撃されて、まだ行方不明らしい……。
妖精B うん、どうやらあの人間がやったらしい……くそ、絶対いいヤツなんかじゃないと思ってたよ!
妖精A はあ、これからどうなっていくのやら……。
妖精B 摂政王さまは頼もしそうに見えるが……どうだろう……はあ……。
カプチーノ ……。
カプチーノ あいつらは何言ってるの!?陛下と魔法使いは全然無事だっていうのに!
モノローグ 聞きとがめたカプチーノは食って掛かろうとしたが、エスプレッソが彼女の口を塞ぎ、角まで連れ戻した。
カプチーノ んぐっ!?
カプチーノ ちょっと、なにするの!?
エスプレッソ シッ。
エスプレッソ 誰も、女王の居場所がわからない。
カプチーノ どういう――
カプチーノ あっ!誰にも陛下の居場所が分からないのに、なぜか襲撃されたという噂が流されて……。
カプチーノ 陛下はひとりで工場を調べようとしてて――
妖精の兵士 誰だ!そこでこそこそと!
カプチーノ やばっ!
エスプレッソ 帰って、隠れていろ。
カプチーノ なに?
エスプレッソ 早く。
モノローグ エスプレッソはそういい残すと、そのまま衛兵の方に向かって行った。
妖精の兵士 君は――
黒ローブの妖精 はあ、エスプレッソ!探したよ!
黒ローブの妖精 さて、一緒に飲みにいこうじゃないか!
モノローグ ……。
魔法使い ううん、帰らない。
クリーム ……。
クリーム あなたは……敵なのですか?
魔法使い 敵じゃないからこそ、帰る訳にはいかない。
魔法使い 帰ってほしいというのは……「コーヒーリーフ」を疑いたくないからだよね?
魔法使い もし私が帰れば、「コーヒーリーフ」が敵である可能性はなくなる、そうでしょう?
クリーム ……それがどうしたのです?
クリーム 私はただ、国民の命までをかけて、リスクを冒したくないだけです。
魔法使い あなたはただ、怖いだけでしょう。
魔法使い 「ビッターコーヒー」の動きも、周りの妖精が買収されているのも知っているのに、何もしなかった。
クリーム ……私にだって、計画があるのです。全体国民を守るために――
魔法使い それが危険を招くことになっても?
魔法使い 自分の推測を周りに相談したりせず、ひとりでここを調査して……、
魔法使い あなたは、自分の国民を信用できていない。
クリーム ……。
魔法使い だから、帰らない。
魔法使い 世の中は信用に値する者がたくさんいるよ――それを証明したい。
魔法使い だって……クリームが女王になれたのだって、周りを疑ったからじゃなくて、信用していたからでしょう?
クリーム ……。
クリーム はあ。
モノローグ クリームは身をひるがえすと、反対側へと進んでいく。
クリーム 帰りましょう。国民のみなさんを、これ以上待たせる訳にはいきません。
モノローグ ……。
モノローグ しかし元の場所に戻った時、ふたりの妖精の姿はそこになかった。
魔法使い エスプレッソ?カプチーノ?どこにいるの!?
クリーム ……。
モノローグ クリームは顔をしかめた。心配によるものなのか、それとも別の理由があるのか……暗い光の下では、判別できない。
クリーム 計画を変えないといけないでしょうか……。
魔法使い ……。
モノローグ だんだん、目が暗い場所に慣れてきた。そしてふと、上の窓に見慣れた模様を見つけた。
モノローグ 自分の推測を証明するため、私はあの手紙を取り出した。
魔法使い もしかしたら……方法があるかも。
クリーム うん?
魔法使い あなた……カプチーノとエスプレッソのことは、信用している?
魔法使い 国民たちと、あなたを助けていた誰かを信用している?
クリーム ……。
モノローグ 彼女は壁に刻まれた葉っぱを見つめ、深く考え込んだ。
最終更新:2022年06月09日 09:13