あ、雪…
今年の冬は珍しく雪の日が多いみたいだ
あやせがカフェに行こう、って言ったら、加奈子が、え~マックでいいじゃん、って
でも、あたしは早く帰らないと、と、そのお誘いを断った
バカ兄貴がバカでも引く風邪で死んでるから、そのまま放置するとホントに死にかねないから
あたしはほんの少し駆け足で家路に着いた
道すがら、妹の手を引いて歩く兄妹を見掛けた
懐かしいな
ついていくのが遅くて泣いてるあたしを、よく兄貴があんな風に手を繋いでくれたっけ
今のあたしには誰にも負けないこの脚がある
そう思うと、足取りが軽くなった
今日はお母さんも出掛けてるから、どうせ、兄貴はご飯も食べてないだろうな
お粥位なら作ってやってもいいかな
もし、寝汗でぐっしょりだったりしたら、着替えさせてやんないと
し、下着とか、どうしよう
冷たい空気に吐く息は白い
雪の粒子が髪の毛とマフラーにうっすらと積もっては消える
走るあたしの身体はあったかかったから、もし、兄貴が震えていたら暖めてあげよう
そんな事を考えながら、あたしは街を駆け抜けた
ただいま、と、玄関のドアを開けた
デジャビュだ
胸騒ぎがする
あたしは靴を脱いで急いで階段を駆け上がり兄貴の部屋のドアを開けた
兄貴のベッドに黒猫が丸くなっていた
兄貴は愛しいものを愛でるように黒猫の髪を撫で、黒猫もその愛撫に応えている
そして仲睦まじくお互いの名を呼んだ
あたしは堪らなくなって、バカ兄貴を殴っていた
涙が、冷たく頬を伝った
最終更新:2010年02月19日 21:53