4-231



「・・くん、・・・介君、京介君!」

ん・・・
俺はまどろみの中からその声に引き戻された。
吐瀉物とアルコールの香りが、俺が息をする度に臭ってくる。

「漸く起きたんだね。
 まったく。。。
 僕も大変だったんだからね。」

中性的な彼女の声が少しずつ、俺の脳を起こしにかかってくる。

「まったく、君の激しさは手に負えなかったよ。
 責任、とってくれるよね。」

ん、どういうことだろう。まだ、意識があいまいなのだ。

「ショックな事があったのはわかったよ。
 たまたま送ったメールで君に逢ったときに、様子が変だったからね。」

そうだ、俺は、確か・・・

「高校生がお酒を飲むなんて、ダメだよ。
 っていっても、僕のとこに連れてきちゃったせいかな。

 朝ごはん、簡単に作っておいたから、食べられるようなら、食べて。
 ダメなら、ポカリを置いてあるから、それを飲んで。」

「ありがとう、・・・フェイトさん」

既にグレーのパンツスーツに着替えていた彼女は、じゃあね、と、言葉を残して部屋を出た。

そうして、俺はフェイトさんの自宅に一人残されることとなった。

頭が痛い。
初めて酒を、よりによって、許容量以上飲んだため、頭痛と悪寒にさいなまれている。

そして、俺はその状態のまま、彼女のベッドを借りてぽつんとしている。

そう、俺は、どうやらいろいろ、一人ぼっちみたいなのだ。

きっかけは、些細な事だった。

あやせから珍しく電話があった。
どうやら、桐乃に彼氏が出来たらしい。
あやせがショッピングに誘ったのだが、高校生の男子と出かけるからと、断ってきたらしい。
ボロボロに泣いたあやせは、恋人を取られて、どうしていいかわからない少女のようだった。

マジかよ!?そんな物好きが居るのかよ!?

心底思った。

あの瞬間までは。

あやせから電話があった次の日の放課後、
麻奈実と俺はいつもどおりの帰り道についていた。

俺が麻奈実をからかいながらも、素直に自分の気持ちを返して来る。
悪くないよな、やっぱり。

「ねえ、たまには、よりみちして帰ろうよぉ」

麻奈実が珍しくそんな提案をした。
それも悪くないな、と、駅前の商店街に立ち寄った。

麻奈実と他愛も無い話をしながら、最近話題なんだって、っていってたカフェに、桐乃を見つけた。
あいつ、こういうの好きだもんな。
ただ、一緒に居る奴に俺は自分の目を疑った。

赤城浩平

サッカー部所属の女子人気の高いイケメン。
俺の級友にして、アキバの中心で愛を叫んだ男、腐女子の妹をどこまでも愛している男。

そいつが、俺の妹と、楽しそうに話をしているのだ。

もしや、あやせの言っていた、桐乃の恋人って言うのは、こいつなのか!?

この裏切り者の、イカサマ野郎が!

最初は、ちょっと乱入して、ぶち壊しにしてやろうか、とも思った。

だけど、桐乃の笑顔を見て、やめた。

桐乃は、今、幸せなんだろうな。
確かにあいつが昔言っていた、同級生じゃ話にならないっていうのと、妹空の「本当の彼氏」に、ちょっと似てるもんな。
残念だが、アイツのオタク趣味に、俺は浩平おにいちゃんほど理解を示すことは出来ない。

何もかもが負けた気分になり、

「麻奈実、悪いな」

そういって、俺はその場を離れた。


最後まで読みたいけど眠い…くううう
支援しつつ落ち

それからのことは、あまり覚えていない。

いわゆる、上の空って奴だ。

そんなとき、俺の携帯にフェイトさんから、連絡があった。

流石に年収53万円では生きていけないことと、
出来る限りのことをやりつくした結果、
最終的に自分が創作者より編集者であることに気づいた彼女は電撃の編集部で、熊谷さんの下で働いているらしかった。

「ふふ、いつぞやのお礼、させて欲しくて。きょうはア●ムの出番は無いから、安心して、ね」

でもこれ、居酒屋じゃないですか?クオーターの貴女にはあんまり似合わないと思うんですけど。
流石に言うわけにもいかない。

「大体言いたいことはわかるわよ。でも、なんかね、こういうときは、こういうところがいいと思うの。」

「そういうものなんすか?」

「そういうものよ」

そういいながら、彼女はヨーグルトサワーを飲み干した。

「強いんですね」

「クオーターだからね、僕は。多分、おじいさんが強かったんだよ。
 ま、君は未成年だから、食べて食べて!」

そういって、居酒屋メニューを大分制覇した。

おなかいっぱい食べて、少し落ち着いたようだった。

「ふふ、男の子なんだね、君は」

「そりゃあ、そうですよ」

「じゃあ、きっと、大事な人が、誰かのものになっちゃったんだね。
 今の君からは、そういう雰囲気が伝わってくんだよ。」

「・・・」
俺は、返答に窮した。あまりに核心を付いていたから。

「わかるよ、そういう気持ち。僕だって、伊達に年月を重ねてきたわけじゃないんだからさ。
 ねえ、なんだったら、僕のうちにおいでよ。殺風景だけど、妹さんと顔をあわせるよりはいいんじゃないかな?
 ほんの少しだけ、普通とは違ったところで過ごすのも悪くないよ」

「そう、ですよね・・・」
やはり、今、妹と顔をあわせるのは、気まずい。

「じゃ、決まりだな。京介君、おいでよ、うちに」

そうして、俺はフェイトちゃんの家に連れられていった。



そうして、フェイトさんの家に行った俺は、

「ほろ苦い、大人への通貨儀式だよ」と、彼女からビールを勧められた。
ビアグラスに注がれたそれを飲み干す。

大人の味、なのだろうか、ホップの味が舌にまとわり付いた

同時に脳髄の中心部にピリピリと来て、
慣れない感覚に、俺の感覚が少しずつ、あいまいになってきた。

だんだん、酔いが僕を支配してくる

「ふぇいとさん、きいてくらさいよ」

「もう、なあに?」

「俺、どうしようもないシスコンだったみたいです。
 妹に恋人ができたってくらいで。しかもそれが、同級生の親友だったなんて!
 おれは、俺は!」

もう、泣き出しそうだった。

そんな俺を、フェイトさんが諭していった。

「それだけ、妹さんのことが好きなら、もっと妹さんのことを愛してあげても良かったんじゃなくって?」

「う、そうですけど、でも」

「じゃあ、仕方ないわ。代わりに私が愛してあげるから。」

そういって、フェイトさんは俺にキスをした。
それからのことは良く覚えていない。


そうして、俺は今に至るわけだ。

なかなか頭痛が引かない。
フェイトさんの作ってくれた目玉焼きと厚切りハムのトーストは流石に食べられそうに無いので、俺はポカリを飲み干し、横になる。

身体中がダルさに包まれて悲鳴をあげている。
これが大人になるってことなのか。

身体が休息を求めるままに、俺はまた、眠りについた。

もう一度目を覚ましたら、既に夜になっていた

漸くダルさも抜けて頭も回るようになって、自分の現状に呆れるとともに、かなりヤバい事に思い至った。

でも、もう、どうでもいい。
いいんだ、もう。

桐乃には、俺よりも頼りになるであろう彼氏ができたのだからな。

ぼお、っと、そんなことを考えていると、フェイトちゃんが帰ってきた。

「あれ?まだ居たの?
帰らなくて大丈夫なの?
親御さんだって…」

「いやぁ、いいんすよ。
家は妹ならともかく、俺は比較的放任主義なんで」

「そう、なんだ?」

フェイトちゃんは俺の言葉を額面通りには受け取ってくれてない表情をした。

「そういえばフェイトさん、週末なのに遅いんですね、帰り」

「そうよ、編集の仕事は休みなんて無いのよ。
もう、くったくた。
特に、校了前はね」

「そうなんですか」

「あと、いくつか新しい企画も始めてるし、大変よぉ」

「はぁ…」

「キミも無関係じゃ無いのよ?」

「え?」

彼女の言う意味が今一ピンと来ない。

ため息をついて、彼女は言った。
「本当に君は、もう…

ま、いいわ。
ね、まだ僕のところに居るつもりなら、また、身体で返してもらいましょうか?」

「へ?」

「もう、忘れたの?
昨日あれだけ僕をめちゃくちゃにしたくせにっ。
責任、取りなさいよね?」
そういって彼女は俺の唇を奪った。

濃厚なキスに、昨日のアルコールと同じ酩酊感に教われ、とろけてしまった。

フェイトちゃんは俺の服を脱がし、胸元に、腹に、キスをする。

「ふふ、京介君の身体って、少年の身体付きよね。
綺麗よぉ」

何時もの中性的な声が、より艶やかに、響くと、まるで美少年に迫られているような倒錯的な気分になる。

そして、彼女のキスが下腹部に達し、下着の上から、いきり立ったそれを責め立てるようにねぶる。

「美味しいわ…」

勃起したそれを彼女は直接口に含む。
淫猥な吸い付く音を、俺に聞かせるかのようにたてて、彼女はそれを悦しむ。

俺はたまらず射精した。

そして、フェイトちゃん自身もまた、服を脱ぎその裸体をさらけ出す。

スレンダーな身体に、毛細血管まで見えそうな透き通った肌。
クォーターだけあって、エロティックで綺麗な身体だ。

彼女はもう一度キスをしたあと、クンニを要求してきた。

一瞬俺が顔をしかめると、俺を押し倒して、顔面に臀部を押し付けてきた。
クォーターだからか、少し体臭がきついが、それが俺の動物的欲求を掻き立て、仕方なしに彼女の求めに従う。
俺の舌の動きに、身体で応える様が俺の嗜虐心を誘い、俺はクリトリスを甘噛みする。
こりっとした感触が歯に伝わる。

「は、ン」

不意の反撃に、フェイトは一瞬、達してしまう。

「もう、ずるいわよ、不意打ちなんて」

「身体で返す約束ですからね」

「うふふ。男の子ね。
ほら、もっとしましょ?」

彼女の匂いで、俺もまた完全に獣になって、成熟した女性の身体を貪りたくなっていた。

「ダメよ、そのままじゃ。
はい、今日はちゃんと着けてするのよ?」

フェイトちゃんは薬局の紙袋からコンドームの箱を取り出して言った。

でも、多くないっすか、その量…

もっとも、3ダースセットのそれは、結果的に正解であったが。

それから俺たちは、ほぼ24時間、彼女の部屋で散々に、考えられるだけのあらゆるセックスに耽った。

そして、強烈な疲弊感に襲われて、俺たちは、深い眠りに落ちた。

「・・くん、・・・介君、・・京介くん」

フェイトちゃんの声で、また俺は目を覚ました。

「はぁ、もう、キミ、ホント、若いのね。
あんなに…」
白磁色の肌をわずかに紅色に染め、彼女が言った。

「ね、キミ、ちゃんとケータイチェックした?
何かすごい着信があったよ?」

だるい身体を引きずりながら、携帯を開き、着信履歴を見る。

ずらりと並ぶ桐乃の名前。
それも、数分おきに。
最初の履歴が今朝方ということは…

次に、メールの履歴を確認する。
…こちらも数分、下手したら数十秒おきに、桐乃の名前が並んでいる。

その文面は…

いや、やめておこう。
なんていうか、桐乃に勧められてやった、エロゲーでこんな展開があったことだけは伝えておく。

「え?何で!?」

「はぁ、もう。
キミは本当に鈍いなあ…」

そうして、フェイトさんの口から、恐らく真実と思われるストーリーが語られた。

実は今、彼女と桐乃で新しい携帯小説の企画を立ち上げたところだったらしい。
妹空とはまた違い、今度は近親恋愛をダイレクトに扱った作品になるらしかった
タイトルは妹風

フェイトちゃんが察するに、赤城とのデートは取材だったのではないかということだった。

兄の関心を買おうと、兄の友人とデートするシーンがあるらしく、黒猫のツテで赤城をその相手にしたらしかった。
それを、たまたま見かけてしまったようなのだ。

「でも、どうしたものかしら。僕たちの事を知ったら…」

フェイトちゃんが少し意地悪な笑顔を俺に向けてそう言った。

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最終更新:2010年03月15日 19:22
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