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2巻4章 桐乃視点 あやせとの仲直り後



「ちょっ、ちょっと待ってあやせ。ねぇってばー!」
「大丈夫よ、桐乃。わたしがあの変態から必ず護ってあげるから!」
あやせはあたしの言うことには反応せず手を掴んだままグイグイ前を進んでいく。
てか、手が痛いってのぉ!
「あの変態の汚らわしいクズめ、絶対通報してやる通報してやる……」
うぅ、なんかブツブツ言ってるし。ちょっと怖いんですけどぉ~?
「はぁはぁ――。ん、ここまで来ればひとまず大丈夫かしら。人通りもあるし。」
公園から駆けだしたあたしたちはいつのまにか大通りの方へと出ていた。
あやせは辺りをキョロキョロ見渡し、ようやく歩みを止めて手を離してくれた。
しきりに今来た道の方を確認している。
これってば完全にさっきあのバカが言ったこと本気にしちゃってるよね、はぁ。
あやせの中でどんな設定になってんだろ。……ぶっちゃけあんま聞きたくないな。
「あ、あやせ。とりあえず落ち着こうよ、っね? そこのカフェにでも入ろう。」
こんな路上じゃゆっくり話も出来ないしね。
あやせをなだめ、そう提案するとコクンと同意してくれたので、あたしたちは店内へ入っていった。(お店に入る際もあやせは周りを幾度も確認していた。)

――カフェ店内の2名用テーブル席に腰掛けてようやく人心地つく。
あたしはコーヒーであやせはオレンジジュース。
あやせも飲み物を口にしてようやく少し落ち着いたみたいだ。
…………………………。
「あ~あのね、あやせ――」
あたしは話し出しそうとしたが、
「桐乃。今まで誤解してて、ひどいこと言って、本当にゴメンなさい!」
言葉を遮ぎり、頭を下げてあやせは謝ってきた。
「え? な、なんで? そんな、謝る必要なんか無いって! あたしこそあやせに、そのぉ……、趣味のこと黙ってたわけだしサ、お互い様だよ。っね。ほらぁ、頭上げてよぉ。」
「ううん、だって、だってわたし、勝手に桐乃はこうなんだって自分の思い込みを押し付けといて、本当の桐乃を分かってあげられてなくて……。桐乃に向かって偽者だなんて……」
「も、もー。だからそんなこと良いんだってば」
あわててなだめすかすけど、あやせは俯いてキュッと口を閉ざし、目からはジワァーっと涙が溢れ始めている。
あたしを傷つけたと思って自分を責めているんだろうな。
――ほんとにあやせってば……。
少し思い込みし過ぎなとこあるけど、優しくって、素直で、まっすぐにあたしを見てくれている。
こんな素敵な子が友達で、超恵まれるよねあたし。
「あのねあやせ、聞いて。あたしの趣味、ウチらの年じゃ嫌ってて当然だって。あたしもその辺のコトはさ、自分のことだけによく分かってるつもり。だから――あんたに知られちゃった時はさ、それこそもうこの世の終わりかと思った」
あたしはちょっとずつ話し出した。
自分の気持ちを言葉するのはニガテだけど、それでもあやせに聞いて欲しいから。
あやせにこれ以上あたしのことで悲しくなって欲しくないから……。
「だってあんなの知ったらさ、ドン引きしてみんなにしゃべっちゃってもおかしくないじゃん?
 でも――あんたはさ。あんたは学校始まってもあたしの世間体のこと考えてくれて、みんなには黙っててくれてて。しかも仲直りもしようって言ってくれたんだよ。あたしすっごく嬉しかったんだ、マジで。」

「……………………」
あやせは黙ってあたしの話を聞いてくれている。
「んで、それなのにあたしはさ――趣味のことヤメテって言ってもムリ、でもあんたとも仲直りしたいだなんて。ヘヘ、すんごい自分勝手なこと言ってるよね」
……まったく、ほんとあたしって自分勝手だ。こうして話しているとますます自覚する。
「でも、こんな自分勝手なあたしと、それでもあんたは仲直りしてくれた。あんたはあんたが穢らわしいって思ってるものがすっごく大好きなあたしに、それでも仲直りしようって言ってくれたんだよ、あやせ……」
――メチャクチャ嬉しかったよ、ほんとにほんと。
「だから、そのぉ、あの。つ、つまりすっごい嬉しかったし感謝してるってこと! あんたと仲直りできて超嬉しいの! さっきだって、あたしはあんたと仲直りしたくて、すごく必死でっ! そんで、あんたは仲直りしようって言ってくれてっ!
 だから――、だからあんたが謝ることなんてなんっにも無いのっ! あたしは今あんたとこうしていられて嬉しくて幸せなの! 分かったっ!?」
いっきにまくし立てたあと、恥ずかしさからプイッと顔をそらしてしまう。
かぁ~、我ながらなんて説明ベタ。あたしってどうしてこう上手くしゃべれないんだろ。
――あやせ、分かってくれたかな?
不安になりながらあやせの顔を見ると――、あやせは真正面からあたしに微笑んでくれていた。
涙はもう流していない。
「桐乃………。うん……、うん。わたしも桐乃と仲直りできてとっても嬉しい、とっても幸せだよ! 正直まだ桐乃の趣味のことは納得しきれないけど……。それでもわたし桐乃といっしょにいたい! 桐乃と親友でいたいっ! 桐乃、これからもずっと仲良しでいてくれる?」
「当たり前に決まってるジャン! あやせと仲良しになれてチョー嬉しいよっ!」
「………桐乃」
良かった――あたしの気持ち、あやせにちゃんと伝わったみたい。
だってほら、こんな可愛い笑顔向けてくれてるんだもん。
あやせ、ほんとうにありがとね。あたしもずっとあんたとは親友でいたいよ……。
そうしてあたしたちは笑いあって、ようやくあの夏コミの日以前の関係に戻れたことを実感できた。ううん、それ以上の関係にね。

――ヘへ、なんか慣れないこと言ったから喉渇いちゃったな。
コーヒーを口にして渇きを潤していると、たった今仲直りを果たし、あたしと同じように嬉しくて幸せで、穏やか~な気持ちでいる『はず』のあやせがポツリとこんなことを呟いた。
「だけど……。あの変態、あの変態を早くなんとかしないと…………」
「――――エ?」
口に含んだコーヒーを思わずダーっと垂らしてしまう。
「あたしの大切な桐乃を毒牙にかけようとする、あの畜生にも劣る薄汚い変態生物から、桐乃を護らなきゃ、護らなきゃ、護らなきゃ……っ!」
ちょ、ちょっとあやせ? いつの間にか瞳から光彩が無くなってレ○プ目になって無いっ!?
本人目の前にして絶対口に出せないけどっ!
な、なんか怖いよ? 夏コミであたしの腕つかんだ時かそれ以上になっちゃったりしてません!?
「あ、あの~、あやせ――さん?」
恐る恐る問いかけてみるが、あやせはなにやら独り言を呟いている。
「警察に連絡、いやその前に児童相談所かしら。それから子供の人権問題に強い弁護士。あぁ、でも電話番号が分からない……。そうだ、お母さんなら知ってるかも。
 ――ん? でも待って。そんな悠長なことしている間に桐乃がさらにあの変態にひどい事されたら!? いけない、こんなありきたりな対策なんて考えてる場合じゃない!
 早く、早く何とかしないとわたしの、わたしの大事な桐乃が! そうだわ、いっそのことブチ○○した方が……。うん、そうよね、そっちの方が手っ取り早くて確実だし。バールのようなものとスコップを用意して――今度はどの山に埋めたらいいかしら…………ブツブツ」
「ちょーーーっと、ストップストーーッップ! お、お願いだからこっち向いてあやせっ!」
危なぁぁぁぁぁぁぃ! この子超危なぁぁぁぁぃ! しかも今度はって何? 今度はってぇぇぇぇっ!?
い、いや。最後の部分は突っ込んだら色々な意味で負けだと思うので聞かなかったことにしよう、そうしよう。
アタシハナニモキイテイマセンヨー。
「ん? どうしたの桐乃?」
と、とりあえずこっち向いてくれた。思い込みだしたら一気に突っ走っちゃうなぁこの子。
最近知ったあやせの一面だけど、正直なところあんまり知りたくなかったよ。自分が言えた義理じゃないけどさ。

ていうか――
はぁ、そうだった。ここに居る理由はそもそもあのバカが変なことを叫んだせいだったんだよね。
あやせと仲直りできたことがあんまり嬉しくって、つい失念していたわ。
ぬぬぬ……、出来れば思い出したくない出来事だけど、何とかあやせの誤解は解かないと。
べ、別に兄貴をかばうとかじゃないんだからね、このままじゃあやせが警察の厄介になりそうだし? 兄貴とそんな間柄だなんて思われたくないから仕方なくだからねっ!
あ、今のなんかツンデレっぽかったな~……って違うっ! なんであたしがあのバカ相手にツンデレキャラしなきゃいけないのよっ!
と、とにかく間違ったキモイ誤解を解く。それだけ! ウン。
「あやせ、えと、あのね。兄貴のことはね、その~~、心配しないで? あたしは全然大丈夫だから」
「桐乃……。優しいのね」
あやせはそう言うと両手であたしの手を握り、虚ろな瞳でさらにこう続けた。
「家族だもんね。どんなに酷いことされてもって思う気持ち――分かるよ? 優しい桐乃なら尚更だね。でもね、そんなこと言っていたらあの変態はそれにつけ込んで何をするか分からないわ。だから、ね? わたしも助けるから。勇気を出してあの変態を○○しましょう?」
イヤイヤイヤイヤ、勇気出して○○したくないデスゥッ!
そんな勇気いらないからっ!?
「だああぁぁぁ――っ!? ちょっと待って! いいからこっちの話聞いてっ」
無理やりあやせの勢いを断ち切った。あやせはなんだか残念そうな顔をしてる。
ぜぇぜぇ。こ、このレイプ目モード時のあやせって…………。
「話って桐乃、どうしたの?」
「えとね、あやせ。落ち着いて――聞いてね。公園でのあれはね、あのバカがあたしとあんたを仲直りさせようとしてついた嘘なの」
「………………嘘?」
「うん。あっ、嘘って言っても悪いことしよって類の嘘じゃないよ」
なんとか弁明を開始しだす。
「あのバカはさ、ウチらがケンカしたこと気にしてたみたいで……。そんでアイツなりに何とかしようとしてくれてたみたい。
んで、さっきのアレも、その延長線上みたいな感じ? あんたがちょっと戸惑ってるのを見て、落ち着かせようってあのバカなりに考えてやった事なんじゃないかな~と、思う……」
とっさに何とかしろと目配せしたのはあたしだけど、あんなこと言うとは……。
公園で兄貴がしたことを思い出し顔が熱くなる。い、いい今は、か、考えちゃダメっ!
頭をブルブルして必死に打ち消す。
「つまりあれは誤解で! あたしと兄貴は全っ然ほんっとに何でもないってことで! そう、ホント何でも無くて! あのバカのタチの悪いジョークみたいな? ハハ、ハハハ……」
「…………………………」
言葉の真意を探るかのようにあやせは黙ってあたしの顔を覗き込んでいる。
「ま、まあ、確かにあのバカ兄貴が変態でシスコンってのはマジだし? あたしが貸したノーパソで変なことばっか調べるし、カ●ビアンコムのお試し動画とか見まくってた、どスケベだけど。――あ~、でも良い所も少しはあるんだよ?
 オフ会初めて行った時とか付いて来てくれたし。あたしが困ってた時に駆けつけてきたし、話とか聞いてくれたしっ!
 そんで怒鳴られたり殴られたりしても、あたしの大切なもの護ってくれて――。あ、あと他にもゲームとかヘタクソだけどなんだかんだ言って付き合ってくれてるし。あとそれからぁそれからぁ……」
あーっ、もう! 自分でも何言ってんのか分かんなくなってきた。
なんであたしがバカ兄貴の弁護をこんな必死にしなきゃいけないんだっつうのぉ!
頭をクシャクシャかき回してると、そんなあたしの様子をジッと見ていたあやせがこんなことを言い出した。
「ねぇ桐乃? ちょっと聞きたいんだけど」

「う……。はい?」
「夏休みの前、桐乃の家にお邪魔したとき、お兄さんが部屋へ入ってきて取り合いになっていた箱、あったでしょ。あれの中身って何だったの?」
え、なんでいきなりそんなこと聞いてくんの?
「ええと。あ、あれは~」
「あれは?」
「ぇぅぅ、その~あたしの趣味関係のグッズとか色々……」
もう、バレてることもあって、観念して正直に話した。
あやせはそれを聞いて何やら沈思していたが、やがてボソボソと何かを確認してるみたいだった。
「そっか。じゃあわたしの勘もそんなに間違って無かったってことなのかな。だから桐乃のこと必死に、それで桐乃も……。でもお兄さんが危険人物ってのは捨てきれないし、念のためにあとでクギ刺しのメールでも――」
「え、なにが?」
「ん? ううん、なんでもない」
なにやら一人合点したあやせはオレンジジュースをストローで一口して、
「うん、分かったよ。――桐乃」
と満面の笑みを見せて言ってくれた。

――店を出ると、もう日も暮れかかっていた。
「それじゃあ桐乃、また明日学校でね」
別れの挨拶を言って手を振りながらあやせは去っていった。
結局のところあやせと仲直りも出来たし、兄貴の誤解も解けたワケなんだけど、あやせはあたしの説明で納得したんだろうか?
いつかのエタナーの箱のこと話したら妙にウンウン頷いてたケド……。
なにが『うん、分かったよ』だったんだろ?
ま、いいや。なんだか疲れたし、あたしも早く家に帰ろっと。


「ただいまー」
家に帰ると玄関には兄貴の靴があった。
やっぱ先に帰ってたんだ……。
公園での一件からあたしとあやせが去っていって――時間的にはまぁ当然か。
階段をトントンと上がって自分の部屋へ入り鞄を置き、ベッドにボスンッと倒れこむ。
少し疲れからかぼぅっとしたが、すぐにあやせと仲直りできたことを思い返しジワァーっと嬉しさが湧き出てきた。
「ヘヘ、メルルちゃん。あやせと仲直り出来たよぉー」
メルルちゃんの抱き枕をギュッと掴み、喜びをかみしめる。
――趣味のことをあやせに知られ、拒絶されたときは深海に放り込まれたように冷たくて真っ暗で、つぶされそうな気持ちだった。
夏休み後半も、必死に押さえ込んではいたけど、あやせが電話に出てくれなくて怖くて怖くて仕方なかった。
新学期に入った昨日なんかは、自分からも拒絶しちゃってあやせとの仲をもう完全に壊しちゃったんだと思って涙が止まらなかった。
そんなたまんないほどイヤなことがぜーんぶ解決したんだよね。
フヘヘ、エッヘッヘ~。
ニヤニヤ笑みを浮かべながら抱き枕を抱えてゴロゴロする。我ながらちょっとキモい。
つと、壁の方に目がいきゴロゴロするのをやめる。
…………今、部屋いんのかな?

兄貴、人生相談の責任――取ってくれたんだよ…ね……。
昨日の夕方、学校から帰ったあたしはリビングであやせとの関係が壊れたことでひとしきり泣いていた。
そんなとき、帰ってきた兄貴が話しかけてきたんだった。
ウザったいし、ほっといて欲しくて怒鳴って追い払おうとしたけど、なんかキモい開き直りしたから、けっきょく根負けして話を聞かせたんだっけ。
でも結局、『気にいらねぇ』だの『あきらめんな』だの勝手なことばかし言うからキレてどついてやったけど。
そのとき感情が昂ぶって、つい『人生相談の責任取れ~』なんて言っちゃったんだよね。
あやせのことは兄貴のせいじゃない。
責任取れ、なんとかしろってのはただの八つ当たりだ。
兄貴どついた後に部屋に戻って、自分でもバカじゃんって思ったもん……。
でも――、兄貴はなんとかしてくれた。しかも昨日の夕方から今日までの間に。
それがさっき公園であった出来事。結果、あたしは見事あやせと仲直り出来た。
「フン、かっこつけたつもり? ……キモ」
――壁向こうに意識を向けるが何も聞こえてこない、何やってんだろ。
今日、学校休んでたな。たぶん公園であやせに見せてた資料っポイの集めてたんだよね?
昨日の夜、ノーパソ借りに来たし。
それにお風呂入ろうと一階に下りたとき、リビングでお父さんと何か話してた。
あたしの趣味がバレたとき以来、お父さんとはなんかギクシャクしてたくせにさ。
あれも多分、あたしとあやせのことでだよ…ね……?
………ほんと、何ガンバチャってんの。今までさんざんほっといたくせに。
一人はりきちゃってサ、バカじゃん……?
「妹と仲良くなれたと勘違いしてるシスコン変態バカ兄貴……。サムいんだっつの」
言葉とは裏腹に体の奥からはあたたかいものが広がってきて、公園でのやりとりが思い浮かんでくる。
あの時、兄貴は兄妹で結婚した神話の本とか妹モノの同人誌をあやせに渡して、あたしの趣味のこと、感謝してるって……。
〝愛の証〟だって……言ってた。
そんでギュッと抱きしめられて……そして……。

『妹が、大ッッ……好きだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――っ!』

……どこまで、本気だったのかな――。
…………………………。

……う、いやいや。なに考えてんのあたし。
兄貴があそこでああ言ったのはあやせを何とかするためじゃん。
ほ、本気とかそういう問題じゃないしっ!
で、でも――演技にしたって妹に抱きついて、『大好き』とかカンペキ変態くさいケドッ!
ってゆーか、キモいっつの。キモキモキモキモっ!
しかし、メルルちゃん抱き枕に顔を埋めて必死に頭から振り払おうとしても、体をきつく抱きしめられたあの時の体温がどうしても消えてくれそうにない。

気付けば体が熱を帯びてて、暑さから無意識にセーラー服を半分以上はだけさせていた。
モゾモゾと下半身を抱き枕にこすり合わせる。
「ン……、ハァ……熱ぃ…」
更に体が熱くなってる。枕…だけじゃ……足りない………。
そぅっと手を伸ばしショーツの上から秘部に添える。
「ゃだ……こんな、濡れてる……」
ショーツにはかなり湿り気があった。
今までもエロゲやってて、たまーに気分出ちゃってシちゃったことあったけど、こんな濡れたこと無かったのに……。
「ンん……、ふゅ…、あふっ…、ッィイ………」
クニクニと片手で秘部をまさぐる。
やだ、気持ちイイ…。止まんなくなっちゃうじゃん……。
抱き枕を抱いたまま、もう片方の手をブラの下から滑り込ませ胸を揉みしだく。
「やん、…はぁはぁ。ん…フゥ…アッ…胸ぇ…きも…ち…、ハァ……いぃょ……」
体スゴク熱い…。なんで急にこんなサカっちゃってんのよ、あたし?
そう思っても行為の手を緩めず、どんどんとエスカレートさせていく。
熱い…、脱ぎたぃ。
ショーツをズラし下半身をあらわにする。そのまま足首までズリ下ろした。
もし見られたらオワっちゃうなコレ。
カエルが足を開いたようなはしたない格好だけど、内腿に空気が触れて気持ちがいい。
そのまま手を直接秘裂へ持っていき、もう片方の手は硬くなってきた乳首を親指と人差し指で強く掴んでコネ回してみた。
「ァッ、アッ…ッフゥ…ンン。はぁ…い、いぃ…よぉ……。 チクビ…カタくなっちゃってるし…。ゥン……下のほうも……ッャ、アン…、すごく、ぃ…ッ…ハァ…なって…るゥ……」
快感に夢中になるにつれて、頭の中に兄貴のことがガンガン浮かんでくる。
ゃ、ゃだぁ、出てくんなぁ…!
今までシちゃってた時は、メルルちゃんやしおりちゃんの可愛いハダカとか思い浮かべてたのに。
男の人も想像することはあったけど、ボヤ~ッとしてて顔なんて真っ白で存在感が全然なかったのに。
なのに今は……。
兄貴の顔がはっきりと浮かんできてる。
ハダカで抱きしめられて……。兄貴があたしの大事なとこ触って……。

「もぅ……、ゃだぁ! 出て来んなぁ…バカ兄……消ぇ…ッフ、ンン……やぁ。だめッ……そこぉ…ゥフ、ヒャ……ンン、さわ…ンなぁ……兄貴…ンフゥ…ゥア…ばかぁ…。ァッ、ッア…ッアアン…アニ……キ、アニ…ッン…キィ! ッア……」
頭の中に出てくる兄貴に悪態をついて、必死に消そうとしてみるけど、それでも一向に消えない、消えてくれない。
――消そうとして…ない?
「変態…兄貴……。シス…コン……バカァ…ハァ……ッウ…アニキィ……。何でェ…消え…て、くれ…アンッ…ッイィ…ない…、ッャ…そこダメッ! 胸ェ…触っちゃ…ダ…メェ……」
そういや抱きしめられた時、顔を胸に押し付けられて兄貴の匂い近くで嗅いじゃったな。
なんか……、なんかあったかくてイイ匂い……だったナァ。
もう一回嗅ぎ――
「ウゥン…、アッ、ンン…ヤ…。何…考えちゃってんの……。ァン…ハゥ…。はぁはぁ、兄貴の…ニオ…イなんて…。ァ…アン…、キモイ…っつうのぉぉ!
 …ッンッン…クンカクンカしたいとか…思って…ッヤ…ンン…ァゥ…なぃんだか…らぁ…ッファ…ンゥ…。兄貴の……ばかぁ、ゃらぁ! ンアッ…ンッ…ンンッ…やらしいこと……すん…なぁっ…ッア」
体は汗まみれ、口からはヨダレを垂らして、股間もすっかり愛液でグショグショだった。
こんなの、……おかしい。こんなになっちゃうとか……アリえないって。
ひとりエッチってこんな気持ちよかったっケ?
ふいに兄貴の顔が大きく思い浮かぶ。
抱きしめてたあたしの顔に手を添えて、顔近づけてきて……。
「――ッ! ゃ、やだっ、ダ、ダメッ! こ、こんなの…ダメだって…ばぁ! ィク、イッちゃう……ッ!」
しかしもう止めることは不可能だった。
急に膨れあがった快感に体は言うことをきかず激しく動いた。
「ン…、ンンァッ……ァッ! ァ、アアアアアアッ! ィ、イイ―――ッ!」
ビクッビクンッ! と体が痙攣して、体全てが快感に支配されていく。
はぁはぁ…。あ、あたし。イ、イっちゃったんだぁ……。
「…っ、ァン…、はぁ、はぁ……」
それまで激しく動かしていた体をダラリと休め、快楽と無気力感に身を任せながらあたしはゆっくりと目を閉じた。


――暫くまどろんだ後、徐々に冷静さが戻ってきた。つまり……、賢者タイム到来である。
「………………サイア…ク……」
な、ななな、なんてことしちゃってんのよ、あたしは――ッ!
…………無し。今の無し、ノーカウント! あたしん中で今のは絶っっっ対にノーカウントッ!
――――…………。
~~~~くぁぁぁぁ! ダ、ダメだ! 動かないと! このままじゃ、あたしの自我が崩壊するううううっ!
顔を真っ赤にしながらもイソイソと後始末をすませる。
しかしその後も落ち着きは取り戻せず、メルルちゃんの抱き枕を抱いて足をバタバタとする。
「と、とととにかく今のは無し! 絶対無し! 頭のセーブデータからデリートよデリートっ!」
て、てゆーか、たまたまそーゆーキブンになっちゃって、たまたまあのバカがインパクトのある変態行為をしたから、これまた、た、たまったまそーなっちゃったっていうダケで……。
「~~~っああああああ! こんな言い訳考えてるだけでキモイっつぅの~~っ! にぎゃぁぁぁあああぁぁぁ! 忘れろっ、あたしの脳細胞ぅぅぅ! 誰かぁぁぁ、誰かあたしを殺せぇぇぇぇっ」
ベッドでのたうち回ってると、携帯からメロディが流れてきた。
一瞬ビクッっとしたが、この着信音はあやせだ。見るとメールが来てた。
なんだろ? と思って受信したメールを見る。
『桐乃、今日は仲直り出来てほんと嬉しかったよ。 明日、いつものところで待ってるから、一緒に学校行こうネッ』
――エヘヘ、あやせってばさっき別れたばっかじゃ~ン。そう思いつつも、嬉しくなってポチポチと返信を打鍵する。
あ、た、し、も、だ、よ。ま、た、あ、し、た、ねっと。
あやせ……、あたしも本当にあんたと仲直り出来て嬉しいよ、明日の学校が楽しみで仕方無いよ。

――メールを打ち返した後、兄貴の部屋の方に顔を向けた。
あいかわらず物音が全然聞こえない。どーせ寝てるかマンガ読んでるかしてんだろうケド。
………………。
いちおー、その。感謝して…るからね。
あやせとのこと、なんとかしようと頑張ってくれたみたいダシね……。
あ、でも。あん時のセリフはキモかったケドぉ。あれ絶対ちょっとマジ入ってるよね。
「超必死にあたしのこと抱きしめてたし~。フフン、どんだけシスコンなのよ。」
――つと、抱きしめられた感触がよみがえり、さっきの行為を思い出しそうになった。
ワ、ワワワッ! 両手で頭をゆすって必死にかき消す。
もうっ! せっかくあやせのメールで忘れてたのに……。
「し、しばらくは半径5メートル以内に近付かないようにしよっ! あのシスコンがいきなり襲ってきたら危ないしぃ~」
ったく、どこまでキモいってのよ、変態シスコンバカ兄貴め。
うひ~コワイコワイ。まったく3次元のダメ兄を持つ妹は苦労するわ。
あ、そーだ、シスコン兄貴が少し落ち着いてきたらからかってやろ、ヒヒ。
もしかしてマジ告白とかしてきたりして――やぁ~怖い。キッモぉ~~。
そんで~、からかってやったあとはシスカリの対戦してフルボッコして~。
そのあとは――

あやせとの仲直りを果たした日の終わり、あたしは数日後の兄貴との時間を考え始めていた。






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最終更新:2010年07月30日 23:09
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