「今日は桐乃と二人きりだな・・・」
家に帰ってみると、何かおかしい。
きれいに掃除された室内、きらびやかな飾り付け・・・。
食卓には満漢全席。
そして、居間には布団が一つ、枕が二つ。
そしてそして、正座して俺の帰りを待っていた桐乃の存在・・・。
桐乃に無言でせかされて、俺は食卓に付く。
お互い無言のまま、豪華な夕食がいやおうなしに開始された。
桐乃は無言のまま、表情も変えずに食事を取っている。
俺は、桐乃がどんな言葉を発するかだけに全神経を集中せざるを得なかった。
「ねえ・・・、私、今日、がんばったんだよ・・・」
夕食の途中に桐乃から言葉が漏れた。
分かるよ桐乃、がんばったのは分かるよ、でも、何のために・・・?
「時間がなかったからうまくいかなかったけど、あんたの帰りを歓迎するために出来る事は全部やった。料理も難しかったけ
どがんばった。洗濯も済んだし、お風呂も洗った」
それは分かる。でも、何のためにがんばったかを聞きたい。
「ねえ・・・、今日は、私と、一緒に寝て欲しいの」
なななななな、なんですとぉおおおお!!
桐乃は、こちらの反応を読んでか、こちらの余計な考えを断ち切る冷静な一言を述べた。
「私ね、凄い怖い夢を見たの・・・、今日一日正気を保っていたのは奇跡なぐらい怖い夢を見たの・・・、だから、一人はい
や、だから、一緒に寝て」
ああ、なんだ、添い寝か。
妹に変な気を起こさない兄に頼むのはある意味道理であろう。
でも、ここまでの事をしてまで俺に頼むか普通?
「分かった、お前にここまでしてもらったのは初めてかもしれない。それに免じて引き受けさせてもらう」
どうせ断っても一晩中なにかしらの行動を仕掛けてくると判断した俺は賢明な措置を取ったと思う。
そして、運命の時を迎えた。
風呂上りの桐乃、パジャマかと思いきや肩が出た薄着だし。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
制限時間朝七時半までの一本勝負が始まった。
俺は、早急に寝て太陽が昇ることを期待した。
が、そうは行かない。
俺が動かないと判断すると、桐乃は二言ほど声をかける。
そして・・・、来た!!
そのまま頭を体に預けてくる。
俺は抱き枕じゃねえええ!!
妹である桐乃相手に意識こそしないが、心と体の制御が不安定になっているのが分かる。
そして、桐乃の行動はそれだけではなかった。
俺の腕をとり、自分の体に寄せる・・・。
「!!」
腕の感触で分かる。桐乃は下着しか付けていない。
正確にはレースが付いているような女性ものの下着ではなく、スポーツタイプのものであるが。(普段の時でも、これの上に
適当な布をつけて室内を歩いていたりする)
こ、これは俗に言う「あてているのよ」状態?
正確には、体の一部の素肌が当たっているだけで、その、胸とか変な所が当たっている訳ではないが、威力は十分だ。
多分、俺はこの日の出来事を忘れない・・・。
と、俺の記憶はそこまでだ。
睡眠導入剤を飲んでいた俺の勝ちだ。
次の日、とことん不機嫌な桐乃の顔を見ながら朝を迎えた。
朝食ではバターまみれの皿をよこし、焦げたトーストを放り投げてきた。
何故だ、とことん紳士的に添い寝してあげたのに何故不機嫌なのだ?
まさか、意識が飛んだ後・・・。
有り得ない、有り得ないよな・・・。
そうこう悩んでいる俺に、とどめのメールが・・・。
from あやせ
題名 変態兄へ
本文 変態×100
桐乃おおおおおおおおおおおお、何で言う事を聞いてあげたのに、こうするかなぁ!!
俺は数日間眠れない程唸る日々を送った。
最終更新:2010年09月10日 21:33