やっつけ
「おにーちゃん! あそんであそんで!」
「コラ、パパのことはちゃんとパパと呼びなさいって、なんど言ったらわかるんだ」
「だってママが、パパのことはおにーちゃんって呼べって言うんだもん」
「……はぁはぁ」
「おい桐之、自分の娘になんて教育してんだ」
「……はぁはぁ、なにコレ、カワイ過ぎでしょ……! 歳の差兄妹萌え!
超極上生意気美幼女とヘタレ兄貴とかこれなんてアヴァロン(全て遠き理想郷)?!」
「娘で自分の歪んだ欲望を満たしてんじゃねえ!」
「でもよく考えたらホントの妹はあたしなのに、この子に妹の立場取られちゃってるってコトよね
……え、ええ?! なに今のゾクゾク?! これが噂のntr属性?! あたしそっちに開眼しちゃった?!」
「あなた、今度の日曜日はこの仔と映画に行こうと思うのだけれど」
「……またアレじゃないだろうな」
「愚問ね。眷属の主としての自覚を持たせるにはそれ相応の帝王学というモノが必要なのよ。
だから、佳き教育材料というものは繰り返し繰り返し視聴させて然るべきだわ」
「でもなあ、さすがに四回目だぜ? それにさあ、言い回しとかが――その、まだコイツには早いっつーか、
たとえば『所詮貴様は盤上の騎士――女王に勝てる道理など、那由多の彼方にも存在しない』とか言われてもよくわからんと思うんだが
――うげっ、台詞まで覚えちまってる」
「御父様、さんせいですわ」
「おお、お前もそう思うか」
「こんどは、おえかきのどうぐを買いに、せかいどうにつれて行ってほしいの」
「まあ――それでも構わないかしら。そろそろデッサン人形も必要と思っていたことだし」
「…………」
「ちちうえー! 見てくだされ! このギャン、せっしゃがつくったのでござるぞ!」
「京介殿! こ、この子は天才でござる!
出来たばっかりのザクを砂場で汚して『この方がアジがでるとおもったでござる』と言ったときは、さすが拙者と京介殿の子供と感じ入ったのでござるが
――まさか教えもせずにマッキ―ペンでスミ入れをするとは思ってもみなかった!」
「確かにすげぇが……ニッパーとかヤスリとか、まだ使うには早くねえか? ケガしたらあぶねえぞ」
「はは、ちちうえ、そんなへまをするのは、そのひとが坊やだからでござるよ」
「……あとさ、沙織。お馬さんゴッコっつって俺の背中に乗っからせたとき『俺を踏み台にした』ってボソッて言ってニヤニヤしてたんだが
何か心当たりは無いか?」
「ω」
「……ってなことがあってな、みんな娘の教育をフリーダムにしすぎなんだよ」
「あ、あ、あなた! 私とこの子の前で他の女の話とは良い度胸ですねぶっ殺しますよ?!」
「おかあさんわたしのおとうさんになんてこと言ってるのぶっころしちゃうよ?!」
「ぶ、ぶっ殺すって……あなた! いったいこの子にどういう教育してるんですか!」
「いやお前の影響だろう」
「きょうちゃ~ん、お茶が入ったよ~」
「おと~さ~んおちゃですよ~」
「…………ガシッ(無言で二人を抱き寄せる)」
「ふぇ? ど、どどどしたのきょうちゃん。まままだだだだだここんなに明るいのに、この子も見てるのに
……この子も、いっしょに?」
「え~、なにするの~? いつもおと~さんとおか~さんがやってるぷられすごっこぉ?」
「それを言うならプロレスごっこだ……って、え?」
「あ、きょうちゃんだいじょうぶ! ちゃんとうまくごまかしてるから!」
「……お前だけは俺を落ち着かせてくれると思っていたのに」
最終更新:2010年11月13日 11:51