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『お兄ちゃん…来て…』

「ハァ…ハァ…今行くし!いやっほーーーー!!」

GAME OVER

「っ!ありえなくない!?あんな風に言われたら行かないわけなくない!?」

「知るか!?ってか何回GAMEOVERになってんだよ!?いい加減に学習しろよ!?」

察しのいい奴なら気づいてるだろうが、今俺たちはとあるエロゲーをプレイしている。
最も普段やってるのと違って随分激しい奴だ。 あっ激しいって言っても別にエロが凄いって意味じゃない。
見慣れたADV形式のほかにACTパートもあり、シナリオ自体もやたら人が死んだりするなかなかきついものだ。
なんでこんな状況になったのかというと話は数日前に遡る。
――――――――――――――――
安らかに眠ってた俺は、唐突にバチンと頬に強い痛みを感じた。
「なっ!?ってめ何しやg「うっさい、夜なんだからあんまり大声出さないでよね。」」

そう言われては黙るしかない。ってかなんなんだこれは、一年前にもこんなことはあったが何でいまさら。
というかこいつなんで少し涙目なんだ?

「はぁ、で桐乃 一体どういうつもりなんだ。」

「ゲーム」

「は?」

「ゲームするからあたしの部屋に来いつってんの。」

「…待て、何だ突然。」

「うっさい!良いからあんたはおとなしく来なさい!」

「…はぁ …ったく分かったよ。」

うちの妹様が何を考えてるのかさっぱり分からないが、まぁどうせ諦めないだろうし付き合ってやるか…さらば俺の睡眠時間…

「入って」

「おう」

妹の部屋は相変わらず何時もの匂いがする。まぁ今は隅に追いやっておく。

「で、なんなんだ。こんな時間に突然人をたたき起こして。ゲームなら何時も一人でやってるだろうに。」

「…良いじゃん。妹とエロゲーできるんだから光栄に思いなさいよ。シスコン変態兄貴。」

この言い草である。誰が好き好んで妹とエロゲーなんてしないといけないのかと、しかもこいつがやってるのは大抵「妹物」である。
なんなんだこの罰ゲームは……あんたらもそう思うよな?
もっともアメリカまで行ってエロゲーやろうぜって言ってしまった手前、シスコン兄貴としては強く否定するわけにもいかない訳だが。

「はぁ…まぁ良い。で、どうしたんだ。」

「た、偶にはシスコン兄貴とエロゲやろうって思っただけよ。そ、それだけなんだからね。」

「…さよか」

なんだこいつ、普段はこんなこと言うやつだっけ?ま、珍しく素直な妹の頼みごとくらいは聞いてやりますかね。

「で、なんてゲームなんだ?」

というわけでそのゲームをやってたわけなんだが、このゲームやたら人が死ぬ。 あとやたら乱暴な表現も多い。
なんつうか桐乃がなんで手を出したのか分からな…いやまぁこの妹キャラ目当てだったんだろうが、それにしたって良くやってると思う。
というかさっきの態度の意味が分かった。こいつは要するに一人でこのゲームをやるのが怖いんだろう、だからとりあえず俺を呼んだ。要するにそういうことなんだろう。
ちょくちょくびくっとしてる妹を見てるのもまぁ…悪くはない。

「あーもー憐ちゃんといちゃいちゃしたいだけなのに、なんでこう…」

「仕方ないだろ、こういうゲームなんだから。ってか怖いならやめちまえよ。」

「なっ!?べ、別に怖くなんかないし!ってか最後までやらないとかありえないし!てか、怖いのはあんたじゃないの?」

「いや、それはねーから。」

まったくその根性は立派だがなんか方向性を間違えてねーか?
というかびくびくしながらやりつつ、定期的に「ひっ!?」とか悲鳴上げてるんじゃ説得力ねーっての。

「ま、無理すんなよ」

ぽむぽむと頭に手を置きなでてやる。と、珍しい反応が返ってくる。

「…シスコン」

普段なら「キモッ!さわんな!」とか言って来るのによっぽど追い込まれてると見える。

―――――――――――――――

そんなこんなで冒頭に至る。なんでも攻略順が固定で、かつお目当てのキャラが最終ルートとやらでここ数日は夜に一緒にやるのが定番となっていた。
それもこれもそろそろ終わりと思うとまぁなかなか感慨深いものがある。
というかこのゲーム、最初の印象と裏腹になかなかに熱く、かつ感動する展開が多い。かなりえぐい展開も多いがまぁ、それもまた魅力なのかもしれない。
しかし、ここに来て最大の問題が発生していた。そうラスボスに勝てないのである。
桐乃はこの様だし、俺は…まぁ聞かないでくれ。かれこれこれで50戦目くらいである。はぁ…まぁ流石にそろそろ動きも読めてきたしなんとかなんだろう。

「うし、桐乃。俺に任せとけ、そろそろ行けそうだ。」

「はぁ?あんたさっきまでだめだめだったじゃん。無理っしょ?」

「ふ、俺を舐めるなよ桐乃。動きはもう見切った」

「うわ、キモッ。」

即座に切り捨てられた!?まぁ、確かに今のはまずかったかもしれん。

「まぁ任せておけ。今の俺は阿修羅すら凌駕する存在だ。」

「…本格的にキモいんですけど。まぁ良いわ。はい」

「人呼んで…高坂スペシャル!!やったぜ!燐を倒したーーー!!」

「あ、ありえない。兄貴が倒すなんて…ってか何さっきの変な動き…ってか名前ダサッ…」

「ふ、まぁ気にするな。ほらよ桐乃」

「あ、うん」

こうして難所(?)を突破した俺たちは無事EDまでたどり着き…自然と二人してEDを見ている。

「ふぅ…なんなんだこの虚脱感。なんていうかやりとげたぜーって感じがはんぱねぇな。」

「ふっ、これが名作特有の虚脱感よ。ったく随分時間かかっちゃったけどようやくクリアね。その…あ、・・が・兄貴…」

「ん?なんか言ったか?」

すっかり聞き入って桐乃の言ってること聞き逃しちまったぜ。

「な、なんでもない!ってやば!?もうこんな時間だし。早く寝ないと」

「ん?ああそうだな。まっそれなりに楽しかったぜ。これで明日からはゆっくり眠れるな。んじゃお前も早く寝ろよ。」

「言われなくても寝るし。おやすみ兄貴」

「お、おう。おやすみ桐乃」

なんだ妙に素直だったなあいつ。まぁいっか。

―――――――――――――――

こうして俺たちの戦いは終わった……かに見えた

「はぁ?何言ってんの。まだあるし。これ、やるわよ。」

そういって妹が掲げるタイトルは…どうやら続編か何かのようだ。俺はまたしばらくまともに眠れそうにない。
やれやれ勘弁してほしいぜ。




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最終更新:2010年11月17日 10:48
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