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俺の妹の最終決戦


「私と付き合ってください」

黒猫から告白を受けた後、その場での返事をしなかった俺は、家に帰り一人部屋の中で考えていた。
「まさか、あいつが本当に俺のことを好きだったなんて」
黒猫とは1年くらいの付き合いになる。あいつも初めて会った時とは大分印象が変わり、今までのいろんなやりとりから、
親密になっていきもしかしたらという想いはあったんだが、いざ本当に告白されてみると嬉しい気持ちで舞い上がる半面、
さてどうしたもんかと考えざるを得なかった。
そんな夜だった。桐乃に呼び出されたのは。

ドアがガチャンと開く音と同時に、桐乃が顔をのぞかせてきた。クイックイッっと、妹に指で呼びつけられる。
「ノックもしないで、なんだよお前は」
「・・・・・・・・・・・・・・」
あれ?なんか怒っていらっしゃる? 何もしゃべらない妹に対して、さからってはいけないと身の危険を感じた俺は、
妹のなすがままに妹の部屋へ誘導され、妹のベットの前の床に正座させられた。
そこで、ようやく妹がその重い口を開いたのであった。

「あんた、あの黒いのことをどう思っているの。今日、あいつから告白されたんでしょ」
あれ? 何で知っているんですか桐乃さん? 黒猫? もしかしてあいつが言ったのかな。
「いや、どうって言われても。」
それを今考えているところなんだよ。
俺は妹からの突然の問いかけに対して、動揺を隠すことができなかった。
「はあーーーー。あんたがそんなこと言ってどうすんの。あいつは本気だよ。本当に本当に、あんたのことが好きなのよ。
こんなに真剣になっているあいつを今までに見たことがないくらいに」
そう言って、桐乃は俺の襟首をつかみ、顔を近づけてきた。

「あんなやつのことなんて、どうだっていい。いや、どっちかってゆうと、むしろ失恋でもしてくれたら大笑いして
やるんだけどね。だけど・・・・・・・・。だけどね。 ・・・・・・あんたは、あんたはね。あいつに対してしっかりと
考えて答えをださなきゃいけないの。
それが・・・・・・それが・・・・・・。たとえ、どんな答えだったとしても・・・・・・」
何も答えることができなかった。こいつ、本当に黒猫のことを心配しているんだな。昨日のこともあるんだから、
ほんとだったら俺なんかとは口も聞きたくないはずなのに。

だけど。そうだな。そろそろ決着をつけなきゃならないな。そういって俺は立ち上がり、妹の頭にそっと手を差し伸べた。
安心しろ、桐乃。俺は重度のシスコンなんだ。俺はお前のそんな顔なんか見たくない。はん、笑いたければ笑うがいいさ。
俺は妹の笑顔を見るためだったら、何だってやってやるさ。

「黒猫と付き合う。それがお前の望みなんだろ」
「えっ・・・」
その瞬間、桐乃は目を見開いて、とても悲しくて寂しそうな表情になった。
そして・・・・

バンツ!
と、顔面をぶっとばされた。桐乃がクッションを拾い上げて、両手で俺の顔面に叩き付けてきたのだった。
「ゲボツ・・・・・」さほど痛くないが、一瞬息ができなくなる。立ち直る暇さえなく、今度は下腹部に衝撃が走った。
ずどんという音がするほど、強烈な前蹴りだ。
「ちょ・・・・・・待・・・・・・痛・・・・・」
「うるさいっ!」
バンツ!!「あたしが・・・・・・・・っ! あたしがどんな気持ちでこんな話をしていると思っているの!」
バンツ!!「あたしが・・・・・・・・っ! あたしがあの時のあんたの言葉でどんだけ傷ついたと思っているの!」
バンツ!!「あたしが・・・・・・・・っ! あたしが、いったいどれだけあんたのことを考えていると思っているの!」
バンツ! バンツ! バンツ! バンツ!
何度も、何度も、あふれる感情のごと、叩き付けてくる。泣きじゃくりながら俺をブッ叩き続けている。

「何怒ってんだ?お前、俺を黒猫と付き合ってほしいんじゃなかったのかよ!」
「な! 違う。 ・・・あたしは・・・・あたしは・・・・・」
「あたしは。あたしはそんなことを望んでいない。本当は・・・・・本当は・・・・・・」
ようやく攻撃を止めた後、桐乃はそう言って顔をゆがめて、とても苦しそうな表情で俺を見つめてきた。
数分後
「嫌だ・・・・・・・・・・・・・・・」
「嫌だ。嫌だ。嫌だ。兄貴が誰かと付き合うなんて絶対に嫌だ。あんたは、あんたは、あたしだけ見ていてよ!」
そう言って、桐乃は俺に抱きついてきた。
それは、信じがたい光景であった。桐乃が・・・あの桐乃がだぜ。最近でこそ、そこそこ仲よくなっていて、偽装デート
とかもしていたのだが。まさか、本当にまさかなんだが、俺は今まで大きな誤解をしていたんじゃないだろうか。
「おま・・・! いったい何言ってるんだ!」
「本当は、本当は、あんたのことがずっと前から気になっていたのよ!」
「あんたがあたしにいままで色々してくれたこと、すっごい感謝しているから。嬉しかったから。あんたがいなかったら、
あたしはとっくにあの趣味をやめさせられていたし、あやせとだって絶好していたかもしれない。アメリカに行って苦しん
でいた時も、あんたが助けにきてくれてほんとに嬉しかった。いつだって あんたは、あたしが本当に苦しんでいる時に
助けてくれた」
「あたり前だろ。俺はお前の兄貴なんだから」
「だけど・・・だけど・・いつの間にかあたしは、あんたがいないと何もできなくなってきたの。あんたが心のささえに
なっていたの。・・・・・・・。表面上は、なんでも完璧にこなしてきたつもりだった。
だけど、だけど、あんたがいないと・・・・・。あんたが見てくれていないとあたしは・・・・・あたしは・・・・・」
「好き・・・・・お兄ちゃん・・・・・・」

「・・・・・バカ野郎」
よくわかった。ようするにこいつは、俺が思い描いていた姿とはまったく正反対であり、とても弱い人間だったのだ。
すべてを完璧にこなしているかのように見える桐乃は、精神的に、決して強いやつじゃない。むしろ、本質は、未熟で脆い。
辛いことがあれば、普通に凹む。だけど、それをなんとかこなしてきたのは、責任感と決意でありなにがなんでもやってやる
という気迫だと思っていたのだが、それは俺の大きな勘違いであった。
俺が、こんな何も取り柄もないような俺が、桐乃にとってのパワーの源であり、心の支えになっていたのだ。
俺は、いつかリアに言われた言葉を思い出していた。
「だって、キリノがボロボロになっていたのは、超好きなおにいさんに会えなかったからで、キリノがいきなり早くなったのは、
おにいさんがロスに来たからじゃん」
人一倍、鈍いといわれる俺であったが、さすがにここに至っては、すべてが間違いであったことにようやく気がついたのであった。
たった二人きりの兄弟だっていうのに、どうしてこんなに気持ちがすれ違うんだろうな。

すべてを言い切ったのか、桐乃は、はあはあと息を荒げて、俺の顔を至近距離で睨みつけてきた。力をすべて使い果たしたのか、
今にも気を失ってしまいそうな顔をしている。
「・・・・・桐乃。・・・・・済まなかった。」

こうして、俺と妹の人生最後?の大喧嘩いやカミングアウトは終わった。
決めなければいけない。今度こそ本当に。
その時、頭の中に出てきたのは、もちろん黒猫。
だけではなかった。
我が人生に見てきた人の中で最もかわいいと思っている愛しのラブリーマイエンジェルあやせちゃん。そして、俺の幼馴染であり
俺に最も安らぎを与えてくれる麻奈美
黒猫だけでなくこの2人との関係もはっきりさせなければならないな。
その時の俺は、本当に真剣だった。

まずは、あやせからだな。
そして、俺は、携帯を手に持ち、ラブリーマイエンジェルあやせちゃんへ、俺の最後のメールを出した。






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最終更新:2010年11月24日 23:56
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