火事場の桐乃


今、アタシのベッドの上でアイツが躯を横たえ、アタシを見つめている。
とうとうこの日が来たんだ・・・
目が合ったような気がして、パジャマを纏った体全体が熱くなってくる。
恥ずかしい・・・

そして、ベッドの上のアイツに躯を投げ出した。

ふおおおおお――――――!!


―――あなたのお好きな画像をプリントした抱き枕カバー

こんな製品が出たら買うっきゃないでしょ。
もちろん「好きな画像」はアイツを写したマイシークレット画像。
注文から2週間。とうとうこの日がやってキタ―――!!

早速ベッドになだれ込んで抱きつく。
目の前のアイツの顔が・・・んふふふ、ハァハァ。
でも顔が目の前にあると、とても落ち着かない。
顔から視線を外してアイツの胸元に目をやり、そして顔を埋める。
新品のカバーの匂いしかしないけど最高のシアワセ。
どんなに疲れていようが、どんなに落ち込んでいようが、
アイツと一緒にいる、と思うだけで最高に気分になれる。
 ・・・・・・

カーテンの隙間から朝日が射し込んでいる。
もう朝になっちゃった・・・
目の前にあるアイツの胸元に「おはよう」の挨拶代わりに顔を埋める。
リアルのアイツにはとても表せない、アタシの素直な気持ち。
新品の匂いの代わりに、ちょっぴり違う匂いがした。
もう匂いがしみ込んじゃったかな。
鳥のさえずり、表を走る車の音までが愛おしい。
パタ パタ パタ
階段を上る足音ももちろん愛おしい。
この足音はお母さんだろうか・・・

―――くぁwせdrftgyふじこlp―――!!!


ヤバイ!!
こんなモノに抱きついている姿をお母さんに見られたら、すげーヤバイ!!
どうすればいい!? そうだ! 押し入れ!!
アタシは光の速さで本棚をずらし、開けた押し入れに担いで放り込み隠した。

「桐乃ぉー、朝よー」
「お、お、おはよう!」
「どうしたの? 何か物音がしたようだけど!?」
「いや、なんでもないから」

お母さんは階下に戻った。
間に合った。お母さんには気づかれなかったみたい。
それにしても危なかった。

ドン! ドン!! ドン!!!

―――ッ!?
どこかで何かを叩くような音がした。

「オイ桐乃! ここを開けろ!!」

アイツの声が押し入れの中から聞こえた。
押し入れを開けると、尻餅をついた格好のアイツがエロゲと
アニメDVDのパッケージに埋もれていた。

「こ、ここでアンタ、なにやってんのよ?」
「オマエがいきなり俺を担いでここに放り込んだんだろうが!!」

放り込んだ? アタシが? どゆこと?

「そもそもなんでアタシの部屋にいるのよ? ていうか、抱き枕はドコ?」
「ケータイ小説の取材とか言って、俺に添い寝を強要したんだろ!!
 抱き枕って何だよ? オマエ、夢でも見ていたのか!?」


『火事場の桐乃』【了】





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最終更新:2010年12月25日 10:19
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