あたしは高坂桐乃。成績はいい方だけど自室でとある問題に頭を悩ませていた。
でもそれは数学の計算式でもなければ、英語の和訳でもない。もっと別の、そう。兄貴に関する問題だ。
あたしの兄貴は私より3つ年上の高校生。思春期真っ只中なのか妹のあたしをいやらしい目で見たり、友達の
あやせを口説いたりとやりたい放題の変態シスコン。
なのに―――
「兄貴は何でシスコンなのに、あたしに手を出さないのかな」
そう。これがあたしが悩んでた問題。普通シスコンこの上ない変態なら、隣の部屋で無防備に寝てる妹に夜這いの一つでもかけるよね?
まぁあたしとしてはキモい兄貴にそんな事されたくないから部屋に鍵掛けてないんだけどさ。
あやせが「お兄さんは近親相姦上等の変態なんだから寝る時は絶対部屋に鍵掛けてね」って言ってたけど、全然その兆しがない。
何でこんな事を考えてるのかと言うと、今日はお父さんもお母さんもいないからだ。理由は思いつかなかったけど、そういう事になったの。
だからちょっと期待して鍵どころかドアも全開にしてるのに音沙汰無し。さっき階段を上がる音とドアが閉まる音が聞こえたから部屋にはいるんだろうけど。
「…ん?」
待って。お父さんで思い出したけど、あたしのお父さんは俗に言うツンデレだ。つまりはその息子の兄貴もツンデレって事だよね? まぁ、あたしは違うケド。
自分でシスコンだって認めたのに襲ってこないのは、もしかしてツンデレだから? だから手を出さない?
何か違う気がするけど、学校の問題だって答え書かないと0点だもんね。何かしらの答えを書けば奇跡的に当たるかもしれないし。
だから兄貴が変態シスコンなのに夜這いしてこないのは、ツンデレ思考が邪魔をしてるって事に決定。
素直じゃないんだ。きっと襲いたくて襲いたくてたまんないのに我慢してるんだ。
なーんだ。そんなの気にしないでいいのに。若い内は感情に素直に、でしょ?
あたしはそう思うと、嗅いでいた兄貴のパンツを秘密の場所に隠して素直に兄貴の部屋に向かった。
俺は高坂京介。成績は中の中。普通、平穏をこよなく愛する高校生。そんな俺は部屋でとある問題に頭を悩ませていた。
でもそれは数学の計算式でもなければ、英語の和訳でもない。…まぁ、それも悩みの種ではあるけど。しかし問題はもっと別の、そう。妹に関する問題だ。
俺の妹は俺より3つ下の女子中学生。反抗期真っ只中なのかちょーっと目があったり、妹の友達に挨拶したりしただけで「キモい、ウザい、変態、シスコン」の4連コンボを
お見舞いしてくる。
俺だって一応涙出るんだぜ? 知ってるだろうけど。
「ま、いっか。最近は慣れてきたしさ」
俺はそう言うと部屋の電気を消した。今日は親父とお袋がいない為、超久しぶりにアレをやろうと前々から決めていたのだ。
桐乃は隣の部屋にいるだろうが、あいつも俺が健全な高校生って事分かってっから気を利かせて入ってきたりしねぇよな。
まぁ、いつもの俺ならこんな淡い期待持たないんだけど今日の為に買ったエロ本が俺の思考を麻痺させる。
だってタイトルが「黒髪ロングと黒タイツ」だぜ? 俺はこのエロ本に出会った時運命を感じたね。きっと出版された時から俺のお前は出会う運命だったんだ。
俺はベッドに横たわり、袋からその聖書を取り出すと同時にパンツからリヴァイアサンを曝け出した。おぉ、暴れておる。暴れておるわ。
まぁこの聖書を前にしたらそれも仕方ねぇけどな。待ってなー。今ご飯あげるからねー。
俺はそう思いエロ本に目を落す。そこには黒髪ロングの美女が破れたタイツを強調させるように尻を差し出してるショットがあった。
かぁ~~っ! たまんねぇたまんねぇ! 1ページ目からこのアングルとかフル勃起もいいとこだろ。俺は無我夢中で俺の日本刀を納刀抜刀を繰り返した。
一応言っておくけど俺はタイツ、パンストの類が好きなだけだからな? 破れてたら尚良い。
おぉっと! そんな目で見んな。俺は変態じゃねぇ。ちょっと変わった性癖があるだけだ。
今する話じゃねぇけど俺は妹にエロゲーをやらされてる。でも全部妹物なんでタイツとか穿いてねぇんだわ。たまに穿いてたかと思うとそのゲームの主人公は何を思ったか破かず脱がすし。
「アホかっ!」
俺は思わず叫んだね。お前何でそこで脱がすの? って。破ってなんぼだろって。破ってずらしてドンッ! だろって。それっきりそのゲームはプレイしていない。俺ん中でクソゲー決定したからな。
だから妹がどこまで進んだのか聞いてきても適当にはぐらかすだけだ。
まぁアホなのは主人公じゃなくて作った奴だんだけどな。しかし気付いた。アホは俺も一緒だったって事に。
何故なら―――
「…」
我が家の妹様が俺の隣に仁王立ちしてんだもん。俺は絶句したが手は止められなかった。弄るの久しぶりだったのと現状を把握出来なかったからさ。
部屋には時計が時間を刻む音と俺のロケットランチャーが手入れされている音だけが響いている。
カチカチカチカチ。シュシュシュシュシュッ。
カチカチカチカチ。シュシュシュシュシュッ。
カチカチカチカチ。シュシュシュシュシュッ。
その状態でどれくらい経っただろう。多分3分くらいは経ったと思う。妹は何も言わず無言で俺を見下ろしてるし、俺は俺でどうしたらいいのか分からず自前のトロンボーンをスライドし続けている。
変わったと言えば目線がエロ本から妹の桐乃に移った事くらいだ。これじゃまるで妹でオナってるみたいじゃねぇか。ったく、俺は変態じゃねーってのによ。
冷静だって思われるかもしれないけど、別に全てを諦めた訳じゃない。表情には出さずとも頭の中ではこの状況をどう切り抜けるのか考えてんだぜ?
でも分かるだろ? 超久しぶりの息子との交流に加え、3分以上もノーストップで擦ってたらどうなるのか。何かこう、分かるんだよね。昇ってきた感がさ。
俺はここで初めて人生終わったって思ったよ。妹に見られた上にその妹を見ながら恐らく妹にぶっ掛けるんだから。連続して出すときはそれ程威力はねぇけど、溜めておいた後の一発目って目を見開くくらい飛び出すだろ?
妹が陸上の選手だからわかりやすく言ってやるけど多分高飛びで日本新なんて余裕なんだわ。マジで。この部屋そんな天井高くねぇし、多分妹にかすったのが着弾すんじゃね?
まぁそんな事を思ってたら案の定俺のリボルバーの引き金が引かれたって訳さ。リアルではありえないが俺の脳内ではマジで銃声に聞こえたぜ。撃っちまった。妹撃っちまった。
でも何かがおかしい。どこにも弾痕なんてねぇし、何より達成感が無い。無いついでにさっきまで隣にいた妹の姿が無かった。俺の雄姿に恐れをなして逃げた出したか。ざまーみやがれ。
だが人の気配はする。俺は目線を下ろしていくとそこにはやっぱり人がいた。もちろん妹の桐乃が。
俺のヘビーボウガンを握り絞めて。
「おまっ…! 何してんだよ!」
「うっさい。変態」
これが俺たちの第一声だった。変態っちゃねーだろ。ったく。
しかも折角頂きに向かって登山したってのに山頂に着く一歩手前で足に何かが絡み付いて辿り着けねぇし。
いわゆる寸止めってやつだな。俺もどんなものなのか興味あったが一人でする時はそんな余裕ねぇし? へへっ。いい経験出来たぜ。
「―――なぁぁんて、言うと思ったかぁあぁぁ!!!」
「きゃぁっ!!???」
「テメェ早く離せよ! 痛ぇし!」
「は、はぁ? 妹にぶっ掛けようとする変態シスコンの事なんか知らないし」
「んな事しよーとか思ってねぇよ! たまたま俺の軌道にお前がいただけじゃねぇか!」
「あたしのせいだっての? 変態キモッ」
「変態じゃねぇ! ……あ」
俺のスペースシャトルは離陸に失敗した。燃料は満タンだったが、失敗した。原因はブースターの故障らしい。
「何あんた。こういうのが好きなワケ?」
俺が何とも言えない悲壮感に包まれる中で妹様は俺の聖書を奪いパラパラと捲っている。へっ。まぁおめーみたいなお子ちゃまが読んでも面白くねぇだろうけどな。
「色々言いたい事あるけど、とりあえず今は部屋に戻りません?」
「嫌よ、そんなの。あたし帰ったらあんたまたこれで変な事しだすだろうし」
「なんで!? 何か問題あんの!?」
「だっ、だからさ…その…」
「あぁ? んだよ?」
俺はもうヤケクソになっていた。見られたもんはしょうがねぇし、こいつもそんな気にしてないみたいだしな。
でも俺こんな会話してるけどまだフルチンなんだ。寒ぃ。
「…はっはーん? このシスコン」
「は?」
妹様はモジモジしてたが何か突然にやけ出して俺をシスコン呼ばわりした。
「わかったわよ。穿けばいいでしょ、穿けば」
「…は? さっきから何言って―――」
「ツンデレの変態シスコン兄貴は恥ずかしくってこういう事言えないもんね。気が利く妹に感謝してよ」
「しねぇよ! てか気ぃ利かせてくれんなら部屋から出てってくれよ!」
「わかったわよ。穿いて来いってんでしょ? そんな急かさないでも穿いてきてやるわよ」
「お、おい。その本…」
「え? あぁ。こんなのもういらないっしょ? リアルで見れるんだからさ」
「…へ?」
「じゃあ大人しくしてなさいよね」
そう言って妹様は帰っていった。部屋に残された俺は何と悲しい事か。妹に寸止めされた上にオカズを没収されてんだもん。
しかしすぐさま妹が言ってた事を思い出す。俺まだフルチン。
『リアルで見れるんだからさ』
…ふむ。つまりは妹の桐乃が黒タイツ穿いて来るって?
………。
……。
…。
ねぇええええええええええええええええええええええええよっ!!!????
俺はパンツとズボンを穿き部屋を飛び出したね。おっと。
勘違いされねぇうちに言っとくけど妹の部屋に行くんじゃねぇからな。
鍵が掛けられる…そう。一階のトイレに向かおうとしたのさ。
理由は簡単だ。俺ぁタイツ&パンスト愛好会会長クラスのタイパンフェチだぜ? そんなの穿かれたらいくら妹と言えど月夜の狼のように我を忘れるぜ。
だから逃げた。高校生で社会的に死にたくないし。
「あっ! ちょっと! どこ行くのよ!」
「げっ! 桐…!」
しかし俺が部屋を出た瞬間に桐乃に見つかった。来たって事は黒タイツを穿いて来たんだろう。
俺は湧き上がる欲望を抑えながら必死に目線を外した。見たら負けだ。俺は死ぬ。社会的に死ぬ。だから逃げた。破滅から。
「待ちなさいよ!」
「後で! 事情は説明すっから!」
「うるさい! 何その言い草!」
確か前にもこんな事があったな。沙織から化粧品メーカーの箱に入ったエロ本が送られて来て。それを桐乃が化粧品と勘違いして。
そんで友達がいる部屋に持ち込んで。俺は助けてやったのにお前は馬鹿だから追ってきちゃってさ。
今だってそうだぜ? 俺はお前を助けてやってんだ。
俺がもしタイツを見たら究極体のメタルガルルモンになるっつーのにお前は馬鹿だから追ってきてさ。
俺は見た事ないけど映画で「あらしのよるに」とか「おまえうまそうだな」ってあるだろ? 肉食獣と草食獣が仲良くなるやつ。最初は仲いいけど成長したら本能が出てくんだぜ?
俺は究極体だっつーの。これ以上成長しねーっての。おまえなんか一瞬で食っちまうぞ。「おまえうまそうだな」って言ってさ。
そんなこんなで一階のトイレに飛び込んだが、ドアが閉められねぇ。妹の奴が反対側から引っ張ってやがんだ。
しかも女のくせしてなんて力だ。こっちも必死になるよォォォォォ!!!
でも負けた。敗因は俺の手榴弾を扱ってた手でドアノブを引いていた事。ようは滑ったんだな。俺のサテライトで。あぁ、サテライトってのは二軍の補欠って意味だ。俺今うまい事言った!
しかし急にドアが軽くなったもんだから桐乃も後に吹っ飛んじまった。
俺はドアの隙間からその様子が見えて、何を思ったかあの時と同じように「危ぇっ!」って言って妹を気遣い手を伸ばしたわけよ。
さらに言えば結果もあの時と一緒だったんだけど。
「…」
今、目の前には服が剥がれた妹がいる。
正に「これ何てエロゲー?」状態。妹は顔を真っ赤にして「なっ、ななっ…」って言ってるし。
しかしあの時と違う所が一箇所だけあった。それは桐乃の下半身。スカートを穿いてるが、神の力で捲り上げられている。
だがパンツは見えない。いや見える。見えるが全部見えない。
何が言いたいかと言うと黒のタイツ穿いてたんだわ。しかもこれも神の力なのかそれとも転んだ衝撃なのか知らねぇけど、黄金比の確率で破けてパンツ見えてるし。
あーあ。知ーらね。俺もう知ーらね。お前が悪いんだからね?
部屋で見ただろ俺のエロ本。それに合わせちゃった日にはどうなるか?
お前は変態だのシスコンだの言ってくるだろーがそんな罵声はもう豆鉄砲だぜ? こうなった俺を止められるのは親父のグーパンチかラブリーマイエンジェルあやせたんのビンタしかねぇからな。
お前の柔な蹴りやビンタくらいじゃ火に油注ぐようなもんだ。
おぉっと。意識が薄れてきやがった。じゃあな、皆。俺は人間を辞める。
だから俺は狼のように吼えてやったのさ。
「近親相姦上等ッ! おまえうまそうだなッ!」
ってな。
最終更新:2011年01月23日 22:58