Encounter

「んじゃいってきます」

 玄関のドアが閉まった音を確認したあたしはそっと自分の部屋を出た。
アイツは試験前だからって地味子の家で勉強するらしい。
馬鹿みたい。試験勉強くらい一人ですればいいのに。
それに妙にうれしそうに出かけてるような感じがしてなんだがムカツク。


――例えば、たとえば私たちの年がそんなに離れて無くて双子だったりとかしたら……
あたしはアイツと一緒に勉強したりしたんだろうか?
……なんてね、やりたくないけどね。アイツ要領悪そうだもん。


廊下をそろりと歩きアイツの部屋の前まで移動する。
念のため周りを確認。お母さんは出かけていて家にいないはず。
アイツもすぐには帰ってこない。
あたしはゆっくりとドアノブを回した。


まずはアイツの性癖をチェック。
妹物が増えてないか期待するけど、相変わらず表紙には眼鏡をかけた女ばっかり。
チッ、妹物にしろよ。
……こんな話どこかで読んだ気がする。
あれだけ妹ゲーをやらせてるのにどうしてこう趣向が変わらないんだろ?
そろそろ手を出してきてもいいハズなんだけどな。


性癖チェックを早々に終わらせてあたしはアイツのベッドに横たわった
枕に顔を埋めてみる。アイツの匂いがしする。
あたしはこの匂いが大好きだった。
あたしの心を包んで温めてくれるような、そんな優しい匂い。
兄妹は本能的に匂いで互いを遠ざけてるっていうけど間違いとだおもう。
きっと世の”お兄ちゃん”が不甲斐ないからだ。
それはそうだろう。誰だってダサくて情けない男を好きになったりしない。
その点ではアイツほど”お兄ちゃん”なお兄ちゃんは他にはいないと思う。きっとそうだ。
だって嫌がったり文句言ったりはするけど、あたしが本当に助けて欲しいときは絶対に助けてくれる。








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最終更新:2009年08月27日 13:26
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