逃げ場にならない一人暮らし(4)


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 まあ、その後もみなさんのお世話になりながら、模試までに間、ほぼ誰ともセックスもせずに、清い毎日で
しっかりと勉強をして、無事、A判定をゲットだぜ!

 この、印象深くて奇妙な毎日ともおさらばだよ。押し入れから畳んだ段ボールを出して、組み立てていって、
荷物を詰め込んでいく。
 これで、終わるんだ…と思うと何だか寂しくもなるなあと感慨に浸っていると携帯が鳴ったので取ると
ディスプレイには桐乃と出てる。

「何か、久しぶりだな。元気か?桐乃」
「それはこっちのセリフよ。それより、A判定記念パーティをそっちでするから、
そこで待ってなさいよ?」
「ああ、みんなでか?」
「そうよ。じゃあね!」

 引越祝いと同じような騒ぎになるのかねえと思いながら、段ボールに詰める作業を続け、あらかた終わった頃、
チャイムが鳴ったのでドアを開けたら桐乃だ。

「なんだ、疲れた顔しているかと思ったら元気そうじゃない」
「俺は、A判定をやり遂げた男だからな、ふん!」
「そうね。さあ、大家さんに話を付けてあるから、庭でパーティをするの。早く来なさい」
「ああ、今、行くよ」

 桐乃の後について、階段を降りていくとアパートの庭に簡易テーブルにクロスが掛けられ、和風洋風の料理や
和菓子とか誰が何を持ってきたのか一目瞭然という感じの皿が所狭しと並んでいた。

 みんなそろってるな。一同に揃うと感慨深いよ、俺の未来の嫁たち。

 ジュースの入ったコップを渡されて桐乃の音頭で、
「では、京介のA判定とアパート追い出し記念で、かんぱーい!」
「「「「かんぱーい」」」」

 大変、晴れ晴れとした気分だ。ジュースがやけにうまい。

「それで、京介。誰に決めたの?」
「えっ?! 誰にって…。」

「あんた、2ヶ月近くこんなに可愛い女の子たちに毎日お世話されて、何とも思わなかったの? せっかく
お膳立てしてあげたのに。ひょっとしてホモ?」
「なわけあるかっ! その、何だな、誰にと言うとだな」

 オイオイ、みんなきらきらした目で俺を見つめてるよ。

「正直、魅力的すぎて俺にはまだ、決められないよ。というか後半、勉強に集中してて、色恋なんて
頭の片隅にも、無かったぜ…。」

「お兄さんのことだからそんな感じだと思ってましたけど、かまいませんし」

「京介、誤魔化さなくてもいいのよ。堂々と契約について説明なさい」

「私のパートナーは、京介さんですから」

「きょうちゃん、まだ、あたしが恋人だってみんなに言ってなかったの?」

 みなさん、すいませんでしたと俺は、雰囲気的に土下座した。

「あはは、何、土下座してんのよ。 やっぱりね。あたしはさ、京介の全てを見てきてるわけで、
最後は…ちょっと言えないことまで飽きるまで知ってしまったし」
「お、オイ、桐乃、何を言い出してるんだ?」

 俺は、震えが来ていた。

「だから、はっきりした。あたしに必要な男は、"京介"じゃ無いの。あんたには言葉で言い表せない
くらい感謝してるけど、兄妹であっても恋愛対象じゃ無いわ」

 庭は、しーんとしている。

「この2ヶ月の間、考えてさ、そしてもう、あたしは行動に出ているの。自分にふさわしい男を探している。
あ、御鏡なんて変態は眼中に無いからね?」

「やっぱりね、きょうちゃん、この間、言ったこと、当たってたでしょ?」
麻奈美、さすがだぜ。うすうす感づいていたんだな」
「そう。でも、桐乃ちゃんのじゃましちゃ悪いからはっきり教えなかったよ」
「ありがとう、麻奈美さん。まあ、そういうわけよ。あたしは見限ったけど、あなたたちは、
どうなの?」

「わたしもお兄さんも桐乃みたいにスーパーマンじゃありませんから」

「あんたみたいなビッチには京介の肝心なところが見えてないみたいね。哀れだわ」

「きりりん氏、わたしはあなたの知らない京介さんを知ってますよ」

「きょうちゃん、あとでこの2ヶ月の間のこと、全部教えてね?絶対だから」
 ふらふらと立ち上がり、一時はどうなるかと思ったが、何だよ、俺は生きてていいの?と周りを見回したら、
あやせも瑠璃も沙織も麻奈美もやさしい表情だ。

「今までありがとう、京介!」
 桐乃は、唇にキスしてきた。俺と桐乃の目になぜか涙が流れた。
 これで、正常に戻るんだよな。

「はい、これであたしの言いたいことはおしまい! さあ、飲み食いしながらあんたの2ヶ月間を根掘り葉掘り
聞こうじゃ無いの!」

 まーこの後は大変な騒ぎとなり、ご近所から怒られたりしたが誠に楽しい宴となり、
宴のたけなわな頃、親父の軽トラックが来て、親父に彼女たちの関係を聞かれ、また、
お父様にご挨拶を!とか冷や汗でまくりで、俺の2ヶ月間の刑は、終わったのだった。

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おしまい。
おまけとして、このページの最後に添付ファイルとして、縦書きバージョンのpdfを付けましたので本に近い感じで読みたい方は、どうぞ。

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最終更新:2012年04月20日 20:17
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