【登場人物の立ち位置まとめ】
- 高坂京介 大学生 内定済み 養子
- 高坂桐乃 大学生
- 高坂大介 警察官
- 高坂佳乃 主婦
- 五更瑠璃 SE
- 槇島沙織 女子大生
- 田村麻奈実 大学生
- 赤城浩平 大学生
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今俺は実家の高坂家の玄関門の前に居る。…前に来たのはちょっと前だから久しぶりってわけでもないか。そんなことを考えながらチャイムを指で押す。
ピンポーン!
『はーい!』
扉の奥から声が聞こえる。お袋だ。
ガチャ
「あら京介、ずいぶん早かったじゃない。」
「はは、まあな。沙織達が来る前に部屋の片付けを手伝おうと思ってさ。」
「あらそう。でももう片付けなら終わっちゃったわ。それより京介…。
「何?」
お袋が少し真剣な口調で、
「わざわざチャイムなんて鳴らさずに鍵使えばいいじゃない。」
「そりゃまあ…そうだけどよ…。」
俺が養子だから気を使っていると、気遣ってくれてんのか。
息子に対する優しさに、感動しかけたその時…。
「いまちょうどお気に入りのドラマの再放送の録画見ていたところなのに…。」
いやいやそういう理由かよ!
そんなのアリか、という俺の心の中のツッコミなど全く伝わっていないようで、お袋はそそくさと玄関に上がる。
すると親父も出てきた。
「おう京介。今来たか。」
「ただいま帰りました。親父も元気そうだな。」
「何を言っている。この前会ったばかりだろうが。」
「まあそうだけどよ。」
「あ、それと。京介。」
お袋が部屋に戻らずにひょいっと話を挟んできた。
「あんた就職して警察学校出てもまだ一人暮らしするの?」
「いや…この先どうするかはまだ決めてないけど。」
勤務地にもよるしな。まだ未定だ。
するとお袋はこういった。
「そう、だったらまたウチに戻ってきなさい。」
「え?」
「前に寝る前にお父さんとも話したんだけど、やっぱりあんた実家に戻ってきなさい。それで実家から通勤すればいいじゃない。」
「え…いいの?」
「よくないわけないだろう。就職したての時はなにかと苦しいときがある。すこしでもいい、ウチにいなさい。」
「お父さんのお弁当もお夕飯も一緒に作れるから楽だわ~♪それにあんたずいぶん料理が上手になったっていうじゃない。桐乃によく聞いてたのよ。当番制にしたらお母さん助かるわあ~。」
「それが本音かよ…。」
「やーね、それ『も』本音よ。」
「京介が就職したてならあまり無理は…。」
「なあに?じゃああたしが作れないときはいつもどおり桐乃に変わってもらってもいいの?」
「そ、それは…。」
苦虫を噛み潰したような顔をする親父。娘の桐乃のことがいと愛しな親父だから差し出された料理は絶対に断れない。
…そういえば、前に教えてもらったことがある。舌が味を認識する前に飲み込むんだ、と。
極道顔した親父にあるまじき小賢しい小技(?)を使っても、なお桐乃の料理は壊滅的にまずいらしく、涙を流しながら飲み込んでいた。
…愛と苦渋に溢れた笑顔で。
しゅんとする親父をよそにお袋が、
「そういうこと。それに…桐乃のこともあるし、お兄ちゃんにやっぱり帰ってきて欲しいわ。」
「そう…だよな。」
桐乃の記憶はすぐに戻るのか、この先まだまだかかるのか。全く解らない。
今現在でさえ元通りのあいつに戻る兆候ははしりさえない。
そうだよな…今借りてるアパートも学生用だし、次わざわざ見つけてまで一人暮らしする必要もないしな…。
「わかったよ、お袋、親父。また一緒に暮らそう。」
「あらまあ、ふふふ…。やっぱりお兄ちゃんね。」
「ばっ、そんなんじゃねえよ。いや、そうだけどよ…。」
「とりあえず、こんなところで立ち話もなんだ。さっさと入れ。槇島さんと五更さんはまだだろう?」
「ああ。来る前に連絡くれるって。それと…桐乃は…?自分の部屋か?」
黒髪に戻った俺の妹の美少女。いつもならぎこちなくも後ろから顔だけは見せるのに…。
「ええ。部屋よ。後で行ってあげて。」
「わかった。それとお袋…。」
「なあに?」
「桐乃に料理、教えたのかな?あと誰か教えたとかさ…。」
俺はかねてよりの疑問を口にした。
「あの子ったらいくら教えても一向に上達しないからね~。教えるのやめちゃったわ。」
「まあまあ。夫婦のどちらかが出来ればいいんだ。京介に任せておけばいいだろう。」
「それもそうね。なに?また変な料理出されたの?」
「いや…そういうわけじゃないんだけど…。」
親父達、桐乃の料理をあの事故以来食べてないのか。
「まあいいや。今から桐乃の部屋行ってくるわ。」
俺は二階にあがるため、階段に足をかけた。
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「桐乃?いるか?」
シーン
あれ?返事がないぞ?
「桐乃?開けるぞ?」
ガチャ
「って、ええ?」
扉を開けたら、壁が出現していた。
「桐乃?」
返事がない。こないだの事もある。まさかまた…。
「桐乃!?おい、桐乃!?」
ドンドンドン!と出現した本棚の壁を叩く。
すると奥から、
「ふぇ?きょ、京介さん?」
「桐乃?大丈夫か!?」
「ふぇ…?あれ、ここは…。え!?あ、あの!その…!?ちょ、ちょっと待ってくださ~い!」
桐乃が叫ぶように声を返してきた。続いて急いでなにか物を放り込むような音が聞こえる。
それからしばらくして…。
ズズズズズ…。
扉の前で壁になっていた本棚を元に戻す。
「お、お待たせしました。」
かいた冷や汗を左手で拭いつつ、我が妹が取り繕うような笑顔を向けてきた。
「ああ。今帰ったよ。」
「く、黒猫さんと沙織さんはまだ…ですよね?」
「ああ。つってもあいつらのことだ、もう連絡が来ると思うけどよ。」
「そ、そですか。」
「ところで桐乃。」
「は、はい!」
びくっ、と反応する妹に声をかけた。
「見たのか?」
「え、あ、あの、その。」
ひとさし指を交互に当ててもじもじする。
「…やっぱり見たのか…。」
「は、はい…。」
はあ~。遅かったか…。
「凄かったろ?おまえのオタクグッズ…。」
「はい…。」
どうも桐乃は情報を処理しきれていないらしい。
無理もねえ…。俺だって同じ立場におかれたらと思うとぞっとする。あの暗黒物質(ダークマター)の品々…。考えるだに恐ろしいわ。
ふう…。
「桐乃。」
「は、はい。」
「おまえ、よくあの隠し場所が見つけられたな。誰かに聞いたのか?」
「い、いいえ…。」
「じゃあ、誰に?」
桐乃はきゅっと口もとを引き締めて、
「あ、『あたし』のSNSサイトにあたしだけが見れるページがあって…。そこに色んなこと書いてました…。」
え、まじで?
こいつ…わりと丁寧だったんだな。そんなことまで…。
「はい。最初は自分のことを思い出そうと昔の日記を見てたんですけど…。そのページに「あたしのお宝♪」って書いてあったから興味が出ちゃって…いてもたってもいられなく。」
「それで、か…。」
「はい…。」
なんというトラップ。心の準備も何もないまま「お宝♪」を探した桐乃の心を狙い打つかのような…。
しかし思い立ったら即行動ってのがいかにも桐乃らしいな。
そんな俺の微笑む姿をみて不思議に思ったのか、桐乃が、
「ど、どうかしたんですか?」
「いや、なんでもねえよ。沙織達が来るまでお袋達と一緒に飲み物でも飲んで待ってようぜ。」
「は、はい!」
桐乃はうれしそうな笑顔を見せる。
あのアパートでの一件以来、俺に子犬のように懐いてくる桐乃。
…麻奈実達が来た時の桐乃は以前の桐乃のようにぎくしゃくしたものだった。それにすこし冷たくなった感じもしたけど…。
「えへへ…。」
この様子を見ると、どうやら俺の杞憂、かもな。
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「こんにちわ。お父様、お母様。本日はよろしくお願いしますわ。」
「これはこれは…槇島さん、五更さん。この度は京介と桐乃がご迷惑をかけて…。」
時間通りに訪れた瑠璃と沙織を家族4人で出迎える。
頭を下げる親父とお袋に瑠璃と沙織が慌てて止めにかかる。
「あ、頭を上げてください。私達こそ大したこともできずに…。」
瑠璃が困惑した様子で声をかけた。
「とんでもない!此度のことでどれだけお二方に助けられたか…。あらためてお礼を申し上げたい。本当に、ありがとう。」
瑠璃と沙織は桐乃の入院中よく見舞いに訪れてくれて、特に瑠璃は仕事が忙しい中、病院が近いという理由で頻繁に世話を焼いてくれた。
二人とも記憶喪失のことを勉強してくれたり、沙織は沙織で知り合いの有名な先生にコンタクトを取ってくれたりもした。
沙織や瑠璃だけじゃない。皆だ。皆に今回のことでたくさんのことをしてもらった。いや、してもらっている。
このことに親父とお袋は、きちんともう一度お礼をしたいと言っていた。
「あの…これ…先ほど瑠璃ちゃんと道中買ってきたものです。よろしければ…。」
「まあまあまあ!どうもありがとう。あら!これってあの有名な…。注文まで時間がかかったでしょう?」
笑顔で恐縮するお袋に沙織は笑顔で、
「いえいえ。出来立てですので是非、皆さんでお召し上がり下さい。」
「ありがたくいただきます。こんなところでいつまでもなんですから、どうぞあがってくださいな。」
お袋が家の中へ手招きする。
「ではお邪魔いたします。」
「お邪魔しますわ。」
「ま、今日はゆっくりしてってくれよ。」
スタスタスタスタ…。
階段を上り桐乃の部屋に4人で入る。
今日は久方ぶりの「オタクっ娘あつまれ~」の集まりだ。
瑠璃は寒暖系のシックな服装で、沙織は仕立てのいいお嬢様スタイルで。
4年前のスタイルのゴシックロリータの格好や野暮ったいオタクファッションはしていない。
…まあそれだけ時がたったということか。
「どう、桐乃?その後は。何か変わったことがあったかしら?」
「と、特にはなにも…。」
「う~ん、きりりん氏は相変わらずめんこいですなあ~。」
この会だけ「ござる」になる沙織。
しかし…、よく見ると圧巻だな…。
元勝ち気系・現小動物系美少女の桐乃。
桐乃とはベクトルが違うクール美人ともいうべき瑠璃。
それと今まで出会ってきたどんな女性よりも美しいと感じた沙織。
…この家に全く合ってねえ…ミスマッチといえばミスマッチだ。こんな光景、モデルの現場でも滅多にねえんじゃねえか?
でも、第三者が見れば異様っちゃ異様だが…こいつらにこれほど似合う光景もないよな、と思う。
「今日は何するよ?久しぶりにシスカリプスの最新作でもするか?」
「あら?あなたはそれでいいの?私の一人勝ちが目に浮かぶのだけど。」
そりゃおまえの独壇場だろうよ。ちょっとやそっとであの腕前が衰えるとは思えない。
「桐乃?あなたはそれでいいかしら?ゲームのやり方、覚えてる?」
「え、あの…ごめんなさい。」
まあ多分覚えてないとは思ってたがよ。何言ってんだ、俺。
ポリポリと頭をかく俺に気をつかったのか、沙織が、
「そうだ!だったらよく皆でしてた妹人生ゲームでもしませんか?」
「妹…人生ゲーム?」
きょとんとする桐乃に瑠璃が、
「ええ…レトロなボードゲームでね…。先に妹と結婚して子供産んだら勝ち、っていうゲーム。…貴女が大好きなゲームだったわ。」
「へええ…。」
出されたボード版を見ながら興味津々な顔を見せる桐乃。
そんな桐乃を見ながら俺は沙織に耳打ちをする。
「たしかこれ作った会社って…。」
「ええ…とっくに倒産されてまする。」
まあこんだけ公序良俗(?)に反するようなゲームだ。半端に社会の耳目を集めて電話で袋叩きに合っている光景が目に浮かぶ。
記憶を失っていようがいまいがこんなこと、あんだけ楽しんでる当の本人(桐乃)に言えないよな…。
「まあこれだと桐乃も楽しめるしな…。よし、それじゃはじめるか!」
「お手柔らかにでござるよ~。」
「今度こそ婚姻届提出までこぎつけてみせるわ。」
そうして俺達の時間がすぎていくーーー。
最終更新:2012年10月21日 22:40