どういう風の吹き回し 02


 変態でもいい。
 俺は自分で自分が抑えられなくなっていた。

「今すぐ死んで人生やり直して来……ん?…んん-っ!」
 俺はうるさい桐乃の口を、自分の唇で塞いでいた。
 桐乃は目を見開いたまま、しばらく、僅か5センチの距離で俺をじっ
と見ていたが、ふいに体勢を変えて逃げようとする。
「んー! んんー! んんーっ!」
 だが時既に遅し。
 俺はケータイを握ったほうの手を掴むと、桐乃を身体ごとソファの背
もたれに押し付けた。

「んんっ! んむぅーっ!」
 桐乃は口を塞がれ、言葉にならない声で喚く。
 掴まれた手を必死になって動かすが、所詮、女の力なんて高が知
れている。
 重心は背中にあるし、桐乃は逆の手も自分の体で押し潰してしまっ
ているから、自由が利くのは首から上だけ。
 それさえ逃げた先で俺がキスで捕まえ、桐乃はされるがままになっ
た。

「んん…んまぁ! んみゅぅっ! んみぃぅぅぅっ!」
 桐乃の口は呼吸と粘膜が擦れるのとで、聞いたことの無い音を立て
る。

「ぷはぁっ!…あ…あんた…何やって」
 桐乃は口を解放されると、震える声で言った。
 俺はそれに返事をするのではなく、今度は首筋に吸い付いて応えた。
「くぅぅっ! ひっぃっく」
 そのまま空いた手を使って、身体中をまさぐる。
「はわ?…はわわわっ?」
 自分の手の平の中に桐乃の肉という肉を収めていく。
 妹の尻。
 妹のふともも。
 妹のわき腹。
 妹の胸。
 桐乃の身体はどこもかしこも柔らかく、そしてハリがあった。

「ちょ…お…お父さんたちが帰ってきたら…どうすんの」
 桐乃の抗議の声に俺は耳を貸さず、愛撫を続けた。
 狙いを衣服の中に定め、エプロンの脇から手を差し入れていく。

「だ…だめっ…そこ!」
 俺はエプロン、タンクトップと次々に突破し、ノーブラの胸を乱暴に弄
った。
「やだ…ほんとに…ぃや」
 指先が乳首を探り当てると、そこを重点的に攻め立てた。
 こいつキスだけでこんなにしやがったのか?
 なんつーJCだ。
 お前の乳首、もうコリっコリじゃねーか!

「こ…こんなの!…よくっ!…ない!」
 桐乃は苦しそうに言うが、そんなの言われるまでもなかった。
 俺は自分がいま犯している罪の重さを十分に理解していた。
 だからこいつがいま電話中だってことも、当然、忘れちゃいなかった。
 俺は無言でケータイを耳に当てるポーズをする。
 「あやせのことはいいのか?」という意味を込めたんだ。
 すると桐乃は弾かれたように身体を震わせ、通話を再開した。

「う…ううん! なんでもない!…ちょっと足ぶつけちゃっただけ」
 おいおい。
 お前言い訳ヘタかよ。
 テーブルに足ぶつけてんーなエロい声出すやつがいるかっつーの。

 ったく、中学生のくせに色気づきやがって。
 相手は彼氏ですらないんだぞ…?
 おまけに電話の相手にエロボイスなんか聞かれやがってこのクソガ
キが…。
 いっつもキモイキモイ言ってる兄貴にエロいことされて出ちまったエロ
ボイスを大の親友に聞かれてんだぞ? このクソアマが!

 そう。
 お前が悪いんだ!
 お前がんーなエロいカッコしてるのが悪い!
 クソっ!…このっ!…こいつっ!…こいつめっ!…これはぜんぶっ!
…お前のせいだっ!

 俺は怒りとない交ぜになった甘い感情を指先に込めると、桐乃の
乳首を執拗に攻め立てた。

「くぅっ…しっ!…心配しない…っで!…ほんとにっ…だいっ…だいっ
…だいじょう…ぶ…だから」
 桐乃は細かく震える身体に嘘をつこうとして、冷静なトーンを保って
話していたが、滑舌は裏切れない。
 おまけに表情は甘く蕩けていやがる。
 俺はそれを見て、自分の中に嗜虐心が芽生えるのを感じた。

 思えばここ1年、こいつにいいように使われ、罵られてきたせいで感覚
が麻痺しちまっていたが、この女ときたら兄に対する態度が全然なっち
ゃいないんだった。

 所詮、初潮過ぎたメスガキ風情が裸みてーなカッコで実兄の前うろつ
きやがって、今日という今日は思い知らせてやっかんなっ!

「ひぃぃっっ!」
 俺は手首をスナップさせた。
 桐乃のコリ勃った乳首を嫌というほどねじってやったんだ。
 すると桐乃は脱力して俺にしなだれかかってくる。
 続けざま逆方向に、そしてまた逆方向にと、俺はねじりを加えていく。
「くっふぅ!…ひぃんっ!…ひゃぁっ!…くぅぅぅ!」
 桐乃は乳首への刺激に合わせて体を動かす。

 こいつは気づいていないようだが、俺の股間の上にはこいつの肘が
乗っていて、動くたびにその先端が俺のアレを刺激していた。
 おかげで俺のズボンの前はパンパンになる。
 そのまま2~3分も続けたら、もう限界だった。
 俺は桐乃がよだれを垂らし始めたのを見て、立ち上がった。

「ふぇ?」
 桐乃は重心を失ってソファに倒れこむと、とろんとした目で俺を見上
げた。
 俺はジッパーを下ろすと、その奥から放り出した急角度のアレでも
って、その視線を遮ってやる。

「あわ…あわわわわ」
 みるみるうちに桐乃の焦点が合っていく。
 桐乃はそのまま口をぱくぱくさせてソファの上で後ずさった。
 もちろん背もたれに阻まれるから、ほとんど動けない。
 俺はそのままソファに片膝をつくと、桐乃の体をひっくり返す。

「ひゃぁっ!」
 桐乃がこちらにケツを向ける。
 俺は強引にショートパンツを引き下ろしながら、空いた手で自分の
ズボンも下ろしていった。
 桐乃の下着はあの日と同じだった。
 俺はその股の部分に染みが出来てるのを見逃さなかった。

 こいつ…「エロゲーだけど18禁要素なんかどうでもいい」とか、「妹
のカワイさを愛でるためのものなんだ」とか言ってやがったのは、あり
ゃ嘘だったんだな。
 でなきゃどうしてこんなに濡れる?
 俺とこういうことをすんの、やっぱ想像してたんだろ?
 だって、そうやって普段からオナニーばっかしてなかったら、どうして
こんなになるっつーんだよ!!

「ち…ちがっ!…これは」
 俺が凝視してるのに気づいたんだろう。
 桐乃は慌てて股間を押さえると体を起こそうとした。
 だがヒザ立ちになったところで俺が捕まえる。
 俺はそのまま片手で桐乃をホールドしつつ、もう片方の手を添えな
がら、例のアレをあるべき場所へと誘導していく。

「やっ!…マジ…シャレになんないから!」
 桐乃は抵抗するが、その力は弱い。
 下着を横にズラすと指先に粘液の感触があった。
 密着した体勢のため肝心な部分は見えなかったが、それで大体の
感覚は掴めた。
 俺はそのまま一番粘度の高い場所へモノを宛がうと、そのまま尻肉
のあいだへ埋めていく。

「ひぃっ!」
 桐乃の全身が硬直する。

 もう抵抗は止んでいた。
 俺のブツの先端が膣内(ナカ)へと入り込むと、桐乃はぐっと背中を反
らせ、その深度が増すたびに角度を変えていく。
「あぁぁ…痛い…痛いぃぃ!」
 嘘つけ、このメス犬が!
 こんなに濡れてりゃ大して痛かねーだろが!
「あぁ…ああああぁ…あぁぁああぁぁあぁぁあぁぁぁ」
 ずっぽし銜え込むまで、桐乃は声を漏らし続けた。
 さすがリアルJCのマ○コだけあってキツキツだ。

 桐乃の漏れる声だって、まるで俺のブツが注射器の(ピストンの)
要領で体内の空気を外へ押し出しているみたいだった。

 桐乃はその声を押さえ込もうとして、口に手を当てている。
 逆の方の手はというと、すっかり体側に垂れ下げられていて、俺は
それをビシッと叩いた。
 桐乃は慌ててケータイを耳に当てる。

「あ…あや…あや…あや…」
 桐乃の呂律は回っていない。
 おい、どうしたよ。
 まさかまた机の角に小指をぶつけましたって、言い訳すんのか?
 今回はさすがに信じてもらえないかもな。
 へへっ…。
 俺は内心でほくそ笑みながら、ゆっくりと腰を動かしていく。

「あぁぁ…だっ…だめ…うご…く…な」
 情けねー妹だぜ。
 大の親友と電話しながら兄貴にハメられて、そんで正体を失っちま
うなんてよ。
 つーかあやせのやつだって、こんな事ゆめゆめ思ってねーだろうな。
 電話の向こうで親友が兄貴とセックスしてるなんてよ。

 俺はふと思ったが、これまで何度かあやせと電話してきたとき、あい
つもこうやって誰かとセックスしてたりしてたら興奮するよなぁ。
 だってあやせぐれー可愛きゃ彼氏の1人2人いたっておかしくねーし。
 桐乃のことで俺に相談の電話をかけてるあやせに対し、待ちきれな
くなった彼氏が背後から近づいて、己のいきり立ったブツを…。

 あー! くそ!
 んーなこと考えてたらマジ興奮してきたぞ!
 つーかそれ、今俺がやってることじゃねーか!
 桐乃(こいつ)が今、実の兄にされちまってることじゃねーかよ!
 ちっくしょう!
 妹のマブダチTEL中ラブマ○コ、気持ち良すぎるぜ!

 俺は桐乃の両脇に腕を通し、羽交い絞めにする。
 そのまま腰を振っていると、桐乃はどんどん反り返っていき、いま
やすっかり後頭部を俺の肩に乗せていて、ケータイを当てていない方
の耳が俺の口元に来ていた。

 俺はそこへハァハァと重低音の吐息を聞かせてやっていると、桐乃
は次第に正体を取り戻してくる。

「ば…ばかぁ…ヘンなこえ…聞かせるなぁ」
 そう言って耳を懸命に遠ざけようとする。
 だが羽交い絞めにされているので動けないので、ギュッと目を閉じ、
歯を食いしばったまま耐えるしかない。
「あぁ!…いや!…あぁあぁ!…ゃあぁぁ!」
 桐乃は膣内(ハラ)を突かれながら、されるがままだった。
 俺の肩を枕に天井を仰いだまま、必死で声を抑えようとしている。
 だが顔の前に持ってきた手も、震えてしまい役に立たない。

「ゃ…だ…きゅんきゅん…しちゃぅ…」
 ことば通り、桐乃が締め付けを強くするのを感じた。
 俺は羽交い絞めを解くと、再度、乳首を攻め立てるため、桐乃のエプ
ロンに手を差し入れた。
「ぃやぁ…らっ…らめ…らっ…め…」
 桐乃はあごをだらりと垂らしたまま、赤ちゃんのように喘ぐ。
 もう体は開放されているのに、逃げようともしない。
 桐乃は乳首とアソコというわずか2点によって、完全に俺の制御下に
置かれていた。

「きゃぁっ!」
 俺は体勢を変え、桐乃を背もたれへ突き飛ばした。
 そこへうつ伏せにさせた状態のまま、バックで突きまくる。

「あっ! あっ! あっ! あっ! あっ!」
 桐乃の声が合わさって、ソファがガコンガコンと揺れる。
 さらにそこへ俺の体が桐乃のケツ、それに太ももへとぶつかるパンパ
ンいう音が重なって、複雑なリズムが出来上がっていく。
「あっ! やっ! らっ! めっ! らっ! めっ! なっ! のっ!」
 桐乃はケータイを律儀に耳に当てたまま喘いだ。
 上ずった声を惜しげもなく発していて、もはや電話の向こうにあやせ
にカンペキ聞かれちまってるはずだった。

 俺は兄として、本当なら今すぐやめさせなきゃならなかったが、もう
それどころじゃない。
 もはや腰の動きは鬼畜の所業と化していて、俺には到底、御せる
シロモノじゃなくなっていた。

 だって桐乃のやつ、こんなになってるんだぞ?
 口ではああ言いながら、抵抗なんてまったくしねーじゃねーか!
 やっぱ俺のこと思ってオナニーしてたんだな!
 このアマ! 兄貴のこと思ってなんてことしてやがる!
 こいつめ! 俺は実の兄貴なんだぞ!?

 そうやって頭の中でまで桐乃を犯しながら、俺は終わりが近いことを
感じていた。
 俺たちは兄妹でセックスをしている。
 そんなアブノーマルなことをしながら、それは体だけのことであり、頭
の片隅では「さすがに膣内(ナカ)では出せないな」と分かっていた。

 だがゴムなんて付けていなかったし、外に出そうにもソファは汚せな
い。
 服に出したら、後で桐乃にめっちゃボコられる。
 その他はというとカーペットしかないし…。
 AVを思い出して飲ませようかとも思ったが、ブツを噛み切られたらと
恐ろしくなる。
 俺はそれで訳がわからなくなって、とりあえずフローリングに出すこと
にした。
 そこまで移動するため、桐乃を立たせる。

「ふぇっ?…ら…らり?」
 桐乃は呂律の回らない声で言った。
 「な…なに?」と言ったつもりなのだろう。
 俺は桐乃を背中から羽交い絞めにし、ケツに下腹部を叩きつけなが
ら歩かせた。
「やぁっ!…はっ…はず…はずかしい!」
 誰も見てねーよ!
 んーなことより、膣内(ナカ)で出されてーのか!?
 俺は快感と理性とで頭ん中でごっちゃ混ぜにしながら、懸命に歩を
進めていく。

 桐乃も突かれるたびにバランスを崩し、前に倒れそうになりながら
踏ん張って、それでもその度に頭がぐらんぐらんと揺れて、あえぎ声を
俺の耳元で撒き散らす。
 俺はその声にブツをビクビクと反応させ、それがまた桐乃の反応を
生む。

 部屋の中に喘ぎ声と足音と、2人の吐息と腰を打つ音とが響く。

「んあっ!…んん!…んあぁぁっ!」
 ようやくキッチンにたどり着くと、俺は台の上に手をつかせ、後は乱暴
に突きまくった。
「いっ! やっ! あっ! あ! あっ! あっ! あっ!」
 桐乃が髪を振り乱しながらリズミカルに喘ぐ。
 桐乃は足腰が立たないのを必死で腕で支え、重力に腰をたゆませな
がら俺のピストンに耐えている。
 俺はそんな妹を見て、中出ししたい衝動に胸を引き裂かれそうになっ
た。
 だが外に出さなくてはという理性が働き、何度もブツを抜こうとするが、
その度に甘い刺激が脳内へと走り、また腰を振ってしまう。
 そうやって何度も葛藤しながら、ようやくの思いで俺は抜き去った。

「イクっ…イクぞっ桐乃!」
「はぁ! はぁ!…ふえっ?」
 桐乃が振り返った。
 続けて俺はキッチン台の壁面に射精の的を絞った。
 一瞬で軌道を計算し、ここなら構わないと思う。
 桐乃が振り返りざま腰砕けになって床にへたり込んだ。
 腰をひねり、重心が移動する。
 桐乃の体が横向けに倒れかけ、計算した軌道上に桐乃の顔が入っ
た。
 まずいと思った瞬間、俺のブツから発射された白い液体は、そこへ
目掛けて弧を描いた。

「んんーっ!」
 桐乃が粘液の直撃を受けて、目を白黒させる。
 そのまま桐乃を掴んでいた手を乱暴に動かして、桐乃の体を脇へ
押しやった。
 2度目、3度目の射精を予感したからだ。
「きゃぁっ!」
 残りの粘液がキッチン台にかかるのと、桐乃が倒れこむのがほぼ
同時だった。

「はぁ…はぁ…はぁ」
 俺はビクビク痙攣するブツから発せられる痛いような快感に脳内を
白く濁らせながら、ぶん殴られることを覚悟していた。
 だって眼下におわし遊ばせる妹様の顔が、俺の汚ぇザーメンで汚れ
ていたからだ。

「あ…ああ…あんた」
 桐乃が肩と胸で息をしながら、状況を飲み込んだ様子で言った。
 俺は視線を逃がす。
 気まずさのあまり桐乃を見ていられなかったんだ。
 だがその先で、1冊の本を見つける。
 さっき倒れこんだとき、桐乃がキッチン台から落としたものだった。

 【月別 バースデーケーキの作りかた】
 表紙にはそう書いてあった。
 見ると符線がしてあり、ゆっくりと本のページが開いていく。

 現れたのは俺の誕生月。
 めくれたのはメモ用紙が挟まっていたせいだった。
 そこには飾り文字でこんなことばが書かれている。
 【ハッピーバースデー京介 いつもありがとう】
 俺はそれを見て、さっきとはまた違った意味で頭の中がホワイトアウ
トしちまった。

「れ…練習用のやつよ!」
 桐乃は俺の目線に気づくと、慌ててそれを拾い上げる。
 顔に白いものがこびり付いてることなんて忘れたかのように、顔を真
っ赤にしている。
「だ…だって…やっぱ…失敗したくないじゃん?」
 は?
 何だって?
 練習用? 一体なんの話だよ?
 【バースデーケーキの作りかた】?
 飾り文字で【ありがとう】?
 おまけに俺の誕生月?

「お…お前…もしかして…」
「バ…バレたくなかったから! サプライズ…成功させたかったの」
 俺は脳内に色がついてくるのが分かった。
 それに従って少しずつ事態が飲み込めてゆく。
 ここまでの経緯を脳内で反復してみた。
 まず今朝、赤城から電話がかかってきて…って待て、それはいい。

 問題はその後だ。
 俺が自宅に帰ると桐乃が料理をしていた。
 「どういう風の吹き回しだよ」と訝しがったのだが、俺はとくに深く考え
もしなかった。

 その後、まぁ…妹との過ちを犯しちまったわけだが、せめて中出しだ
けは避けなければと思った。
 その際に揉み合って桐乃はこの本を拾い上げた。
 【バースデーケーキのつくりかた】
 おまけに【京介 おめでとう】の文字。
 これって…つまりそういうことだよな?

「お、怒らせれば…出て行くかなって思ったの…ごめんなさい」
 桐乃はしおらしく謝った。
 俺はその豹変ぶりに面食らったが、今はそれどころじゃなかった。
 脳内の整理がようやくついたからだ。

 桐乃は今日、俺のためにバースデーケーキを作ってくれていた。
 それが恥ずかしかったんだろうな。
 こいつときたら、その俺をリビングから追い出そうとして、あれこれ
嫌がらせをしてきた。
 だが俺は俺で呑気なもんで、「たまには妹の料理する姿を見るのも
乙だな」とか抜かして、居残りやがった。
 それで桐乃もムキになって執拗に迫ってきた。
 これが真相だ。

「に…しても…だな…もっとやり方ってもんが」
 俺は自分でもよく分からない感情のままことばを吐き出したが、ふと
床に落ちたケータイが目に入る。
「つーかお前! あやせ! あやせ!」
 慌てて言うが、桐乃は至って冷静だった。
「大丈夫」
「何でだよ! はやく出ろよ!」
 通話まだ続いてんだろ?
 エロボイス聞かれて気まずいのは分かるが、出ねーとまずいんじゃ
ねーの!?
 特に相手があやせなんだし!

「嘘だったの」
「は?」
「だから、あやせと電話なんかしてない」
 桐乃は拾い上げたレシピ本をギュッと抱きしめながら言った。
「あやせに作り方教わったのは本当。でも、このあたしが一回聞いた
ものを忘れるわけがないじゃん。なのにあんたが出てかないから、そ
れで気まずくなって…」
 確かに。
 言われてみりゃごもっともだった。
 桐乃にはありえないことだ。
 味はともかく手順とか忘れるわけがなかった。

「それに…あんた最近、あやせに色目使ってるから?…間接的にで
もあやせにキモイって言われれば、凹んで出てくかなって思って」
 なるほど。
 だがなんて面倒なこと考えやがるんだ、こいつは。

「つ…つーかあんた! い…妹になんてことしてくれてんの!?」
「え?」
「あ…ああああたしたち…兄妹なんだよ!?」
 俺はケーキのことですっかり忘れていたが、そういや妹にとんでもな
いことをしちまったんだよな。
「す、すまん…。本当はかける気はなかったんだ」
 だが分かってくれよ、あれはハプニングだったんだ。
「ち、ちがう!…って、それもそうだけど! その前よ! その前!」
 桐乃は顔に白いのをへばり付かせながら言った。
「え?…あ、あぁ…挿入(い)れちまったことか。すまん」
 ヤバイ…頭が混乱してるな俺。
 まぁ、どっちもスゲーことに変わりはねえんだが。

「い、『挿入れちまった』ってあんた! なに軽々しく言ってくれてるわ
け?」
 桐乃は顔を真っ赤にして怒る。
 また「ぎりりん氏」のご登場ってなわけだが、俺は本格的に殺され
ることを覚悟した。
 しかし桐乃の様子がどうもおかしい。

「ぅっ!…ううぅぅぅっ!…うっぐぅぅぅぅ…ううぅぅぅぅっ…」
 桐乃は目をギュウっと閉じたまま、身体をビクビクっ…と震わせて
いる。
「ど、どうした…? おい」
 俺は心配になって言うが、桐乃は白目を剥きながら、口を半開きに
している。

「はぁっ…はぁっ…はぁっ」
 肩で息をしながら、あぐあぐと喉を鳴らして…。
 これってアヘ顔?
 なんかどっかで見たことある反応なんだが。
「おまえ…まさか今…イッた…の?」
「ふえっ!?…イ、イッてない…イッてない!」
「う…嘘つけ! いま明らかにお前…」
「バ、バカじゃん! この状態でイクわけないじゃん! もうえっち終わっ
てるっつーの!」
 嘘だ。
 こいつ今、完全にイッたぞ。
 だって口の端からヨダレ垂らして…。
 本当にこいつってば、言葉だけでイッちまったんだ…。

 恐らくだが、俺はこう考える。
 こいつ今、「挿入れちまったなんて簡単に言うな」とか怒ってたから、
たぶんその言葉が合図だったんだ。

 そのフレーズによって今、自分がしたことを改めて思い知らされて、
興奮ししちまった。
 感じちまったんだよ。
 兄貴とセックスした背徳感や、挿入されてるときの感じ。
 そうやって色んなことが蘇ってきて。
 あたし…なんてことしちゃったの…って…。
 そう思ったら途端に…ってことなんだろうな。

「サイテーっ! あたし…これがはじめてだったのに…」
 そう言うと桐乃は涙目になり、うずくまった。
 はぁはぁうぐぐと喘ぎながら、自分を抱きしめている。

「す、すまねぇ…。なぁ…そんな泣くなよ」
「な、泣いてない! 泣いてないっつーの! あんたにエロいことされた
ぐらいで泣くわけないでしょ!」
 俺は膝を突くと、泣きじゃくる桐乃の頭を撫でてやった。
 なんか本当、悪いことをしちまったな…俺。
 つーかこいつが処女だったとは。
 俺はてっきり捨てちまったもんだと思ってたし、だから結構、乱暴に
したんだが…。

「ひっぐ…うっぐ」
 桐乃は珍しく撫でられるがままになっていたが、俺はそうこうしてい
るうちに、先ほどまで感じていた嗜虐心がすっかり消え失せていること
に気づいた。

 メス犬だのマセガキだの酷いことを思ってたが、今はこいつが愛おし
い。
 だって…こんなサプライズを用意してくれてたんだぜ?
 以前のこいつだったら考えられなかったことだよな。

「こうなったら…責任取りなさいよ」
 頭を撫でられながら、桐乃は上目遣いになって言った。
「え?」
 まさか…そのセリフって?
「べ、別に結婚とか! そういうのじゃなくって! あたしの気持ちをなん
とかしなさいって言ってんの!…こ…こんなことされて…あんたのこと
…もう兄貴として見れないじゃない!」

 ま、まずいぞこれ。
 人が道を踏み外す瞬間ってこういう感じなんじゃねえのか?
 俺は急に背中が重たくなるのを感じた。

「で…でも…まぁ? まわりにバレなきゃいいんだし、避妊さえちゃんと
しておけばだいじょーぶだし…。その…あ…あんたがどーしてもって
言うなら…そんときは…また…相手してあげなくも…ない…けど?」
 桐乃は俺のほうをチラチラ見ながら、赤い顔で唇をかみ締めている。
 俺はその姿に再度愛おしさが込み上げると、こう言っていた。

「じゃあ俺の部屋で続き…するか?」
 桐乃はだが、思いっきり意地の悪そうな顔になって「べぇーっ!」と
舌を出すと言った。

「バカじゃん? するわけないでしょ」
「はぁ? なんでだよ」
「決まってんでしょ。あんたのケーキを作んの」
 そして桐乃は俺の目を見ながら、はにかんだ。
「え…えっちは…そのあとで…ね?」
 俺は忘我の境地で頷きながら、むくむくと大きくなる股間を感じてい
た。



〈了〉




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最終更新:2013年02月13日 00:17
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