ちょっと違った未来31

ちょっと違った未来31」 ※原作IF 京介×桐乃 黒髪桐乃の過去編




「よし。これで準備完了。桐乃、こいよ。こっからだとよく見える」

「あ、うん」

 教会からの帰り、せっかくの綺麗な夜空だからと二人で星を見ようということになった。というよりあたしが彼に一方的にせがんだんだけど。

「~♪」

 京介君はとても楽しそうに天体望遠鏡のレンズを覗いている。今日秋葉原の電気街を歩いていてわかったのだけど、天体観測は彼の余りない趣味の一つらしい。

 大学で彼はこういう宇宙の事もよく学んでいるらしい。昔から関心がある事らしくそれは天体観測という個人の趣味までになっていた。部屋の物置からそれを引っ張り出し、よほど扱いが手馴れているのか組み立てから何から何まで彼一人で済ませてしまった。そこにあたしの出る幕はない。

 ここは彼のアパートの一室のベランダ。彼との運命の再会から早2ヶ月。そして今までの空白の時間を埋める様にすごした日々。…もうすっかり通いなれてしまった。

「…クチュン」

 12月でクリスマス前だからか、結構な寒空だ。今日行ってきた場所が場所だから少しでも動きやすい服装をって思ったのになぁ…。うう…こんな寒いのにスキニージーンズなんて履いてくるんじゃなかった…。でも可愛いと思ったし…。

 そんなことを考えていると、京介君は、

「ほら、寒いだろ。もっと近くに寄れよ」

「あ…」

 彼は左手でギュっとあたしの左肩を自分の体に寄せる。

「…」

「桐乃」
「は、はひ!」

 彼の大きな手で抱き寄せられてどきどきする胸の高鳴りがそのまま声に出てしまった。ど、動揺しすぎだよ~あたし~。

 そんなあたしの心の中をこの聡明な京介君が読み取れない筈もなく、

「はは、落ち着けよ」

 穏やかな、知的で静かな笑顔をあたしに向ける。

「う、うん」

「桐乃。どの星が見たい?といってもここからじゃ限られるけどよ…。一応リクエストには応じるぜ」

 カチャカチャとしぼりをいじる。

 …。 え、え~と…。

 そ、そんなこと言われたって…。ほ、星なんて星座占いくらいしかみないし…それも朝のサイトの。

 あ、あれ。ここって重要な選択肢だったりするのかな?(…何を言ってるんだろ、あたし)

「じゃ、じゃあ…月、とかは?」

 ベターな回答だと思うんだけどあまりにありきたりすぎるかな。もしかしたら呆れられるかもしれない。そんなあたしの考えとは裏腹に、

「よし、月だな。天体観測といえばやっぱ月だよな」

 嬉しそうな無邪気な横顔でレンズを覗きながら望遠鏡の筒を月に向ける。

「…」

(こうしていれば、京介君も普通の男の子だよね…)

 何年来と会っていなかった幼い時に出会った男の子。それはもはやあたしの思い出の一つにまで昇華されようとしていた。

 それが偶然の再会。神様の存在を本気で信じかけた。運命ってあるんだって乙女なことを思ってしまった。

 そして彼との蜜月の日々…。あたしへ語ってくれた彼の思いの丈。

 今あたしの胸の中は彼への愛しさだけで満たされている。

 このいつもクールな表情を崩さない、ともすれば不器用な彼が恐らくはあたしだけに見せてくれている穏やかな、優しい眼差し。そんな誰も知らない彼の秘めたる側面をあたしだけが知っているというちっぽけな優越感。

 えへへ。

「よし。見てみろよ。よく見えるぞ~、今日は」

「う、うん」

 白い息を吐く彼の息遣いを耳で、肌で、感じながら、あたしは差し出されたレンズを覗き込んだ。

「…わぁ…」

 綺麗…。

 半分に欠けたお月様が綺麗な光を放っている。謙虚に、だけど魅力的に。今にも目の前に迫ってきそうな不思議な重厚感。

「これはな、上弦の月って言うんだ」

「え?」

「ほら、弓道とかで使う弓でさ。ウチの学校の部活にもあるけど、今見えてるあの月って弓の弦をしならせているみたいだろ?その弦が上を向いて曲がってる弓が下を向いてる。これって上弦っていうんだとよ」

「そうなんだ…」

 さすが物知りです。初めて知った。やっぱり京介君は凄い。何だって知っている。

「…」

 彼は望遠鏡を使わずじっと月を見つめていた。夜の闇のなか月が静かに美しく輝いていた。

「?」

 どうしたんだろう。そう思って彼の横顔を眺めていたら、

「桐乃…光ってさ、何で出来ていると思う」

「え?」

 い、いきなり物理の問題?!う、う~ん…。

「つ、粒と波、だったかな…。」

 確か二面性が~という話を…高校の時に…。

「そう。光はな、粒であって波なんだと」

 彼は月の光から目をそらさずに。

「例えばな、例えば桐乃。俺達が見えるあの月はさ…確かに実体を帯びて一つだけだ。それが粒子の束となって俺達に降り注いでる。けれどな、仮にな?目を閉じてみると当然月は見えない」

「う、うん」

 目を閉じた彼につられてあたしも一緒に目を閉じた。目を閉じて暗闇になったそれでも彼の吐息が聞こえる。

「この見えない状態だと、月は粒子ではなく波となっているんだ。そこでは今俺達が見ていた月と同じ月が存在するという保証はない」

「そ、そうなんだ…」

 なんか難しい話になってきたような…。

「量子論っていう学問が物理学にあってな」

「うん」

「その量子論の、正確には量子力学っていうんだけどよ…それによると多世界解釈、いわゆるパラレルワールド(平行世界)っていうのが導き出せるらしい」

「パラレルワールド…」

 その話なら知っている。ドラマやマンガでよく使われる話だ。今ここにいる世界とは違う世界があって、今ここにいつ自分とは違う自分がいてーー。

 何でもないことで笑いあう日々。何でもないことで怒ったり許したり…。

 そして互いに愛し合う。

 そこでは一体どんなあたし達が存在しているんだろう?そこでもあたし達はこうやって「同じ月」を二人で見上げているのだろうか。

 そうだとするならそれは何て不思議な話なんだろう。隠された世界の神秘…その言葉が頭に連想された。

「といっても、まあ、科学者の中でもその見解を取るのは少数派らしいんだけどな」

 ポリポリと照れくさそうに頬をかく京介君。いつもの仕草。

「でも、俺は…信じてるんだ」

 彼は目を少し細めながら再び月を見つめる。

「今ここにある月の光が、世界の光が粒子となって、目を閉じると波になって色んな想いを光の粒と共に乗せていく…」

「…。」

 どちらからともなくお互いの手のひらをぎゅっと重ねる。 彼の大きな手のひらは冷たくて気持ちがよかった。

「色んな世界の桐乃に、色んな世界の俺に。この世界の、俺達の生きた証を光となって乗せていく…。そうやってずっとつながっていくんだ。永遠に…」

「京介君…」

 あたしは手の指を彼の指に絡める。彼も絡め返してくれてあたしの気持ちに応える。

「だから多分、俺達が今ここにこうやっているのも、もう一度出会えたのも、きっと必然なんだ。俺達はどんな世界でも結ばれる運命なんだよ…」

 それはもう叶えられない願い。それはもう手が届かない想い。

 この偽善に満ちた世界が、あたし達が愛を貫きあうことを決して許してはくれない。でも…。

 それでも…最後だけは…。最後だけは…せめて…。優しい嘘で塗り固められたこの幸せな最後の時間を…。

 自然に向かい合う二人。お互いの唇を月の祝福の中で重ね合わせる。

 ああ、神様…。どうかこの愛しい時間が永遠に続きますように…。

 ああ、神様…。どうかこの愛しい人が二度と離れていきませんように…。



~~~



「イキますっ!!イキますぅっっ!!あっ!あああっっっ!!」

 ぎっぎっぎっ…。

「あっ…ああっ!!」

 パンパンパンパン!!

「あああっっ!!おにいちゃん!おにいちゃぁん!!」
「っ!」

 びゅくんっ!

 彼の剛直から粘度の高いザーメンがあたしの奥の奥まで勢い良く注がれる。

 …約束の最後の時間。あたし達が恋人であることが許された最後の時間。

「あっ!あああっっ!!おにいちゃん!!おにいちゃあん!!」
「きりの!きりの!!」

 ぎっぎっぎっぎぎっ!!

 暗い部屋。静かな夜。その日天体観測を終えたあたし達はなだれ込むようにお互いに軋むベッドで抱き合った。

 ぎしぎし…!ぎしぎし…!

 彼があたしの体をまさぐる音。激しく飛び跳ねる体液。彼の激しい腰があたしの骨盤を打ちつける。

「おにいちゃん!おにいちゃん!」
「きりの…きりの…!」

 目の前の彼はもうたまらない、切なそうな顔であたしの顔にぐちゃぐちゃのキスをする。

「ん…じゅる…ん…は…ぁ!」
「ん…あふ…きりのぉ…」

 あたしの口の中を蹂躙しつつ彼はあたしの体にがっちりとのしかかり、正常位であたしに激しく腰を打ち付ける。

 たくましい男の…成熟した雄に圧し掛かられ、あたしのか弱い体はただされるがままだ。

「きりの…きりのぉ…」
「あんあんあん…!おにいちゃ…!おにいちゃあん!!好きなの!!好きなの!!愛してるのぉっ!!」

「これで終わりなのか…!もう俺達はこれで…これで終わりなのかよ…!」
「お、おにいちゃ…!」

「答えろ桐乃ぉ!!」
「あ…ああぁっっ!!」

 がっちりと両腕ごと彼に抱きしめられ、逃げることも出来ない。もとより彼にあたしを逃がすつもりもない。

 あたしは小刻みに絶頂を迎え痙攣する。それでも彼はやめてくれない。

「この体が…俺の俺だけの桐乃のこの体が…誰か…誰か他の男の物になっちまうのかよ!?」
「ほ、ほにいちゃ…!」

「答えろ桐乃ぉっ!!」
「ああっ!!おにいちゃぁん!!」

 パンパンパンパン!!

「こんなにいやらしく育ちやがって…!!俺のモノを簡単に受け入れるようになるまで骨盤育ちやがって…!!」
「ぁ…あう…!ああっ!!」

「おまえ…おまえ…!本当なのかよ…!医学部の奴らに誘われたとか…瀬菜の言ってたことは本当なのかよ…!!」
「あひっ…!お、おにいちゃ…あん…!」

 飲み会のあの日…なんでもないように耳を傾けていた彼は、心の中でずっと記憶していたらしい。

「認めないからな…!絶対に認めないからな…!おまえが…誰か、誰か他の男のものになるなんてそんなこと…!!」
「ひ…う…!!ぁ…ああっ!!」

 おにいちゃんはいっそう腰を大きくグラインドし、

「どうなんだっっ!!答えろ桐乃!!一体お前は誰のものなんだっ!!」

「あっあああっ!!」

 男の嫉妬。彼のジェラシー。

 あたしのこれからの幸福を祈ってくれた彼の見せる、もう一つの暗黒面。普段の彼からは想像のつかない、二面性。去って行く妹に対する兄の、どうしようもない淫らな嫉妬。

 もう二度と手に入らないあたしのことを永遠に自分のものとして繋ぎとめておこうとする傲慢な支配欲。

 ぶつかり合う雄と雌。煮えたぎるどろどろとした劣情。

 彼の徹底的なあたしへの肉体調教。妹の肉体を加虐的な笑みでどこまでも蹂躙する。

 彼に連日開発されたあたしの体にはすでにもう抑えをきかせることなど出来るはずもなく…。

 強い雄に媚びる雌の性的本能。それに逆らうことの出来ないあたしは嫉妬に狂った彼の激しい責めにただ全身を震わせ大きく絶頂し続けた。

「お前は誰のものなんだっ!!おまえのこのいやらしい肉体は一体誰のものなんだっ!!」

 切なそうな顔で必死に腰を打ちつけくねらせるおにいちゃん。そんな彼の顔をそっと撫で…。

「ぁ…」
「…誰のものだ。言ってみろ」

 今度は腰をじらすように柔らかくくねらす。まるであたしの答えを決して逃さないように。ねちねちとしつこくいやらしく追い込むように腰を動かす。それに対してあたしは…。

「ぃ…」
「ん?」

「ぃ…言わない…」
「ッ!なにぃ…!?」

 黒い感情で顔を真っ黒に染め上げて。嫉妬で全て染め上げて。

「ぜ…ぜったいにぃ…言わないいぃ…!」
「ッ!桐乃ぉッッ!!」

 パンパンパンパンパンパンパンパン!!

 自分の言うことに、雄の言うことに従わない生意気な雌を屈服させようと、一層強く激しいピストンを打ち付ける。

「いつからだッ!おまえはいつからおにいちゃんの言うことを聞かないいけない子になったんだっ!!」
「言わないぃぃ…!!言わないぃぃ…!!」

 彼はあたしの首元を唾液でべちょべちょにして甘噛みしながら、

「そんなにっ!!そんなに俺のもとから離れたいのかっ!!そんなに誰か他の男のものになりたいのかっっ!!」
「いやぁぁ…!いやぁぁっ…!」

「認めると思うのか…!俺がそんなこと…認めると思うのかよぉっっ!!」
「おにいちゃん!!ぉにいちゃぁんっ!!」

 加虐的な彼の倒錯した想いをあたしは全身で受け止める。

 独占欲。

 いつもいつも想像していたというおにいちゃんの「あたし」という名の穢れを知らない女の子。

 自らの手で産んだそれを自らの手でぐちゃぐちゃに汚しまくる、尽きることのない彼の偏執的なあたしへの愛(欲望)――。

 彼はその旺盛な精力に物を言わせてあたしのことを、妹が兄に対して二度と生意気な口が叩けないように徹底的に屈服させんとする。

 そして…。

「い、嫌だ…」
「…ぁ…ふ…」

 上を向いて彼の顔を見れば…滴る汗と体液とよだれに混じって彼の顔から涙がこぼれる。

「いやだ、いやだ!!いやだいやだぁっ!!きりの!きりのぉ!!」
「お、おにいちゃ…!」

 パチュパチュパチュパチュパチュチュ!!

 彼はあたしのおっぱいに顔を埋め、左右の乳首を丹念にしゃぶり上げながら、それでも腰を激しく動かすことを決してやめようとせず。

「今日で終わりだなんて嫌だ…!おまえともうこうして触れ合えないなんて絶対にいやだ…!離れ離れになるなんて絶対にいやだぁっ…!!」
「お、おにいちゃ…ぁ…ああっ!!」

 おにいちゃんの熱くてたくましい肉棒があたしの子宮をすり潰すように回転を加える。

 ぐりぐりとねちっこく円運動を加えながら、捕らえた雌をどこにいても絶対に逃がさないように自分の臭いをあたしに刷り込む。

 彼の連日の調教によってマゾに変えられたあたしの肉体に耐えられるはずもなく…。

 彼のありし日のあたしへの憧憬と想像していた理想のあたしへの倒錯した欲望をないまぜにしながら、何度も何度も自分の臭いをあたしに刷り込む。

 そんな彼の気持ち(欲情)を精一杯受け止めようと機能するあたしの雌としての発情しきった体。

 どうしようもない彼へのあたしの中にも確かに存在する、倒錯的な、被虐的なおにいちゃんへの支配欲。

「おまえは俺のものなんだよッッ!!おまえは永遠に俺のモノなんだッッ!!それを今からおまえに徹底的に教え込んでやるからなッッ!!」
「うん…うん…教えてぇ…!!いけない桐乃に教えてぇっ…!!」

「ッ!!くそっ!!くそぉっっ!!桐乃!!桐乃ぉっっ!!」

 パチュパチュパチュパチュパチュ!!

 彼はあたしを抱き寄せ絶対に離さないようそのたくましい両腕でがっちりとあたしの体を抱きしめる。

 被虐的な肉体に…彼好みの肉体に染め上げられたあたしの体はどこまでも彼だけを求め続けていた。

 あたしのだらしのない身体は幾度も幾度も絶頂を繰り返し、この絶頂地獄から降ろしてもらえない。

 目の前の男の人が…おにいちゃんが降りることを許さない。

 パンパンパン!!パンパン!!

「桐乃はぁっ…いけないのぉ…!いけない子なのぉ…!だから…だからぁ…!」

 彼の首と腰元に腕と脚を回しがっちりとホールドする。それを受けたおにいちゃんは対面座位でさらにあたしのいやらしく熟成しきった肉体をぎゅうっと強く抱きしめた。

「お…しおき…おしおきしてぇ…!!」
「きりの…きりの…!おまえ…おまえ…!!」

「たくさん…おしおき…して下さいぃぃ!!」
「ッ!!後悔…後悔するなよ桐乃ぉッッ!!」

 パチュパチュパチュパチュ!!パチュパチュパチュパチュ!!

 むわっとした室内に二人の繋がり合った結合部から奏でられる音が淫らに響く。

 パチュパチュパチュ!!パチュパチュチュ!!

「しゅごいいい!!しゅごいいいいっっ!!おにいちゃんしゅきぃっ!!おにいちゃんしゅきいぃっ!!だいしゅきなのぉっ!!おにいちゃんだいしゅきなのぉっ!!」
「俺もだ!!俺もだよ桐乃っ!!」

 パチュパチュパチュ!!

「ほかの…!ほかの人なんて…ほかのひとなんてぇ…!!かんがえられないぃぃ…!!き…きりのは…きりのはぁ…ずっと…ずっとおにいちゃんのものなのぉ…!!えいえんにおにいちゃんのものなのぉっ…!!」
「やっと言ったな桐乃!!おにいちゃんを…おにいちゃんを困らせてそんなに楽しいかっ!?」

「ご…ごめんなさいぃぃ…ごめんなさいぃぃい…!」
「なんであんなこと言ったんだっ?!返答次第じゃおにいちゃん桐乃のこと許さないぞっ!!」

「だって…だっておにいちゃんばっかり…おにいちゃんばっかりぃぃ…。きりの…きりのおかしくなっちゃうよぅ…。おにいちゃんが…誰か別の女の人に…女の人と一緒にぃ…一緒になるなんてぇ…!」
「ッ!きりの…!」

「き…きりの…耐えられない…そんなの耐えられないよぅ…!!」
「桐乃っ!桐乃ぉっ!!」

 パチュパチュパチュパチュパチュ!!

「ごめんなっ!ごめんなきりのっ!!もう泣かさないからっ!二度と、二度とおまえのこと悲しませたりしないからっ!!」
「きりのもぉっ!!わがままばかり言ってぇっ…!!ごめんなさいぃぃっ!!しゅきなのぉぉっ!!おにいちゃんのことしゅきなのぉぉっ!!愛してるのぉぉぉっ!!」
「愛してるっ!!愛してる!!桐乃ぉっ!!」

 彼の腰に一層の熱がこもる。

「しゅきいぃぃ!しゅきいぃぃぃっ!おにいちゃぁん!ほにいちゃぁん!!」
「く…!桐乃っ!桐乃ぉっ!!」

 彼に見つめられるたびに、その鋭い目であたしの目を射抜かれるたびに、彼にあたしの体のすみずみが支配されているような錯覚に陥る。

 いや、それは錯覚などでは決してなかった。その証拠に…。

「また…!またイキますっ…!イキましゅぅっっ!!」

 彼に見つめられるたびに、彼に一突きされる度に、あたしの子宮は彼に服従を誓っているのだから。

 パチュパチュパチュパチュパチュ!!

「くそっ!!おまえ…おまえなんでこんなに敏感なんだよっ…?!なんでこんなに感じてるんだよっ!?」
「それは…それはぁ…!おにいちゃ…おにいちゃんだからぁっ!!」

「それだけか…!本当にそれだけなのか…!お前…お前…!」
「イキましゅぅ…!また…また…!!」

「誰か他の男に抱かれなかったのか!?俺と出会う前にもう既に誰かのものじゃなかったのか!?」
「しょ…しょんな…しょんなことぉっ…!」

 ビキビキビキ…!

 彼はあたしの中で暴れ狂うその太くてたくましい肉棒を更に大きくさせた。あたしへのその倒錯した思いにどこまでも比例する男のペニス。そして…。

「やああっっ…!な、なでなでしないでぇ…!おなか…きりののおなかなでなでしないでぇっっ…!」
「だったら言え!おにいちゃんに隠し事をしても無駄だぞ桐乃っ!全部本当のことを包み隠さず言うんだっ!!」

 お腹を、大きく撫でる。その硬くてごわごわした、いつもあたしの頭を優しく撫でてくれたその大きな手のひらで妹の本音を引き出そうと、責め抜く。

 文字通り中と外からねちねちと追い込むようにいたぶられるあたしの体に逃げ場なんてどこにもなかった。

「し…」
「なんだ、桐乃っ!?」

 ぐりんぐりんっ!、と一層大きく腰をあたしの中でおにいちゃんは回す。

「知ってる…知ってるくせにぃっ…!」
「…」

「あ…あたしがぁ…しょ…あひぃっ!!…しょ…しょじょだったこと…!お…おにいひゃんが桐乃のはじめてだったこと…!お、おにいちゃんは…知ってるくせにぃっ…!!」
「…ッ!」

 あたしの口からの告白。自らの処女を愛する人に捧げたという告白。実の妹の、いついつも幸せを願ってやまなかったという妹の処女を自らの手で奪ったという兄の鬱屈したあたしへの愛情(破壊衝動)。

 あれだけ旅立つ妹の幸せを願っておきながら、その一方で自らの手で貶め、堕落させ、二度と羽ばたけないように翼をもいで蹂躙しようとする。

 白く清らかで穢れ一つない理想の天使を徹底的に陵辱する。

 相反する二人の彼。

 厳しく、自らの戒律で縛られた、いつも実直で模範とも言うべき兄の姿。

 どうしようもなく醜悪で、去っていく妹に対していつまでも未練たらしい男の姿。

 どうしようもない、人の業。

 彼の汚く、無様で、ともすれば吐き気を催す醜悪無比な、あたしへの心の闇(性衝動)。

 でも…。

「お…おにい…おにいひゃん…」

 でも…。それでも…。

「どうした…?桐乃…?」

 あたしは…そんな彼が…。

「あ…あたしの…あひゃしのこと…」

 どうしようもなく…どうしようもなく愛おしくて…。

「あひゃしのことぉ…」

 そんな彼を狂おしいほどに愛するあたしは…どうしようもなく…馬鹿な女で…。

「お…お嫁さんに…おにいちゃんのお嫁しゃんにするって…言って…?」
「ッ!?桐乃…おまえ…」

 ぐりぐりと子宮をすり潰すようにグラインドを加える。

「さ…最後だから…最後だからぁ…!しぇ…しぇめて…しぇめて今…今だけでもぉ…!!」
「桐乃…」

「あ…あの時…!あの時みたいにぃぃ…!」


――俺は将来桐乃をお嫁さんにする!


 何の穢れも知らなかった純粋無垢な少年だった、かつての彼。

 実の妹の中に邪な欲望をあらんかぎり吐き出し己の嗜虐心を満足させる、今のおにいちゃん。

 その二人の実像が一寸の狂いもなく、ぴったりと符号し合う。

 彼はいつまでたっても彼だった。やっぱりおにいちゃんはいつまでたっても桐乃のおにいちゃんだった。

 光と闇。

 善と悪。

 陽と陰。

 その二つをもって、彼なのだ。

 その二つをもって、あたしのおにいちゃんなのだ。

 誰に対しても清廉潔白で、気高き彼。

 妹に近づく男に対して誰彼構わず嫉妬する、醜く卑しい彼。

 切っても切ることなど出来ない、その二人。

 あたしが愛したのは「彼」だった。

 あたしがもう全てを捧げてもいい、彼のためなら終わってさえもいいと思ったのは…「彼」だったのだ。

「ッ!桐乃っ!!桐乃ぉっっ!!」
「おにいちゃん!おにいちゃぁんっ!!」

「いいのか!?いいのかよ!?おまえ、おまえ…!おにいちゃんのものになっちゃうんだぞ!?ずっとずっと永遠に…おにいちゃんのものになっちゃうんだぞっ!?それでも…それでもいいのかよ!?」
「し…して…!してぇ…!して下ひゃい…!!きりのが…二度と…二度とおにいちゃんから…おにいちゃんから離れ離れにならないようにぃ…!!」

 彼の両手に指を絡ませぎゅ、と繋ぐ。

 あの日いつも駆け抜けた公園。

 皆に置いていかれて一人泣くあたしの手を取り夕暮れの中歩く二人。

 いつもいつも彼の背中を見ていた。

 いつもいつも彼に恋焦がれていた。

 その想いは大人になろうとしている今も決して風化することはなかった。

 大好きな、おにいちゃん。

 いつまでも、大好きだよ。

「俺の…くぅっ…!俺の、俺のお嫁さんになれっ!!ずっと、ずっと俺の傍を…傍を離れるな…!!」
「はいぃ…はいぃぃ…!!」

「誓うのか…!?誓うのか…!?俺のものになるって…俺のお嫁さんになるって誓うのか…!?」
「ち…ちかい…ますぅ…!」

 ぷるぷると痙攣する。あたしの彼一人をただ想うだけになったその淫猥な肉体は今既に最絶頂を繰り出そうとしていた。

「誓いましゅうっっ!!お、おにいちゃんに…おにいちゃんにこれからも永遠に尽くすって…!お嫁さんになるって…!傍を…傍を離れないって誓いましゅうっっ!!」

「ッ!!桐乃…桐乃ぉぉぉっっっ!!」
「イキましゅうぅぅ!!イッちゃうよぉっ!!おにいちゃん!おにいちゃぁぁん!!」

 びゅくびゅくびゅくびゅくびゅくびゅくっ!!!

 彼の、おにいちゃんのゼリーのように濃厚なザーメンがあたしの子宮に遠慮会釈なくぶちまけられる。

 あたしの子宮は彼の愛でいっぱいに満たされていた。

 彼のあたしを抱きしめる、成熟したたくましい腕の中で、繰り返される大きな絶頂。

 テストステロンで満たされた、彼の熱い肉体。熱い吐息。そして橋のようにつながった唾液。

 どくんどくんどくん…。

 自分を慕う実の妹を孕ませようとあたしの中で争いあう彼の分身たち。

 限りなく繰り返される光の恍惚の中、確かに見たあの想い出(返事)――。



 ――はい!将来桐乃はおにいちゃんのお嫁さんになることをここに誓います!桐乃のこと大切にしてね、おにいちゃん。



 チュンチュチュチュン…。

「はあ…はあ…はあ…!」
「おにい…ちゃ…しゅき…しゅきぃ…」

 …繰り返される日常がまた始まる。

 …繰り返される新たな朝。

 …そうしてあたし達の「最後の恋人の時間」は終わりそれぞれの新たな旅立ちの日を迎えた。




続く。

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最終更新:2013年03月23日 11:32
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