ふたば系ゆっくりいじめ 475 野良ゆっくりの一家の訪問を受けた

野良ゆっくりの一家の訪問を受けた 33KB

私は鬼に~番外編


・本編が書きすすすまないので
・時系列的には本来は本編の後に入れる話でしたが、ネタバレはあまりありません
・ゲス人間の行動? ヤ○オクとか頭が回らないDQNだったんでしょう






冬のゆっくりと近づきつつあるその日、野良ゆっくりの一家の訪問を受けた。

「おいじじい、いまからここをまりささまのゆっくりぷれいすにするんだぜ!
まりささまはつよいから、さからわないほうがみのためだぜ!
いますぐおうちをあけわたしてどれいになれば、いのちだけはたすけてあげなくもないんだぜ!?」

「れいむのまりさはとってもつよいんだよ! からすさんものらねこさんもおいかえすんだよ!
にんげんなんか、かんたんにやっつけちゃうよ! ゆふん!!」

「「「「おとーしゃんがんばっちぇー! くしょじじいにゃんかやっちゅけちゃぇー!!」」」」




まりさの左頬に深くめり込んだ人間の右フックは容赦なくまりさの内部の餡子を揺さぶり、ついでに歯を何本かへし折った。
丸い、頭部そのものが全身であるゆっくりの体は人間の手加減気味のパンチを食らっただけでゴムボールのように吹き飛んで、地面に転がる。
その時の拳の感触を何といって表現すればいいのだろう?
けして軽くは無いはずの、柔軟で弾力がある饅頭生物は脆いように見えて、しかし意外と殴打したくらいでは結構暴力に耐える。
持ち上げる時には少なくない重量も感じる。 バレーボールくらいの体の大きさから見て体積もそれなりにある。
だが殴ったり蹴り飛ばしたりする時は、まるでギャグマンガみたいに軽く吹っ飛ぶのだ。
意思の作用する力がどうの、思い込みによる観測効果がどうのとか、難しい理屈をこねてゆっくりの不思議に挑む偉い学者もいるが、今はどうでもいい。
人間は地面にうつぶせになってピクピク痙攣しているまりさのくすんだ金色の髪を乱暴に掴み、自分の顔の高さにまで持ち上げた。

「ゆひぃ…ゆひぃ…やべでぐだざい…ばりざがわるがっだでず……にんげんざんのほうが、づよいでず…
だずげでぐだざい…いのぢだげは……!」

もう既に何発殴られたのかすら、まりさにはわからないだろう。
ゆっくりは3以上の数を「大きい」「多い」「たくさん」「いっぱい」としか認識できないし、人間のほうも殴った回数をいちいち数えていない。
だから、また一発、今度はストレートで、髪を掴まれたままのまりさの顔面に一撃をぶち込んだ。

「ゆべりゃぁぁぁっ!! もうなぐらないでぇぇぇ!! だずげでぇぇぇ!! やだぁぁぁおうぢがえるぅぅぅ!?
もういだいのやだよぉぉぉぉっ!! じんじゃうっ! じにだぐないよぉぉぉ!! ゆっぐりじだいよぉぉぉ!!
おねがいごろざないでぇぇぇっ!! ゆるじでぇぇぇぇっ!?」

情けない悲鳴を上げながら命乞いする野良のまりさには、先ほどの人間の玄関前できった啖呵ほどの威勢は既に無い。
顔面を痣だらけにし、目から砂糖水の涙を流し、口の中は殴られすぎて歯が数本しか残っていないという無残な姿で必死に人間に許しを乞うているばかりだ。
今まで街に棲んでいる野良の生物を相手にどのように格闘し、勝利してきたかは人間は知るよしも無い。
だが、カラスや野良猫程度を追っ払えるくらいの実力を背景に、「きっと人間にも勝てる」とか思い上がったのは想像に固くない。
別にそんなゆっくりは、この街には掃いて捨てるほどいるし、人間もこの手の増長した野良ゆっくりに絡まれるのは二度三度では無かった。
だから特に、感慨も無い。
また一発、今度はアッパーを決めて、まりさのアゴだかぺにまむだか、あにゃるだかよくわからん部分に重いダメージを喰らわせた。

「ゆげろぉぉぉっ!!」

口と、口の下の穴から同時に餡子を噴出しながら、野良まりさは仰け反って一瞬空を飛び、そして後頭部から地面に墜落した。

「まりざああああぁぁぁぁ!! もうやべでぐだざいいいいっ!! れいむだぢのまげでずがらあああ!!
まりざはもうごうざんじでるでじょおおお!? どうじでまだなぐるのおおおおお!?」

「「「「おとーしゃぁぁぁぁん!? ゆぇぇぇぇぇぇん!!」」」」

後ろのほうで、夫かつ父親が一方的にボコボコにされる一部始終を見せ付けられていた、野良まりさの家族は泣き叫びながらまりさに駆け寄ろうとする。
子らが野良まりさに体を摺り寄せようとし、妻であろう野良れいむは人間と愛する夫との間に庇うように立ち、大粒の涙を流しながら人間に訴えた。
が、人間は素早く野良れいむを片足で踏みつけ、動きを封じ、4匹の子ゆっくりたちのうち子まりさと子れいむを一匹ずつ両手で掴んで捕獲した。

「ゆぎぃぃぃぃ! いだいよぉぉぉはなじでぇぇぇ! どうじでごんなごどずるのぉぉぉぉ!?」

「「ゆぴぃぃぃぃ!! たしゅけちぇおかーしゃぁぁぁぁん!!」」

「れーみゅのいもーちょがくるしがってるよ! やめてあげてね!」

「ゆぇーん!! おにぇーちゃぁぁぁん!!」

人間は両手に少しずつ力を込め、掴んだ子ゆっくりらをじわじわと握りつぶしてゆく。
五本の指は固くぎっちりとテニスボールサイズの子ゆっくりの体を締め付けているため、逃げる事ももがく事すらもままならない。
苦悶の表情と涙を流しながら必死に子まりさ・子れいむは父母に助けを求めたが、父は散々に痛めつけられて倒れたまま動かず、母は人間の足の下でもがき苦しんでいる。
残りの子ゆっくりたちは人間の足にポスポスと体当たりをして母と姉妹達を助けようと懸命な抵抗をするが、全く無意味だった。

「やべでぇぇぇ! ちびぢゃんだぢをはなじでぇぇぇ!!」

「断る」

ゆっくり、ゆっくりと万力のように緩慢に力を込めながら、人間は子ゆっくりの命を奪ってゆく。
締め付けられて縦長に変形した子ゆっくりたちの皮は、中身の餡子を変形させて相当な苦痛をもたらすと共に逃げ場の無くかかる圧力で破れる寸前までになっていた。
そして、野良れいむは愛する我が子が「ゆぴぴぴぴ…」と悶え苦しみながら、最後に口や体の裂けた部分から餡子を漏らして絶命する様を野良れいむは時間をかけてまざまざと見せ付けられた。

「たぢゅげ…おが…ぢゃ…ぐるじ……ゆびゅっ!」

「れーみゅまだちにちゃくにゃ……ぶびゅりゃっ!」

破裂するかのように無残な最期を遂げた我が子らの、人間の指の隙間からはみ出て落ちてきた餡子を顔に浴びながら母れいむは絶叫する。
その傍らで、残りの子ゆっくりらも受けた衝撃の大きさに全身と思考を硬直させ、固まったまま声にならない叫びを上げていた。

「ゆ…ゆわああああああああ!! れいむのおちびぢゃんだぢがあああああああ!! だいじなおちびぢゃんだじがあああああ!!
まりざにぞっぐりですできなおちびぢゃんがあああ!! れいむによくにてがわいいおちびぢゃんがああああああ!!
どおじでええええええぇぇぇぇっ!? どおじでごんなごどぉぉぉぉぉ!?
おちびぢゃんはっ!! おちびぢゃんはなんにもじでないでしょおおおおおおっ!! どうじでっ!!
ごろずなられいむだちだけにじでよぉぉぉぉ!! どおじでおちびぢゃんをごろずのおおおおおお!?」

だが人間は、野良れいむには答えない。 その視線は前方に倒れている…いや、倒れて動かないフリをして、実はゆっくりと這って逃走しようとしていた野良まりさに向けられていた。
人間は無言で足元で固まっている残った二匹の子ゆっくり、先ほどと同じ組み合わせである子まりさと子れいむを両手にそれぞれ掴んだ。

「ゆぴぃっ! た…たしゅけちぇぇぇぇ! にんげんしゃんにちゅかまっちゃよぉぉぉ!! つぶしゃれりゅうううう!!」

「ゆっ! まりしゃおしょらを…ゆわぁぁぁぁ!! たしゅけちぇぇぇぇ!!」

姉妹の握りつぶされる様をしっかり見せ付けられていた子ゆっくりは、即座に自分たちが次に殺される番なのだと理解し、泣き叫んで助けを求めるが、
母親は人間に踏みつけられたままで、父親は地面に倒れた姿勢のままプルプル震えている。
前者は動きたくても動けず、どうにか逃れようと体をムニュムニュと動かすのが精一杯だし、後者は既に気絶から覚醒しているのは見え透いているのに起き様としない。

「や、やべでぐだざい! そのごだぢはだずげでぐだざいいいいい!! おねがいでず、ごろざないでぇぇぇ…!!」

野良れいむは踏みつけられた窮屈な状態のまま人間を見上げ、懇願するが人間はれいむの方を見ようともしない。
代わりに、前方で震えているまりさの方に向かって口を開く。

「おい、まりさ」

「……」

「起きてるのはわかっている」

「……!!」

「これからお前の家族を皆殺しにする」

「ゆっ!!」

「だが、お前が身代わりに殺されてもいい、家族を助けてくださいと言うんだったら、そうしてやってもいい」

「……ゆ」

「どっちにする?」

二択だった。
人間が野良まりさの家族を殺すという宣言に間違いが無いのは、先ほど子ゆっくり二匹を容赦なく握りつぶして見せた事からも確かだろう。
この人間はゆっくりを痛めつけたり殺す事に一片の躊躇も持ち合わせていない。
いくら降参しましたと命乞いをしても、何度も何度も殴られ続けたまりさ自身が痛いほど理解しているだろう。
ゆっくりは仲間同士でさえもやたら好戦的な傾向にあるくせに、戦った相手が自分より強いとわかるとすぐに「ごべんなざい!」と謝り、
時には卑屈にへりくだってまでそれ以上攻撃される事を回避しようとする。
謝りさえすれば、全て許してもらえるだろうという魂胆が、ゆっくりの思考の根底にあるからだ。
ゆっくり同士の戦いなら、別にそれでいいんだろう。 他の野生動物も降参した相手の命までは取らない事が多い。
だが、人間という生き物は違う。 ゆっくりと人間は同種ではないし、人間にも様々なのが居る。
ゆっくりを殺したって、別に少しも心を痛めなかったり、むしろ喜んで行う人間も少なくない。

人間社会の大半にとってゆっくりは虫と同じ程度の命の価値だ。
好き好んで愛玩生物として飼育する人間も居るが、それは人間の都合でゆっくりを捕獲・監禁し玩具にしているだけだ。
ゆっくりを大事にしたり保護しようと活動している人も居るが、それは「人間の所有財産」、つまり家畜として、かけたお金や時間の浪費への執着があるから大事なのだったり
人間の自己満足による思想・イデオロギーによって「野生生物としてのゆっくりとの共存」を唱えているに過ぎない。
人間はあくまで人間の価値基準でしかゆっくりを見ない。
居ないなら居ないで、深刻に困るほどじゃない。 邪魔なら邪魔で、ハエでも潰すみたいに駆除する。

別に、ゆっくりがそんな人間という生物を、どんなにゆっくりできない存在で、悪魔みたいに思っていようとも、どうでもいい。
今の野良まりさの状況が、不運によるものか、それとも自業自得の結果なのか、「ゆっくりの習性だから人間に突っかかっていくのは仕方ない」なのか、
どう解釈しようと、それは解釈する人間の好きなようにすればいい。
確かなのは、今野良まりさの目の前に居るのはまりさがどんなに「やめて、ゆるして」と懇願しても、まりさの死か妻と子らの死の
どちらかしか要求しない、「謝ったって絶対に許してはくれない」という絶望的な相手だという事だ。

それに対して、まりさは数秒間の間逡巡し、そしてあっけなく答えを出した。

「まりざは……まりざはまだじにだぐないよぉぉぉ! そいづらをごろじでいいがら、まりざはみのがじでね!!
ごべんね! れーむもおちびだぢも、まりざのみがわりになっでね! まりざはゆっぐりじないでにげるよ!!」

そう言ってガバ、と体を起こすと猛然と逃走を始める。
それに対して、妻である野良れいむは「まりざああああああ!? ごのうらぎりものおおおおおお!!」と罵声を投げかけ、
子ゆっくりたちは泣き喚きながら自分らを見捨てた父親の後姿に向かって、まだ助けを求めていた。
人間は、そんなまりさの後姿を特に気にすることも無く、見送った。
猛然と逃走と書いたが、それは実際には野良まりさの主観である。
体中をボコボコに殴られて重傷を負っているまりさの動く速度は、跳ねる事も出来ず、かといって這う速度もナメクジの数分の一以下でしかなく、
人間との距離もまだ1mも離れても居ない。
加えて、まりさは歯が殆ど折れ、顔も痣だらけで醜い姿だ。 あんな状態では何日生きられるかも定かではない。
仮に生き延びても、野良の生活環境では満足に怪我を治療する術も無く、体に不具を背負ったまま後遺症に悩み続けるゆん生を送る事になるのだろう。

「ゆひぃ、ゆひぃ! まりさは…しぬのはいやなんだぜ…れいむとおちびたちのぶんまでゆっぐりずるんだぜぇ……!
ゆひぃ…ぜぇぜぇ……おうぢにかえっだら…おとっどきのあまあまをたべで…ゆっぐりじで……
あだらじいおよめざんと…あだらじいおちびをづくっで……しあわぜにぃ……ゆひぃ……」

人間が家族を見捨て、自分ばかりが助かりたいと必死に逃げ行くまりさの惨めで哀れな姿から興味なさげに視線を外した時、
まりさはまだようやく人間の家の門柱を通り過ぎて道路にでようとした所でしかなかった。
この後の野良まりさが生きようと死のうと、人間にはどうでもいい。
ノロノロと這いずりながら道路に出て車に轢かれるのかもしれないし、下校途中の悪ガキに見つかって遊び殺されるのかもしれない
野良犬や野良猫やカラスに発見されて、食われるのかもしれない。
運良く自分のおうちまで辿りついたはいいが、他のゆっくりが既におうちを占拠していて住処を奪われた上に殺されるのでも、
あるいは辿りつく前に力尽きるのかもしれない。
それらよりも、人間の興味は既に残された野良まりさの家族たちに移っている。

「どおじでええ…あんなにいっじょにゆっぐりじようっでいっでだのにぃ…まりざぁ…!」

「ゆぇぇぇぇぇぇぇん! まりしゃまだちにたきゅにゃいよぉぉぉぉ! ちゅぶしゃれちゃくにゃいよぉぉぉぉ!!」

「ゆぁぁぁぁぁん! きゃわいいれーみゅだけはたしゅけちぇぇぇぇ! にんげんしゃんをゆっくちしゃせてあげりゅかりゃぁぁぁ!」

足元で踏まれながら悲嘆にくれる野良れいむ。
父親に見捨てられ、絶望の涙を流しながらそれでも生きたいと叫ぶ子れいむ。
どうにかして助けてもらおうと必死に懇願する子まりさ。
人間は子まりさの発言にちょっとだけイラッとした表情を浮かべかけたが、反射的に潰してしまうような短絡的な事はせず
今度は野良れいむに向かって話しかけた。

「おい、れいむ。 子供たちを助けて欲しいか?」

「まりざ…まりざ……ゆっ!?」

「これからお前たちを皆殺しにする。 だが、お前か子供たちのどちらかは殺さないでやってもいい。
どちらを選ぶ?」

何の気まぐれか、人間が突きつけた選択は野良れいむにとって希望の光明に思えた。
内容そのものは先ほど野良まりさに出されたものとほぼ同じだったが、れいむには地獄で唯一の救いを見つけたような思いだった。
どちらを選ぶかなんて、そんなの決まっている。 子らの母親であるれいむは、迷うことなく人間に告げた。

「ゆ…それ、ほんとうだね? うそつかないよね? れいむかちびちゃんたちか、どっちかたすけてくれるんだね!?
だったら、ちびちゃんたちをたすけてね! れいむはどうなってもいいよ! れいむをころしてちびちゃんはおうちにかえしてあげてね!!」

母親らしい毅然とした態度で、野良れいむは宣言した。
人間の両手に掴まれている子らもそれを聞いて絶望の叫びから一点して表情が変わる。

「ゆっ…おかあしゃぁぁぁぁん!!」

子まりさはキラキラした涙を一粒落し。

「ゆぅぅぅ! やっちゃよ! れーみゅたしゅかりゅよ! ゆっくち! ゆっくちー!」

子れいむは顔をキラキラ輝かせながらはしゃいで喜びを表現した。

が、しかし、人間は冷静に、野良れいむの我が子を思う自己犠牲の精神を一蹴した。

「…馬鹿かお前は? 子供たちが助かっても親のお前が死んだら、どうやってこいつらを育てるんだ?
子供たちだけでどうやって生きていくんだ? 餌はどうするんだ? 何を食べるのか、どこで手に入れるのか教えてるのか?
教えたとして、こいつら単独でそれができるまで育ってるのか? カラスとかの外敵から身を守る術は?
雨とか風とから隠れられる方法は知ってるのか? 台風とか冬とか特にどうするんだ?
それとも、こいつらを預かってくれる奇特な知り合いがどっかにいるのか? 普通いないだろ?
さっきの父親は一回お前らを見捨てたぞ? 今から追いかけて行って、子供たちを渡して家に帰すのか?
あんなボロボロで汚くて、狩りもできるかどうかもわからない、今にも死にそうなまりさにか?
お前たちを裏切って自分だけ助かろうとした、あのまりさにか?
おいれいむ、本当にお前が死んでこいつらだけ残していいのか? それがお前の選択か?

お前の選択は、はっきり言ってこの二匹に孤児になって飢えて寒くて守ってくれる存在も無くて惨めに死ねって言ってるのと同じだぞ?
自分で頭が悪いと思わないのか?」

「……………!!!」

「ゆ……ゆぅぅぅぅぅぅ! おかーしゃぁぁぁん! まりしゃたちをひちょりにしにゃいでぇぇぇぇ!!
まりしゃおかーしゃんいにゃいといきちぇいけにゃいよぉぉぉぉ!!」

「ゆ…ゆっ? ゆぅぅぅ!? それっちぇれーみゅたち、おかーしゃんにすちぇられりゅってこちょにゃのぉぉぉぉ!?
そんにゃのやぢゃぁぁぁぁ! いくじほーきしゅるくじゅおやにゃんかしにぇぇぇぇぇ!!
れーみゅをゆっくちしゃせにゃいおかーしゃんにゃんか、おやじゃにゃいよぉぉぉぉぉ!!」








冬のゆっくりと近づきつつあるその日、野良ゆっくりの一家の訪問を受けた。

「おねがいじます! まりざとありずのちびちゃんたちを、かいゆっぐりにじでぐだざい!
どっでもゆっぐりできるおちびちゃんたぢなんでず! にんげんざんにめいわぐをかけない、にんげんざんをゆっぐりさせるおちびちゃんでずから!
もうすぐふゆになるのに、もうどごにもごはんがないんでず!! このままだと、おちびちゃんがうえじにしでじまいまず!!
どうか、どうがおねがいじまずうううう!!」

「とってもとかいはなおちびちゃんなんでずう! まりざとありずはがいゆっぐりでした!
いまはのらをやっでるけど、おちびちゃんたちはしっがりとかいはにそだててまず!
あいさつもできるし、ごはんもぎょうぎよくたべるし、おといれもおぼえさぜでまず! れいぱーにもなりまぜん!
だがら、おちびちゃんだぢをゆっぐりざせであげてぐだざい!
ごはんとあったかと、ゆっぐりをくれるだけでいいでずがらあ!! おねがい! おちびちゃんがしんじゃううう!!」


そう言いながら、野良まりさとありすがまりさのお帽子の中から取り出したのは、弱りきった子まりさと子ありすだった。
子まりさの目はうつろで、ゆはー、ゆはーと小さい呼吸をしている。 頬もこけて、栄養失調で死に掛けているのだろう。
子ありすはゲホゴホと苦しそうに咳き込んでいる。 どうやら病気にかかっているようだ。
二匹の子ゆっくりはどちらも野良にしては妙に小奇麗で、両親もお帽子の中に入れて風に当たらないように大事に運んで来る辺り
随分と大切に育てられてきたのだろう。
いつか人間に拾ってもらって飼いゆっくりにして貰う時のために躾けもしてきたと言っている。
なるほど、あまりにも馬鹿な規格外品とか低ランク品とか、増長して飼い主を怒らせたとかで捨てられた元飼いゆっくりでは、こうはいかない。
何を思って前の飼い主が捨てたのかの事情はわからないが、少なくとも銀バッジ以上のランクはある飼いゆっくりたちだったようだ。

「そうか、お前らか。 最近この辺の家を回って、子供たちを拾ってもらおうとしている野良ゆっくりというのは」

人間は、近所の噂になっていたその野良の一家の弱りきった子まりさ・ありす姉妹をそっと手に取ると、親ゆっくりたちを見下ろした。
飼ってくれるのか!と期待を込めて人間を見上げる野良まりさと野良ありすであったが、その期待は思わぬ形で裏切られた。

「馬鹿だろう、お前ら」

その言葉と共に野良まりさの顔面に人間の靴の爪先が叩き込まれ、野良まりさは顔面に大きな凹みを作って後方に吹き飛ばされた。
それを、唖然として見つめる野良ありすの頭上に、間髪いれず叩き込まれるのは、同じく人間の踵落とし。
悲鳴すらあげる間もなく、野良の夫婦はビクビク、と痙攣し呻く饅頭になる。

捨てられる飼いゆっくりというのはこの街では珍しくも無い。
一説によれば、飼いゆっくりが飼い主によって不法に捨てられるのは犬や猫に比べて2倍~2.5倍もの割合になるという。
ゆっくりはその知能や受けた教育のレベルごとに等級で定められ、高ランクの金バッジ付きともなればペットショップで数万円、銀バッジでも数千円~1万円台にはなる。
ランクの高いものほど家畜として人間への貢献度が高い個体とされ、低ランクの銅バッジは数百円、バッジ無しではワンコインで買えるが
低ランクが気軽に買えることと、しかし高ランクでも簡単に捨てられてしまう事への関連はあまり無い。
ゆっくりは見た目は可愛い(あるいはキモ可愛い)ので愛玩動物としてはブームが続くほど人気商品であり、ゆっくり用フードや
玩具、衣服、散歩用リードやハウスなど様々な商品が販売され続けるくらいにはペット市場を賑わせている。
だが同時に、ゆっくりを嫌う人間も多い。
その一番の理由は、ゆっくりが「人間の言葉を喋る」ことにある。
ペットと意思疎通が出来るというのは、それが好きだという愛好家にとっては大きな長所である。
誰でも一度は、ペットが何を思っているのか、知りたいし、会話が出来たらいいのにと思う。
また、ゆっくりにはある程度の知能があることと合わせて介助ゆっくりや盲導ゆっくりなどの人間を助ける分野で活躍するゆっくりもおり、
それらの社会貢献の大きさに近年では「プラチナ」という特別ランクも新規に与えられようとする動きすらある。

しかし、常にそれが長所に働くとは限らない。
喋るという事は、同時に「喋って欲しくない時」にも「喋って欲しくない事」にも、喋る可能性があるという事だ。

「一言で言えばな、ウザいんだよお前らは。 人の家の玄関先でギャーギャー喚きやがって…
子供たちを助けて欲しくて必死なのはわかるがな。 昨日も隣と向かいの家で同じ事やってただろ?
聞こえてるんだよ、しっかりとな。 いい加減うるさい。 大声ださなくても人間にはちゃんと聞こえてるんだから少しは黙れ。
そんなんだからお前らは捨てられるんだ。 時と場合と場所を考えろ」

ゆ゛っゆ゛っ…と地面にはいつくばったまま呻いている野良まりさと野良ありすに、人間はいかにもイライラしているという表情を
顕にして言葉を投げかけるが、当のゆっくりたちはちゃんと見えてはいないだろう。 聞こえているかは微妙だが。
ゆっくりを捨てる人の大半は、「ゆっくりが喋ってウザい」事を理由に捨てている。
一旦、見て可愛いとか流行で興味を引かれてとかで購入し買い始めた人間の多くが、半年以内にゆっくりを捨てているという統計もある。
何しろ、ゆっくりは四六時中、何をするにもイチイチ自分の行動を口にするのだ。

「ゆっゆっ ゆっくりはねるよ!」 「ゆっくちころがりゅよ!」
「ごはんをたべるよ! むーしゃむーしゃ! しあわせー!」 「ゆー! しゅーぱーうんうんたーいみゅ! しゅっきり~!」
「ゆっくりおうたをうたうよ! ゆ~ゆゆ~ゆ~♪」 「ゆっくりおひるねするよ! ゆぴー、ゆぴー」
「ゆっくりしずかにすすむよ! そーろそーろ!」 「ゆっくりあそぶよ! ぼーるさんゆっくりころがってね!」
「ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね!」

はしゃぎまわる子供にウザいと感じるタイプの人間には、ゆっくりのこういう喧しさには耐えられない事も多い。
逆に、それが好きだという人間には、そういうゆっくりの性質はお馬鹿で可愛げのある生物に感じる。
無論、不必要に騒がない事を前提に躾けられた高ランク品のゆっくりも売りに出されているが、今度はゆっくりの
わざとらしく感じる事さえある幼児語や、子ゆっくり・赤ゆっくりの過剰な崩した赤ちゃん言葉がイライラする、という人もいた。
人間に対して媚びるような感じなのも、裏があるようで嫌だ、という人もいる。

また、ゆっくりという生物が構造的には菓子類、饅頭であることの奇妙さに関連して、「饅頭の癖に子供を作るとか気持ち悪い」
とかいう、ゆっくり自身にとっては理不尽な理由で捨てられる場合もあった。
生物であるゆっくりに、そうした生物らしさを否定するような理由で嫌い、一度飼い始めたものを捨てる人間は大抵の場合
ゆっくりにそもそも非生物的な、アニメのキャラクターやファンシー系マスコットキャラのような「生々しくない」ペットを…
つまり所、縫いぐるみとかペットゲームの中の架空のデジタルペットのようなイメージを勝手に抱いて購入した身勝手な人たちだ。
もっともゆっくりは「動く饅頭」であることを売りにする事で犬猫ハムスターより生々しくないペットとして、
ペット制限のあるマンションでも拒否されることは少ない事や非現実的な愛らしさを前面に出して売り始めたのだから
こういう誤解が生じるのもある程度は仕方ない。
極端な場合、ゆっくりが飲食し排泄するというだけで嫌になり、捨ててしまう人もいるのだ。
ゆっくりの排泄物は多くが餡子などの糖分であり、衛生的にそれほど問題は無いのも賃貸住居でのペット制限の緩い理由の一つなのだが
嫌いな人には、出すものがなんであるかよりも「行為」の方が重要なのだ。

そういった「ゆっくりを嫌う」人たちの半数は、二度とゆっくりに関わらないか思考や意識から排除するが、
残りの半数はゆっくりを徹底的に嫌悪するようになる。


「そもそも何でお前ら、人間のところになんか来た? お前らを捨てたのは人間だろう。
捨てた人間がたまたま、お前らを気に入らなかっただけで、別の人間なら優しくしてもらえるとでも思っていたのか?
馬鹿なの? 甘いの? 餡子脳はもはや砂糖オンリーでできてるの?
世の中にはお前らが大嫌いで殺したいと思ってる人間なんか大勢居るんだが?
少なくとも、お前らが野良生活やってて、誰もお前らに優しくしたり、可哀想だから拾ってやろうって人間は居なかっただろ?
居たらお前ら、こんな野良生活してることも、子供を死にかけさせる事にもなってないだろ?
まあ好きな人間でもお前ら汚い野良なんて、一度捨てられた元飼いゆっくりなんて、拾う奴は居ないよ。
お前たちが前は金バッジだったか銀バッジだったか知らないけがな。

とにかく、お前らは俺が、訪問先の人間が『ゆっくりを好んで痛めつけるタイプの人間』かもしれないとか思ったりしなかったのか?」

人間の長文台詞と長いナレーション解説文の間に、野良まりさと野良ありすはどうにかまともな思考が出来る程度には回復をし始めていた。

「ゆ…ゆびっ…ぞんな……まりざだぢなんにもわるいごどじでないのに……どぼじでっ!」

「……ありずは、ありずはおちびぢゃんだぢをゆっぐりざぜであげだがっただげよ!
ありずだぢだって、いっしょうげんめいいぎでるのよ!? どおじでいじめるのよおおおお!!
ごんなどがいはじゃないごどずるのおおおおおお!?」

ゆっくりを虐める人間というのは、二種類居る。
まず、楽しいから虐待する人間。 ゆっくりは人間に近い感情を持ち合わせているし、人間の言葉で喋り、泣き叫ぶ。
痛めつけたり泣かせれば、言葉というわかりやすい反応を示してくれる。
それが楽しいという人間で、しかし、それはアングラな趣味であると認識しているから、大抵は人目のある場所でそんな事はしない。少なくとも大っぴらにはしない事が多く、彼らの活動・交流の大半はインターネット上のやり取りだ。
彼らはゆっくりをどんなに虐待しても心が痛まないし、むしろ嬉々として行う。
アングラなコミュニティでは「いかにゆっくりに苦痛と絶望を与えて死なせるか」の方法について、共通の趣味人同士で
その方法を議論しあったり、実際の過程の動画が画像をアップロードして楽しんでいる。

次に、嫌いだから、憎いからゆっくりを痛めつけ、殺す人間。
ゆっくりを可愛がる目的で飼ったことのある、もしくはゆっくりの嫌悪し唾棄すべき「生々しい」部分に不快感を覚えた事のある人間でほぼ占められる。
彼らの感情の根本は、ゆっくりに対する失望と「裏切られた」という思いだ。
可愛いペット生物として購入したはずなのに、実際には自分の期待と違った、思い通りにはなってくれなかったという
ゆっくり自身から見れば理不尽極まる怒りによる、一種の八つ当たりでゆっくりを虐待し、最後には殺す。
多くがゆっくりという生物が存在することすら嫌悪し、その根絶を(実際に出来るか出来ないかはさておき)しょっちゅう口にする。彼らはゆっくりを虐待・迫害してもなんら心が痛まないのは上記のタイプと同じだが、違うのは、しばしば彼らは
ゆっくりを殺すのは正しいと述べることだ。
彼ら曰く、ゆっくりというのは気持ち悪いだけの存在であり、殺したいと思うのは全人類の総意であるという。
ゆっくりに対して明確な憎悪を抱くし、それが悪いと思わないので、往来でも平気で野良ゆっくりを蹴り飛ばしたり、踏み潰す。
彼らは徹底して、この世界に存在するゆっくりは嫌いである。
彼らが殺さないゆっくりと言うのが存在するならば、それはこの世界でペットとして飼われたり野良として路地裏を這いずり回っていないゆっくりであろう。

「…俺はお前たちゆっくりなんて生き物はな、ウザムカつくし不愉快な存在しにか思ってない。
お前たちの馬鹿さ加減にはほとほと呆れるよ。 自分たちの未来に、ゆっくりできる事しか起こらないと思っている。
何でも自分の都合のいい方にしか考えないし、必要なことなのに『ゆっくりできない』と言って、苦難に直面しても逃避する。
そして結果として自滅する。 子供を増やしすぎたり、餌を集められなくて越冬が出来なかったりな。
ロードローラーにひき潰されそうになってるのに、自分は勝てると思って威嚇してる馬鹿も見たことある。
そんな馬鹿の極みの生き物なんかに、優しくしてやるとか思っているのか?
今まで回ってきた家ではそうで無かったんだろうが、出てきた人間がお前たちを問答無用で殺す人間だったらとか
考えた事は無かったのか?
それとも考えたくなかったから、逃避したのか? 甘い考えに逃げ込んだのか?

そんな馬鹿だから、飼い主にも捨てられるし、子供も死なせかけるんだよ。 後悔しても遅いけどな」

人間は、死刑宣告でも告げるかのように野良ゆっくりたちに冷たい視線と言葉を浴びせた。
そう、後悔しても遅かった、とまりさは思った。 この人間は、自分たちをけしてゆっくりさせてくれない人間なのだと思った。
それが解った所で、もうどうしようもなかった。

「ゆううううううう!! おちびちゃん…まりざとありずのおちびぢゃんがああああああ!!」

「やべでえええええ!! おちびぢゃんだぢをごろざないでええええ!! おねがいじまず、なんでも、なんでもじばずがらああああ!!
どうが、とがいはなおちびちゃんたちのいのぢだげはああああああ!!」







冬のゆっくりと近づきつつあるその日、野良ゆっくりの一家の訪問を受けた。

「おねがいでず…これ、これでなにが…たべものを…おちびちゃんだぢにわげであげでくだざい…」

「おにゃかしゅいたよ…」

「ゆぅ…」

「おねーちゃん…ゆぐっ」

買い物袋を提げて玄関の前でポケットから家の鍵を探していた時に、見るからに薄汚い野良ゆっくり達が後ろから声を掛けてきた。
その一家には以前、公園で見たことがあった。
歌を聞かせるから、お金かごはんをちょうだいね! とか言ってド下手糞なパフォーマンスを披露していた野良れいむの一家だ。
母れいむ、子れいむ、赤れいむと、れいむばかりのシングルマザー一家の中に何故か子さなえが混じっている。
さなえは希少種と言われ、ペットショップでは等級が銅バッジでも銀バッジ並の値段で売られている人気品種だが、野良で見るのは珍しい。
一帯どういう経緯でこの一家にさなえが生まれているのかは知らないが、子さなえも他の子れいむ赤れいむと並んで
母れいむの足元で空腹と疲労とで憔悴しきった顔をしてぐったりとしていた。
片目の潰れかけた、というか顔の半分が靴跡状に陥没して潰れかけた母れいむが器用に揉み上げの上に乗せて差し出す厚紙を受け取る。
見れは、そこには1000円札の模様と数字がプリントされていた。

「…何で野良ゆっくりがこんなものを持っているの? 何処で手に入れたんだか知らないけどさ」

「おうたのだいきんとしてもらったんだよ……でも、わるいにんげんさんが、とろうとして…れいむはやべでねっでいっだんだけど!
だいじなおちびぢゃんだぢが、ふだりもごろざれで!! どおじで、どおじでごんなごど!!
れいむだちががんばっでうだって、おどっで、おかねもらっだのに!! れいむだぢのおがねなのに!!」

残った片目を潤ませて涙声で訴える母れいむ。 そこには悲しさと悔しさが入り混じっていた。
そのゲスな人間は、れいむ一家が公園を出た直後に襲い掛かって一家の子供を二匹も潰し、残りの子供を人質にとって母れいむにお金を渡すように要求したが、
母れいむがついに折れて1000円札を差し出すと、途端に激怒して母れいむを蹴り飛ばし、唾を吐いてその場を立ち去ったという。
そして母れいむは、何故か人間が捨てて行ったその1000円札を持って、生き残ったおちびちゃん達を連れて公園を後にした。
子らの命を奪われた代わりに、どうにかお金を奪われなかった事を幸運に思いながら、残りのおちびちゃんたちにこれで何か
美味しいものを食べさせてあげられる、ベーコンサンドにしようかポンデリングにしようか、パスタにしようかと
楽しみにお店に持っていくが、どうしてかどこも買い物を拒否されるというのだ。

「おみせじゃどこも、これじゃかいものでぎないっで…! おかねなのに、れいむがひっしにまもったおがねなのに…!!
おねがいでず、にんげんさん!! どうかそのおがねと、そのたべものをこうかんしでぐだざい!
なんでもいいでずがら、ぜいだぐはいいまぜんがら!! おちびちゃんたち、いちにちじゅうがんばっでうだったんでず!!
おなかがずいでるんでず!! このざいあめだまでもなんでもいいでずがらあ!! なにが…なにが…」

「うーん…困ったなあ……同情はするんだけどさあ、これじゃ何も買えないのは当たり前だし、
私も食べ物を交換してあげるわけには行かないと思うよ?」

「どぼじで! どぼじでそんないじわる…」

「だってさあ、これ、玩具のお金だもの。 本物じゃないの。 だから、ごめんね?」

母れいむは目を見開き、驚愕の姿勢で硬直した。
何日も何日も、公園で歌った。 今時歌だけじゃ誰も見向きもしてくれないと言われて、踊りも加えた。
下手糞すぎるといわれて、おちびちゃんたちと一生懸命レッスンした。
うるせえ!と罵声と共に石を投げつけられて、おちびちゃんの一人が潰され死んだ。
それでもおちびちゃんたちのために、頑張って毎日公園でパフォーマンスをしていた。
そうすればお金や食べ物がもらえると、信じて。

おちびちゃんたちの中で唯一、違う子の子さなえが言った。
れいむしか居ない一家の中で、何故か一人だけ違う種で生まれてきた変な子だったが、その明るく前向きな笑顔は母れいむを元気付けた。

「おかーさま、しんこうしつづけちぇいれば、いつかしあわせーになれりゅのです! しんじつづけりゅのがだいじです!」

小さな葉っぱの付いた小枝を口にくわえて振る「みこみこごっこ」をして遊ぶ子れいむ達や子さなえの笑顔が母れいむの支えだった。その笑顔を守るためならば、どんなに辛くても我慢すると自分に誓った。
そうして、ようやくお歌の代金を貰えるまでになったと思って、手に入れたお札に家族みんなで喜んで、
これで食べ物が買えると信じて、しかし悪人に奪われそうになり、子が犠牲になって、母れいむも片目を失って
あげく、そのお金は偽物で……

「ゆああああああああ!! そんなのっで! そんなのっでないよおおおおおお!!
あんまりだああああ!! どおじで、どおじでごんなごどおおおおおお!?
どぼじでかみざまは、れいむだぢばっがりいじめるのおおおおお!! しんじだのに、いっじょうげんめいしんじだのにいいいい!!」

母れいむの今まで耐えてきた分の感情が、やるせなさが決壊したダムのようにあふれ出し、大声で天に向かって慟哭する。
片目から流れ落ちる涙がポツリポツリと足元の子らに落ちて、「ゆっ! あめしゃん!?」と子らは驚いて目を覚ました。

「流石に可哀想になってきた……。 はあ…まったく…。 彼が野良が好きな理由がわかった気もする…。
こうしようか、私がお買い物できる本物のお金を上げる。 その代わり、あんたは……そうだね、その子さなえを私によこしなさい。野良でも希少種だし1000円の価値はあるでしょ」

「ゆっ…!? なにいっでるの!? おちびちゃんをうれだなんで…! れいむのおちびちゃんのなかで、ひとりだけちがうこだからって…!!
しんこうとかわけわかんないこどいうこだがらってで…!
しんじつづければどがいっで、しんじでもなんにもならながっだのに、きぼうなんがもだぜでれいむをだまじだこだがらっで!!
みぞごなわないでね!! れいむをばがに…

……おねがいします、にんげんさん、このちびちゃんあげるから、おかねください」






冬のゆっくりと近づきつつあるその日、庭で飼っているゆっくりたちの家をダンボールから木箱やポリバケツに改修していると、
友人の訪問を受けた。

「こんちわー あの野良子まりさ元気? 何やってるの?」

「…雪が降ったらダンボールの家なんか、重みで潰されるからな。 壊れない家に建て直ししてやってるのさ」

「ふうん…中にタオルとか敷いてあげるんだ? 結構本格的だね。 あれ? なんかゆっくりが増えたね?」

「ああ、二家族ほど。 放っとくと凍死するか餓死するしかない奴らだからな。 俺はそういう奴らを見ると、鬼になりきれない」

「君の所で飼われるゆっくりは、どのみちふしあわせーだろうけどなあ…。
めっちゃ不味いフードか雑草しか食べられないんだから。 あ、そういえばさ、この間希少種のゆっくりさなえ拾ったんだ♪
なんと1000円で!」

「1000円…? ショップで買ったら最低でもその10倍はするだろう。 それホントにさなえか?
髪の色塗っただけのれいむとかじゃないか? 詐欺じゃないか?」

「ちゃんと本物だよ! まあ、野良だったけど…」

「嘘をつけ。 希少種が野良やってたら、一日も経たないで誰かに拾われて、その日のうちにネットで競売されてる。
虐待趣味か愛玩か…落札する奴は相場の3倍出しても欲しがるからな。 …というか、その拾ったさなえはちゃんとペット医に見せたか?
野良は病気を持ってたりして死にやすいんだぞ」

「拾ったのは事実だししょうがないじゃん、そんな事言われても。
お医者? 必要ないでしょ、風邪薬のませればゆっくりは治るんだし、君の所だって野良だらけだけど、病気で死んで無いじゃん」

そんな人間たちの会話を横目に、秋の色の濃い人間の庭でゆっくりの家族たちはそれぞれ紅葉する木々の景色をゆっくりと楽しんでいた。

「おかーしゃん、もみじさんきりぇいだね!」
「ゆっ、そうだね! まっかでひらひらおちてきて、とってもゆっくりしてるね!」
「おとーしゃん、もみじしゃんをおぼうしにつけてあげるにぇ!」
「ありがとうおちびちゃん、おぼうしがとってもきれいになったよ!」


「ゆぎぎ…まりざのうらぎりものおおお!!」
「おかーしゃん、おにゃかすいたよ…くさしゃんがきいろくにゃってたべられないよ…」
「むーしゃむーしゃ…ゆびぇぇ! もみじしゃんおいちくにゃいいい!! ごはんしゃんたべちゃいよおお!」


「おかーしゃん、れーみゅゃにあのこすもすさんとっちぇね! おいしそうだよ、ゆゆーん!」
「ゆっ!だめだよ! かってにたべたらにんげんさんにおこられるよ!」
「そーだよ! まりしゃもうつぶしゃれりゅのいやだよ!!」
「ゆー! れーみゅはおなきゃすいちぇるのに! くしょばばあ! にんげんしゃんにふみつぶしゃれてればよかったんだ!」
「「どおじでぞんなごどいうの(にょ)おおおお!?」」


「おちびちゃん、きょうもおくすりのもうね! はやくよくなってね!」
「ゆええ…おくしゅりにがいからいやなのじぇ…」
「とかいはじゃにゃいわ…」
「だめよ! とかいははにがいおくすりでものむものなのよ! それと、おくすりくれたにんげんさんにかんしゃしましょうね!」


賑やかな庭が冬を銅過ごしたかはまた別の話


トップページに戻る
このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
感想

すべてのコメントを見る
  • ↓×2、↓×3
    野良れいむ一家から金銭を強奪するのは、少なくとも善良的な人間ではないよな?
    ※説明文のヤフ○クは、さなえの価値に気付かないことか? -- 2018-01-03 16:36:32
  • やっぱりこのお兄さんゆっくりに詳しいよな~。職業何やってるんだろう?何でこんなに詳しいのかね~?
    ・不味くて高いエサ→濃い味に慣れさせず、健康を考えたエサ
    ・キモまりさの件→元野良ゆっくりが見ず知らずの孤児を殺す可能性があるから
    ・今回の他一家訪問時の対応→野良の現状を正しく理解させ、生存率を上げた
    ・お姉さんの野良さなえ→素人目には分からない病原菌の危惧(ゴキブリを食べる野良を素手で触って平気だとでも?) -- 2018-01-03 16:30:24
  • 何がゲス人間なんだゲス? -- 2016-02-28 07:26:15
  • ゲス人間てそんなゲス? -- 2016-01-15 10:58:38
  • 最初の家族の子れいむ…すっげえゲスだな…
    てっきりあいつは死ぬかと思ったんだが生きのこりやがった…。…軽々しくゆっくりを潰さないのがこのお兄さんのいいところだし、まあ仕方あるまい。 -- 2011-01-17 00:32:20
  • 女性の作者は父まりさ:ゲス、母れいむ:母性(笑)の設定を好むよね -- 2010-11-12 00:38:11
  • 何と言う優しい人だ…でもまあゆっくりさなえは欲しいな -- 2010-10-24 03:38:44
  • 文句言いつつも何だかんだで助けてるんだなぁ…このお兄さん好きだ。
    そして、さなえゲットしたおねえさん、ラッキーすぎるw -- 2010-10-11 22:41:25
  • このシリーズ好きだわ~、現代にゆっくりがいたらまさにこれって感じがするわ~ -- 2010-07-23 14:51:43
  • 「ふたば系ゆっくりいじめ 202 そして家族の崩壊」のシリーズ
    最初の家族:父まりさ、養子キモまりさ(父まりさをおかーしゃんと呼ぶ)、末妹れいむ(親権は離婚れいむに有り。よく父まりさの所に遊びに来るという設定だったのでそのまま居着いたのだろう)
    2つ目:離婚した母れいむ、{姉れいむ、妹まりさ}(この姉妹の行動が離婚の一因でもある。おにいさんに姉妹と一緒に離婚したれいむが住むことに目を瞑って貰っている模様)
    3つ目:今回登場した母れいむ、生き残った子れいむと子まりさ。子れいむの方は逃げた父親のゲス因子がたぶん多め
    4つ目:今回登場した父まりさ、母ありす、そして子まりさと子ありす -- 2010-01-26 01:23:14
最終更新:2009年11月06日 18:17
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。