どうしてちがうの? 37KB
ドス虐め 希少種大量 野生 独自設定 批判希望
作者名:叩きあき(仮)
「ゆっ!ゆっ!ゆっ!」
1匹のドスまりさが、ドスンドスンと跳ね歩いていた
本来、ドスはそんな風に歩かない。ずりずりと張って移動するものだ。周りに被害が出ないように
しかしこのドスの周りには、他のゆっくりが見当たらない
これも本来ならば、ドスの周りにはかなりの数のゆっくりが居るものだ
ドスがたった1匹で、急ぐように移動している
急ぐといっても、必死というわけでもない。疲れてはその場で休憩している
このドスはどういう状況なのだろうか?
「ゆぅ……またドスは駄目だったよ……」
ドスはそう呟いた
このドスは少し前、数日前まで、とある群で長を勤めていた
勤めていた、というからには、もうその群の長ではない
その群が壊滅してしまったのだ
理由としてはあまりにも単純なものだった
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ドスは群のゆっくりをゆっくりさせたいため、何度も口をすっぱくして注意していた
人間に近づいてはいけない。畑の野菜を食べてはいけない。ゆっくりできなくなるよと、群の為を思って
教えていた
だが当然と言うべきか、言う事を聞かないゆっくりが出て来た
『ドスはおくびょうなんだぜ!まりささまなら、にんげんなんていちころなんだぜ!』
そう息巻いて、数匹のゆっくりが村へと向ったのだった
そうしてすぐに畑を見つけ出し、その畑に実っていた野菜を食べた
『ヒャッハー!!!やっと来たぜ!虐待だー!!』
その畑は、ただ虐待の口実が欲しかった為に作られた、虐待お兄さんの畑だったという事も知らずに
野菜を食べたゆっくりは、1匹を残して全員が殺された
『む、むれのばしょをおしえるから、まりさはたすけてね!!』
そしてその1匹のゆっくりは、早々に群の居場所を吐いたのだ
このゆっくりは、ただ自分が助かりたいために、群の居場所を教えた訳ではない
『どすぅぅ!!!まりささまがぴんちなんだぜええ!!!さっさとたすけるんだぜええ!!』
ドスならば人間を殺せられる
ドスがくれば殺されない
そう考えて、虐待お兄さんに群の居場所を告げたのだ
『ヒャッハー!!ドスを虐待だー!!!』
虐待お兄さんはむしろその事を喜んだ
そもそもそんな事で怯えるようなら、虐待お兄さんにはならない
しかし……
『ヒャッハー!!ドスが居ないぜー!!』
虐待お兄さんは群のゆっくりを虱潰しに殺しながら、ドスを探し歩いた
だがいくら待っても、ドスは出て来なかった
群のゆっくりをいくら殺しても、ドスが居たと言う巣を破壊しても
ドスは一向に現れない
『どぼぢでだずげでぐれないのおおおお!!?!!!?!』
『ヒャッハー!!ドスが居るなんて嘘を吐いたゆっくりは、永遠に虐待だー!!!』
『ばりざざまばうぞなんでづいでないんだぜえええ!!!どずぅぅうう!!!ざっざとごいいい!!!』
ドスは最後まで虐待お兄さんと、言いつけを破ったゆっくりの所に現れなかった
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ドスは逃げていたのだ
言いつけを破ったゆっくりが出た直後に
「皆……どうして言う事を聞いてくれなかったの……」
このドスは、この群が初めて作った群ではなかった
幾つも群を作っては、毎回壊滅させてしまったのだ
その原因もまた、多彩である
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
例えば
植物も虫も勝手に出て来ない。採りすぎるのは駄目だと教えた
そんなのは嘘だと皆が決めつけ、まるでワザと言いつけを破るかの如く、周辺の草花や虫を狩り尽くした
ドスは早々に見切りをつけて逃げた
しばらくして禿山になった群の場所は、満足に食事もできず飢えに飢えて、何匹も餓死したゆっくりで溢
れ、かつ周辺に視界を遮る物が無くなった為に、捕食種達の餌食となって、壊滅していた
例えば
冬が近づくとご飯が足りなくなる。春から沢山蓄えないと冬を越せないと教えた
だがゆっくり達は『たくさん』という量を誤解し、かつ食欲を満たす為に、度々貯蔵庫を食い荒らした
ドスはただ諦め、人知れず違う穴で冬篭りをした
冬が終わって春になり、ドスが穴から出てくるも、他のゆっくり達は巣から出てこなかった
貯蔵庫に皆集まっていたようで、そこには無数のゆっくりの飾りとたった1匹の餓死したゆっくりの死骸
があった
例えば
子供を作りすぎたらご飯が足りなくなる。狩りは2人ができるようにしておくようにと教えた
当然と言うべきか、ゆっくり達は言いつけを守らず、沢山の子供を見てはゆっくりしていた
ドスは何も言わず、自称側近だったゆっくり達に後を任せて立ち去った
結局、狩りに翻弄するあまり死亡していき、しんぐるまざーだの片親だのになった家族が相次いだ
狩りをする方法も忘れ、餌も足りなくなっていき、最後は醜く食い争いをはじめて、餓死してしまった
例えば
めーりんを虐めてはいけない。喋れなくてもゆっくりしているんだよと教えた
誰も守る事はせず、それどころかわざわざめーりんを虐めた事を自慢するものまで現れた
ドスはさっさと逃げていった
しばらくして、1匹のふらんが群を襲撃し、どのゆっくりも惨たらしく殺してしまった
そのふらんが抱えている傷ついためーりんは、何も知らずにシエスタしていた
例えば
ゆうかは花を育てているけど、食べる為じゃない。見つけても絶対に関わらないようにと教えた
しばらくして、自称一番強いゆっくりが、とあるゆっくりに花畑がある事を教えて貰った
ドスはそれを聞いた途端、恥も外聞もなく逃げてしまった
群が見えなくなると同時に、風に乗ってゆっくり達の阿鼻叫喚とした声が聞こえてきた
ドスは逃げるのに必死で、すまないとも自業自得とも思わなかった
例えば
人間にゆっくりは勝てない。ドスはもちろん、どんなゆっくりでも勝てないと教えた
ある時、流れもののゆっくり達が群に入り、くーでたーじゅんびと言って、町へと向った
ドスはゆうかの時よりも必死に逃げた
次の日、群は1匹残らず加工所に送られた
最後までドスが来る事を信じて。ドスがくれば人間に勝てると言って。ドスの言いつけを忘れて罵った
群の壊滅はこれだけではない
ドスの言いつけを守っていても、壊滅してしまう
1匹のゲスが、ゆっくり達を扇動してくーでたーを起こした時も有った
当然、ドスに敵う筈もなく、助けを求めるゆっくりを制裁し続けた
クイーンありすを長としたれいぱーありすの群が、全てのゆっくりをれいぷした時も有った
ドスは何の遠慮もなく、生まれてきた子供ごとレイパーを潰して殺した
群の会った場所が住宅地開発で壊されていく時も有った
逃げるというドスに対して、群は最後まで人間に対して戦っていき、加工所に送られた
偶々虐待お兄さんが見つけて、壊滅させられた時も有った
ドスと戦う準備がなかった為、偶々見逃してくれた虐待お兄さんのおかげで、ドスはまだ生きていた
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
何度も何度も、どうやっても、何を言っても、ドスは群を毎回壊滅させていたのだ
「今度は上手くいかせるよ……だって、ドスはドスだから、ゆっくりさせるんだよ……」
それでもドスは諦めなかった
ドスの本能とでも言うべき『全てのゆっくりをゆっくりさせる』という信念
今までゆっくりさせられなかったもの達の為にも、ドスは壊滅しない群を作ろうと考えていた
今度はどうすべきだろうか?
人間の居る場所から遠い所、ふらんもめーりんもゆうかもれみりゃも居ない所
人間が入ってこれない所、数が多くなっても餌が調達できる所
これらの条件を満たす場所。それが第一条件だと考えている
当然、そんな都合の良い場所なんてそうそう有るわけではない。というか、今までそんな場所に辿り着い
た試しはない
そんな理想のゆっくりぷれいすを求めて旅をして居る途中でゆっくりと出会い、そこから長になっていく
のが、今までのドスであった
ドスはその巨体故に目立つ。そしてゆっくりさせてくれるという、ゆっくりの餡子に刻み込まれた記憶か
ら、普通のゆっくりはドスへと集まっていく
そうしてドスを見つけた場合、ゆっくりはドスへとお決まりの台詞を言うのだ
「ゆっくりしていってね!」
そう、丁度ドスの前に現れたゆっくりのように
「ゆっくりしていってね!」
ドスはそのまま返事を返す
ドスにとってはいつもの事だ。こうしてまた群の長になって、今度もまた群を壊滅させて……
「ゆ?」
だがそこでドスは固まった
青白い髪の毛に、よく判らない奇妙な帽子。落ちないのが不思議な形と大きさの帽子だ
ドスは初めて、自分が知らないゆっくりを見た
今までドスが居た群に、希少種という種類は居ない。せいぜい水上まりさやら喋れるみょん位だ。一応で
いぶ等も居たが、希少種とは数えない
またゆうかやらふらんやらめーりんやられみりゃやらは、共存している訳ではない
こうして挨拶をしてくる希少種を、ドスは初めて見たのだ
「どうかした?」
ドスが固まったままなのを不思議に思ったのか、そのゆっくりは首?を傾けた。帽子が落ちそうだ
「ゆ?どうもしてないよ!初めてみるゆっくりだね、お名前は?」
「わたしはけいねだよ。どすはなにしているの?」
そのゆっくりは『けいね』と名乗った。わたしという一人称を使う珍しいゆっくりのようだ
そんなゆっくりを、ドスは今まで知らなかった
だがそれでも求める事は同じだろう。そうドスは考えていた
「ドスはゆっくりぷれいすを探してるんだよ」
「そうなんだ。ねぇ、どす」
やはり次はそうなるのか
そう思っていたドスに
「けいねのいるむれをみにこない?」
「ゆ?」
微妙に想像と違う言葉が返ってきた
いつもであれば、ドスに長になってくれないかとか、ドスと一緒に居てもいいかと、聞いてくるのに
「けいねの群には長が入るの?」
「そうだよ。おきてをまもるなら、だれでもむれのいちいんになれる」
そうけいねは言う
掟というが、実際はドスが今までやっていたような言いつけだろう。この群の長は、ドスと同じドスなの
だろう
そうドスは考えた
「案内してくれてもいい?」
「もちろんいいよ!どすもはいりたかったら、おさにおきてをきいてね!」
けいねは跳ねながら、ある場所へと向かって行く
ドスはスピードを合わせるため、ずりずりと這って、けいねの後を付いていく
『ドスも入りたかったら、長に掟を聞いてね!』
微妙にゆっくりできない何かを感じながら……
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ここがけいねのいるむれだよ」
しばらくして、けいねが所属している群に着いた
森の中を程よく切り開いた感じで、そこには無数のゆっくりがいる
「ゆゆ!あたらしいゆっくりがいるよ!」
「どすだねー、わかるよー」
「どすはおおきいね!ゆっくりしているね!」
そうドスを見て言うゆっくりもいれば
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
「ゆ……でおくれたわ……」
「とかいははあせらないのよ!つぎはありすがまりさと……」
ドスに目もくれず、普通の生活をするゆっくりもいる
ドスには意外だった
例えこの群にドスが居たとしても、ここまでドスに近づいて来ないものなのかと
今までのゆっくりは、我先にとドスへと近づいて来たのに
「もこたん、インしたお!」
パカと地面が開いて、『もこたん』と名乗るゆっくりが現れた
「もこうただいま!」
けいねが笑顔でもこたんに言う。正式名称は『もこう』のようである
「けいねおかえり!ゆ?うしろのはどす?」
「そうだ。むれをみたいっていうからけいねがつれてきたんだ」
「じゃあおさにあいにいかないといけないお……けいねとぼるけいのできないお……」
「よ、よさないかひとまえで!」
けいねがもこうに頭突きをする。それでもけいねの帽子は落ちない
パタンと地面が閉まった。けいねがその上に居座る
「あ、あかないお!もこたん、インできないお!」
「ごめんねドス!おさのところまであんないするから!」
「ドスはいいよ。場所を教えてくれたら1人で行くよ」
「そうなの?じゃあおことばにあまえるよ。おさはあっちのきにいるよ」
けいねはとある木の方へと向き直る
「ゆっくりありがとう。もこうと仲良くしてね」
「!よ、よさないか!」
何やら顔を赤らめたけいねを後にして、ドスはその木へと向う
先程のもこうもまた、ドスが知らなかったゆっくりだ
それだけではない
「ひめ!いいかげんはたらいてください!」
長い銀髪を束ねたゆっくりが、寝ている黒い長髪のゆっくりへと言う
「めどい」
『ひめ』と呼ばれたゆっくりは、眠ったままそう言った
「とうとう『だがことわる』もいわなくなったうさ」
「げらげらげらげら!!」
側に居た兎の耳が生えているゆっくりは、他人事の様にその2匹を見ている
「おねがいだからはたらいて~~!!」
「……めどい」
その4匹のゆっくりも、またドスがしらない存在である
また別の場所では
「おはなさん、ゆっくりそだってね」
ゆうかが普通に居た
「こんぱろこんぱろ~、おみずさんをもってきたよ」
「しゃんはい、ほーらい、あそこのおはなさんにおみずさんをあげてね」
「しゃんはーい」
「ほらーい」
見知らぬゆっくりや、良く知っているゆっくりが、喧嘩やら何やらもせず、一緒にいる
他にも
「Zzz……」
「おきなさい!ちゅーごく!」
「じゃお!?ねてませんよ?!」
「ねてませんよ?!じゃないわ!おぜうせまになにかあったらどうするの!」
「じゃお~ん……」
「さくや、めーりんいじめちゃだめ」
「むきゅ、いもうとさま。あれはさくやなりのあいじょうひょうげんなのよ」
「こあ!こあ!」
「さくやー、でぃなーまだー?」
「いまいきますわ!おぜうさま!」
「ふらんもいくー」
「じゃお!」
「みんなでしょくじですか。おお、なかよしなかよし」
「わふ!わふ!」
「ええ、わたしたちもしょくじにしましょう」
「きゅうりをたべればいいよ!」
「みょ~ん、おひるまだ~?」
「ゆゆこさま、おひるはきのうたべたみょん!」
「いや、まいにちたべさせてやりなよ!」
「じょうしきにとらわれてないときいて!」
「あるいておかえり」
「やっくりしていってね!」
「おひるたべれない……うつだしのう……」
「Zzz……」
「こまち!ひるねしてはだめだぞ!」
「きょうのおひるはちぇんのすきなおいなりさんだ!」
「それはあなたがたべさせたいだけでしょう」
「わたしのおひるがありません!だれかさがしてください!」
「やれやれ、またさがすのか……」
「おさけがあればじゅうぶんだよ!」
「まったくだね!」
「じゃっじゃーん!おりんがたすけてあげるよ!」
「うにゅー!」
「さいきょー!」
「ふぃーばー!」
「もっといじめてね!」
もし、この光景を見る人間が居たらこう思うだろう
カオスだと
「やくよ。やくであふれているわ」
ドスが見た事もないゆっくりが、回転しながら歩いている
そんな光景を見たドスは
(ゆ……この群は凄いね……皆がゆっくり出来ているよ……)
そう思っていた
希少種も通常種も関係ない。捕食種も非捕食種も敵対してない。誰も彼もがゆっくりできている
そして、こんなにも群をゆっくりさせる事が出来ている長とは、とてもゆっくりしているに違いない
(どんなドスなのかな……)
同時に、こんなにもゆっくりさせられる長というのは、同じドスしか居ないだろうと考えていた
ドスはゆっくりしているゆっくりを見ながら、この群の長であろうドスを尊敬した
そして会って、できる事なら話を聞こうと考えていた
皆をゆっくりさせるにはどうするか……
どうやれば皆がゆっくりできるか……
ドスもこの群のドスのようになれるのか……
そう考えて、ドスは長のいる木の前に着いた
「……ゆ?」
木の中に入ろうとして気付く
入り口が小さい
少なくとも、ドスが跳ねながら入る事はできない。少しだけ屈んで(?)どうにか潜れると言った大きさ
である
それは逆に、自分よりも小さなゆっくりが住んでいると言う事になる
つまりは、ドスよりも小さいゆっくりが、この群の長という事だ
(木を間違えたのかな?)
ドスは周りを見てみる
見たところ、周りには1本も木がない
多少離れた所にはあるが、それはけいねがさした方角とは異なってしまう
つまりこの木が、長の居る木という事になる
「ゆっくりしていってくださいね!」
「ゆ?」
少し違う挨拶をされて、ドスは返答できずに、声のする方を見つめた
自分よりも下。木の中から聞こえる
ドスは木の中を見る
木の中には
「?ゆっくりしていかないんですか?」
奇妙な髪の色をした、初めて見るゆっくりだけが居た
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「はじめまして、ドスまりささん。ここのむれのおさのびゃくれんさんです」
「ゆ……初めまして。びゃくれんさん」
木の中に居たゆっくり、『びゃくれんさん』が外に出て来て、ドスへと深々と挨拶をする
ドスも同じく頭(?)を下げる(?)
「ドスまりささんはどうしてここにきたのですか?」
「ドスでいいよ!ドスはけいねに聞いて……」
ドスは言葉に詰まってしまった
ドスはそもそも、群に入りたくて来たのではない
ただ自分を頼らない群が珍しく、そしてゆっくりできる群を見て、話し合ってアドバイスが欲しい思った
だけだ
それがまさか、群の長がドスではなく、初めて見る希少種とは思わなかった
そしてそれを頼りにして、ドスを頼りにしない群に対して……
「?」
そんなドスの心中を知らずに、びゃくれんさんは首を傾げる
「……ドスも群に入れてもらいに来たんだよ!」
ドスはそう言った
こんなにもゆっくりしている群を見て、自分もゆっくりしたいと考えた
合わせて、どうやればこんなにもゆっくりできるのか、知りたいと考えたのだ
話し合いでもいい筈なのに、どうしてそんな事を思ったのか……それはドスにも分からない
「いいですよ。ゆっくりしていってくださいね!」
「ゆっくりしていくね!」
びゃくれんさんは笑顔でドスを歓迎し、ドスもまた喜んだ
「ですが、ここのむれではおきてをまもってくださいね」
「どういう掟なの?」
「たったふたつだけですよ。まずひとつ、みなさんでたすけあいましょうということ」
「ゆ?」
「さいごに、けっしてうらぎってはいけないということですよ」
「……」
ドスは拍子抜けした
皆がゆっくりしているから、その掟もまた特別な物かと思っていたのだが……
それがそんな、ドスが皆に強いていたものと、殆ど変わらない物だったとは……
『皆で助け合う』
当たり前だ。そうでなければゆっくり達は自分の事のみを考え、どちらであれゆっくりできなくなる者が
現れる
『裏切らない』
当たり前だ。そうでなければ誰も彼もが信用ならなくなり、ゆっくりできなくなる
そんな当たり前の、ドスでなくても群の長ならば、誰もが強いる事を、びゃくれんさんはたった二つの掟
として群のゆっくり達に教えていて
皆が皆、ゆっくりできている
「?」
「ゆ!?とてもゆっくりできる掟だね!ドスは守るよ!」
「はい!」
ドスは餡子の片隅に、何かもやもやした物を抱えたまま、そうびゃくれんさんに返した
そのもやもやした物が何なのか、わからないまま……
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ドスが群の一員になって、数ヵ月……
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
「ドス、いつもありがとうね!」
「うんぱんありがとうね!」
群のゆっくり達は、運搬を楽にしてくれるドスに感謝していた
「ゆ……ドスなら当たり前だよ……」
ドスはその感謝の言葉に、力無く応える
びゃくれんさんの群は、相変わらずゆっくりしていた
群のゆっくりは、皆助け合っていた
「ゆえ~ん!!!まりちゃのおぼうちしゃんが~!!」
赤まりさの帽子が川に流されてしまう
「わふ!」
「これだね!はい!」
誰も帽子を無くしたゆっくりを苛めず、帽子を届けてあげる
「ゆぅ、おねえちゃんありがちょ~!」
「もみじにもおれいをいってね!もうなくしちゃだめだよ!」
そうして感謝する事を忘れないし、自らの功績と勘違いするゆっくりもいない
長であるびゃくれんさんにも、餌の運搬をするドスにも、学校の先生のぱちゅりーやけいねにも、敬意を
払っていた
「おさ!ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってくださいね!」
会えば必ず挨拶をするし
「おはなさんがもうすぐさくわ」
「こんぱろこんぱろ~」
誰もゆうかの畑を荒らさない
「みんな、おべんきょうはおしまいにして、うんどうをするわよ」
「「「「ゆわ~い!!」」」」
「おお、けんこうてきけんこうてき」
「もこうもさんかしてくれ」
「けいねのたのみならしかたないね」
勉強に励むだけでなく、遊びで仲良くする事も忘れなかった
餌はきちんと分量を考えて採っていた
「ゆ!これくらいあれば、じゅうぶんだね!」
「あかいくだものはとらないの?」
「このまえとったぶんでさいごなんだねーわかるよー」
「あれいじょうとると、らいねんはえてこなくなってしまうからな」
「しかたないわ。おじょうさまにはがまんするようにいっておかないと」
まだずっと先の事を、そしてどんな物も勝手に生えて来ない事を知っていた
冬篭りに向けて備えた餌を、誰もが理解していた
「きょうのしゅうかくぶんをおさめにきたよ!」
「むれにはちゃんとわけたのよね?」
「わけたよー」
「これだけあればじゅうぶんじゃないの?」
「ねんのためにおおくとっておいたほうがいいよ」
「くさらないごはんしかないので、とっておいてもんだいはありません」
ゆっくり出来なくなるかもしれないという未来を消す為、備える事を知っていた
餌も均等に分配し、子供も無闇やたらに作らなかった
「まりさたちのぶんは、これでいいよね?」
「じゅうぶんだぜ!かえってもうしわけないきがするんだぜ」
「おちびちゃんたちをつくりすぎてないからいいのだー」
「つくりすぎてもごはんがすくなくなるから、みんながまんぞくできなくなるんだぜ」
「そうなのだー」
誰も差別なんてしない
「Zzz……」
「ちゅーごく!またしえすたしてるー!」
「またおこられちゃうね……」
「げらげらげらげら!」
「Zzz……」
「きもちよさそうにねてるね」
「こまちー!!」
誰も他のゆっくりの物を奪おうとしない
「さくやからもらったほうせきはえれがんとなんだどー♪」
「うー……ふらんもほしい…」
「これはれみりゃのだからだめだどー、でもいっしょにゆっくりできるほうせきをさがしてあげるんだど
ー♪」
「じゃお!」
「うん、ふたりともありがとう。ふらんもゆっくりさがす!」
「こあ、あなたもてつだってあげなさい」
「こあ!こあ!」
仲良く皆で、宝物を探したり、訳あったりしていた
決して人間と関ろうと考えない
「いいかみんな。にんげんにはちかづいてはいけないぞ」
「どーして?」
「ゆっくりできなくなってしまうんだ」
「それはいやー!!」
「にんげんさんもいっしょにゆっくりしようよー!」
「ふひつようにかかわってはいけない。おたがいのりょういきというやつなんだ」
人間をただ恐ろしいと思うだけでなく、どうすれば良いのかをきちんと考えていた
見下さずに、一緒に居たいと願いながらも、ゆっくりしたい為に守っていこうと考えていた
ゲスもレイパーも来ないし、出ない
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってくださいね!」
「まりさたちはおきてをまもるよ!だからむれにいれてね!」
「もちろんですよ!」
誰も掟を破らずに
誰も彼もが
「おさ!ゆっくりしていってね!」
「ゆ!おさ、だいじょうぶですか?」
「おさ、いっしょにゆっくりしようね!」
「うにゅー、おくうとさとりさまとおさでふゅーじょんしましょ!」
「もこたんといっしょならゆっくりする……」
「だれがおまえなんかと!」
「おねがいもこう!ひめのおねがいをきいてあえて!ひめがゆいいつ『めどい』といわないの!」
「わたしからもたのむぞ、もこう」
「しかたないな……」
「てんこもいじめてね!」
「そうりょうむすめさま、くうきをよんでください」
「みんなでゆっくりしましょうね!」
長であるびゃくれんさんを、慕っていた
それはまさしく、理想のゆっくりぷれいすであり
ドスが長い間欲して、自分の力では決して出来なかった、理想の群の関係であった
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……ゆ……」
ドスの餡子の中の、正体不明のもやもやは、日増しに募っていく
『何が違う?』
何も違わない
『自分はドスなのに』
誰もドスを敬わない
『びゃくれんさんは簡単にできている』
自分じゃどうしてもできなかったのに
『当たり前の掟なのに』
自分の群では守れなかった
『どうして人間が滅ぼしに来ない』
ドスが活躍できない
『どうしてゲスもレイパーも出ない』
ドスが英雄になれない
『どうして……』
自分が長じゃない
『自分はドスなのに』
相手はただのゆっくりなのに
『長となるのは、自分が一番良いのに』
何時までも何時までも……長に相応しくないのに長になるなんて……
『びゃくれんさんなんて』
死ねば良いのに
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ある日の事
「♪~♪~」
びゃくれんさんが日向ぼっこを楽しんでいる
「……」
その背後から、ドスがゆっくりと近づいてきている
(邪魔だよ)
明確な殺意を抱いて
(お前が居なければ、ドスが長になれるのに)
そんな願望を抱いて
(大丈夫だよ、びゃくれんさんが死んだら、ドスが群の長になってあげるからね)
そんな1人よがりの考えを抱いて
バッ!!!
ドスが高く飛びあがった
そのままびゃくれんさんの元に着地して、踏み潰す気なのだ
(これでドスが長になるよ!!だから)
「ゆっくり死んでね!!!」
ドスがびゃくれんさんを見ながら叫び、醜悪な笑顔を浮かべた
ドゴン!!!!!
「ゆがああ!!!?!」
瞬間、ドスが吹き飛んだ
ベチン!!!
強い勢いで地面に落ちるも、皮は破れなかった
「?」
その音に、びゃくれんさんが振り返る
「ゆぐぐ……」
ドスが地面に転がって、痛そうに呻いて居た
「ゆ!ドス!だいじょうぶですか!?」
ぴょんぴょんと、びゃくれんさんがドスへと駆け寄っていく
「ゆぐぐ……」
ドスが何故吹き飛ばされたのか、分からなかった
それはびゃくれんさんの能力によるものだったのだ
びゃくれんさんが持つ能力。『エア巻物弾幕術』
これはエア巻物を使用する事により、通常のゆっくりでは出来ない防御・攻撃方法が可能となる
今、ドスを吹き飛ばしたのは、『エア巻物日向ぼっこ』である
これにより安全に日向ぼっこできる確立は99%高まり、敵襲には100%の防衛成功率を誇る
なにより対ゆっくりに関しては100%、永遠にゆっくりさせられるのだ
ただし、それは並のゆっくりに限る。ドスではせいぜい、吹き飛ぶのが限度だ
「ゆ……ゆっくりできないよ……」
「まっていてくださいね!いま、えいりんさんたちをよんできますね!」
びゃくれんさんは振り返ってぴょんぴょんと跳ね、群へと戻っていく
「ゆ……ぐぐ……」
当然ながら、ドスはこのチャンスを逃さなかった
先程の直接攻撃は失敗した。理由はドスには分からない
だがドスの攻撃はこれだけではない
とっておきの切り札、ドススパークがあるのだから
ドスが大きく口を開ける
狙いはびゃくれんさんに向けられている
「ゆっくりしねえぇええ!!!」
そうして口の中の茸を噛み砕こうとした瞬間
シュ!!!
「?」
びゃくれんさんがドスへと振り返る
「………ゆ?」
ドスは口を開けたまま固まっていた
「あぶなかったわね、びゃくれんさん」
アホ毛がたくましいゆっくりがドスの側に現れて、そう言った
そのゆっくりのアホ毛に、ドスの口にあった茸が突き刺さっていた
そして、側に現れたゆっくりは、そのゆっくりだけではない
「もうすこしでこのうらぎりものにころされるところだったんだよ」
「わふ!わふ!」
「ばかづらをしてますね。おおむのうむのう」
「げらげらげらげら!!」
「うー…!」
「おきてをやぶるなんて……」
「うそつきめ!」
ドスのまわりに、群のゆっくり達がいた
掟を破ったゆっくりに……
ドスへと殺意を抱いて
「ど、どうして皆がいるのぉぉおお!?!」
ドスはただそう喚くだけだった
どうして群のゆっくりが集まって居るのか分からなかったからだ
理由は様々だ
偶々、びゃくれんさんと日向ぼっこしたいという輩も居れば
偶然、ドスを見つけて遊ぼうと思った輩も居るし
ドスの叫びで駆けつけたゆっくりも居れば
一部始終を見たきめえ丸が、急いで呼んできたゆっくりも居る
どちらにしろ、こうして集まった理由はどうでも良い
ただドスがびゃくれんさんを殺し、掟を破った
それだけが共通認識で、重要な事なのだからだ
「どういうことなの!ゆっくりせつめいしてね!」
「どうしておさをころそうとしているの!?」
「ドス!こたえてよ!」
ゆっくり達が口々に、ドスへと攻め入った
「ど……ドスは……ドスは……」
「ドス……」
びゃくれんさんが、ドスを見つめる
その瞳に、ドスが耐えきれなかった
「…こんなゆっくりよりも!ドスの方が皆をゆっくりさせてあげられるんだよ!!ドスはドスなんだよ!
ゆっくりを助けられるんだよ!得体の知れない、何もしないゆっくりよりも!!皆もドスの方がいいでし
ょう?!」
ドスは心から叫んだ
ドスが群に入ってから溜まっていた、正体不明のもやもや
それは、自分が群のリーダーではない
誰も自分だけを頼らない
ドスをこんな愚行に駆り立てた元凶
『ゆっくりをゆっくりさせる』
そんな、ドスの満たされなかった感情だったのだ
それがドスがドスであるための条件だと、ドスは叫んだ
「うるさいよ!!」
そんなドスに
「だれもおまえなんか、おさにしないよ!!」
ゆっくり達は
「おさをころそうとしたどすなんて、いらないよ!!」
何の躊躇いもなく
「さっさとでていってね!!」
そう叫び返した
「……ゆがあああああああ!!!!!!」
ドスはただ叫ぶ
許されるなら、ドスは今すぐ動き回ってゆっくり達を潰したかった
ゆっくりできない事を言うゆっくり達を潰して、自我を保ちたかった
だが、みょんがはくろうけんとろうかんけんを、ふらんがれーばていんを、れみりゃがぐんぐにるを、し
ょうがほうとうを、かなこがおんばしらを、しんきさまがたくましいなを……
全てのゆっくりが、ドスを動かさないように、武器を突きつけていた
それがドスを縛り付けている
動けば容易く壊れるだろう。何の障害にもならないだろう
だがそれは、今動かないから突きつけられているだけ。動けば、全員が殺しに来るという意思表示だ
死の恐怖、完全に拒絶される恐怖
その2つの恐怖で、ドスは動けなかった
「ゆぐ……ゆぐぅ……」
ドスは恐怖と、どうして拒絶されるのかと、ただ巻き起こる出て行けコールに
「ゆわーーん!!!ドズば、ドズばあああ!!!ただ!!!」
泣くしかなかった
「……ドス……」
びゃくれんさんがドスへと近づいていく
「おさ!へたにちかづいたら……」
「だいじょうぶです」
びゃくれんさんは止めようとするゆっくりを制して、ドスへと近づいていく
「ドス……」
「ゆぐ……ゆぐ…」
「どうしてみんな、あなたにひどいことをいうのか、わかりますか?」
「ゆぐ……わがらない……わがらないよぉ……ドズば、みんなをゆっぐりざぜだいだけなのにい……」
ドスは子供のように、泣きながら言う
びゃくれんさんは叱らず、ただ説き伏せていく
「ならどうして、わたしをころしておさになろうとしたのですか?」
「だっで……ドズが……ドズがおざにならないど……みんながゆっぐりできないよぉ……」
「しょくりょうのうんぱんで、みんなをゆっくりさせてあげましたよね?」
「ゆ……ゆぐ……」
ドスが泣くのを止める
ドスがこの群でした仕事。食糧の運搬
ドスの体格故に、一度にかなりの量を運ぶ事ができ、何度も狩りに行かなくてすむようになった
当然、群のゆっくり達は皆、ドスに感謝していた
「そのとき、ドスはゆっくりできませんでしたか?」
「ゆ……ゆっぐりできだよ!」
「そうですよね。それはあなたにしかできないからですよ」
「ドスにしか……?」
「はい。ドスにしかです」
「……ゆぐ……」
「みんな、ほんとうはドスにかんしゃしているんです。ドスのおかげで、みんなゆっくりできてるんです
よ?」
「で、でも……ドスは……ドスはドスなのに……」
「みんなをゆっくりさせたいから、おさになりたいんですか?」
「そうだよ!」
それは、ドスにとってどうしても譲れないものだった
ドスだから
ただ、それだけである
なのに、そうでなかったら自分は何なのか
それを怖れて、ただドスは最後まで譲る事はしなかった
「なら、おさになってください」
「ゆ!?!」
「ゆ……?」
びゃくれんさんの意外な言葉に、群のゆっくりも、ドスも驚いた
「どうしてそんなことをいうの!?」
「ドスならみんなをゆっくりさせてあげられますよ。こんなにもみんなのことをおもってるんですから」
「さっきおさをころそうとしたんだよ?!」
「いまはいきてますよ?」
「そうじゃないでしょおお!?!」
微妙に間の抜けた答を返すびゃくれんさんに、群はあたふたと慌てていく
そんなびゃくれんさんを見て、ドスは
「……怒ってないの?」
そう聞いた
「はい」
笑顔でびゃくれんさんは頷いた
「ゆ……」
その笑顔を見て、ドスは悟った
どうしてこの群が上手く行っていたのか
どうしてドスじゃ上手く行かなかったのか
どうして群のゆっくりが、びゃくれんさんを長と慕うのか
きっと、誰も彼もが助けられたのだろう
誰も彼もが、助けたいのだろう
このゆっくりの為に
ゆっくりさせてもらいたいのではない。ゆっくりしたいからではない
ゆっくりさせてあげたい
ドスと全く同じ思いを、皆が皆で思ってしまう
そんな不思議なゆっくりだから、皆がゆっくりしてしまうのだと
「……長…」
「なんですか?」
「ドスは……群を出るよ…」
この群で暮らすのはまだ早い
ドスはそう考えた
「……そうですか……」
そんなドスの気持ちを汲み取ったのか、びゃくれんさんもそう頷いた
ドスに武器を突きつけていたゆっくりが、そのまま離れていく
ドスはそのまま、びゃくれんさん達に背(?)を向ける
「あ、ちりょうを……」
「いいんだよ……ドスはすぐに治るんだよ」
ドスンドスンと跳ね、ドスは群から離れていく
かなり遠く、群のゆっくり達から見える大きさが、普通のゆっくりと変わらないサイズに思える位の距離
まで離れた時
「長!」
ドスが振り返る
「ゆっくり……ゆっくりしていってね!!」
そう、群に対して叫んだ
様々な思いを込めて
「ゆ……」
びゃくれんさんもまた
「ゆっくり……していってね!!」
とドスへと叫んだ
「ドス!!!ドスもゆっくりしていってね!!」
「ゆっくりしていってね!!」
「また、いっしょにゆっくりしようね!!」
群のゆっくりもまた、ドスへとそう叫んでいた
ドスはその言葉を聞いて、再び群に背を向けると
今度は振り返らず、群から去って行った
そんなドスを、びゃくれんさんと群のゆっくり達は、何時までも見送っていた
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以下ハッピーエンドが気に食わない人向けの蛇足
トゥルーエンドかつ、ドスの評価が最大で180度、最低で小数点第一位を四捨五入して1度変わる話
そしてやっぱり彼女の登場
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群が見えなくなり、恐らくはどんなに叫んでも聞こえない程の距離
「ゆ……ゆぐ……」
ドスは痛む体を抑えて、どうにかこうにかここまできた
「今度は……今度は失敗しないよ」
そのドスの瞳には、強烈な意思が宿っている
「今度こそ……あの群を奪うよ」
ドスはそう誓った
あの群の場所は魅力的だ。あの群のゆっくり達も魅力的だ
ドスでは何十年かかっても、自ら作る事はできないだろう
今度は誰にも邪魔されず、びゃくれんさんを殺して、今度こそ群の長となる
その為にはまず力をつけないといけない
誰にも監視されずに、ひっそりと
だから群を離れた。まだあそこで暮らすのは早いと
「ゆっへっへっへ……長はドスでないと……」
そんな危険な思考となったドスに
「ゆっくりしていってね!!」
なんて声がかけられた
「ゆ!?ゆっくりしていってね!」
反射的にそう返事をして、誰が声をかけたのかと探す
パス!
バチン!!!
「ゆがあああ!!?!」
ドスにネットのような物が覆いかぶさられた
ビキン!!
そのまま地面へと縫いつけられる
「な、なにこれえ!?!」
ドスが思わず喋る
ビチ!!
その時、網に皮が引っかかって、皮が裂けた
「いだいいい!!!!」
ビチ!!ビチ!!
叫べば叫ぶだけ、皮が網に引っかかって裂ける
引っかかるという言い方は、正しくない
網を構成しているワイヤー。それ自体が強力な刃物になっているような鋭さだった
「捕獲成功」
1人の女性がドスの目の前に現れた
「お、お姉さん、誰なの?」
ドスは痛みを堪えながら聞く
「ん?私?しかいないわよね。ま、誰だっていいじゃない」
ニコニコと、笑顔で彼女はドスを見ている
「た、助けてね。ゆっくりドスを助けてね」
ドスが懇願するも
「嫌」
彼女は拒否した
「どぼぢでえええ!!?」
ドスが泣き叫ぶ
「だって、私が殺す為に捕らえたんだもの」
「……ゆ?」
ドスが固まった
何を言っているのか解らないとばかりに
「まあ、何も知らないまま死なれるのはちと面白みがないからね。ネタ晴らししてあげる」
ニコニコと、笑顔のまま彼女は言った
「貴方は商品なのよ」
「……なに、それ……」
「とあるお金持ちの虐待お兄さんがね、ドスが虐待されるのを見たいって思って、貴方を購入したの」
「ゆ……」
「ただ虐待と言っても、殴ったり燃やしたりするのじゃないわ。貴方が作った群が、無様に壊滅していく
のが見たかっただけ」
「……ゆ?」
「何度も何度も壊滅して、その度にただ貴方1個だけ助かるなんて、本気でそんなに運がいいと思ってた
の?それとも自分は優秀なドスだから、毎回逃げ切れたと考えてたの?」
「…じゃ、じゃあ皆は……」
「私の依頼主がそう望んだから、永遠にゆっくりさせました♪」
「ゆ……ゆがあああああああ!!!!!」
ドスは怒り狂った
目の前の彼女を殺そうと考えるくらいに怒り狂った
だが殺せない。ワイヤーで傷が深くなるだけ
茸がないからドススパークも撃てない
「それでね、最後に依頼があったの。そんなドスが、理想のゆっくりぷれいすを見て、羨ましがって、壊
れていくのが見たい。そんな依頼がね」
そんなドスを無視して、彼女は説明を続ける
「あああ……ゆ?」
「あの群を用意するのは大変だったのよ。びゃくれんさんもしんきさまも、しゃべるめーりんもきめえ丸
も、まあ全部言うのは大人の事情で省くけど、全部作るのは本当に苦労したわよ」
彼女は全く苦労を感じさせずにそう言った
「作るって……そんなの、いくら人間さんでも不可能だよ!」
ドスは否定した
人間が好き勝手に作るなんて、出来るはずが無いと
せいぜい、強制的にすっきりさせて出産させる事はあっても、ドスも知らない希少種を作り出すなんて不
可能だと考えた
「あら、そんな事ないわよ。貴方だって作られた存在でしょ?」
「……ゆ?」
その言葉に、ドスが固まる
「う、嘘吐かないでね……ドスは……」
「誰から生まれたの?」
彼女はそんなドスに質問をしていく
「…ま、まりさ…」
「おかーさん?おとーさん?どっちがどっち?もう片方の種族は何?」
「ゆ……ゆ……」
ドスが答に詰まる
それは解らないから
そもそも、両親の記憶すらないのだから
「ドスになる前の記憶はある?」
「ゆ……ゆゆ…」
赤ゆっくりの時に親子で過ごしたり、子ゆっくりの時に外で遊んだり
成体となった時に、普通に過ごしていた記憶が無い
あるのは、ドスになってからの、あの記憶
「最初の記憶を当ててあげようか?」
「や……止めてね…ゆっくり止め…」
それを当てられるという事は
「ゲスが村に下りた性でゆっくり狩りが始まって、貴方は真っ先に逃げた。でしょ?」
彼女の言う事を、信じるしかないと言う事
「ゆうううう!!!!」
ドスは絶叫した
ドスの最初の記憶
最初の群の崩壊の記憶
それはまさしく、彼女が言った事そのものだからだ
記憶にある限り、ドスは確かにそれからゆっくりの群を作ろうと考えはじめていた
その群がどんな群だったのか
何処にあったのか
どの種族がゲスだったのか
群には何が居たのか
その記憶は、無い
「信じてくれた?」
ニコニコと、笑顔で彼女は聞く
「うそだあああ!!!うそだあああ!!!」
ドスはただ否定する
自分はそんな商品ではないと
自分は作られた存在ではないと
ただ必死に、否定する
「ま、いいわ。もうそんな事は考えなくて良いんだから」
「うそ……ゆ?」
ドスは、彼女の言葉が何を意味するのか考える
もう考えなくて良い?
なんで?
まだドスは群を作るんだよ?
今度こそびゃくれんさんを殺すんだよ?
なんでそんな事を言うの?
そんなドスに
「依頼主もね、貴方に飽きちゃったの。むしろびゃくれんさんの群の壊滅が見たいって」
彼女はそう言った
「ゆ!!!」
「ああ、叫んでも無駄よ。距離的に聞こえないし、助けることも、ざまあみろとも言えないし」
ポチ
彼女は網のスイッチを押す
ギュルルル!!
網の四隅の杭が回転し、網を更に締め付けていく
「ゆぎぎぎぎぎぎ!!!」
ずぶずぶと、網のワイヤーがドスへと沈んでいく
目が切り裂かれ、口が分かれ、中枢餡をも切り裂こうとしていく
「それで、もう貴方は用済み……」
ドスは最後に、ニコニコと笑う彼女を見た
「じゃあね。ドス」
ブチャ!!
ドスが網目の通りに切り刻まれて、そのまま崩れて死亡した
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「それで、あの群の虐待はどうするのですか?」
「どんな事ができるんだい?」
「ゲスの群をぶつける事も、レイパーに襲わせる事も、捕食者達に襲わせる事も、有志を募って虐待させ
る事も。なんなら貴方が自ら行き、貴方の望むがままに犯す事も……」
「そうか……なら、私はあえて、そのままに。だけど、絶対に他の人間が入らないようにしてくれ」
「理由をお聞かせ願えますか?」
「あの群はびゃくれんさんだったかな……それだけで成り立って居るんだろう?」
「ええ」
「遠からず彼女が死亡したら、群は統制を失う。ただ1匹のゆっくりの死去が、群の崩壊に繋がる……そ
んな愚かな群を見たいんだ。その為に、邪魔されては困る」
「なるほど。素晴らしい考えで。商談成立ですわ」
「…ああ、そういえば1つ、聞きたい事が」
「なんですか?ドスは解体しましたが?」
「そっちじゃないさ。貴方が撮ってくれたビデオの映像に、少し不可解な事があってね……」
「?」
「どうして、めーりんはちゅーごくなんて呼ばれてたんだ?それにみょんとゆゆこがどうして関係して…
…それに、もこうというゆっくりもどうして地面から……」
その言葉に、彼女は
「……」
殺意を一瞬だけ向けて
「企業秘密ですわ」
ニコニコと、笑顔でそう答えた
「……そうか……」
依頼主はただ、そう頷いた
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本編と関係ないおまけ設定
エア巻物弾幕術の派生技一覧
エア巻物パンチ
エア巻物キック
エア巻物何もしない
エア巻物なむさん!!
エア巻物聖尼公のエア巻物
びゃくれんさんはつよい!
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後書き
ハクシャク カンチョウ カクトウキョウダイ
何かが違うねん
もっとこう……
ドスはゆっくりをゆっくりさせる存在だから、それを利用して、群を何度も壊滅させて、普通のゆっくり
が理想的な群を作って、ドスの全てを粉々にする
そんなのを書きたかったけど……なんかが違うねん
あわせてびゃくれんさんの能力が、ラオめーりんそっくりになってもうた……
あとゆっくりをできるだけ『匹』なんて生物種として呼びたくない
でもそれは作中のキャラだからなあ……まあ地の文は『匹』でいいや
もう1つばかし
彼女が登場するSSでは、依頼主が常識人だと考えてください
あとwikiでの名前が(仮)なので、今度もし収録してくださる奇特な方が居たら
次の内からお選びください
1 叩きあき (仮とは言え付けてくれたので)
2 人間虐めあき (感想欄で◆T2U2IYZ7TYが付けてくれた名前)
3 注意書きの人 (もう注意書き書いてないけど)
4 ヘイトあき (ゆっくりと人間が嫌いだよ)
5 調子乗るなあき (でも乗るよ)
6 喧嘩売りあき (最初がコレだしね)
7 叩きあき(仮) (お前なんざ仮付きで充分じゃ)
8 どれもいやだから収録者が考える(これが普通かなあ)
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このSSへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
- 人間パートは最高につまらない、黒歴史確定
作者はおもしろいと思っているのだろうか......
コメにもあるように最後の厨二っぽいし「やっぱり彼女~」ってなんだよ気持ち悪い
-- 2013-04-02 21:27:47
- あああああこの後の方の人間のどうたらこうたらのせいでつまんない
普通に魔理沙が白連の群に戻って反乱をまた起こして返り討ちとかなら良かったのに -- 2012-07-13 14:19:50
- この作者の人間パートはいつも駄作だなー。
人間の描写ができないなら、ゆっくりだけで終わらせておけばいいのに。 -- 2012-05-22 01:26:00
- けんかはだめなんだねー わかるよー -- 2012-04-08 01:42:55
- おまえらお茶でも飲んでもちつけwww -- 2011-09-14 19:19:06
- ↓3 これを読んでそんなこと言えるあなたが厨二病でしょ
どこをどう取ったら厨二に なるんですか?wwwwwwww
格下に見てるようだけど、ここにいる時点であなたも同類ですからね。一般人ならこんなとこ来ませんから -- 2011-06-17 20:03:04
- ↓×2 言いがかりに近いね -- 2011-05-21 22:38:15
- ↓うっぜぇwww -- 2011-04-12 20:44:31
- いろいろ欲張り過ぎですね
消化しきれておらず冗長になってます
>そしてやっぱり彼女の登場
彼女ってだれですか?w
あと蛇足だかトゥルーエンドだか知りませんが
中二設定全開ですねw読んでるこっちが恥ずかしくなりましたw
いえいえもちろん作者様が楽しれけばそれが一番ですけどね
だた・・・邪気眼をお持ちですか?w -- 2010-11-15 03:18:54
- みごとなドゲスだったな…
どすが嫉妬するというアイディアが面白かったですよ~ -- 2010-10-12 20:04:57
- ゆっくりの群れに“ずっと”など無い。
びゃくれんが寿命で死ぬまで待ったりはしないだろうから毒殺でもするんじゃないか。で、群れも壊滅と。 -- 2010-09-15 15:36:27
- くたばるといいねー -- 2010-09-08 17:29:20
- みんな死ねや。 -- 2010-08-21 02:18:26
- ドスはドゲス。人間もゲス。びゃくれんさん達はずっと平和にくらすの!! -- 2010-07-05 04:52:19
- おもしろかったです -- 2010-06-04 20:45:25
最終更新:2009年11月15日 15:55